第四回 いしかわ生物多様性カフェ報告
第四回 いしかわ生物多様性カフェ記録
開催日時:2024年3月8日(金)18:30〜20:30
開催場所:石川県立図書館研修室
テーマ:わたしとあなたが「ほっとけない」こと(ワークショップ)
参加者数:42名(一般参加者34名+スタッフ・関係者8名)
【テーマ】
今回、話題提供者はいません。
テーマは
わたしとあなたが「ほっとけない」こと
生物多様性や自然、生きもの、能登半島地震など、わたしとあなたが「ほっとけない」ことを話し合いました。
付箋1枚につき1つの意見を書いてもらいました。
・黄色の付箋には「ほっとけない」こと
・水色の付箋には「これからしたい」こと
・一人で何枚でも書いていいです
とてもたくさん集まった付箋を整理したところ、【ほっとけないこと】は以下の7つのグループに分けることができました。
【ほっとけないこと】
・人
・食
・経済
・生物・自然
・農業・林業
・調査・研究
・防災・震災
【してみたいこと】は5つのグループに分けました。
・環境
・生物 里山・自然
・農業・林業
・教育(社会)
・震災
これらの付箋の中から、いくつか選び、付箋を書いた人に書いた理由や背景、意見などを話してもらいます。
いよいよ対話開始。
対話の様子をお伝えします(金沢大学経済経営学系の原田魁成さんが作成した記録をもとに、まとめたものです)。
【ほっとけないこと】
どれにしようか迷いましたが、一枚目は「風力発電の羽に当たって死んでしまう鳥 ほっとけない」の付箋を取り上げました。
・(大学生)能登地方で風力発電の風車が乱立しています。他方でその風車に追突して命を落とす鳥(バードストライク)が発生する等、生物多様性とは反対の出来事が起こっています。
・中能登町では鳥の繁殖が活発な地域があったが、風力発電設置に伴い、ハゲ山になってしまった地域もあります。
・海側の風力発電所は渡り鳥の移動路上にあるため、バードストライクがさらに深刻です。
・風力発電で自然エネルギーを活用する方法もあるが、今では「塩と水」で発電する方法もあります。災害ごみ・生活ごみ等を燃焼することで発生する「炭」からも電力を生み出せる。リンゴの残りやカキの殻など、ごみと思われるものも適切な処理によって立派な資源になりえます。
・風力発電の設置計画が地震の関係で中断しています。他方で反対意見を主張する住民が市外へ流出してしまっているが故にここぞとばかりに設備が建てられるかも…気を付けないと。地域外の人も色々と意見を言えるのではないでしょうか。
・風力発電を設置して電気を作っているけど、そもそも地元で使われていないのでは。
菊地:エネルギーは、地熱や水力、風力など地域の至る所にあります。能登半島地震を経験し、また今日の対話を通して、地域にあるエネルギーを地域レベルで活かしていく、エネルギーの地産地消の仕組みづくりが必要だと実感しています。
・「能登の里山里海」は世界農業遺産に登録されていますが、そのブランドが全然活用しきれていません。
農業の話題にになったので、農業・林業の付箋から「農業で自立を目指す若者たちの環境(状況)が非常に厳しいこと」と書いているものを取り上げました。
・農業で若者が自立して生活するのは難しい。珠洲市では高齢化に伴い耕作放棄地が増えてきていて大変でした。他方で自分もお米を3年間育ててみたけど…すごく大変!農薬を使用せずに育てようとするとカメムシなどいろんな生物と格闘しなければならない。これじゃ若い人も農業をやりたい!とは思えない。他地域では、耕作放棄地を買い取って、そこで若い人が安定した収入を得つつ、農作物を生育するビジネスモデルがあるようなので、それらを能登でも応用出来たらいいと思います。
・(大学生)「ほっとける」農業みたいな、極力自力での作業を最小限にしつつ、自然や最先端技術にお任せした農業が出来るといいかも。
・カメムシには活性化する時期が存在します(7/25~8/10頃)。その頃に稲穂を出すとカメムシが喜んで来てしまうので、時期をずらして栽培すると農薬などでも栽培できます。また、蜘蛛はカメムシを食べてくれかつ農作物には害をなさないのでよい。
菊地:スマート農業のような「ほっとける」農業もあれば、生態系の機能をうまく活用した農業もあります。地域の特性や人によって、色々なやり方があるのではないでしょうか。
続いて「土に戻すことができるものをゴミとして捨ててしまうこと」という付箋を取り上げました。
・土に還せる生ごみ等を燃やしてしまうのはもったいない!私の家族では資源の再利用の可能性について検討しています。今日のカフェで、土に還す以外にも「灰」にするという活用方法があることを知り、すごく勉強になりました。長年耕作してきた農地を返したことをどう考えたらいいのか。引き継いだ次の人から「いい土ですね」と言われたりする。自分ができなくても次に繋がればいい。自分の視野が狭かったことを知りました。
・京都から参加。京都の亀岡等では「近郊農業」というスタイルに需要があります。龍谷大学はその需要を汲み取り、「農学部」の設置に至りました。
・自分で野菜を作ることで視野が広がりました。例えば用水路がどこにあるかとか、この辺りに焚き木があるかなどを見るようになりました。手作りで作った野菜は新鮮ですごく美味しい。これも自分で菜園をすることで初めて分かったことです。
菊地:兵庫県豊岡市に住んでいた時、市民農園を借りていました。とても下手だったので、農家の人に半ば呆れられながら栽培していました。それでも自分で作った野菜は、気持ちの問題ですが、とてもおいしかったです。豊岡にいた時、こうした農家とのつながりがあり、災害があってもなんとか生きていけるという安心感がありました。ただ今では自分の暮らしがシステムに依存しすぎていて、そうした安心感は薄れています。システムに依存しすぎない暮らしの大事さを実感しています。
・能登には非常に優れた自然や資源がたくさんあります。能登の良い所や失ってはいけないことなどを考え直す必要があります。
・生物好きとしては、地震によって生態系がどう変化してしまうのか失礼かもしれないが非常にワクワクする。生態系は攪乱があってもその変化に順応するように変化していくので、それを研究するのが興味深い。
・地元に住む釣り好きの方が、地震によって隆起したことで新しい釣りポイントが出来た可能性があると言っています。
菊地:今回の地震は数千年に一度の頻度で発生する地球活動が、私たちが生きているときに足元で起こったもの。地震によって生態系は変化していきます。撹乱が起こります。このこと自体は自然現象ですが、問題はそこに人が住んでいて暮らしがあることです。暮らしがあると、自然現象は災害になります。撹乱と災害は関係していますが、別の問題として考える必要があるのではないでしょうか。
今回の地震によって起こった地殻変動は、ジオパーク(大地の公園)としての価値があると言えるかもしれません。
【してみたいこと】
・長年、植物調査を続けてきました。重要なデータを集めてきたが、非常に年数のかかる地道な仕事で使命感が必要。ただやはり後継者がいません。どうしたら良いか。
・ホテルを経営していて、太陽光を活用したエネルギーを利用しています。楽しいものには子どもたちも興味を持って色々質問したり、駆け寄ったりして来てくれます。今どきの子は考える力が欠如している…などと言われますが、スマホ等から得る情報が多種多様で子どもたちの熱意がそちらに向いてしまっているだけ。楽しいと思ってくれれば興味を持ってくれるので、そうした企画も重要だと思います。
・(大学生)里山ツーリズムなどをしてみたい。
・里山ツーリズムとして、人の流れを呼び込む工夫は良いと思う。ただし、里山は適切な管理をし続けないと荒れ放題となってしまうため、維持する体制も重要。誰がどのように維持しているのか考える必要があります。
・(高校生)小学校や中学校では芋堀り体験や花を植えるなど、「農業」に関連する行事はあるが、「竹林」に関する行事などもあったらよいと思う。変な遠足行事を入れられるくらいなら文化を守るあるいは継承するための学校行事があった方がいいと思います。
菊地:今日は小さなコミュニティという単位が重要だということを確認できたように思います。エネルギーや食など、システムに頼りすぎず、足元にある資源を活かしていくことが重要で、そのための技術や知識も色々とあることも確認できました。
2時間では少し時間が足りなかったようです。参加者のみなさんは、まだまだ話したいことがあったようです。
せっかく書いていただいたにもかかわらず、取り上げることができなかった付箋も多く申し訳なかったです。
ファシリテーターを務めた私の能力不足でした。
石川県立図書館で集めてもらった書籍。能登半島地震の本などが並んでいます。
いつもありがとうございます。