いしかわ生物多様性カフェ

いしかわ生物多様性カフェ

第八回 いしかわ生物多様性カフェ(11/22開催)参加者アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:27名

回答者数:20名

回答率:74.1%

 

①年齢(回答数20)

 

10代:5.0%(1名)、20代:15.0%(3名)、30代:10.0%(2名)、40代:30.0%(6名)、50代:30.0%(6名)、60代:10.0%(2名)、70代以上:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数20)

 

 

男性:30.0%(6名)、女性:70.0%(14名)

 

 

 

 

③職業(回答数19)

 

 

会社員:10.5%(2名)、公務員:5.3%(1名)、教員:10.5%(2名)、自営業:5.3%(1名)、主婦/主夫:5.3%(1名)、パート/アルバイト:15.8%(3名)、学生:26.3%(5名)、無職:10.5%(2名)、その他:10.5%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが5.3%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが21.1%(4名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が21.1%(4名)、クチコミ15.8%(3名)、金沢大学のアカンサスポータルが36.8%(7名)、ダイレクトメールが21.1%(4名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数20)

 

 

初めてが28.6%(6名)、二回目が4.8%(1名)、三回目が23.8%(5名)、四回目が4.8%(1名)、五回目が14.3%(3名)、六回目が9.5%(2名)、七回目が4.8%(1名)八回目が4.8%(1名)でした。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数19

 

大変満足:52.6%(10名)、満足:42.1%(8名)、どちらともいえない:5.3%(1名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・地域おこし的「リアル」を知る機会

・日本の里山に関する活性化の取り組みが分かるようになりました。

・山立会の食堂に一度入りたいと思っていたので、メニューなどを知ることができてよかったです。今度行きます。羊の子の動画をSNSにアップするとかはどうでしょうか。あと、なめこの廃菌床を農地や牧草地などの堆肥作りなどに利用できないでしょうか。

・興味深い取り組みでした。

・山立会さんの取り組みを知りました。応援したいと思います。

・里山を舞台とする経営の話は興味深いもので大変面白かった。色々わかったことがある。

・木滑なめこ、白山麓ヒツジについていろいろ勉強になりました。お菓子も美味しかったです。

・山立会のさまざまな事業、有本さんのお考えを知れて参考になりました。

・研究者、行政、地域の視点を持った有本さんの話が興味深かった。

・有本さんのお話が前向きでわかりやすく楽しかったです。今後が楽しみです。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数19)

 

 

大きく変わった:5.3%(1名)、変わった:47.4%(9名)、どちらともいえない:26.3%(5名)、あまり変わらない:21.1%(4名)、変わらない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・山立会の理念、結局経済視点が上位になっている?現実的でしっかりしているとも言えますが。

・生物多様性と人の暮らしについては、あまり変わりませんでした。獣害の話は普通な話であるような気がしますので。

・獣害問題だけでなく、人がクラス里山の活性化が大切と改めて感じた。

・自分が元々考えていいたことと基本理念は近いと感じたので。

・獣害を地域活性化するものとして利用する例を知ることができたから。獣害は地域によって異なるので、特産物として売り出せることに気づいた。

・やりがい、楽しさをもって取り組むことの大切さ。

・専門の方のお話を聞いて、里山の現状や関わり方、ニュースの見方、自分の中の意見、足元ばかりの生活から一歩広がった。視界が広がりました。

・win-win関係は最高。良い循環できれば。

・耕作放棄地での放牧を通じて地域資源が持続可能に活用されることで、白山の新たな魅力を生み出しました。

・生物多様性⇄経営 その好事例を見せてもらいました。

・里山の維持管理をすることで、生物多様性、人の暮らしのどちらにも貢献できると思った。

参加者が多くて、質問も含め楽しくおもしろかったです。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数20)

 

参加したいと思う:100.0%(20名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・野生動物

・能登里山の今後について

・50年〜100年前の里山のリアルを整理発信してはどうか。例、里の田のビオトープ

・地域における行政のあり方

・今日の話を受けて、白山の「里山」が歴史的にどのような形で存在してきたのかが気になりました。

・地域活性化は地元の人が安全に暮らすこと、ということが印象的でした。地域活性化とはどういうことなのか考えたいです。

・クマと里山

・今回に似ているテーマ。実際に行っている取り組みに関心がある。

・生物多様性とエコツーリズム

・狩猟

・食をテーマにしたもの

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・いろいろ一緒に考えることができました。

・今回の発表内容から見れば、行政の役割は補助金の提供と仕事の提供だけのようです。それは、日本の地域にとって普通のあり方でしょうか。

・里山を生業として経営という観点から、たくさんの取り組みを紹介していただき、大変勉強になりました。自分がイメージした「里山暮らし」とは大きく異なる、里山を拠点?とした生活のあり方の可能性についての理解が拡がったように思います。

・なめこ食べてみたいと思いました。

・興味深いお話でした。ぜひ食堂か現地にも行ってみたいと思いました。たくさんの人が体験する・共感を広げる(協力者?)+一時的な人手不足を解消する→タイミーに求人を出してくだされば、ぜひ働いてみたいです。

・以前から興味のあった山立会さんのお話を、里山のなりわいという目線でうかがえたのが、とても参考になりました。高い専門性やバリエーション、周囲とのバランス(関係性)改めて関心が高まりました。

・かねてから山立会のことを知りたいと思っていたので、今回はとても興味深くお話をお聞きしました。濃い時間をありがとうございました。

・企業の視点から里山をどう生かすかというお話を聞くことができ、大変面白かったです。山立会食堂に伺ったことがないため、いつかうかがいたいです。

・とても楽しそうになりわいを仕事にされていることに刺激を受けました。

・なりわいが成り立つ保全。山立会のたくさんのビジョン。楽しんで働いておられる。大変だろうけど人間らしい仕事でうらやましいと思いました。

・いろいろわかりまして面白かった。

・羊ふれあい体験、とても興味深いです。

・経営者でありアカデミックバックグラウンドを持つ有本さん自身がとてもすばらしいと思いました。私個人として、山立会の暮らしそのものを体験できるような「観光」プログラムがあるとよいと思います。泊まって、その生活から学んでみたいです。チーズも期待しています!

・里山を管理していく必要性を感じた。

・有本さんのお話は何度かお聞きしていましたが、今回のいしかわ生物多様性カフェでより深くうかがえてよかったです。参加できて光栄でした。また参加したいです。

 

第八回 いしかわ生物多様性カフェ(11/22開催)報告

開催日時:2024年11月22日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:有本 勲さん(山立会代表)

テーマ:里山を舞台とした多角経営−山立会の取り組み

参加者数:37名(一般参加者29名+スタッフ・関係者8名)

※今回は石川テレビによる取材がありました。

 

 

 

【話題提供】

 

 

 

「里山をわいわいとなりわいに」という考えから、白山市で活動している里山総合会社の山立会。

 

経営理念は、

・里山の魅力を磨き、世界へ届け、仲間とつながる

・活気があり、安心して生活できる里山を皆でつくる

・「助け合い、ともに育つチーム」と「最高の里山ライフ」

というものです。

 

代表の有本 勲さんから、山立会の多角的な経営について話題提供していただきました。

 

ツキノワグマの生態研究で博士号をもつ有本さんは、2012年に石川県白山自然保護センターに赴任しました。その後、白山ふもと会に仕事の場を移し、猪の食肉処理を担当していました。そこで感じたことは、獣害対策だけをやっていてもダメだということでした。担い手である里山地域の活性化が必要と考え、2017年、里山総合会社の山立会を起業しました。

 

山立会の主な事業は以下です。

 

1.ジビエ。石川県でもシカやイノシシ、クマの個体数が増加し獣害も増加しています。ジビエ利用によって有害捕獲と狩猟の促進を目指しています。主に白山麓の旅館、飲食店に販売してきましたが、現在では他の業者に任せているとのことでした。

 

2.野生生物管理。獣害対策として、サルなどの生息調査や狩猟者育成セミナーを行なっています。

 

3.木滑なめこ。「大事なものは守る」。白山麓の特産品でもある木滑なめこは、「でっけえなめこ」という名称でも知られています。先代が高齢となり廃業の危機を迎えました。無くしてはならない地域の特産品ということで、山立会が事業承継しました。工場の改修などで費用がかかりましたが、現在では山立会の重要な収入源になっているといいます。

 

4.羊肉生産。「無いものは創る」。地域食材が地域の魅力の一つと考え、羊肉を白山麓の新たな特産品にしようとする取り組みです。背景として耕作放棄地の増加があります。耕作放棄地の増加によって獣害も増加し、災害などのリスクも高まります。狭小な土地でも放牧できる羊は、耕作放棄地対策として適していると考えて取り組み始めました。課題は、野草地放牧で羊飼養は可能なのか、放牧で生産されるラム肉の品質はどうなのか、そもそもラム肉の需要はあるのか、といったことでした。石川県立大学との共同研究で、野草地放牧の可能性などを調べたり、いしかわ里山振興ファンドの補助金をもらったり、クラウドファンディングによって資金調達を試みたりしています。

 

5.山立会食堂。 交流拠点づくりです。食堂と食肉製造の両輪で進めています。ジビエのネット販売や農業体験も実施しています。

 

6.新規の事業として、バーベキュー場とテニスコートの指定管理があります。バーベキューイベントではラム肉や木滑なめこを提供していたります。

 

このように、山立会は里山を舞台に多角的な経営をしている、まさに里山の総合会社という特徴を持っていることがわかりました。

 

運営体制は15名、内訳は正社員7名(代表社員含む)とパート8名です。それぞれの事業に担当がいますが繁忙期は事業間で助け合いながら進めているとのこと。なめこの売り上げが非常に大きいといいます。

 

山立会の事業は「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2019」のファイナリストになったり、「ディスカバー農山漁村の宝アワード」の優良事例として選定(全国600応募から37地区)されるなど、社会的評価を得ています。

 

今後の課題として、有本さんは産学連携を進めたいとおっしゃいました。大学や企業との連携をすすめ、山立会が地域に入って事業連携をすすめて地域全体を盛り上げていくモデルをつくっていきたいとのことでした。

また経営体制の構築も進めたいとおっしゃっていました。中小企業家同友会の支援を得て、経営の勉強をしているところだといいます。社内外に経営理念を示し会社の魅力をアップすることで、社員のモティベーションの向上と採用力の強化につながると考えています。

 

有本さんの報告から、里山を舞台に多角経営する里山総合会社のあり方を学ことができました。

学問をベースにしながら、起業し、里山の課題解決と価値創出を目指した取り組みでした。

有本さんがこのモデルを白山麓だけではなく、全国に広げていきたいとおっしゃっていたことも印象的でした。

 

 

 

 

【対話】

対話の様子をお伝えします(金沢大学大学院人間社会環境研究科地域創造学専攻修士課程2年の白 佳寧さんが作成したメモをもとにまとめました。白さん、ありがとうございます)。

 

 

 

Aさん:羊についてですが、どのような草地の利用となっているのでしょうか。意識的に、草の造成をしていますか。そして樹木は、どのような位置付けになってるのでしょうか。

 

有本さん:石川県立大学動物栄養学研究室が研究してくれています。学生が1日中羊の行動を観察しているんですよ。それを山立会が現場で実践させていただくことができる関係性があるので、すごく心強いです。雑草で羊が育って、おいしくになるかについて調べてくれました。ただ、羊を毎年同じ場所で放牧していると、羊が嫌いな植物ばかり残ってくるんです。刈り払いをしても、すぐ出てきます。一部は除草剤を撒いて、栄養が高い牧草をまいています。効率のいい生産をするのではなくて、白山に自生する野草とかを食べさせながら育ったブランドを作りたいと思って取り組んでいます。

耕作放棄地を利用して、毎年羊を増やしていくの予定なので、樹木は伐採していきますが、一部は羊の日陰用に残す必要があります。キウイとかブドウなど景観的にも面白いと思っています。

 

Bさん:山立会のイラストには、おじいさんとかおばあさんが畑を耕したりしています。そういうものも含めて、生産構造とか、経済的にどのようにとらえていますか?

 

有本さん:今はなめこが経営基盤になっていますが、食品製造業をもう少しできないかと考えています。今はイノシシのソーセージとか、なめこの瓶詰とか、手作りでやっていますが、もう少し機械化したいです。里山の食材を使った、効率のいい食品製造業を目指したいと思い、売れる商品開発に挑戦しようとしているところですね。山立会のなめこや羊を旅館や飲食店で使っていただいたりとか、白山で外国人観光客をガイドする方がゲストハウスを始めていますので、外国人の方を羊ふれあい体験、収穫体験に参加してもらうところで山立会と連携する。

周りの農家との関係は、山立会は弱いですね。なめこ生産組合で同業者がいますが、石川県に2社しかないので、自分たちで生産して、自分たちで金額を決めて、あとはお客さんに販売させていただいています。連携、繋がりはそんなにありません。羊に関しても情報交換はあります。

 

Bさん:それぞれの事業の完成度。一人の職員が専門的、プロとしてけっこう完成度が高いのでしょうか?

 

有本さん:山立会立ち上げた時、白山商工会から経営支援をしていただきました。中小企業診断士という経営の専門家に相談させていただく機会です。なめこだけ専門的にやっていれればといえば、いいところもあり、悪いところあると思います。例えば、なめこだけに専念した場合は社員さんが集まらないと思います。山立会はいろいろなことをしているので、面白そうだなと思って入ってきてくれる社員さんがいたりします。リスク分散になるところはあります。里山は小さい課題が多くて、その小さい課題を総合的にやっていかないと、地域がわからなくなるところはあります。なめこにしても羊にしても、勉強しないといけないので大変ですが、里山の課題を総合的に回していくことができるかなと思います。絶対無理だというものはやらないですが、可能性があると思うもの、必要なものは挑戦していきたいなと思います。

 

菊地:社員さんのみなさんは、どのようなモチベーション、どういうような思いで里山で仕事しているのでしょう。

 

Cさん(山立会社員):僕は野生動物の調査の仕事をやりたくて、今、山立会を手伝ってます。

 

有本さん:はい、そういうきっかけで山立会入ってくれています。ただ、山立会に入ると、食堂のことをさせられていたり、なめこが忙しい時は、なめこの収穫を手伝ってもらったりします。例えばNくんは、地元の白山出身で、地元が好きで地元に貢献したいということで、なめこ頑張ってくれてますね。毎日朝5時に出勤して、なめこを収穫して、、冬の間はみんなが来る前に除雪をしてくれたりとか。震災があった時、なめこが倒れたのですが、Nくんが対応してくれました。なめこが好きとか、山で働きたいという人が来てくれたり、動物が好きだからという人もいます。農業に関心があるとか。将来を起業したいので、入ってきてくれてる人がいたりします。

 

菊地:いろいろな関心がある人がかかわる会社という理解でいいでしょうか。

 

有本さん:そうですね。でも僕は何が得意なのかよくわかりません。補助金の申請書書きが得意なのかな。それぞれ得意分野を持っている人がきてくれて助かりますね。チラシを作るのが上手な人がいたりとか。同じような仕事をコツコツ嫌にならずにやってくれる人は絶対に必要です。

 

Dさん:リクエスト込めても質問ですが、羊のミルクを使ったカフェメニューは予定ありますか。チーズとかチーズケーキとか。

 

有本さん:ないんですよ。石川県立大学在学の食品科学の先生が、チーズを試作してくれました。本当に美味しいのができるんですよ。山立会で生産して高級品として販売しませんかという話をいただいたことはあります。ただ今は余力がないので、ミルク、チーズ、カフェはまだできないです。

 

Eさん(学生):北海道で、狩猟者と行政の間で問題が発生していると思いますが、石川県では行政とか、一般の方々と里山管理する方々の間での意見の食い違いはありますか。

 

有本さん:私はあんまり把握していません。僕が知ってるのは「くくり罠」のことです。地面に罠をしかけて、シカがピンポイントで踏むと足が縛られるものです。今、石川県は箱罠でイノシシを捕まえるのがメインですが、なかなか捕まらないです。石川県でもシカが増えてきて喫緊の課題なので、くくり罠を積極的に導入してほしいという意見があります。これから話し合いでどうするか決めていく必要があると思います。安全のくくり罠の使い方、みんなで勉強しましょう。

 

菊地:Eさんは、先ほど狩猟免許を持っているといってましたね。なぜ狩猟免許取ったのですか。

 

Eさん:地域で獣害とかが問題になっているので、自分で少しでも貢献できることがあったらと思い取得しました。

 

菊地:若い学生が興味を持って、勉強して免許を取るんですね。担い手が生まれてきていると思います。

 

Fさん:サルの生息域が広がってるから獣害が出る、それとも人の住むエリアがどんどん広がっているから獣害が発生しているのでしょうか。それから、チーズの話がありましたが、私が子どもの頃、羊の毛を刈った思い出があります。アクティビティはどんどん変わっていった方がいいと思いますが、そういう取り組みは何かありますか。

 

有本さん:基本的にはその動物の生息域が広がっていろと考えます。ただ政策の影響が大きいとも思います。1950年、サルは狩猟対象だったのですが、狩猟してはいけない動物に変わったのをきっかけに、どんどん分布が広がったと思います。クマに関しても、2002年ぐらいまでに、白山国立公園内でも銃は使用できなくなったと思います。白山国立公園入ったところにある野生動物の観察施設での目撃はどんどん増えています。政策の影響は結構大きいと思います。クマの保護政策でクマが少し増えすぎたのかな。違う方向で政策をためしていかなければいけないのかなと思います。

2点目についてですが、観光客の受け入れをやりたいと思っています。感染症のリスクがあるので、観光客全く受け入れない牧場もあります。山立会の場合、感染症といったリスクを取っても、観光客を入れています。もう1つは、里山の学習機会、教育の場が欲しいです。羊のふれあい体験は、今も予約制でやっていますが、シンプルな体験をしてもらうことしかやっていないので、もう少しレベルが高いものを提供できないかと考えています。学習とか見学とかができる畜舎ができないとか考えているところです。

 

Gさん:有本さんを突き動かしてるものってなんでしょうか。あんまりやりたくないとか、もう手を引きたい事業を引き受けられている。それを経営という形でされていますね。最初に山立会を立ち上げられた時はどういう思いだったのでしょうか。今は多分変わってきていると思います。そういうところも含めてお話お伺いできればと思います。

 

有本さん:起業した動機は、自分がやりたいようにやりたいなという思いがありました。石川県は大きい組織なので、自分がやりたいこと、言いたいことをもちろんすぐにはできないです。自由に動けるかなと思い、小さな団体に入ったのですが、そこでもなかなか自分のやりたいようにはできない。自分の責任で自分がやりたいようにやりたいということで、起業させていただいていますね。社員もいるので、人間関係中心に大変なところはありますが、勉強になってるし、やりがいはあると思っています。基本的に自分がやりたいことをやってるだけですね。ただ、まだまだ覚悟が足りないなと感じています。周りの経営者の方は、とてもモチベーションが高くて、自分より頑張ってる人がたくさんいますので、僕はまだまだです。やりたくないことも含めてやらないと、やりたいことは実現できないと思っていますが、楽しいです。

 

菊地:有本さんは元々はクマの研究されていて、獣害問題に関心があったのだと思います。今日のお話聞いてみると、獣害問題に限定せず、なめこが非常に大きな経営基盤になっていて、それを元に里山にさまざまな「なりわい」をつくって、いろんな人がそこにかかわるようになっていると理解をしました。里山での「なりわいづくり」ですね。

今日はありがとうございました。

 

 

石川県立図書館による関連書籍の紹介。特に狩猟についての本がたくさんです!!

いつもありがとうございます!!

 

 

 

 

第八回 いしかわ生物多様性カフェを開催します(11/22)

【開催案内】第八回 いしかわ生物多様性カフェ
 
里山を舞台とした生業について考えてみます。
※石川テレビの取材があります。ご承知おきください。
 
日時:2024年11月22日(金)18:30から20:30
場所:石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F)
話題提供者:有本 勲さん(山立会代表)
テーマ:里山を舞台とした多角経営−山立会の取り組み
定員:40名程度
対象:どなたでも参加できます(参加費無料)
共催:石川県立図書館・いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
協力:石川県立大学 上野裕介研究室
申込(当日参加もできますが、なるべく申し込んでください)
 
 

第七回 いしかわ生物多様性カフェアンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:26名

回答者数:24名

回答率:87.5%

 

①年齢(回答数21)

 

10代:14.3%(3名)、20代:14.3%(3名)、30代:0.0%(0名)、40代:33.3%(7名)、50代:28.6%(6名)、60代:4.8%(1名)、70代以上:4.8%(1名)

10代と20代の参加者が半数でした。

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数21)

 

 

男性:47.6%(10名)、女性:52.4%(11名)

 

 

 

 

③職業(回答数22)

 

 

会社員:22.7%(5名)、公務員:22.7%(5名)、教員:4.5%(1名)、自営業:9.1%(2名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:4.5%(1名)、学生:22.7%(5名)、無職:13.6%(3名)、その他:0.0%(0名)

学生が半数でした。

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが22.7%(5名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが22.7%(5名)、県立図書館が4.5%(1名)、いしかわ自然学校が18.2%(4名)、クチコミ22.7%(5名)、金沢大学のアカンサスポータルが22.7%(5名)、ダイレクトメールが9.1%(2名)、金沢大地が4.5%(1名)その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数20)

 

 

初めてが28.6%(6名)、二回目が19.0%(4名)、三回目が23.8%(5名)、四回目が9.5%(2名)、五回目が4.8%(1名)、六回目が4.8%(1名)、七回目が4.8%(1名)でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数22)

 

大変満足:54.5%(12名)、満足:40.9%(9名)、どちらともいえない:0.0%(0名)、あまり満足ではない:4.5%(1名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・貴重な機会をどうもありがとうございます!

・政府の政策や井村さんが農業をする上で意識していることを知れ、知識が広がったため。

石川県にコウノトリ!知らなかったのでスゴク驚き嬉しかった。井村さんの話も幅広く興味深かったが、質問・意見を出す人達の話も色々で、それぞれ異なった視点からの話がたくさんきけてよかった。

・井村氏の熱意に触れられた。感動しました。

・話題提供の内容はとても面白かったが、途中から話の軸がわからなくなったり、情報が多く疑問が残る点が気になった。

・金沢大地さんの取り組み素晴らしいと思います。コウノトリそしてトキ、生き物と生産者がうるおう!30by30保護地域をつくる。もっと多くの方に注目されることを願います。

・井村さんのお話がとても貴重なものでした。窒素過多になっているという事を初めて知りました。コウノトリのライブ配信は、仕事中、PCの隅に映してよく見ていました。かわいいですね。

・農業の視点で能登の今後を考える機会になった。

・農業と生物多様性について、気づきや学びが多かったです。

・有機農業を楽しく、コウノトリと絡ませながら営んでいることに農業の未来を感じた。

・SDGs起業の話、そして企業の社会貢献活動を聞いてとても興味深く感じました。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数19)

 

 

大きく変わった:31.6%(6名)、変わった:47.4%(9名)、どちらともいえない:15.8%(3名)、あまり変わらない:0.0%(0名)、変わらない:5.3%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

・生産性も重要であることがわかったため。

・生物多様性を評価する基準。従来は単なる指標的なものととられていた。

現実と理想のギャップへの考えが大きく変わった。生産者の立場から見た時に消費者へその価値を認めてもらうかもギャップを埋める一つの手法となり得ると感じた。

・生き物=農業=有機による自然環境保全=私たちの健康→循環していってほしい。

・いろんな話を聞けたので、多様性の幅が広がりました。ちょっと目線が変わったので、これから考え方も変わりそうな気がしています。

・農地に関わる色々な方のご意見が聞けてよかったです。

・これまでも生物多様性について重要と思っており、ボランティア活動もしてきたので、今後も継続していこうと思う。

・幼い頃の生物との触れ合い経験は、有機農業の理念と通じるものがあります。有機農業は、人と自然の密接なつながりを大切にし、生物多様性にも大変重要だと思います。

 

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数21)

 

参加したいと思う:95.2%(20名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:4.8%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・能登の里山再生

・生物が生きやすい街づくり(石垣とか風通しとか)

・絶滅する生物との共存

・里山の現状

・気候変動のこれから。と私たちにできること。

・獣害と生活・暮らしへの関わり。再野生化(再自然化)。消費者への共感。

・人を含めた自然の生き物の未来。人が手を加えた土地の自然生物生態系と人が耕作放棄してされてしまった後の生物の生態系の変異、再野性化はありえる?

・生物多様性と畜産

・獣害、ジビエ

・里山といきもの、クマ。

・地球温暖化対策、環境問題など。

・法律、農業、生物、歴史、心理学

・生物多様性と観光、生物多様性と地域知(ローカルナレッジ)。

・外来生物問題

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・色々な意見が聞けて有意義でした。

・多分野の考え方を知る機会になりました。ありがとうございました。

・金曜夜のこの時間帯に参加されている方々がとても熱心で、農業を自分ゴトとして考えていらっしゃることがわかって感激しました。

・初めての参加でしたが、色々考えさせていただけるテーマでした。

・地元の耕作放棄地をどのように継承していくかを考えるきっかけとなりました。自分の関心が農業の生産だけに向いていることが分かって、消費者や流通、生態系も考えていかなければいけないと分かりました。そのように考えると農業が難しい職業であるのだなと思いました。

・大規模農家(農業体?)の有機農業。27年前によくぞ!コウノトリの飛来、営巣、ヒナ誕生とスゴイインパクトで全世界に知ってもらいたいです!

・生きものが身近な環境で育った方のお話は、とても興味深かった。

・参加してよかった!

・消費者の手元に商品が届くまでの背景を理解すること、伝えることが今後農業を生業として維持するために重要だと感じた。

・有機農法、農薬を使わない生産という安易な事しか知りませんでした。自然のつながり、長い時間の努力、1000年産業。

・ローカルで考えるだけでなく、日本全体でどのような社会(自然も含めた)を築いていくのか、考えるべきなのだと思いました。その話ができてよかったです。

・おにぎり最高でした!ごちそうさまでした。駅で買います!

・参加できてよかったです。ありがとうございました。

・ためになるお話を聞けてよかったです。

・放送されることのない会で参加したかったです。何も知らなかったので。大学生や一般(働いている人/いない人)が参加して、皆で向上できるボランティア活動兼地域貢献を生物多様性のグループでしてみたいです。

・欧米では有機農業は「富裕層向け」というイメージがあります。貧困層には手が届きにくいという現実があり、こういう問題を解決することは必要だと思います。

 

第七回 いしかわ生物多様性カフェ報告

第七回 いしかわ生物多様性カフェ記録

開催日時:2024年9月20日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:井村 辰二郎さん(金沢大地・金沢農業代表)

テーマ:生物多様性と農業

参加者数:36名(一般参加者26名+スタッフ・関係者10名)

※今回は石川テレビによる取材がありました。

 

【話題提供】

 

 

「千年産業を目指して」という理念のもと、金沢近郊と奥能登地域で環境保全型農業を営み、地域の創成を目指している金沢大地・金沢農業。代表の井村 辰二郎さんから、生物多様性を守って活かす農業についてご報告いただきました。

井村さんは1997年に家族や周囲の反対を押し切って有機農業に転換(有機JAS施法前)しました。河北潟の周囲や能登の耕作放棄地を開墾し、10年間で40haから200ha規模を拡大したといいます。これは、日本の耕作放棄地の0.03%にあたります(現在は180ha)。豆腐・味噌の農産加工を開始し、六次産業化や一人農商工連携を実践されています。

 

井村さんたちは5つのミッションを掲げています。

1.日本の耕作放棄地を積極的に耕します
2.有機農業を通じて、日本の食料自給率の向上に貢献します
3.新規就農者等の研修、受け入れ及び育成を行います
4.農産業を通して、地域の雇用を創造します
5.農業を通して、東アジアの食料安全保障に貢献します
 

井村さんは、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)という考えを紹介し、高リスクと評価される種の絶滅の速度と窒素・リンの循環に対して、有機農業によって対応する必要性を指摘されました。有機農業は「地球規模で考え、足元から行動する」「地域で理解して、世界に向けて行動する」取り組みだと考えられます。

 

ところで、井村さんは、現在の金沢農業の農地が広がる河北潟周辺で少年時代を過ごしました。湿地帯が広がり、生きものが大変豊かな場所だったといいます。「生きものが友達」だった体験があったから、有機農業に取り組んだそうです。その河北潟は大きく姿を変えました。1963年に着工し1986年に完成した干拓事業が進められたからです。その結果、1390haに及ぶ大地が誕生しました。当初は米を作る目的で計画されましたが、減反政策が進められ、完成後は畑作を中心とした農業が進められています。その河北潟には、近年、絶滅危惧種で人間の手によって野生復帰されたコウノトリが飛来するようになりました。井村さんたちは、人工巣塔を立て、コウノトリの営巣を手助けするとともに、コウノトリのライブ配信を行っています。2023年には2羽、2024年には4羽が繁殖するなど、コウノトリの繁殖地として安定しつつあります。井村さんは、コウノトリの繁殖は「有機農家冥利」に尽きるとおっしゃいました。

 

その一方、イノシシの大群が出没するなど生態系は大きく変化しています。それに対して、有機農業者として何ができるか?

「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、2030年のミッションとして「生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとる」ことが掲げられています。現在、2030年までに陸と海の30%以上を保全することを目標とする「30by30」という取り組みが進んでいます。ただ法令によって守られている保護地域は限られていますし、大きく拡大することは難しいです。ではどうすればいいのでしょうか?保護地域だけではなくそれ以外の場所を守っていくこと、多くの人たちが力わ合わせることで達成を目指していくことが求められています。その方法としてOECMがあります。2010年に日本で生まれたもので、人びとの生業や民間の自発的な取り組みによって自然が守られている地域のことを指します。環境省は生物多様性の保全に貢献する場所を「自然共生サイト」と認定する仕組みを始めました。金沢大地さんは、自らの農地を自然共生サイトとしての認定を目指し、活動を始めています。市民のみなさんにもモニタリングに参加していただきたいとおっしゃっていました。

 

井村さんの報告から、まさに「地球規模で考え、足元から行動する」「地域で理解して、世界に向けて行動する」ことによって、生物多様性を守って活かす取り組みを学ぶことができました。

 

当日は、金沢大地さんのご好意により、有機栽培米によるおにぎりを提供していただきました。とても美味しかったです。ありがとうございました。

 

 

 

【対話】

対話の様子をお伝えします(金沢大学生命理工学類2年の上原 拓翔さんが作成したメモをもとにまとめました。上原さん、ありがとうございます)。

 

Aさん:有機農業、取り組んでいることの動機は、主に経済的なブランド力やビジネスだと思っていましたが、井村さんご自身の幼少期の経験が動機であるということにびっくりしました。プラネタリー・バウンダリーのお話がありましたが、窒素とリンが限界値を超え、地球の限界値を超えているということに関連して、遺伝子を改変した作物についてどうお考えですか。また、一般的な除草剤などはどう評価されているのか教えて頂きたいです。

 

井村さん:有機農業では、遺伝子組み換えの技術、種はもちろん、資材についても、使えません。しかし、それらが、人類にとって有益か有害かについての知見はまだ十分ではありません。その上で、自分は遺伝子組み換えをとらないです。表示されてないものがあることが問題です。消費者が選択するため、買わなければ、続かないため、表示されていないものがあるのが残念です。

某除草剤などは、植物が全部死ぬため、強力であり、障がいの原因になるなどの可能性などがあります。そのため、海外では禁止されていますが、日本では禁止されていません。街中などでは一部使われているが、日本ではそれを使うなと農家にいうのも難しいことです。実際、どうやって畔の管理をするのだということになってしまいます。そのぐらい便利なものではありますが、人にとってどうかという意見があるのは、承知しており、私も同じ立場であります。

 

Bさん(学生):お話の中で農業人口がだいぶ少なくなっていくということで、企業支援の観点から見たときに、何が一番必要なのかをお聞きしたいです。例えば、人なのかお金なのか情報なのか、企業同士のマッチングなのかお聞きしたいです。

 

井村さん:私は、日本農業法人協会という全国で会員が2100社ある公益社団法人の副会長理事と政策提言委員長をやっています。まさに今おっしゃったようなことを仲間と議論し、農林水産省などに政策提言するということを行っています。今おっしゃったことはすべてウェルカムです。資金も人も技術も必要です。しかし、今1番やろうとしていることは、自分たちがどうやって持続可能な経済活動を行うかを考えると、消費者に価値を認めてもらい、合理的な価格で買ってもらう努力をすることです。

経営として見たときに入っていくお金と出ていくお金だけなので、とにかく、消費者に価値を認めてもらうことと、いかに生産性を上げるかということと、経費を抑えるということをやっています。その手法として企業のノウハウや効率よくできるか資金キャピタルなどは必要となってくるため、その上でのネットワークの仕組みが出来ると良いと思います。

 

Cさん:生物多様性のある圃場はたいがい不便な場所です。圃場に行くと、山奥で、生産性が低く、山が迫っているような場所で、生き物が多いです。高齢化も進み、耕作放棄地も増えていて残念に思います。土地改良の政策で大きな田を作り、コンクリートで固めるものも増えています。生産性と生物多様性は相反するものではと思うのですが、そのバランスについてどのようにお考えですか。

 

井村さん:農業は経済活動でありますが、生物多様性との両立というものがあるが、それをやってきたのが、江戸時代までの里山里海だと思います。農業としての活動をしながら、保全をしてきましたが、ある時から、基盤整備などで急激に変わっていきました。今後、基盤整備で魚が登れる魚道を作る、藻がつきやすいものにする、等の整備はもっとすすんでいくのだろうと思われます。日本の里山里海という循環型の生業を確立してきたことに自負しており、きっと両立していけると思われます。そのためには、皆さんの声や科学者、知識者の声が集結することが必要です。

 

菊地:コウノトリ育む農法でもCさんが指摘する同じような問題がありました。圃場整備されていて条件のいい場所では有機農業が広がっていく一方、生物層が豊かですが条件が不利な場所は放棄されていく。この矛盾をどう考えていけばいいのでしょうか。

先日、日本鳥学会に参加して、耕作放棄地が生物多様性を向上させる可能性がある報告を聞きました。もちろん、色々と条件があります。農地開発の歴史が古いところは、農地が放棄されても生物多様性はあまり向上しなくて、開発の歴史が浅いところでは農地が放棄されると多様性増すといった話です。

ただ耕作放棄地の話は、生物多様性だけで考える話ではないと思います。一つの視点として紹介しました。

 

Aさん:1月に能登で大変な災害があった。多くの土地を失いました。たいへん不謹慎ですが、機会ととらえれば、能登半島を大きな農業ゾーンにしていくというのはどうでしょうか?偶然とはいえ、あえて言いますが、実際に大きな被害はありましたが、改造できないのでしょうか。

 

井村さん:石川県全体が被害を受けていて皆さん、大変だと思うのですが、能登全体で、6割の田植え、8割がそばなどなんらかの耕作ができるようになり、あとは2割というところまで来ました。今回の災害が半島、そして全部過疎地で起こったということが大きいです。日本には半島振興法という法律があります。

今、農林水産省などに私が言っているのは、20年ほど前倒しで農家の離農が進む可能性があるということです。日本中の過疎地で20年後に起こることが前倒しで行われることになり、みんなで解決策を見出せたなら、日本中に横展開できる第一例となるのではないかと思います。

ポジティブにとらえると、どのように能登を振興していくのかを考えると、能登には人がいないから外部から人を呼ぶか、ロボットにやらせるか、といったアイデアが出ると思います。今回のことでいろいろな知恵が全国から集まるようになったので、ぜひ、みなさんの力も貸してほしいと思います。

 

菊地:人によって、経験や知識は違いますが、それぞれに出せる意見はあります。消費行動として貢献することもできる。みんなで能登をどう再生していくか。

 

Dさん(大学教員):自然再生に関連して、再野生化、再自然化という言葉があります。能登の里山里海を守っていこうとしても人が足りないということになります。ヨーロッパでは自然再生ではなくて、自然の力に委ねて野生に戻していくという再野生化といわれる考えが広がっています。

能登の里山里海を今の規模で維持することは難しいため、人の手を入れる里山と、人が完全に手を入れていない自然を作る場所というようにメリハリをつけてやっていかないと全部粗悪なものとなってしまいかねないです。やはり、みんなで話し合いながら解決することが大切です。

 

Eさん:批判ではなく、自分の思いなのですが、再野生化は辛いと感じました。私は、山の方に農地を借りて有機農業を家族で細々とやっています。近年、人手が足りない、高齢化、イノシシとかサルの被害で、農作物を守り切れない状況になり、作る気力もなくなっています。何とかして、祖先が開拓した土地を守りたいです。人もお金もない状態だから、人が住めないような状態にすると人の心が壊れるから、再野生化には反対です。新しいスタイルで能登に外部の協力も含めて、何とかできないでしょうか。

 

菊地:戦前から戦後にかけて、日本全国を歩き回った民俗学者の宮本常一は「自然はさみしい、しかし人の手が加わると暖かい」 という言葉を残しています。少子高齢化が進むなか、これまで通り農地を維持管理することは難しくなると思いますが、やはり人の手が加わった自然というものに、私たちは親しみや安心感を持っているのかも知れません。

 

井村さん:野生に戻すということと人が介在することには違いがあると思っています。1億3000万から8000万の人口になるため、実際、再野生化も必要なのかと思います。日本のデザインをどうするのかという話で、国立公園は別として、昔からある地域を残していくか、住み分けをし、メリハリをつけるかというように、国全体の話です。これが能登で議論されているということです。そこら辺の議論はまだされてない感じがします。海外の例だと、チェルノブイリは野生になっています。

日本にどれぐらい管理されていない環境があるといいのかという議論がなされないと、地方が切り離されていくのではと思います。この国のデザインをどうしていくか。この議論において、農業などの一次産業が大事になるのではないでしょうか。

 

菊地:有機農業は思想として進められてきた経緯があります。井村さんお取り組みはビジネスとしても成り立つものですね。一般的に、有機農業は大規模化しにくいと思いますが、どのようにすすめているのでしょうか?

 

井村さん:全国有機農業推進協議会の最年少理事になりました。有機農業だから小規模とか大規模ということではなくなってきています。小規模の農地は、関東などに多いです。小さい業でもできるのは関東で、地方では、オーガニックものが食べたいという人は少なく、東京などに持っていかなければならなくなってしまいます。そのため、大小ではなく、消費者が求めるものを生産し、持続可能性があることが大切です。継承するためには、ある程度の規模が必要な時もあるのだろうと思われます。

 

Fさん:「ファーマーズビレッジ能登 石川県の小さな八百屋の挑戦、能登半島に地球が喜ぶ農業の一大拠点を作りませんか」 というクラファンの話。

 

Gさん:江戸時代の町村史、能登半島の話。塩作った板、鉄、まき、大都市、墨、漆、など生物多様性だけでなく、産業構造においても多様性がありました。産業を増やすことで成り立っていたということから考えると、小さい産業の組み合わせによる手もあるのではないでしょうか。

 

菊地:復興のモデルとして、色々な小さな産業の組み合わせていくことはあると思います。

 

Hさん:生物の調査、農業、山間地で人が入らなくなったところは、資産管理業的側面があるのではと思います。そこに金沢大地のような企業が入ればいいとは思いますが、企業では山間部は効率が悪く、稼げないと思います。手放したい人がいる中で、自然共生サイトなどのようなもので付加価値を付ければ農業の維持、生物多様性の維持ができるのではないでしょうか。

 

菊地:自然共生サイトが消費者の購買意欲につながるストーリーができればいいと思います。兵庫県豊岡市でコウノトリ育む農業をしていた同世代の農家さんは、「数値を示しても消費者に共感してもらえない。しかし、自分の田にはこんな生き物がいるよと伝えていけば、有機農業はいいと思ってもらえた」とのことでした。消費者に共感してもらえるストーリーをつけることが大切なのではないでしょうか。

 

井村さん:昔はみんな同じものを買っていましたが、今は消費者が考えて購入しており、多様性があります。今は、生物多様性に興味ある方に実際に来てもらう、生き物調査をしてもらうということなどの地道なことを通すことで30by30実現できるのではないでしょうか。

 

Iさん:井村さんのお話での「いきものは友達で日常だ」という言葉がいいなと思いました。

 

菊地:個人的には子どものころは生きものに関心なく、原体験がある人が羨ましいです。やはり原体験があることは大きいですね。しかし、そうでない人にもできることはあると思います。だからこそ、今、いしかわ生物多様性カフェという対話の場をつくっています。

 

今日は、色々な意見が出ました。少し意見が違うこともあったが、それも含めて、みなさんと対話をすすめ、一緒に考えていただければと思います。

 

 

石川県立図書館の生物多様生と農業に関連する本の紹介。いつもありがとうございます!

 

第七回 いしかわ生物多様性カフェを開催します(9/20)

第七回 いしかわ生物多様性カフェ

【話題提供者】井村 辰二郎さん(金沢大地・金沢農業代表)

【テーマ】生物多様性と農業

【日時】2024年9月20日(金)18:30〜20:30

【場所】石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F) ※対面のみです

【対象】どなたでも参加できます(参加費無料)

【定員】40名程度

【主催】金沢大学先端観光科学研究所 菊地直樹研究室

【共催】石川県立図書館、いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)

【協力】石川県立大学 上野裕介研究室

 

【申込方法】

参加をご希望の方は、以下の申込フォームから必要事項をご記入の上、お申し込みください。いしかわ生物多様性カフェは当日の受付も可能ですが、なるべく事前に申し込んでください。

https://docs.google.com/forms/d/1OxEuiBO-p8su2C0TmjfKHG1Qb9tx-xzA1BQa2K1Xmi0/edit

 

 

いしかわ生物多様性カフェとは

人の暮らしと生物多様性について、コーヒーなどを飲みながら、市民と専門家が対話する場です。対話を通して、生物多様性を活かした石川の未来を考える機会、生物多様性がテーマのネットワークをつくりたいと考えています。

当面は、2ヶ月に一度程度の間隔で開催します。

第六回 いしかわ生物多様カフェ アンケート結果報告

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数22名

回答者数:18名

回答率:81.8%

 

①年齢(回答数18)

 

10代:22.2%(4名)、20代:22.%(4名)、30代:0.0%(0名)、40代:11.1%(2名)、50代:27.8%(5名)、60代:11.1%(2名)、70代以上:5.6%(1名)

10代と20代の参加者が半数でした。

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数18)

 

 

男性:22.2%(4名)、女性:77.8%(14名)

 

 

 

 

③職業(回答数18)

 

 

会社員:5.6%(1名)、公務員:11.1%(2名)、教員:5.6%(1名)、自営業:11.1%(2名)、主婦/主夫:11.1%(2名)、パート/アルバイト:0.0%(0名)、学生:44.4%(8名)、無職:5.6%(1名)、その他:5.6%(1名)

学生が半数でした。

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが5.6%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが5.6%(1名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が5.6%(1名)、クチコミ22.2%(4名)、金沢大学のアカンサスポータルが27.8%(5名)、ダイレクトメールが44.4%(8名)、その他が5.6%(1名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数18)

 

 

初めてが0.0%(20名)、二回目が44.4%(8名)、三回目が11.1%(2名)、四回目が16.7%(3名)、五回目が11.1%(2名)、六回目が16.7%(3名)でした。

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数18)

 

大変満足:50.0%(8名)、満足:38.9%(7名)、どちらともいえない:11.1%(2名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・人それぞれ考え方も違うので刺激になった。

・活発にディスカッションできて、とても楽しかった。

・自然博物館の方と交流ができて良かったと思います。

・自分が興味を持っている分野について話し合うことができてよかった。

・テーマたくさんすぎて、なかなか絞れなかったけど、意見交換、他の人の発言参考になりました。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数17)

 

 

大きく変わった:29.4%(5名)、変わった:29.4%(5名)、どちらともいえない:11.8%(2名)、あまり変わらない:17.6%(3名)、変わらない:11.8%(2名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

・この2点に関してはあまり話題に上がらなかった。

・中学1年生と話すのはとても久し振りでしたが、イメージが大きく変わりました。

・観察の重要性を再確認できた。

・セミについて深く考えたことがなかったので、1つのことを深掘りすると色々出てくると思った。

・今まで考えていたこと、感じていたことの補強になったと思いました(肯定的な意味で)。

・漠然と思っていた問題に対する報告、対処等が見えてきた。若い人の具体的な企画案とかさすがと思いました。

 

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数18)

 

参加したいと思う:94.4%(17名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:5.6%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・石川県の食文化の変遷

・植物、自然環境

・何でも!

・生活と生物と科学。地球や生物にやさしい生活スタイル。実践できるアドバイスなど。

・石川県下の分類群の多様性を、分類群別に報告(話題提供)して戴いて討論する。

・狩猟

・文化に関する

・哲学、教育

・やはり生物多様ですね。

・環境、生きものも私たちも等しく生活しやすい美しい自然保護。意識づけ、子供たちの学びにつなげる。国産材利用関心を持ってもらう。

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・参加し、話し合う事で、実際に発展していく可能性があるかも、と感じました。

・今日もとても楽しませていただきました。ありがとうございました。

・セミについて、これだけたくさん話したのははじめてで、楽しかったです。

・今回参加した文化としての市民科学の討論は、はっきり結論を出すことができなかったです。

・観察が大事、生きものもゴミもヒトゴトも。

・もう1年たったのかぁと思うと感無量でした。菊地先生自腹を切っての美味しい和菓子の提供によって、ありがたさと1年たったことを大きくPRできて、さすが先生!と。机上に大きな白い紙が置かれたときは、「うぅ!」と圧迫感を感じてしまいましたが、年代、国籍様々な方々のきたんのない幅広い意見、お話をきくことができて、とても面白かったです。”

・ロードキルやカラス被害の改善にまず観察をするという視点がなかったので、話し合いが有意義だった。知識を得たり、問題について考える機会をどうするかが課題であると感じた。

・今回も有意義な会をどうもありがとうございました。ワークショップ、やはり良いですね。

・各グループの企画の完成度が非常に高く、市民科学の意義を感じた。

・知らない人とお話しできて楽しく過ごしました。

・少し会の雰囲気に慣れてきました。自分の意見を言い易くて良いですね。

・アイデアがたくさん出て大変勉強になりました。何か参加できるようなワクワク感がありました。

 

第六回 いしかわ生物多様性カフェ報告

第六回 いしかわ生物多様性カフェ報告

 

開催日時:2024年7月26日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

テーマ:みんなでつくろう!市民科学(グループワーク)

参加者数:33名(一般参加者21名+スタッフ・関係者12名)

 

 

タイムスケジュール

 

①市民科学と市民調査(おさらいとおかわり)(18:30-18:55)

 

②緩やかなアイデアだし(18:55-19:20)

 

 休憩(19:20-19:30)

 

③グループワーク(具体的な企画を考えます)(19:30-20:10)

 

④全体共有(20:10-20:30)

 

 

【①市民科学と市民調査】

 

 

前回に引き続き市民科学がテーマです。

グループワークによって、具体的な市民科学の企画を考えました。

 

まず菊地から、前回の話題提供者の一方井さん上野さんの報告を振り返り、市民科学と市民調査について簡単に説明しました。

 

市民科学について

 市民科学とは、「専門家や科学機関と共同で、またはその指示の下に一般市民によって行われる科学的な活動」のことをいいます(Oxford English Dictionary,2014)。

 ただ、定義はこれに限らず、さまざまなものがあります。

 前回、一方井さんから具体的な事例として、「雷雲プロジェクト(石川)」を紹介していただきました。石川県は全国でもとても雷が多い地域です。特に秋から冬にかけて多く雷が発生するという特徴があります。雷研究者が研究にきても、ちょどそのタイミングで雷が発生するわけではありません。そこで観測装置コガモ(CoGaMo)という観測装置を設置していただくという市民科学を実施しています。その結果、2021年12月30日に金沢市の5地点で雷雲からのガンマ線の検出に成功しました。英語の論文になっていますが、謝辞に市民科学に参加した市民の方のお名前も入っています。

 前回、上野裕介さんからは、スマートフォンのAIアプリを使った市民参加型の生物多様性調査について話題を提供していただきました。スマホアプリである生き物の写真を撮る→AIが自動で種を判定する→送信する→WEB上の地図に反映される→反映された情報は誰でも見ることができる、というものです。

 そうした調査として、City Nature Challengeという世界の都市で一斉に、生きもの情報をスマホで集める市民科学プロジェクトがあります。今年は4月26日~29日の4日間で、世界600都市以上を舞台に、iNaturalistというスマホの無料アプリを使って野生の生物観察を行い、種数や観察数を楽しく競う市民科学プロジェクトが行われました。その目的は自分の住む都市の自然を観察し、生き物の多様性をよりよく知るとともに、世界の都市と比較することです。iNaturalistは、世界で740万人が登録しています。主催団体は、ロサンゼルス自然史博物館とCalifornia Academy of Scienceです。

 金沢では4月27日(土)、「金沢城で生きものみっけ!」というイベントとして行いました。50人以上の市民が参加しました。

 

市民調査について

 一方井さんと上野さんが紹介した事例は装置やアプリを使ったものでしたが、私からは市民調査、特に質的な調査について補足説明しました。

 市民調査とは「何らかの当事者性をもった専門家ではない人びとが行う問題解決志向の調査活動」(宮内泰介, 2016)のことをいいます。市民調査は、市民を軸にしたさまざまな人びとの持ち味を活かした協働によって進めます。具体的な取り組みとして、たとえば人の話を聞いて、それを文章としてまとめる「聞き書き」があります。聞く人にとっても、語る人にとっても学びの場となりますし、人びとの歴史や暮らしを「物語」として共有できるようにする取り組みでもあります。

 また五感ワークショップという取り組みもあります。日本自然保護協会が進めている「ふれあい調査」を紹介しました。

1)目に浮かぶ風景

2)耳に残る音

3)鼻に思い出す匂い

4)肌によみがえる感触

5)舌に懐かしい味

 

 五感から「地域住民と専門家が協働で調査を行ない、地域の価値、生活知、思いなどを掘り起こ」す方法です。結果をレポートや地図の形でとりまとめ、データとしては扱いにくかった地域固有の価値を、定性的、定量的なデータとして活用、共有できるようにします。(NACS-Jふれあい調査研究会(2005)『地域の豊かさ発見*ふれあい調査のススメ【お試し版】』)

 

市民科学と市民調査については、以下の図を参照してください。

 

 

 

【②緩やかなアイデアだし】

 

市民科学と市民調査について、改めて情報を共有した上で、参加者に市民科学のアイデアを書いていただきました。

たくさん出たアイデアを4つグループにまとめました。

 

 

 

グループ①:人と野生動物のあつれき

 

グループ②:環境問題

 

グループ③:自然・生きもの

 

グループ④:文化やデータの共有

 

 

【③グループワーク】

参加者には4つのグループに分かれていただき、グループワークを行いました。

 

【④全体共有】

その結果を示します(私の院生がまとめたメモをもとに再現しました)。

 

グループ①:人と野生動物とのあつれき

 人間社会と野生動物あるいは生物との軋轢には共通するものがあるのではないでしょうか。クマが出るとか、ロードキルで交通事故が起こるとか、農業被害、そういった人間と野生動物との軋轢が発生しています。このことについて、私たちは本当にどこまで知っているのでしょうか。考えてみると、あんまり知らないんじゃないでしょうか。たとえば、法律、制度や対策もありますが、知らないから、なかなか対策が取れないじゃないでしょうか。ロードキルについて、制度の問題もある。

 そういった動物との軋轢を考えていく前に、そういう動物がどこにいるのかとか、どんな生活をしているとか、まずは私たち自身が観察することを始めたらどうでしょうか。このことを提案したいと思ういます。たとえば、iNaturalistというアプリを使うと、いろんなところに報告することができます。自分自身でも観察することによって、一つの生物の行動が、少しでも理解できるようになります。楽しみながら動物を観察する。対策も考えていくようになるのではないでしょうか。このことを提案したいと思う。

 もう一つは外来種。これは人の持ち込みです。

 つまり、私たち自身で観察をすること。観察することで興味がわき、もっと勉強しようとなる。まずは興味を持ちましょうということでまとめたいと思います。

 

グループ②:ゴミ問題

 まず、能登の海岸に、多くのゴミが漂着します。そのゴミを見てみると、日本由来のゴミが大体3割です。たとえば、地中海では、1970年代に海にゴミを捨ててはいけないというバルセロナ条約ができたそうなんですが、能登にも、日本海にゴミを捨てないという能登条約ができたらいいなと思いました。周りの国の人を動かすことは、市民のレベルではちょっと難しいですが、地震で世界中の人が注目しているので、もしかしたら可能性はあるかもしれません。

 もう一つは、ゴミの分別。外国ではゴミがいっぱいあるし、ゴミ箱がいっぱいありますが、日本はゴミ箱が少ないから捨てるところがないとか、場所によってルールが違うから分別がうまくできていないんじゃないでしょうか。分別をもっと大事にしてもらいたいと思います。どうやったらみんなが分別をこころよくできるかな。得るものがあるとすごくやりやすいのかなと思います。たとえば、ゴミポイント。お金がもらえるとか、賞品がもらえるとか、そういうのがいいなと思います。今、ゴミポイントはちょっと低いから、もう少し高くすると、もっと人の意識が変わってくるのかなと思います。

 あと、子どもに教育すること。能登では、海、ごみ、漁業といって、地球環境を守りましょうっていう教育が、小さい時からされているようです。子どもからいわれると、大人もちょっとやらなくてはいけないなと。外国の人にもゴミのことを知ってもらいたいから、教育するのはすごく大事じゃないかなと思います。日本に来た人にゴミの認識を高めてもらうためにゴミ教育をしていく。でも、面白くないとそのツアーに参加してもらえないので、アートにするとか、そういうことをしていたらいいんじゃないかなと思います。

 

グループ③:セミの市民調査

 どこでどのような種のセミがどのように鳴いているということについて話し合いました。

 まず、いろんな地域に住んでいる方の協力を得ることによって、市民調査の形でいろんな場所のデータを作ることができるのではないでしょうか。日時、場所、鳴き声の録音と写真から、ゼミの種が確定できます。

 次に、子どもたちの協力です。義務の要素を取り入れてやっていただくのもいいかもしれません。継続してもらえる取り組みとして、ポイントをつけたり、ポイント獲得の数で順位をつけたりとか、シェア機能をつけたりとかということが考えられます。あと、ポイント設計でデータの信憑性が上がるように、同じ場所で同じ時間に何日も連続してやってくれたらポイントが上がるとか、そういったデータの信憑性が上がるような提案もありました。

 

グループ④:地域の魅力・歴史の伝え方、研究者との交流

 プラットフォームをつくるという点からいえば、石川県には自然資料館がすでに存在しています。地域の情報を知るためのプラットフォームがすでにある状況で、このプラットフォームをどうやってみんなに普及させていくのか、について話し合いました。

 たとえば、県民メール、金沢市のラインとかがあります。ただ、それがそもそも広まっていないので、それを普及させるために何か手を打つ必要があります。あと、資料館に参加しているボランティアの方々の口コミとかをもっと幅広い世代に伝えることができるのではないか、といったことも話しました。

 最後、プラットフォームという点からすると、チラシ、メールというのも大事だと思いますが、本を出すことを提案したいです。ネットとか全然ない時代だったら、本のもとにいろんな情報を収集するというのが当たり前だったと思います。土地ならではのことを本にまとめて出してみるのも一つの提案になると思います。

 

 

石川県立図書館さんに関連する図書を集めていただきました。

 

 

追伸

 

金沢は和菓子文化が根づいた街でもあります。

今回はいしかわ生物多様性カフェ1周年ということで、金沢銘菓「くるみ」を用意しました。

 

 

今回の参加者は33名でした。テスト期間が間近ということが影響したのでしょうか、学生の参加が少なかったです。

あるいはグループワークは敷居が高かったのでしょうか。

 

第六回 いしかわ生物多様性カフェを開催します

第六回 いしかわ生物多様性カフェ(5/24金)を開催します。
 
第五回「市民科学のススメ−みんなで地域のことを調べよう」に引き続き、市民科学をテーマに開催します。今回は、グループワークで市民科学について考えてみたいと思います。
 
【テーマ】みんなでつくろう!市民科学
【日時】2024年7月26日(金)18:30〜20:30
【場所】石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F) ※対面のみです
【対象】どなたでも参加できます(参加費無料)
【定員】40名程度
【主催】金沢大学先端観光科学研究所 菊地直樹研究室
【共催】石川県立図書館、いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
【協力】石川県立大学 上野裕介研究室
 
コーヒーなど飲み物とちょっとしたお菓子を用意しています。
当日受付も可能ですが、なるべく事前に申し込んでください。
 
【申込】
https://docs.google.com/forms/d/1Pbe9y32nXV3aYF-kaprgnQ8cC9mRQh9gqUH9SeqQ_-k/edit

第五回 いしかわ生物多様性カフェ報告

第五回 いしかわ生物多様性カフェ報告

開催日時:2024524日(金)18:3020:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:上野裕介さん(石川県立大学)、一方井祐子さん(金沢大学)

テーマ:市民科学のススメ〜みんなで地域のことを調べよう〜

参加者数:55名(一般参加者45名+スタッフ・関係者10名)

 

【話題提供】

 

一方井祐子さんは科学・技術と社会の関係を研究している研究者です。その一方井さんからは、市民科学とは何か?そしてその具体的な取り組みについて話題を提供していただきました。

市民科学とは、「専門家や科学機関と共同で、またはその指示の下に一般市民によって行われる科学的な活動」のことをいいます(Oxford English Dictionary,2014)。ただ、定義はこれに限らず、さまざまなものがあります。一般的な科学研究では、研究アイデア→研究計画の立案→資金調達→データ収集→データ処理・分析→結果のまとめ→論文発表→アウトリーチという流れになります。市民科学は、主にデータ収集と処理・分析を担うものと考えられます。

具体的な事例として、「雷雲プロジェクト(石川)」を紹介していただきました。石川県は全国でもとても雷が多い地域です。特に秋から冬にかけて多く雷が発生するという特徴があります。雷研究者が研究にきても、ちょどそのタイミングで雷が発生するわけではありません。そこで観測装置コガモ(CoGaMo)という観測装置を設置していただくという市民科学を実施しています。その結果、2021年12月30日に金沢市の5地点で雷雲からのガンマ線の検出に成功しました。英語の論文になっていますが、謝辞に市民科学に参加した市民の方のお名前も入っています。

「みんなで翻刻」という災害資料や地域資料などの古文献をデジタルデータ化(翻刻)するプロジェクトについても紹介していただきました。色々な専門性を持った人たちが、共同作業を通して翻刻するものです。

こうした市民科学の目的として、第一に研究(科学研究への貢献)、第二に社会変革(課題解決や地域活性化)、第三に教育(自然や社会に関心を持つ生涯教育)があるといいます。

もちろん、市民科学には得意なことと苦手なことがあります。

得意なこととしては、データの収集、大量のデータの分析、専門家より高いスキルをもつ市民の発掘、稀な現象や貴重な生物の発見があげられます。苦手なこととしては、高度な専門知識が必要、大型機器や実験室が必要、複雑な参加手順が必要、要求事項が多い、繰り返し記録する調査です。得意なことと苦手なことを意識しながら、市民科学を進めて行くことが大事だと思います。

最後に一方井さんから、市民科学の10の原則を紹介していただきました。その中から当日紹介された3つだけをここに記します。

・市民が積極的に科学的活動に参加し、新しい知識や理解を生み出す

・職業的科学者も市民科学者も参加によって利益を得る

・市民科学者は、プロジェクトの結果や出版において、貢献を記載される

 

続いて生態学や緑地環境学が専門の上野裕介さんからは、スマートフォンのAIアプリを使った市民参加型の生物多様性調査について話題を提供していただきました。

生き物観察イベントなどが各地で開催されています。観察会で得たデータをまとめたい。そう思っていてもパソコンが苦手であったり時間がなかったりします。イベントには多くの人が集まりますが、保全活動の参加者はなかなか集まらないという問題もあります。貴重なデータを集めても、分散していて政策や活動に生かすことが難しかったりします。そうした悩みを解決するためAI生きものアプリによる調査について紹介していただきました。スマホアプリである生き物の写真を撮る→AIが自動で種を判定する→送信する→WEB上の地図に反映される→反映された情報は誰でも見ることができる、というものです。

そうした調査として、City Nature Challengeという世界の都市で一斉に、生きもの情報をスマホで集める市民科学プロジェクトがあります。今年は4月26日~29日の4日間で、世界600都市以上を舞台に、iNaturalistというスマホの無料アプリを使って野生の生物観察を行い、種数や観察数を楽しく競う市民科学プロジェクトが行われました。その目的は自分の住む都市の自然を観察し、生き物の多様性をよりよく知るとともに、世界の都市と比較することです。iNaturalistは、世界で740万人が登録しています。主催団体は、ロサンゼルス自然史博物館とCalifornia Academy of Scienceです。

金沢では4月27日(土)、「金沢城で生きものみっけ!」というイベントとして行いました。50人以上の市民が参加しました。

AIアプリのメリットとしては、自分が好きな場所・時間に生きもの調査ができることです。データ集めが楽しくなる仕掛けとなり、自然に親しみ、普及啓発や保全活動へとつなぐことができ、集まったデータはみんなで見たり活用することができます。さらに継続的な活動に広げていくために、令和版「みんなで作ろう!いしかわ生きものマップ」という取り組みを始めています。これ以外にも、AIアプリは外来種の分布地点の特定や獣害の現状把握などにも活用できると思います。

スマートフォンのアプリを使う生物調査によって、市民が生物に関心を持ちやすくなり、参加者が楽しく科学リテラシーを身につけやすいという利点があると考えます。

 

【対話】

対話の様子をお伝えします(私のゼミに所属する大学院生と学類生が作成したメモをもとにまとめました)。

 

Aさん:希少な生物の写真を撮ってSNSに投稿すると、正確な場所が公開されてしまいます。正確な場所までは明記しないようにしていますが、問題もあるとも思っています。

 

上野さん:生物多様性情報を共有する時、必ずその問題が出てきます。iNaturalistでは、すでにいくつかの対応策が試されています。一つは、国際自然保護連合(IUCN)が定める希少種については、自動的に位置情報を曖昧にする機能があります。日本国内でのみ希少種であるなど、この機能が使えない場合には、手動で位置情報を曖昧にするという設定を、投稿者自身が行うことができます。

 

 

Bさん:ガンマ線が出るような落雷は、規模が大きい落雷の時でしょうか。

 

一方井さん:雷はすごく身近な現象ですが、そもそも雷がなぜなるのかっていうのは実はよくわかっていません。一つの仮説として、ガンマ線がきっかけになっているという説があり、それを検証しようとしていますが、まだわかっていません。皆さんのお力で一緒に謎が解けるのかなと思いますので、ぜひ参加してください。

 

Cさん:仕事の関係で、ロード上に死んでいる動物、ロードキルの調査をしました。ロードキルについて、ちょっと気持ち悪いかなと思いますが、少しやってみたら、その動物が住んでいる環境がわかるじゃないのかと思います。

カラスが増えているという話がありますが、カラスはどこで巣を作っているのでしょうか。カラスの巣を実際かけているところを探してみましたが、春先だったら、大きな木にカラスの巣をかけている様子が見ることができます。

自分が普段過ごしていく中で生き物をいろいろ見る機会があるのかもしれないので、そういったチャンスを皆さんに活かしていただきたいと思う。

 

Dさん:ロードキルは大事な問題です。やりたくない人が写真撮るとかっていう勇気いりますね。

 

Cさん:通勤途中なので危ないですが、ある程度までは判別できます。大体タヌキが多いです。大きなものではイノシシも見たこともあります。その動物がいたんだよ、周辺の環境については非常に重要なデータになると思います。

 

Eさん:ロードキルに関して、鳥を見るのが好きなので、山奥に結構行来ますが、ロードキルは結構見ます。どこに連絡すればいいんだろう、どうすればいいだろうとずっと悩んでいました。

 

上野さん:位置情報を残す場合は、先のiNaturalistのようなアプリで記録するのは一つの方法。安全上の問題で連絡が必要であれば、道路管理者に相談すれば、管理者が分かると思う。一方で、ロードキルのデータがないと解決策を考えられません。ロードキルが発生する道路から集中的に対策していくべきだと思います。

 

菊地:イリオモテヤマネコなどの絶滅危惧種では、ロードキルのデータを蓄積していると思いますが、普通種ではそこまで行われていないでしょう。ロードキルのデータとして活用する市民科学は、一つのあり方としてあるかもしれません。

 

Fさん(学生):石川県によるクロダイの放流について。石川県では県が主体となってクロダイの放流が毎年行われているが、それによって、養殖カキの問題が起こっている。2023年の新聞記事では、養殖カキが40万個が全滅していたことがわかったが、県はさらにクロダイの放流を続けようとしている。生産者のためにも生態系のためにも放流はあんまりすべきではないのかなと思う。

 

上野さん:放流だけでなく、今温暖化で数が増えているので、千葉県や兵庫県など各地でクロダイの食害が問題になっています。一方で、クロダイは漁業対象種で、釣りの対象としても人気があります。適正なカキ養殖とクロダイの放流量をきちんと科学的に管理する、資源管理の視点からの分析が必要です。そのバランスは、科学的根拠に基づいて判断するべきだと考えます。

 

菊地:資源管理の話。データを取って、それがどんな影響を及ぼして、その影響が何か悪影響があるのか、それについてどう対応したらいいのか。科学的な手法を用いながら、議論したうえで政策を考えていくことが大事だと考えます。

 

Gさん(学生):カキの業者に対する賠償について気になります。カキとクロダイの生息地を分けることができないのかな疑問に思いました。

 

Hさん:そういう問題が市民からの問題提起になるじゃないのかなと思います。市民からのテーマの提起。求められているテーマを市民科学で取り組まなければならないじゃないのかと思います。

 

菊地:市民に研究を手伝ってもらう市民科学もありますが、市民が抱えている問題、どうしたらいいのかわからない時に、市民が科学を使う。これが市民科学の1つの重要な役割だと思います。

 

一方井さん:市民科学の議論でも必ず出てきている重要な話。市民科学は2種類があるといわれています。一つはトップダウン。専門家が問題設定をして、必要なデータなど、皆の協力を求めるものです。もう一つはボトムアップ。市民が主体となって、必要だったら専門家が知識を提供します。両方とも大事です。分けるのではなく、できるだけ一緒にするのが望ましいです。

 

Iさん(野鳥の関係者):どのアプリを使ったらいいのか、よくわかりません。

 

上野さん:生き物のプロジェクトでも、様々なアプリや、データベースがあり、統合しようとしても記録の仕方が全部違います。世界的には、1つにするプラットフォームが必要という議論が進んでおり、様々な記録項目に対応できるDarwin Coreというデータ共用のためのフォーマットも出てきています。一方で、それぞれのプロジェクトで、データの所有者の問題や倫理的な問題、どこまで情報をオープンにしていいのかといったことで意見が割れてしまい、共有できないという事例もあります。

 

菊地:自分たちで市民科学をしてみたいというアイデアがありませんか。

 

Jさん(大学教員):猫を探すアプリ。輪島市朝市通り周辺に、猫ちゃんを探すの張り紙がたくさんある。そういうデータベースで、自分の猫ちゃんを見つけるといいのかなと思います。

 

Kさん(学生):同じ地域に住んでいても、いろんな方がいて、いろいろ考えることがあると思うので、一か所に集めて、意見交換して、新しい知見を増やして、目に見えないものを共有したら面白いじゃないのかと思います。

 

Cさん:クマによる人身事故の話。石川県では、クマの出没情報をホームページで公開している。市民側が集まっている情報をどうやって使ったらいいのか。情報を公開するだけではなく、どう対処するのか。私たちも、その使い方を考えていかなければならないのかと思います。アウトプットの問題。

 

Lさん(県立図書館関係者):どういうふうにアプローチしたら皆さん情報をもらって、集めてくれるのかな、みんなに興味を持ってもらったらいいのかなということは重要だと思います。

 

Mさん:行政の人たちは、このことについて実際どう思っているのでしょうか。

 

Nさん:冬の雷は怖い、うるさいと思っていましたが、だんだん成長してくると、印象が変わりました。ロードキルについても、見方を変えると問題を感じる的ます。雷もロードキルも同じように、付加価値がある、ストーリーをつけるという視点が大事だと思います。

 

菊地:人間の見方によって、ネガティブに捉えたものや事柄がもう少しポジティブな形に変わるかもしれません。

 

Oさん(大学教員):市民科学は、かなり前から進められた取り組みだと思います。市民科学会議のようなものを作ったらどうでしょうか。こんな面白い話があるとか、これは優れているとか、そういうものがもっと広がっていくと、人々の市民科学に対する関心を引きます。

 

菊地:今日の対話を通して、市民科学のアイデアを出すワークショップをやってみてもいいのかなと思いました。石川県内、金沢、能登の問題に対して、市民科学のアプローチから、どんなことができるのか、何が必要なのか、どんな人が繋がっているか、そういうような具体的なことを考えていき、形にすることは重要だと思います。

 

 

今回も二時間では少し時間が足りなかったようです。参加者のみなさんは、まだまだ話したいことがあったようです。

具体的に市民科学を考える、提案する場をつくりたいと思います。

 

石川県立図書館で集めてもらった市民科学に関連する書籍。

 

いつもありがとうございます。

ページの先頭にもどる