第一回いしかわ生物多様性カフェ記録
開催日時:2023年9月29日(金)18:30〜20:20
開催場所:石川県立図書館食文化体験スペース
話題提供者:中村浩二さん(金沢大学名誉教授)
テーマ:生物多様性から考える、いしかわの現在と未来(総論)
参加者数:約50名(一般参加者40名+スタッフ・関係者10名程度)
まず私から趣旨説明。5分のはずが10分も話してしまいました・・・。
以下の三つの基本ルールのもと、対話を進めていきましょうと伝えました。
・誰でも参加できること
・誰でも発言できること
・発言を否定しないこと
話題提供者は、金沢大学名誉教授の中村浩二さん。
なぜ生物多様性が大事なのか?それは私たちにさまざまな恵み(生態系サービス)をもたらしてくれるからです。ただ、石川県では少子高齢化がすすみ人による管理が難しくなり、生物多様性の劣化が進んでいます。その解決を目指し、人材育成を中心としたさまざまなプロジェクトを動かしてきました。未来に向けて、①モニタリングと自己評価、②人材育成、③国内外への発信、④資金が重要であると提案されました。石川県をはじめとしたさまざまな現場で長年にわたって、人の暮らしと生物多様性について実践してきた中村先生ならではの、詳細かつ迫力のある報告でした。
話題提供を受け対話を開始。私の学生が作成した記録をもとに、対話の様子をお伝えします。
Aさん(能登マイスターOB):獣害問題が大変で、調査で電気柵が役に立たない状況であることが分析された。高齢化で設備維持が困難な状況です。祭りの伝承が困難な集落もあり、10年前から集落の衰退という厳しい現実に向き合っています。
Bさん:人の暮らしと生物多様性というテーマに惹かれて参加しました。自然が自然をコントロールしているし、人間の行動が自然をコントロールしている。生物多様性減少も見られる。遺伝子組み換え、農薬の使用によっても生物多様性が減少しているのか。人の暮らしとどう連携していくのか。自然に関心を持っていない人は自然とのかかわりをどのように思っているのか知りたいです。
Cさん(農家):過疎、少子高齢化の理由は高度成長期に国の政策の中で、核家族、減反政策のせいではないでしょうか。後継ぎがいなくなることを国が誘導している。親と子が離れると、地域のコミュニケーション・絆の衰退につながると考えています。
Dさん(高校生):女性がより働きやすい社会ほど、子どもが減少しているのではないだろうか。教育する立場の人間はSDGsを理解しているのでしょうか、伝えるときにどのようなことを意識しているのでしょうか?
Eさん(農家):有機農業20年以上取り組んできました。Dさんの問いに対しては、個人差があると思います。私は、昔から、環境に対して問題視していました。5年後からどんどん土壌が改善してきました。丈夫な作物ができるようになってきました。お金、知識がない高齢者でも何か貢献したいという人がいます。何ができるかと言えば、有機農業だけではなく、もっと簡単なことから始めることもできると思う。
Fさん(金沢大学院生):小学校の非常勤講師の経験があり、そこから言えることは、正直、SDGsはやっている暇がありません。教科書を終えることで手いっぱいです。生物多様性について、野菜が高い、マグロが通年食べられる。私たちはお金がないから安い方を買ってしまいます。お財布事情と生物多様性を考える気持ちの葛藤があります。
Gさん(大学教員):授業でも人口減少が問題といっているが、ネガティブにとらえるだけでいいのでしょうか?ポジティブに考えると、人口減少が生物多様性を良くしているかもしれません。人口減少で担い手が足りないと言っていますが、本当に担わなければならないものなのかどうか?たとえば、江戸時代はお祭りがシンプルでした。明治、昭和になると段々と派手になってきました。今後はスリム化していく必要があるのではないでしょうか?人口減少の中で、何を残していくのか選択する必要性があると思います。ロボットに任せるものは任せる。
Hさん:人口減少により、お祭りなどに女性が参加しやすくなっています。性別による区別が段々となくなってきました。女性も地域に入りやすくなってきています。今だからこそ出来ている状況があると思います。
Iさん(林業): ボランティアでは続かないので、自伐型林業をしています。自伐型林業は小さな林業ですが、美しい森をつくる活動でもあります。森と人をつなげていく活動をしていきたい。自伐型林業で本気のSDGsをやっているという自負があります。
Jさん(中学校教員):中学生に何か伝えようと思って参加しました。経済成長、環境問題、里山里海と、時代によって取り組むべき課題は変わってきています。10年前と比べて、今の教科書の方がSDGsなど環境問題に対するコンテンツのボリューム膨らんでいます。中学生の方がその問題に目を向けています。大人が悲観するべきではないと思います。戦後の荒れ果てているところから発展させた人々がいます。今生きている人がどうゆう風に生きていきたいかを考えることが第一歩だと思います。五郎島金時を選ぶという選択は、金沢の農家のことを考えることであります。大人が学び続ける姿勢が大事。
石川県立図書館副館長:県立図書館は知の広がりと多様性を重んじていますが、今回のカフェはその理念と一致する取り組みであると思いました。生物多様性については老若男女の多様な議論をすることが重要。多様な市民の議論により、明るい未来がひらけてくるのではないでしょうか。図書館にいろんな人が来てくれるのが嬉しい。高齢者の隣で若い人が一生懸命勉強をしています。無意識的にコミュニティが形成されています。昔からの知恵を伝えることが現役世代の義務だと思います。県立図書館の75%が能登ヒバで作られています。伝統工芸品もたくさん使用しています。こうしたことは行政の責任です。
中村浩二さん:少子化に対して予算を沢山出しても、本当に効果が出るのかは分かりません。もっとしっかりモニタリングする必要がある。たとえば、空き家をもっとしっかり実態調査する必要があります。分析して対策していく。そして、お金を使って人材育成。皆さんがどのような意見を持っているかが大事です。
井上尚子さん(いしかわ自然学校):まずは自然を好きになってもらうこと。
老若男女の方々のそれぞれの現場での経験や考えなどから、少子高齢化や日々の暮らしと生物多様性の関係などなど、対話がつながっていきました。人口減少が悪いことなのかという問いや、最年少の高校生から大人はSDGsとか言っているけど、本気で何かしようとしているのか?といった問いもあり、対話は尽きない感じでした。ちょっと時間が短かく消化不良だったかもしれません。
当初、定員は対話しやすさから20名程度としていましたが、関係者のみなさんのお力で、参加者がどんどん増え、結果的にはスタッフを含めて約50名という人数となりました。初めての試み、初めての会場ということで、参加者や関係者には、色々と不便をおかけしたこともあったかと思います。発言したくても発言できなかった人もいたと思います。今回の発言者は10名でしたが、もっともっと多くの人に話をしていただき、そのお話を聞いてもらいたいと思っています。思っていたものと違うと感じた人もいるかもしれません。
今回の経験を踏まえて、改善できるところは改善していこうと思います。
図書館ならではということで、生物多様性の関連図書を並べていただきました。手に取っていただく時間を十分に取れず、もったいなかったです。
当日のアンケート結果については、改めて報告します。
これからも、ゆるく繋がりながら、大事なことを話し合っていきたいと思います。
関係者のみなさん、参加者のみなさん、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。