ブックレット『グリーンインフラによる都市景観の創造−金沢からの「問い」』(公人の友社)刊行!
菊地直樹・上野裕介編(2019)『グリーンインフラによる都市景観の創造−金沢からの「問い」』公人の友社が刊行されました。
このブックレットは、私の所属先である金沢大学地域政策研究センター主催の国際シンポジウム「都市景観をグリーンインフラから考える−金沢市における活用と協働」(2018年8月31日開催)の主要な報告者が、シンポジウムの報告をもとに、一般向けに改めて書き下ろした論考を集めたものです。
1968年、金沢市は全国に先駆けて景観条例「金沢市伝統的環境保全条例」を制定しました。この条例以降、さまざまな政策をすすめ、人々の暮らしと一体となった都市環境が保全され、緑豊かな美しい街並みが整備されています。この金沢の大変先進的な取り組みが、最近国内外で注目されている「グリーンインフラ」という考え方と共鳴しているのではないか。あるいは金沢の取り組みから新たなグリーンインフラを創り提案することができるのではないか。この考えに基づいて、グリンーンフラの第一人者、金沢・石川在住の多様な分野の研究者、金沢市景観政策課、国連大学サステナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット、一般財団法人エコロジカル・デモクラシー財団との協力のもとシンポジウムを開催し、グリーンインフラの視点から都市景観を考えることを試みました。
このシンポジウムの特徴は、幅広い経験と知見、異なる方法論を持つ多様な分野の専門家、組織、市民との対話を実現したところにあります。シンポジウムは対話の場となったのです。
そして「金沢らしい」グリーンインフラを「問い」かけることにもつながりました。具体的には金沢の歴史的都市景観を構成する日本庭園や用水をグリーンインフラとして問い直すこと、その維持管理や新たな創生というテーマが見えてきたのです。組織を超えた柔軟なネットワークで多様な分野の専門知識や市民・行政の経験をつなげていくガバナンスをいかに創っていけるのか。まだ十分に調査ができているわけではありませんし、考察も不十分なところもあるかと思います。ただこのシンポジウムによって新しい視点が開かれてきたようにも思えます。
そこで「熱が冷めないうちに何か目に見える形にしよう!」と思い、急きょブックレットを刊行することにしました。2019年3月末の出版を目指し2018年11月頃から動き出しました。いくらシンポジウムの報告をもとにするといっても、本を刊行するにはあまりにも短期間です。でも著者のみなさんは、無理なお願いにもかかわらず、とてもいい原稿を寄せてくれました。無事に出版できたのは著者をはじめとする多くの方々のおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。
関心がある方は是非、手に取ってください。
1080円です。ちょっといいランチ1回分です。そう考えるとそんなに高くないですよね。
目次
はじめに(佐無田光)
第一部 グリーンインフラを学ぶ
・グリーンインフラとは(西田貴明)
・グリーンインフラを核にしたLivable Cityの創成(福岡孝則)
第二部 グリーンインフラから金沢の都市景観を考える
・都市型グリーンインフラと持続性:防災・環境・経済の統合(上野裕介)
・金沢グリーンインフラ・ブルーインフラの創出(フアン・パストール・イヴァールス)
・文化創造するグリーンインフラ:金沢の用水網の多用途性(飯田義彦)
・日本庭園とグリーンインフラ:相反か、相補性か(エマニュエル・マレス)
第三部 グリーンインフラから社会を創る
・グリーンインフラの順応的ガバナンスに向けて(菊地直樹)
付論:国際シンポジウム・エクスカーション報告(坂村圭)
おわりに(菊地直樹・上野裕介)