第三回 のと里山里海カフェ(2/26)参加者アンケート結果

2025年2月26日開催の第三回 のと里山里海カフェの参加者アンケートの結果です

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:18名

回答者数:13名

回答率:72.2%

 

 

①年齢(回答数13)

 

10代:0.0%(0名)、20代:23.1%(3名)、30代:23.1%(3名)、40代:7.7%(1名)、50代:30.8%(4名)、60代:15.4%(2名)、70代以上:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

②性別(回答数13)

 

 

男性:46.2%(6名)、女性:53.8%(7名)

 

 

 

 

③職業(回答数13)

 

 

会社員:7.7%(1名)、公務員:15.4%(2名)、教員:0.0%(0名)、自営業:23.1%(3名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:0.0%(0名)、学生:30.8%(4名)、無職:7.7%(1名)、その他:15.4%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(回答数13 複数回答)

 

チラシが15.4%(2名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが15.4%(2名)、県立図書館が7.7%(1名)、いしかわ自然学校が0.0%(0名)、クチコミ15.4%(2名)、金沢大学のアカンサスポータルが38.5%(5名)、その他が7.7%(1名)でした。

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数13)

 

一回目:61.5%(8名)、二回目:23.1%(3名)、三回目:15.4%(2名)

 

 

 

 

⑥満足度(回答数12)

 

大変満足:66.7%(8名)、満足:33.3%(4名)、どちらともいえない:0.0%(0名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・能登と佐渡のつながりについて詳しく知らなかったので、共通点が多く驚いたから。

・佐渡の見方が変わりました。住む面と研究する面において見方が異なることがわかった。

・トキの放鳥の話を初めて知りました。

・いろんな地域のいろんな職業の人が同じテーマで話すと、私が思いもしなかった質問や意見が出て、おもしろかったです。

・公務員としてトキ放鳥を契機に地域を活性化していく仕事に携わっており、豊田先生のお話は大変参考になりました。いろいろな考えの人がいる中で、広域で同じ目的に向かって取り組む難しさを改めて感じました。

・リアル!簡単ではない。しかしテーマが見えてきてる気がする。

・佐渡の自然保全の取り組みについて、いろいろ勉強になりました。

 

 

⑦参加して能登の里山里海について、考え方は変わりましたか(回答数13)

 

 

大きく変わった:15.4%(2名)、変わった:38.5%(5名)、どちらともいえない:30.8%(4名)、あまり変わらない:7.7%(1名)、変わらない:7.7%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・能登の里山里海をトキを含めて守っていきたいと強く感じました。

・研究者の話の深さ、切り口にとても深さを感じた。

・知らなかったことを知れたという感じです。

・知らないことが多く、情報の整理中のため。

・元々能登の里山里海をいかに次の世代に受け継いでいくかを考えているので、その大切さに関する考えは変わらないが、つないでいくのは難しい。

・昔には戻れない。しかし・・・ということ。

・放鳥だけでなく、トキが生息できる自然環境を守ことも大切です。「トキ認証米」は一つの例です。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数13)

 

参加したいと思う:92.3%(12名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:7.7%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・食と観光。なりわいと教育。

・地域に人や生業を呼び込むために地域で取り組むべきこと。

・のとの再生

・農山村地域の関係人口

 

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・とても良い会でした。ありがとうございました。

・トキについてフォーカスしたことがなかったので興味深い話で面白かったです。

・ゼミにも生かせるヒントをもらえました。ありがとうございます。

・発見事項がいくつもありました。ヒントをいただき感謝しています。

・あまりトキに興味はなかったですが、お話を聞けてよかったです。話がおもしろかったし、トキに興味がわきました。

・県内の取り組みなど知らないことも知ることができ有意義でした。

・能登と佐渡は「兄弟」ではなく「姉妹」なんだぁと思いました。

・様々な職種、年齢、バックボーンを持つ方が集まったからこそ、知れたことがあった。

・佐渡の取り組みは素晴らしいと思った。能登ではどうだろう。

・視野が広がりました。いつもありがとうございます。トキが色んな所に飛んでくる!

・理解が深まった気がします。

・自然共生は単に行政区域で区分することができないです。いろいろなアクターを考慮する必要があると思います。

 

第三回 のと里山里海カフェを開催します(2/26)

日時:2025年2月26日(水)18:30から20:30
場所:石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F)
話題提供者:豊田 光世さん(新潟大学)
テーマ:地域の未来を描く−佐渡と能登の交流を通して
定員:40名程度
対象:どなたでも参加できます(参加費無料)
共催:石川県立図書館
後援:世界農業遺産活用実行委員会
申込(当日参加もできますが、なるべく申し込んでください)
 

京都マラソン(2/16)走りました

京都マラソン 走りました。
 
3時間54分14秒(ネットタイム)
目標の3時間45分には、ぜんぜん届きませんでしたが、自己ベスト5分更新できました。
 
 
ちなみに初マラソンは金沢マラソン2022。タイムは4時間58分35秒。20キロ過ぎからボロボロでした。
 
前半は人が多すぎて思うように走れませんでした。アップダウンも多かったです。想定よりも遅いタイムとなってしまいました。
中盤は人がバラけたことと下りになったので少しスピードアップ。
鴨川の河川敷は狭くて密集するので思ったほどスピードを上げられず。ただ沿道が近く走っていて楽しい。
 
今回、はじめて35キロまで楽に走れました。序盤のペースが遅かったのがよかったのかなあ。このままのペースでゴールしたい。
 
しかし待っていたのは35キロの壁。京大前の今出川通の坂がキツかった。失速。
 
ゴール後、しばらくして両足の脹脛をつり、思わず座り込みました。
若いボランティアの方から車椅子を薦められましたが、コムレケアを飲んだら回復。ボランティアのみなさん、ありがとうございました。
 
5年近く住んだ思い出深い京都の街を堪能しました。キツかったけど楽しかった京都マラソンでした。
 
 
次はふくい桜マラソン(3/30)。
 
 

第九回 いしかわ生物多様性カフェ(1/31)参加者アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:23名

回答者数:18名

回答率:78.2%

 

①年齢(回答数18)

 

10代:0.0%(0名)、20代:38.9%(7名)、30代:0.0%(0名)、40代:11.1%(2名)、50代:16.7%(3名)、60代:11.1%(2名)、70代以上:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数18)

 

 

男性:66.7%(12名)、女性:33.3%(6名)

 

 

 

 

③職業(回答数18)

 

 

会社員:5.6%(1名)、公務員:16.7%(3名)、教員:5.6%(1名)、自営業:5.6%(1名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:11.1%(2名)、学生:44.4%(8名)、無職:0.0%(0名)、その他:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが5.6%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが44.4%(8名)、県立図書館が5.6%(1名)、いしかわ自然学校が16.7%(3名)、クチコミ5.6%(1名)、金沢大学のアカンサスポータルが50.0%(9名)、ダイレクトメールが33.3%(6名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数18)

 

 

初めてが27.8%(5名)、二回目が5.6%(1名)、三回目が5.6%(1名)、四回目が11.1%(3名)、五回目が11.1%(3名)、六回目が22.2%(4名)、七回目が11.1%(3名)、八回目が5.6%(1名)、九回目が5.6%(1名)した。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数16

 

大変満足:56.3%(9名)、満足:43.8%(7名)、どちらともいえない0.0%(0名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・「関係人口」という言葉をはじめて知った。そこから色々なことに思考を巡らせることができた。白峰の活動は楽しそうで良い!

・学生として中山間地域に貢献している方々の存在を知れた。

・The presentation has so many new interesting insight, I need more time to process it. I learned a lot about practical way to do rural community development today, which I’m looking for attending this seminar.

・以前に坂本先生の授業で聞いた話のより深い部分の話を聞くことができた。集落の維持や地域活性化という興味のある分野の具体的な活動を知れたのが勉強になった。

・関係人口の重要性と集落の維持について深く知ることができた。今後の自身の学びや研究に活かしていきたいと思う。

・場所(拠点)より人

・「水源地域での教育活動」とサテライトの役割について、いろいろ勉強になりました。

・サテライト、地域の人とのコミュニケーション構築、行政でなく大学生のパワーで成り立つ楽しみながら皆相互に学びを得て良い関係を知りました。とても分かりやすかったです。

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数18)

 

 

大きく変わった:11.1%(2名)、変わった:50.0%(9名)、どちらともいえない:22.2%(4名)、あまり変わらない:11.1%(2名)、変わらない:5.6%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・人口減少地域の維持についてはどちらかというと否定的であったが、中間的な考え方、とらえ方があることを知り、なるほどと思った。

・中山間地域のイベントに積極的に参加したいと思った。

・白峰の事例を知れて、とても参考になった。

・My frequency in this topic didn’t change much, due to I have same concern. However, Student volunteering program inspire my own project which also planned to gather scholar in community development project, my home country(Indonesia) may not have same cohensive stakeholder spirit like Japan, which become my own challenge to start project in Indonesia.

・地域を活性化させたいとき、どうしても観光に目がいきがちだが、それ以上に「関係人口」を増やすことを目的として活動をされていることに意外性を感じた。

・将来は都市圏で働くが、都市の大学に通っていれば深く考えることのなかったテーマだと思う。年ならではの多様性と人の暮らしについて考えていきたい。

・もともと生物の多様性と人の暮らしは重要と思っていましたので。

・あまり変わりませんが、関係人口という考え方について知識を少しですが深めることができました。つながりをつくることの重要性についての考え方は、これまでと変わらず本当に重要だと考えてます。

・良い意味で大体予想通りでした。白峰の人々がもっと排他的だと思っていたので、そこは意外でした。それもきっと坂本先生のお人柄とネゴシエーターとしての手腕がお見事だったとお見受けしました。大変勉強になりました。

・大学生が過疎地域でボランティアをして卒論を完成させ、その地域の関係人口になることは興味深いです。

・毎回いろんな違った方面から、いろんな活動をされている方の生の実際のお話が新鮮です。ルーティンワークばかりしているものとしては目からウロコで、私も何か役に立つ活動に参加できればと学ばせてもらっています。

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数18)

 

参加したいと思う:88.9%(16名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・気候変動(第4の危機)

・狩猟

・農村の戦略的撤退。むらおさめ。

・I’m interesting about the approach and method that develop to engage the community especially among students.

・自然とのつながり

・外来種問題

・人と人のつながり

・地震、災害後の過疎地域の課題のようなこと。

・生物多様性と地域文化(南方熊楠さん、神社合祀反対運動をきっかけに自然保護)

・自然体験活動とフィールド保全、手入れしすぎず安全なフィールドを子どもたちとつくる

・生き物や自然に関する踏み込んだ話題。

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・人びとがその土地に住み続ける、定着していくために、何らかの価値観の転換が必要になってくると思いました。一方で現在の教育課程ではそれと逆の価値観をインプットしているように思いました。

・おにぎりせんべいがなつかしく、おいしかった!ありがとうございました。

・大学生として自分にも貢献できることがありそうだと思った。

・中山間地域の未来を考える上で、合理的解決、関係人口、むらおさめなどあるが、地域として何が最善策なのか検討していくことの難しさを感じた。

・現場で生活したからこそ分かることがあり、研究における「現場」の重要性を感じられた。自分一人で活動を考えるのではなく、地域の人々と一体となって、地域をより良くするための活動を地域全体で作りあげるというのは難しいが、それを成立させていることに感心した。ありがとうございました。

・地域の人と関わるには、まず相手と打ち解ける努力が重要で、さらに相手のために行動することが大事だと思った。

・テーマとしては面白かったです。私の年齢的には、終了時間が遅いと感じたためです。20:00までの方がありがたい。私は能登出身で実家もそこです。参加者の方で当事者の方の発言がありました。本当に同感です。

・経済中心の社会といっても、人と人のつながりは段々と重視されるようになったかなと思う。しかし、どの程度のバランスがよいかはよくわからないと思う。

・人口減少は小学校の廃校と村の衰退のイメージなので、学校が残っているうちは、まだ大丈夫な印象。

・様々な大学が地域づくりについて考え、行動している姿をよく見ますが、今回のお話では、その面について詳しく伺うことができて、とても参考になりました。

・とても興味深くお聞きすることができました。坂本先生の河川に関するお話もお伺いしたいと思いました。

・関係人口が定住人口に移行しない問題をどう解決すればいいですか?

・坂本先生のお話、とても分かりやすく拝聴しました。大学生のパワーすごいですね。オープンな地域の人とそうでない地域があるのでは?と思いました。一過性にならない様、ずっと交流が続くことが望ましいですね。

・現地で活動した研究者の話が聞けてよかったです。

 

いしかわ生物多様性カフェがテレビ番組(2/15)で取り上げられます

石川テレビの「ふれあい空間いしかわ」という番組で「いしかわ生物多様性カフェ」が取り上げられます。
 
放映日時:2025年2月15日(土)11時5分〜20分
 
第七回(生物多様性と農業)と第八回(里山を核とした多角経営)の様子が放映されます。
 
石川県内の人しか見れないと思いますが、よければご覧ください。

第二回 のと里山里海カフェ(1/10)報告

開催日時:2025年1月10日(金)18:30〜20:30

 

開催場所:石川県立図書館研修室

 

話題提供者:宇都宮 大輔さん(珠洲市自然共生室)

 

テーマ:里山里海が核となる地域を目指して−珠洲市の取り組み

 

参加者数:41名(一般参加者32名+スタッフ・関係者9名)

 

 

 

【話題提供】

 

話題提供者である宇都宮大輔さんは、金沢大学で花と昆虫の関係をテーマに博士号を取得したのち、金沢大学の人材育成プログラムの教員スタッフとして珠洲市に赴任しました。2015年から珠洲市自然共生研究員を務めています。

 

宇都宮さんを招き、「里山里海が核となる地域を目指して−珠洲市の取り組み」というタイトルでお話ししていただきました。宇都宮さんからは、珠洲市における里山里海の現状、里山里海を活用しながら保全していく取り組み、市民参加型の調査、地震と豪雨災害の現状と地域の知恵などについて話題提供していただきました。

 

以下、宇都宮さんの話題提供の要約です。

 

里山里海からの恵み

 里山里海は人の生活にどうしても必要な「自然の恵み」が得られる場所であると考えています。里山里海をどうやって守っていくのか、どうやって維持していくのか、こういったことがとても大事であると考えています。

 では、みなさんが感じる「自然の恵み」とはどのようなものでしょうか。たぶん、多くの人は物質的な恵みがすぐ思い浮かぶと思います。食べるもの、水、木材などなど、もともとは里山里海からもらっていたものを使って作ったりしています。もう一つは精神的な恵みと思っています。きれいな景色を見たり、海水浴をしたり、ホタルを見に行って癒やされたりリラックスしたり、楽しむ場所もかなり提供しています。

 いろいろな恵みをもたらしてくれる里山里海は、生活に必要な物を得るために重要な場所ですが、ただ得るだけではなく管理しながら利用してきた場所だと考えています。利用方法や管理方法の違いによって、多様な場所、環境が混ざり合っている景観です。

 

里山里海の維持管理

 たとえば森林の利用と里山林の形成について考えてみましょう。ほとんど手が入ってない森は照葉樹林が多いです。それを利用し始めると木を切って、次にナラ類が優占していきます。二次林という言い方をしています。10年から30年の周期で伐採して、うまくサイクルを回していけば維持管理できますが、過剰利用するとはげ山になっていきます。林の生産能力以上に人がものをとっているということです。何もとれなくなって、置いておくとマツが生えてきて、アカマツ林になってきます。マツタケが採れると思うかもしれません。実際、珠洲でもつい最近までは、マツタケが非常にたくさん採れています。アカマツ林を経て、そのまま置いておくとナラの二次林に戻っていきます。このように人がどのように使うかによって、どういう状態になるのかが決まる。これが里山里海の特徴だと思います。

 歴史的に考えると、さまざまな産業とのかかわりが非常に大きいです。珠洲の場合は瓦の産業がつい近年まで行われていました。塩づくりもあります。共通するのはどちらも大量の薪が必要だということです。

 人が使うことが、里山里海にとっては非常に大事ですが、人間の活動だけでは里山里海は維持できません。もう一つ主役が生きものです。いろんな種類の生きものがたくさんいると自然の恵みをもたらす仕組みが維持されやすくなると考えられています。人間の活動と生物多様性の二本柱で里山里海が支えられているのです。

 現在、人間の活動の話は大きく変化しています。たとえばエネルギーは、薪や炭、天然の油を使っていましたが、石油由来のものになってきていますね。その場でとれていたものを使わなくなっています。人の生活が変わっていくと、里山里海とのかかわり方も変わってきます。それによって能登の里山里海は良くなるのでしょうか、悪くなるのでしょうか。

 社会的な変化もあります。だんだん里山里海と人が分断化されつつあると考えています。一番分かりやすいのは、一次産業に携わる人が減っていることです。かつて小さい田んぼがたくさんあったのですが、それを整理して1枚の大きい田んぼを作る整備事業が進んでいます。これによって農業を続けたい人に農地が集約されて規模も拡大しやすくなっていますし、農作業の効率化も進んでいます。排水路もしっかりと作って田んぼを乾きやすくする取り組みも進んでいます。その結果、2メートル以上の深さがあるような場所に水路が結構できてきます。そうすると、もともと田んぼと水路を行き来していた生きものがなかなか生息できないという課題が出ていると思ってます。

 もう一つは、集落全体で見ると農業に携わる人が減っていきます。数人の大規模の農家さんに農地を集めて安定化させる。集約化すると、ある人にお願いという形になります。たとえば水路の維持管理は、自分にも関係があってメリットがあって、やらないといけないということでしたが、農業から離れてしまうと「私の仕事ではありません」という人も出てくるかもしれません。どんどん集落活動とかがやりにくくなったり、里山里海と人との距離ができるっていう原因の一つになりつつあると思っています。

 このような人の活動の変化に対応していく必要があると思っています。人と里山里海を継ぐ」、継承するためには人を育てて、いろんな人と情報や知識を共有しながら何かをしないといけない。やりっ放しではなくて、確認と考察が大事になると思っています。こういう視点を持って地域でできることをやると、里山里海の状態も良くなっていくと思っています。

 

珠洲市の里山里海について

 珠洲市の面積も高齢化率も世帯数も人口も数字を挙げれません。実は地震の後、今書ける数字がないんです。行政で持っている数字はありますが、暮らして生活していると、世帯数にしろ人口にしろ高齢化率にしろ、数字と実感とはだいぶ差があります。人口は私の住んでいる地区で残っている人が6割ぐらいです。高齢化率は52%らしいんですが、これもかなり上がっているのが現実と思っています。

 半島なので海に囲まれています。海と山が近いです。高い山がありません。大きな川もありません。平地も少ないです。このような特徴のなか、人々がお米を作ったりいろんな工夫をして生活をしてきたというのが能登の能登半島にある里山里海の姿だと思います。

 縄文時代の遺跡も残っているように、ここでは人がずっと暮らしをしてきました。塩づくりとか、山の中にはたたら場の跡があったりします。今も珠洲焼もありますが、焼き物も作られてきました。色々なものを作りながら、山を利用しながら今まで生きてきた。海のほうも干物を朝廷へ送っていたという記録があります。

 大きな川がなくて狭い平野でも、何とか米を作りたい。そのためのため池をたくさんつくってきました。珠洲だけで218、小さいのも含めると800は超えるという話も聞いております。こういったものを維持するための共同活動を営んできたわけです。

 

珠洲市での取り組み

このように人が手を加え続けてきたことで残ってきた環境には、希少な生き物も残っています。トキとかコウノトリが飛来する環境が能登には残っています。能登・珠洲の里山里海は、色々と評価されてきました。能登半島国定公園や世界農業遺産などがあります。まだまだ維持することで精一杯という状況なので、認定されて劇的に良くなったわけではないのですが、これは大事にしたいという人が少しずつ増えてきていると思います。

 里山里海を保全していくために珠洲市が取り組んできたことを年表にしたものです。2007年に金沢大学の人材育成プログラムがスタート、2011年に世界農業遺産に認定、私の所属する珠洲市自然共生室は2013年に設置されてます。自然共生室ができてから、さまざまな計画を作ったり条例を作ったりしています。珠洲市としては里山里海を次の世代へ引き継ぐために、珠洲市生物多様性基本条例を制定しました。条例とセットで活動計画を作っています。この活動計画は里山里海がベースです。里山里海を保全することが生物多様性の保全につながるということで、里山里海をしっかりと利活用することを計画で立てております。

 他にも個別の活動で取り組んでいることがあります。人材育成プログラムは、能登里山里海SDGsマイスタープログラムという名前で続いています。能登の里山里海を今後活かしてPRしていける人を育てることが大きな目的です。17年ぐらいやって、修了生241名います。能登だけではなくて東京から通った人とか金沢から毎週通った人もいます。能登とつながりながら能登のために何ができるかを考えたりしています。外から支援してもらって里山里海を使う方法を一緒に考える機会もあります。珠洲市内の廃校となった小学校の校舎が拠点になっております。珠洲市も運営費を半分出して大学と折半しています。

 この人材育成プログラムは大人の人向けですが、より下の世代の人材育成も大事です。珠洲市では、小学校の3年生の時に必ず「珠洲の里山生きもの観察会」を経験しています。10年以上この事業をやっていますので、今年の新成人ぐらいからは経験あると思います。早いうちに田んぼとか里山へ行って自然と触れ合う機会をつくることが狙いです。学校の授業の中に入れてもらって、野外に子どもたちを連れていって、2時間ほど外で生きものを捕って、こんな生き物がいたんだっていうのを見る機会をつくっています。

 観察して終わりではなく、まとめ授業を1回行ってます。何が見れた、田んぼと川ではどんな違いがあるのか。整理した上で自分たちが気付いたこととか、興味を持ったこと、考えたことを小学校3年生のクラスを集めて年末に報告会をしています。2013年から行っていますが、確認される種類が増えています。300種類に届きそうなぐらいの生きものが田んぼや田んぼの周りの環境で見つかっていますし、49種類はレッドデータに載っているものになってます。そういうことにも小学生に気付いてもらえる機会になってます。

 地区や集落で里山里海をどのように保全していけるかについて検討しています。自然の恵みを持続的に得て、集落の活性化を図ることを目指しながら、地域にどんな資源があるんだろうか、どんな情報をお年寄りたちが持っているのか、そういったことを地図に落としたりして見えるようにして、集落の人で共有しながら、次にすることを考える機会をつくり始めています。

 トキの生息環境を整えたいという地区もあります。2010年頃、佐渡からトキが飛来しました。その地区に、熱烈なファンが生まれまして、その人が引っ張って活動が進んでいます。ただトキっていうことだけにこだわって、おトキさまになっては困るので、あくまでトキは地域の生物多様性の豊かさを象徴する種類の一つという位置付けで活動を続けています。地元の地域づくり団体だったり、近くにあるNPO、里山里海保全に取り組んでいるNPOなどと一緒に相談しながら活動をしています。環境整備だけではなかなか続かないので、田んぼでできたお米を高く売ろうという取り組みも始めていいます。

 石川県のほうでは、トキの放鳥を目指した取り組みが進んでいます。モデル地区を設定しています。モデル地区での活動を紹介します。

たとえば魚道を付けてトキが生息しやすい田んぼにする。餌であるドジョウが増えるような環境づくりをやっています。その結果を調査して確認しています。難しいのは畔に除草剤を使用しないことです。農家さんが嫌がっています。草刈りは誰がするんだと。今までやってきた経緯もあるので頑張るけれども、お米を売って稼ぐような形で還元していかないと、現実問題として続かないと思っています。

 モデル地区での生きもの調査ですが、決まり事を相談しながら決めて、田んぼ1枚をこのように調査しましょうねっていう形でやっています。水路で定点的に調査をしています。地元の人が続けられるような形で調査をすることが大事だと考えています。

 2023年5月5日にも珠洲は地震がありました。その後調査したらドジョウはしっかり捕れたんですね。2024年に地震が起きて、最近調査した時はドジョウ1匹しか捕れなかったんです。何が理由かっていうのは分からないのですが、ずっと続けていると何か異常があったとか、そういうことに気付きやすくなると思っています。そこから次何をしようかと考えるきっかけにもなります。調査は地元の人とやることが大事と思って今も続けています。

 

市民参加型の調査

こうした市民参加型の調査として、もう一つやっていることがあります。ため池の状況を把握する調査はずっとされていませんでした。せめて登記されているため池については調べようと調査を始めています。調査を始めると、実は約3割ぐらいはたどり着けなかったんです。もう水がない状況が出てきています。管理されている状態とは、一応草刈りをしているなど、地元の人が来て何か作業をしている形跡があるかどうかをみています。十分管理されてるため池は半分以下でした。ほったらかしの池が結構増えてきています。そこで生きもの調査をすると170種ぐらいは、ため池から見つかっているんです。外来種のアメリカザリガニも新しく生息地が見つかったりして、広くやったことの意味もあると確認していますが、継続的に進めていくことに悩んでいます。

 手助けしてくれるNPOもあり、人手が欲しい時に活躍してもらっています。NPOがあるおかげで調査もできますし、保全活動という形でキノコ栽培だったりもしていますし、地引き網を作って定期的に海のほうの調査もしようとしています。こういうNPOがあるのは非常に助かっています。

 

能登半島地震と能登半島豪雨

 海岸が隆起しています。現地に行くとかなりひどいことがすぐ分かります。漁港に水が全くなかったりしています。

 ため池でも地割れが入ってます。改修が必要ですが、たくさんのため池が同じような状況なので順番待ちがあり、すぐには進んでいかない状況になってます。豪雨の後、ため池の堤のてっぺんすれすれまで水が来てました。越水して堤がえぐられたところもあります。対策をどうするかってなると、工事が間に合ってないという現状があります。

 取水、あとは用水の被害ですね。地面が動くとパイプラインは弱いです。すぐに分断されます。大規模な構造整備をしているところは、ほとんどがパイプラインだけになってます。地震が起きて分断されると、すぐに水が来なくなります。結構深刻です。ある地域では80カ所以上分断されてるのが見つかりました。確認する作業がとても大変です。元から栓を開けて、最初に吹き出したところを止めて、それでまた栓を開けて、また次吹き出したところを探すという、そういう地道な作業をずっとやって修理していく必要があります。かなり手間がかかります。

 豪雨の後の田んぼですが、田んぼだと分からないような状況ですね。ここは子どもたちが毎年生き物観察に来てた田んぼなんです。もう木と土砂で埋まってしまって、来年どうしようっていうところです。川が氾濫したところはもうほとんど一面こういう状況です。収穫目前だったんですけど、災害が起きてもう稲ごと埋まってしまったところもあります。なかなか土砂の撤去も難しい、すぐには進まなくてこういう状況になってます。

 海のほうは地形が変わったりして地震では、素潜りする人なんかは潜ったところが昔と違うという話をされたりして、漁場が全然変わってしまったという話があります。豪雨の被害はないのかというと、実は川からどんどん土砂が出ています。珠洲では冬場は海草がたくさん採れるのですが、やはり泥をかぶって商品にならないということで困ってるという話も聞いてます。いろいろな種類の海草をいろいろな食べ方をする文化があるのですが、人が流出していて、きちんと継承できるのか、今心配され始めています。

 たくましい農家さんなんかは、工事を待つんじゃなくて自分で何とかしようっていうことで、水を引いた農家さんもいます。なぜこれができたかというと、ため池と昔使ってた用水路が残っていたからです。この2つがなかったらできなかった話です。ため池にも水が残ってて、この用水に水が来るようにさえすれば、あとは工夫すればパイプで田んぼに水が引ける。これを自分たちで工事してやってしまう、そういうたくましさが能登の人にはあるとすごく感じました。でも、整備してパイプラインがあるところは、なかなかこういうことはできないっていう状況になってます。

 

まとめ

 今後に向けてですが、大きい災害ですぐに復旧とか復興はできないということは、みなさん分かっている状況です。今しかできないこともやはりあるので、それにも注目をする必要があると思います。

 一方で、今まで取り組んできたことをやめていいのかっていうと、続けることは非常に大事で、人が少なくなっても何とか、どうにか続けることができれば、それが発展して国の取り組みになっていく可能性があるなと思っています。そうやって続けたりしていくと新しい考えが入ってきたりします。外から来た人はこんなこともできるんじゃない、こんなふうにしたらどうって言ってもらえるんですね。やめて何も諦めてしないと、そういうつながりってなかなか生まれないなと思ってます。

 災害が起きるとやはりみんな下を向いて、もう何もできないって最初はなります。それをずっと思ってても仕方がないので、何とか復旧とか復興を考えるのですが、その時にやはり新しい取り組みも入れるチャンスじゃないかなと思っています。今までのやり方だと、なかなか新しいことに踏み切れなかったんですけども、何かやらないといけない、地域を残すためには何か次、手を打たないといけないっていう時には、やはりちょっと新しいことも検討する必要がある、検討できる余地があるんじゃないかと思っています。

 

 

 

【対話】

 

Aさん:石川県庁の縦割りによって、いろいろな情報が県民のところに届いてないという気がします。県民目線でやっていただきたいです。

 

Bさん:このカフェは楽しみに時々参加させていただいています。

 宇都宮先生のお話、とても素晴らしくと興味深く聞かせてもらいました。地域の方が積極的に参加する姿勢に少し驚きました。地道な活動が進んでいると思うのですが、もっと大きな力を手にされるにはどうしたらいいんでしょうか。たとえば、お金を呼び込む、経済活動を呼び込むような努力をまだまだしていかなきゃいけないんじゃないかなと感じました。どうお考えか聞かせていただけたらと思います。

 

宇都宮さん:ありがとうございます。経済活動をしていかないとどうしても人が離れやすくなるのは事実だと思ってます。

 ただ、一方で能登の人の気質として、お金もうけをし過ぎることは悪であるという感じも実はあります。助け合いながら一緒にやることは、非常に大事なところです。そこを外してお金もうけの話をしてしまうのは、人のつながりがちょっと危うくなるなと感じています。できれば経済活動、大きい活動になっていけばいいと思いますが、その土台になる部分を壊さないようにしないといけない難しさも同時にあります。したがって、PRしてお金がどんどん入ってくればマルっていうわけではないというのが正直なところです。

 そういう意味でも、やっぱりいろんな人に声をかけて、時間はかかるし、最初は小さい活動が多いんのですが、そういうところを地道にやっていくことが、特にこういう災害の後では大事と感じています。

 

Bさん:ふるさと納税の返礼品としてのお米のブランド化とか、とってもいいアイデアだと思いました。さらなる発展を祈っております。ありがとうございました。

 

宇都宮さん:ありがとうございます。ぜひ、興味があればふるさと納税の珠洲市のところをのぞいてみてください。

 

Cさん:元里山里海マイスターです。大変な貴重なご講演、ありがとうございました。

 ドジョウの養殖がトキを絡めた話になりますが、トキに食べさせるだけではなくて、人間が食べるのもいいと思います。ただ、それで一もうけやるよとなると、今の話もあったようになかなか難しい。やっぱり分かち合うっていう形、観光へ持っていくとか、いろんな形で人がつながれるような、一つの資源を分かち合えるような環境づくりはどんなものかと思ったのが一つです。

 それから、芸術といった文化的なものをこれから広めてこうという観点を持っていましたが、今はネットワーク時代ですから、大きな回線を通すぐらいでないと、発信力は落ちてしまうと思います。

 もう一つ、能登空港をどのように使っていくかもありますよね。穴水と能登空港をつなげるぐらいの勢いがあってもいいと思います。そういうとこまでしないといけないかなと思っています。どうでしょうか。

宇都宮さん:ドジョウの話は養殖をしているわけではありません。自然に増える環境をつくっていまする。ドジョウさえ増えればいい、それをトキが食べさえすればいいではなくて、ドジョウを含めて田んぼを利用する生きものが増えていく取り組みをしています。もちろん増えたらドジョウを食べようねっていう話はしてましたし、タニシもたくさんいるのでタニシも食べる文化は残ってたらしいので、そういうのもやろうねって言っていました。

 発信力については珠洲だけではなく、能登全体で少し課題かなと思っています。珠洲でも個別でやってる人は結構いらっしゃるんですよね。でも人が限られている。だから、ここにアプローチすればいろんな情報があるのが分かるものを整備するだけでもだいぶ変わるのとは思っています。

 インフラについては必要だと思います。インターネットにしろ何にしろ、田舎のほうに整備してほしいと思ってはいます。

 もう一つ、付け加えさせてもらいます。田んぼの話もしましたが、今の先端のインフラだけを考えるのではなくて、今までどのように維持してきたかというところも見直して、必要なものは残していく。どれか1つにすると、やはり災害の時に非常に弱いというのは実感しました。この転移ついては少し工夫する余地があると思っています。

 

菊地:今日のお話だとため池は地域のインフラですよね。それがいろんな形で放棄されたり、手入れが行き届かなくなってしまいました。地震で被害を受けましたが、今日の宇都宮さんのお話の中で、ため池をうまく活用しながら田んぼに水を入れることができる取り組みは、パイプラインみたいな近代的なインフラが軒並みやられた中で、古くからあるインフラが逆に役に立ったという例もあるということだと思います。このことから、選択肢をいろいろ持つことが大事だと学びました。古くなったものが全て駄目ではなく、長く続いたものは何らかの残る理由というのもあると思います。そういうものを活かしながら現代的な技術も使う。ハイブリッドみたいなのを考えたというのが今のお話でしょうか。

 

宇都宮さん:まさにそのとおりだと思います。

 

Bさん:ロマンがありますよね。昔の技術も使うし、今のやつも使うっていうのもロマンチックなことですんでね。

 

菊地:なかなか楽しくないとモチベーションが続かないので、何かそういう発見したりとか、いろいろなものを創造するという話でしょうか。

 

Bさん:ドジョウの養殖は、商業的にやろうと思ったら難しい。ドジョウが増える場所をつくっていきか、自然と人間とトキが共生できる環境が生まれると思います。

 

Cさん:ちょっと楽しくない話です。私は能登の山がずたずた、がたがたになっていると思います。能登には70基の風力発電があります。本来は回っていましたが、今は60基がストップしたままになってるんです、この1年間で。修復しようと山へ上がるにも山道が寸断されてたりしてもう上がれないんだろうなと。よく見ると崖崩れがあちこち起きたりしますよね。

 

宇都宮さん:はい、おっしゃるとおりです。どこに損傷があって、それを直すのにどれぐらいかかりそうかという査定がようやく終わりそうな状況です。これからなのかなというところです。遅れてると思います。風力発電も、止まったままのものが目につくのは事実ですね。

 

Cさん:山道ががたがたで上がれないんで、トラックも上がれない、軽トラも上がれないんで修復できないんですよね。

 

宇都宮さん:その最たるものがごみ処理場です。処分場はどうしても山の中が多いのですが、半年以上はごみの回収がなかったんですよね。道が直らないと運べないから回収できないという話で止まっていた部分もあります。道の問題はまだまだこれからだと思います。

 

Cさん:ため池なんかも、上流のほうで山が崩れたりすると、水がため池に流れてこないっていうケースもいろいろ出てきてるんですね。

 

Dさん:9月の豪雨で流木がたくさん出てるでしょう。ものすごい被害が出ていますが、自然の被害と、それから道のつくり方も乱暴で、そこが水の通り道になったとか。それから、山で間伐して、そのままほったらかしにして、それが川に入ったんじゃないかとか。自然災害と言いますが、そういう山の使い方の問題もあると思います。地元の森林組合の方とか、土砂が出る道についても地域の方はよく知ってると思います。

 特別な豪雨と、山を何か上手に管理してなかったことがミックスになってて、それが区別されずにいろいろ報道がされてると思うんです。宇都宮さん一人ではできないですが、ぜひその辺りも調べていただいて、情報を整理してほしいと思っています。

 

宇都宮さん:その通りだと思います。今のところは区別せずに災害という一言で片付けている部分はあるので、今後きちんと調べていく必要があるでしょう。山の手入れをどうするかっていうことにかかわってくると思いますので、情報を集めたりして調べてみたいと思います。

 

Eさん: 定年退職していますが、金沢で林業の仕事をしていて、山の手入れやりたいなと思っています。おおむね補助金事業になるのですが、木を切る、間伐して切った木をどうするか。そのまま材にできるんなら頑張って出荷しますが、山に残す場合はきれいに切りそろえて置いておく。地面に接地さして、できるだけ早く腐食さして土に返すという努力はすることになってはいます。ただ十分な事業費が賄えないんで、結構雑な仕事をしてたなっていうのがあります。

 能登の場合は特に林業、農業と並んで今後もやっていかざるを得ないんじゃないですかね。林業従事者が少し潤うような努力もしていただけたらいいかななんて思いました。。

 

Fさん:金沢でちっちゃな林業、自伐型林業という作業手法で林業をしている一般社団法人RainbowForest金澤の内部理事をしております。

 私は、珠洲にたまたま友達が多かったので、ヘルプの要請がすぐに入ってきて、1月の頭からずっと珠洲にいました。1年間たって落ち着いて、自分の専門分野である林業で今後能登で何かお手伝いができればっていうことで、緑の募金の助成金を獲得できました。3月から6月に23日間の研修を開催いたします。応募がSNSだけで発信したら60件ぐらいシェアいただきまして、結構県外からも応募が来て、もう定員オーバーの状態なんです。しっかりと林業従事者を育てたいっていうことで、10名に限定して開催します。森林組合さんのほうから、現場の人が今は半分ぐらいに減っているということを聞いているんですね。

 金沢では森林組合はすごく満遍なくやってくれていますが、能登はもうほとんどが山ですよね。その中でさらに奥能登となると、2次避難で行かれた方も帰ってくるか分からない状況の中で、地域に残ってる人が自分たちで地域の山をやっていく。そういう人が増えていくのが一番将来的にいいんじゃないかと思っています。私もいろいろお手伝いをさせていただければと思っております。また何か今回一緒にご協力することがあればとずっと思ってました。

 震災前に実際珠洲において、能登全体でも、自伐林家さん、自分の山を自分で施業する人がどのぐらいいたのか。かなりの高齢化で、もうどんどんやめていく人たちがここ数年、5年、10年でかなり増えたと思います。ほんとに今世代交代をしなければいけないなと思っております。自伐型林業は山を持ってないけれども山主さんの気持ちを酌んで地域の山に根付いてやらせてもらうっていうやり方なんですけれども。特に特徴的なのが、環境に極力負荷を与えない小さい道づくりで小型重機だけで少人数でやるっていう環境保全型の持続可能な林業ともいわれているんですね。

 今、激化している気候変動のことも考えると、やはり、いつ、どこで局地的なゲリラ豪雨があるか、ほんとにどこでも起きますよね。それがあった時に予想外なんて言えない時代に入ってきたんですよ。もうどこでも必ず起きる、毎年っていう意識で、やっぱり山っていうのはほんと源であり、大地の基本と言いますか、やっぱり山をしっかりと、そういうことも災害防止、そういったことも含めて山に立つ人は意識をしていかなくちゃいけないんじゃないかっていうことで、私は山守りを増やしていきたいです。

 里海里山といっても、なかなか林業のことはあんまり出てこないんですよね。やっている人も少ないこともありますし、農業のように気軽に始められない、危険性がすごいいっぱいあるし、お金も資機材もすごいかかります。なので、ぜひぜひ一緒に能登の里山を、山から、林業から一緒に協力して盛り上げていけたらと思っております。よろしくお願いします。

 

菊地: 山の話は重要ですね。宇都宮さんのお話にもありましたが、能登には高い山はないですが、小さい山が多く流域もとても小さいです。小さい流域に大雨が降ると、水をためておく場がないので、もう一気に来るわけですね。昨年11月下旬、大学院生と一緒に能登半島を少しだけ回りました。幹線道路はかなり良くなっていましたが、少し小さな道の入ると荒れ放題の道で、ちょっと怖い感じがするほどでした。水害被害の現場を能登町の人に案内してもらいました。ものすごくひどい。小さな川なのですが、流木がたくさん流れ着いていました。山が荒れていることが、被害を大きくした一つ大きな要因だと、現地の人もおっしゃっていました。やはり山をどうするかということは非常に重要なテーマだと思います。担い手がいないことが大きな問題だと思いますが、自伐型林業も人気はありますよね。山に逆何か可能性を感じる方もたくさんいるとも感じます。

 

Gさん:金沢大学さんのバイオマス・グリーンイノベーションセンターというところで木材を化学変換して高付加価値化させる研究開発を専門にしています。将来的には高付加価値化させた木材が地産地消の技術とかに役に立てればいいなと思っています。

 一番最初のディスカッションで、能登の人は金もうけが悪だと思われてるところにちょっと衝撃を受けました。ビジネスに携わる者として、どういった心理から金もうけは悪いと考えられてるのか、教えてください。

 

宇都宮さん:何か一人だけもうけとるっていうのが、意識としては良くないような感じです。

 

Gさん:村の団結感みたいなものを崩してしまうという意味ですか。

 

宇都宮さん:それもありますが、他の周りの人の協力もあってできてるはずなのに、あいつだけもうけとるとか。そういう見え方をすると非常にまずいという感じです。やはり情報も共有して一緒にやってる人に一緒にやって仲間ですよっていう感じでやったほうがあつれきを生まないと思います。

 

Gさん:では、みんなでもうけるっていうことが。

 

宇都宮さん:そうですね、みんなでもうけることはありかもしれないです。誰かやりたい人がぱっと手を挙げて、自分だけやってってなると、あんまりいい目では見られないっていうのがありますね。

 

Gさん:そういう観点でいうと、私は里山に住んだことがないのですが、里山に住んでいる方の幸せとか、モチベーションは何なんかなと思っています。今のことを逆説的にいうと、人のつながりがモチベーションになっているのかなとも思いましたが、いかがでしょうか。

 

宇都宮さん:難しいですね。あまり狭い世界になり過ぎるとお互いやっていることが見え過ぎることもあって、あいつはあんなことをしとるとか、すぐ見えてしまうんですよね。なので人のつながりはもちろん大事にしたくてモチベーションにつながることはありますが、それが全てではないというか、かえって逆に非常に足を引っ張られることもあることも事実だと思います。

 

Gさん:里山に住んでる方の幸せって、1つ、2つに言うと何なんでしょう。そこがすごく気になってるところです。

 

宇都宮さん:私もずっと生まれ育ったわけではないので恐らくですけど、私が見てる限りでは、たぶん仲間になっている、みんなと住み続けられるっていうのが1つと、生活にそれでも困らない、最低限はちゃんとあるっていうのがもう1つです。

 

Gさん:自給自足、自分で暮らせる分のものを作れるところがモチベーションになってる?

 

宇都宮さん:たぶんあんまり意識はされてないかもしれないですが、お互い物々交換とかも結構頻繁にされるので、お互い足りないものを渡して、お金は全く発生しない、そういう社会もまだ残っていいます。そういう関係性がやっぱり非常に大事だと思います。

 

Gさん:やっぱり人のつながりっていうことになるわけですね。

 

宇都宮さん:仲間としての人のつながりっていうのは大きいと思います。

 

Aさん:生まれは羽咋市の鹿島路町です。小学校の音楽室にはトキの剥製がありました。町の自慢なんですけど。トキの放鳥についてお尋ねしたいです。

 トキを放鳥しようっていう時に、イベントでは済まない事象だと思っています。素人ながらに考えると、トキが飛んでいっちゃうと糸の切れたたこみたいになっちゃって、もうどうしようもないというか、何か発信機でも付けて何かするのかどうかわかりませんが、手順とか技術的にどんなものでしょうか。

 

宇都宮さん:放すセレモニーはやると思いますが、放した後については、トキは自分の好きなところへ行くと思うんです。ただ、一方で飛んで行って、どこも行くあてがなくなって死んでしまうような環境は避けたほうがいい、避けるべきです。私の事例で紹介したような住みやすい環境づくりをもっともっと力を入れて石川県のほうでやっていって広げていくっていう必要があると思ってます。

 

菊地:セレモニーはだいたいやります。箱から放鳥するやり方です。もう一つは、定着させるために田んぼの中にケージを作って、数カ月飼育して、ここは自分の居場所だと認知させて放鳥する方法もあります。結局、どこに飛んで行くかは分からないです。餌があるとか、ねぐらがあるとか、好みの環境がありますし、鳥なりの行動原理があるので、人間の暮らしと一致させながら進めていくことが重要だと思います。

 少し無責任な言い方かもしれませんが、実際やってみないと行動は読めないところがあります。だから、今日の話のように確認や修正をいかにできるかが重要です。順応的に進めていくことです。時の行動を調査をして、どこを修正したら能登に定着してくれるかを考えていく。

 

Aさん:トキの放鳥みたいな看板が付いてたりして、ムードの盛り上げはいいことだと思いますが、いろいろな情報を公開しながら頑張っていただきたいと思います。

 

Hさん:私も能登の農家の現場現状はまだ把握してません。今トキの話が出ましたが、全て命は環境だと思ってます。今、国はみどりの戦略を打ち出しています。能登の方は何割ぐらいそれを認識して取り組んでいる、だいたいのパーセント、もし知っておいでたら教えてほしい。

 

宇都宮さん:非常に難しい質問ですね。トキに関してもそうですが少ないです。肌感覚だけでいうと、いいところ2割かなっていう感じはしています。

 

Hさん:国のほうで、県のほうでそういった推進をしながら、貴重な取り組みだと大賛成です。ちゃんと保護して増やしていく、そういった貴重な鳥の生態というかね。それに関しては、やはり全て環境が全て結果を表すと思います。国のみどりの戦略2030年、50年までは半分有機農法に切り替えることになっています。全国的に学校給食のほうにというような話も広がりつつある中で、まず地域の人たちがそのことをどれだけ共有して、社会を、思いを広げていくっていう、ここが一番の今社会の課題になってるんじゃないかなと。

 

菊地:非常に大きな問題提起ですが、時間が来てしまいました。ありがとうございました。

 

石川県立図書館さんに関連する本を集めていただきました。

いつもありがとうございます。

第二回 のと里山里海カフェ(1/10開催)参加者アンケート結果

2025年1月10日開催の第二回 のと里山里海カフェの参加者アンケートの結果です

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:32名

回答者数:19名

回答率:59.4%

 

 

①年齢(回答数18)

 

10代:5.6%(1名)、20代:16.7%(3名)、30代:16.7%(3名)、40代:11.1%(2名)、50代:33.3%(6名)、60代:16.7%(3名)、70代以上:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数19)

 

 

男性:47.4%(9名)、女性:52.6%(10名)

 

 

 

 

③職業(回答数19)

 

 

会社員:21.1%(4名)、公務員:10.5%(2名)、教員:5.3%(1名)、自営業:5.3%(1名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:10.5%(2名)、学生:21.1%(4名)、無職:15.8%(3名)、その他:10.5%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(回答数19 複数回答)

 

チラシが5.3%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが26.3%(5名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が10.5%(2名)、クチコミ15.4%(3名)、金沢大学のアカンサスポータルが26.3%(5名)、その他が15.8%(3名)でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑤満足度(回答数18)

 

大変満足:44.4%(8名)、満足:50.0%(9名)、どちらともいえない:5.5%(1名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・素晴らしいプレゼンでした。石川県の里山里海振興部からの告知も有益でした。

・貴重な意見を頂きました。

・深かったです。対話の時間がシゲキ的でした。

・ヨソ者、若者、バカ者が地域を変えるという松山出身の宇都宮さんの問題提起に共感した!

・里山里海の保全のために珠洲市が行っていること(ドジョウ、ため池など)が、自分にとって意外性のあるものばかりであり、新たな学びになったから。

・今回、なかなか鋭い質問も多かった中で、きちんと情報、意見をまとめて回答されていたのが好印象でした。

 

 

⑥参加して能登の里山里海について、考え方は変わりましたか(回答数19)

 

 

大きく変わった:10.5%(2名)、変わった:52.6%(10名)、どちらともいえない:26.3%(5名)、あまり変わらない:10.5%(2名)、変わらない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・珠洲市でおらっちゃの里山里海の実際の活動の一部を知ることができて興味深かったです。県庁からの告知と同様、一般市民に向けてもっと情報が得やすくなればもっと良いのにと思いました。

・珠洲市の取組の熱量を感じました。里山の保持など、もっともっと後回しになっているのだと想像していました。。

・変わる前に知識が全くなかったので、今回少しでも知ることが出来て良かったと思う。

・のとの里山里海をPRしようと思おう時、何を打ち出してよいか、はっきりわからない。

・トキ放鳥に関して、県庁生活環境課、自然環境課、トキ共生推進室と農林水産部、里山振興室との連携に不安感じる。機構改革必要ではないか。

・例えば、農業遺産としての指定の意味を押さえていく必要を感じました。

・何故里山里海のある能登に移住するかという質問は面白かった。

・人が手を加えることは自然にとっても良いことが多くなるだろうと思っていたが、田んぼの整備による生物多様性の低下のように良くない面もあることに気づいたから。

・おおむね認識していた通りであったが、なぜ保全しなければいけないのか?私達の生活や文化との関わりを改めて考えさせられた。

・故郷の話だったから

 

 

⑦今後も参加したいと思いますか(回答数19)

 

参加したいと思う:84.2%(16名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:15.8%(3名)

 

 

 

 

 

 

⑧興味があるテーマ

 

・環境問題(里山里海の保全など)と地域独自の文化の関係(例:あえのことなど)→現代アート(奥能登トリエンナーレ)にどんな影響があるか→情報発信の使い手?

・市民参加型の調査

・気候変動に対して取り組んでいる何かがあったら紹介してほしいです。

・地震後、自慢するべき能登の里山里海の資源とは?

・雑木林の継続サイクルのモデル化が可能か?もうすぐ具体的な姿が見えなくなる。例、今日の参加の方も実体験はないのでは?

・自然災害の被災後の観光資源のあり方

・経済活動と自然環境の保全

・里山里海の食、暮らし

 

 

⑨全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・最後の方など、ビジネスや人間関係などリアルな感想が聞けて非常に興味深かったです。学生さんが発言できる時間があったらいいかもと思いました。

・知らない部分がたくさんあり、これからも継続して参加させていただきます

・手元にスライド資料等があれば見返せて良いと思う。

・現状がわかりました。

・自分にできることを考えていきたいと思いました。

・県庁のX もっといしかわや馳浩のXを活用して、世界農業遺産や珠洲のマツタケ、トキの放鳥などの情報をこまめに繰り返し発信してほしい。

・活性化フォーラム化しているのでは?

・おもしろかった。

・久しぶりに参加させていただいたが、異なる境遇の多くの人が対話をすることで多様な観点で問題をとらえ、考え、深めあう機会になり、自分にはない考えを取り組むことができた。

・配慮が欠けた質問や意見が少し多かったように感じた。暗い話題になりやすいからこそ、冒頭のルールを強調することが必要だと思います。また、人が話している中でも他で話をしている人が見られた。小声なら気にならないが、質問や回答の内容が聞こえなかったこともあったので改善を強く望みます。

・①宇都宮さんの地道な活動が伝わりました!長期的な復旧を願います。②能登、珠洲の方の幸せが何かをよく観察されていると思いました。③菊地先生 補助的なフォローなどわかりやすかったです。みなさん、すごかったです。ありがとうございます。

・年配者の方々の質問内容が、少々意味不明だった。県や国への文句にしか思えなかった。的外れすぎる。

・珠洲に住んでいる宇都宮さんのお話が聞けてよかったです。自給自足が成り立つ所がまだあるということが、私は嬉しいです。

・農地集約が、農地に関わる人を減らし、”里山”の関係人口を減らしていること、気づかされました。

 

第九回 いしかわ生物多様性カフェ開催します(1/31)

【開催案内】第九回 いしかわ生物多様性カフェ
 
今回は、人口減少が進む中山間地域と関係人口についてに考えてみます。
 
日時:2025年1月31日(金)18:30から20:30
場所:石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F)
話題提供者:坂本 貴啓さん(金沢大学)
テーマ:人口減少時代における中山間地域と関係人口
定員:40名程度
対象:どなたでも参加できます(参加費無料)
共催:石川県立図書館・いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
協力:石川県立大学 上野裕介研究室
申込(当日参加もできますが、なるべく申し込んでください)
参加フォーム
https://docs.google.com/forms/d/1Acsp5DjOWtEz6Sn3ACirZizHFT5S8jitEj1z_qhemyk/edit
 
 

第二回 のと里山里海カフェを開催します(1/10)

能登の里山里海カフェとは、コーヒーなどを飲みながら市民と専門家が「対話」する場です。
「対話」を通して、能登の未来を考える機会をつくり、震災からの復旧・復興につなげていきたいと考えています。
 
第二回目は、珠洲市自然共生室の宇都宮大輔さんを招き、珠洲市における里山里海を核にした地域づくりについて話し合います。
興味がある方はぜひご参加いただければと思います。
 
日時:2025年1月10日(金)18:30-20:30
場所:石川県立図書館研修室
話題提供者:宇都宮大輔さん(珠洲市自然共生室自然共生研究員)
話題:里山里海が核となる地域を目指して−珠洲市の取り組み
 
 
 

第一回 のと里山里海カフェ(10/25)報告

開催日時:2024年10月25日(金)18:30〜20:30

 

開催場所:石川県立図書館研修室

 

話題提供者:伊藤 浩二さん(岐阜大学)

 

テーマ:のとの里山里海と私たちの未来

 

参加者数:39名(一般参加者31名+スタッフ・関係者8名)

 

 

 

【話題提供】

 

 話題提供者である伊藤浩二さんは、2008年から金沢大学の一員として、能登里山里海SDGsマイスタープログラムという社会人向けのプログラムのスタッフをしていました。生態学を専門とする伊藤さんは、社会生態システムの持続可能性の研究に従事されています。具体的には農業、絶滅危惧の生き物、里山里海保全などを研究されています。

 

 12年間にわたる能登での研究経験がある伊藤さんを招き、「のとの里山里海と私たちの未来」というタイトルでお話ししていただきました。伊藤さんからは、ランドスケープアプローチという社会と自然を一体的にとらえる視点から、能登の里山里海はどのような特徴があるのだろうか、どんな歴史をたどってきたんだろうか、どんな活用の仕方があるんだろうか。こうした話題提供していただき、里山里海にかける期待とか希望に向けた対話のきっかけをつくっていただきました。

 

 印象的だったのは、能登では里山と里海が同所的に存在するという特徴が、生態系の多様性と人の暮らしの多様性の基盤になってるという点でした。

 また、歴史を振り返ってみると、能登の里山里海はいくども大きな社会変化や危機に襲われてきたのですが、その時々に違う形で対応してきたというお話も大変示唆的でした。今回の地震および水害に対して、どのような対応ができるのでしょうか。

 そして、能登の人たちがそこで暮らす理由を強く尊重しながら、私たちのような外部者がどのようにかかわって、何ができるのかという問題提起も重要なポイントだと思いました。

 

 以下、伊藤さんの話題提供の要約です。

 

 

 

ランドスケープとしての里山里海

 里山里海とは何か。学術的には「里山は農林業や日々の暮らしの目的のために人為的に管理・利用されて形成されてきた農村景観であり、里海は漁業等の目的で管理・利用されてきた沿岸景観」といえます。どちらも高い生産性と生物多様性を有しています。人が管理をすることによって健全に保たれてきたのですが、人と自然の関係性は、時代ごとで大分異なります。

 私は里山里海を景観としてとらえています。景観とは英語ではランドスケープと呼ばれます。ランドスケープという言葉には、単なる景色という意味以上に、人と自然がお互い折り合いを付けながらつくり上げてきたものという意味が含まれています。ランドスケープは世界農業遺産を理解する時にとても重要なキーワードになります。

 

 

能登の里山里海の特徴

 能登の里山里海にはいろいろな景観があって多種多様な環境があり、そのことが生物多様性を育んでいます。生物多様性に富んだ里山里海は私たちにたくさんの恵みを与えてくれます。燃料、建築材、季節ごとの食材。こういったものを維持するために生物多様性は大事だということが広く知られています。

 今回の震災で、里山里海はライフラインが断絶した中で避難してる方々の命を救う一つの要因になったともいわれています。山からの湧き水だったりとか古井戸の水だったり、薪、へんざいもんと呼ばれるような畑の野菜だったり。そして、ただそれらが存在したから使えたわけではありません。そこに住んでる人たちが自然を利用する知識とか技術、経験をもっていたからこそ、それをうまく利用できたのです。里山里海の存在がいざという時の保険、安心、安全の材料になるという側面に今回の震災で改めて気が付いたと思っています。

 

 能登の里海についてですが、外浦と内浦では、大きく海岸の環境が違います。岩場がある、砂浜がある、干潟があるという以外にも、潮あたりによる環境の差異があったり、もう少し広いスケールで見れば表層を流れる暖かい対馬海流と、日本海固有水と呼ばれる冷たい深層水が共にあることで、それぞれの環境に適応した生物が生息することで、能登の里海の生物多様性を豊かにしていると考えられています。

 能登は全国でもっとも藻場面積が大きい海域だといわれています。また漁獲データなどを元に解析した日本沿岸の魚類の生物多様性を表わした地図を見ると、一般的に太平洋側のほうで魚種数は多いのですが、日本海側では能登半島の周りで種数が多くなっています。これには藻場がたくさんあることも大きく関連してると思います。しかしながら、温暖化の影響で最近海水温が徐々に上がり始めていて、特に内浦側の能登町沿岸や七尾湾で、藻場が急激に減っていることが研究者の調査で分かっています。能登の里海の環境は大きく変化しています。

 里海も里山同様、いろいろな生態系サービスがあります。能登の人が大好きなカジメ(アラメやツルアラメを含む)のほかにも30種類以上の海藻を食べています。このような地域は日本で他にないと思っています。藻場は能登の里海の豊かさの象徴であり、かつそこに住んでる人の海藻に関する知識、知恵が豊富だからこそ活用されていると思っています。

 それを裏付けているのが、マイスタープログラムの受講生が、能登でどんな食材、里山里海の恵みが使われているのかについて地域の方に聞き取りをして、見える化した調査結果です。珠洲市の狼煙(のろし)地区では山菜だと32種類、海産物25種類、キノコ11種類、これらを季節に応じて使い分けていることがわかりました。このように市民がデータを集めて、自分たちのことを調べることは、すごく大事なことだと改めて思っています。

   このように、能登の里山里海にはそれぞれに多種多様な環境があって、そこでいろいろな生態系サービス、恵みが得られることを話しました。さて、里山も里海も日本全国いろいろなところにあるのに、なぜ能登半島の里山里海が貴重な存在なのかと思われる方もいると思います。その理由は、能登では里山と里海が近しい関係で隣り合って存在している、つまり同所的に存在していることに由来すると考えています。

 この里山と里海が同所的に存在することで得られるメリットとして、半農半漁のような、複数のなりわいによって生計が成立できることが挙げられます。もちろん広い農地がないので、仕方なくという部分もありますが、それでもこの土地で生きていけるのは、複数の里山里海両方の恵みを使えるからということに他ならないと思っています。

 他にも、海と山の幸を両方がある豊かな食文化や、地滑り地帯での棚田の開墾が生んだ千枚田の景観。海水と薪を近場で得られる地の利を生かした揚げ浜式製塩。アカテガニやモクズガニなど里山と里海を行き来する生き物が暮らす豊かな生態系。これらはいずれも、この里山里海が両方近くに存在するということで初めて得られる生態系サービスです。このことを能登ならではの里山里海の特徴としてもっとアピールしていけばいいと思います。

 

 

世界農業遺産

 能登地域GIAHS推進協議会が作成した第3期アクションプランを見てみると、能登の里山里海の暮らしは「里山をめぐる農林水産業システム」「里海をめぐる農林水産業システム」「米づくりをめぐる農林水産業システム」「文化・信仰をめぐる農林水産業システム」という4つのサブシステムがお互いに連携し合いながら全体が関わりあって成り立っていることが示されています。これこそが、能登の里山里海が世界農業遺産であることの本質だと思います。このシステムという言葉は今後の里山里海をどう活かしていくか考える上でとても重要なキーワードになると思っています。

 さて改めて世界農業遺産はどのような制度かを確認すると、世界的に見て次世代に継承すべき重要な農林業のシステムだということが世界的に認められた証だと考えられます。そのため、能登の里山里海は決してローカルの価値だけで閉じるものではなく、世界とつながっている、世界に発信できる価値を持っているのです。

 日本には世界農業遺産が15地域にあります。どこを見ても非常にユニークな農林業システムがありますが、3つのタイプに分けることができます。1つはある農法に焦点を当てた世界農業遺産で、静岡の茶草場農法に代表されるものです。2つ目が遺伝資源保全型といって、兵庫県美方地方の但馬牛、黒毛和種のDNA、品種が伝統的に守られててきたことが評価されたものです。最後が先ほど紹介したランドスケープ型と呼ばれるものです。能登半島はこちらに属しています。

 どれも、もちろん世界農業遺産として価値がありますが、特定の業界内だけにとどまらず地域全体に効果が波及する点において、3つ目のランドスケープ型の認定地域は利点があります。ランドスケープ型は、認定地域内の様々な人が力を合わせて、里山里海を活かした地域振興ができやすい認定タイプになっているからです。

 

 

里山里海の歴史

   今、能登で起きている里山里海にまつわる問題は、2つに集約できると思います。1つが、人の手によって守られてきた里山里海の環境が、過疎高齢化によって人が不足して管理がままならなくなって維持できなくなっている、それに伴い生態系が劣化しているという自然側の問題です。2つ目が地域に暮らす人のなりわいが経済的に成り立たなくなってきて、集落の祭りが維持できなくなってしまったとか、農業用水路の管理ができなくなってしまったとか、人間側の問題です。それらを解決するために、これまでの里山里海がどのような経過をたどってきたのかを振り返ることが一つヒントにつながると思っています。

 能登半島の里山が歴史的にどのように活用されてきたのかを考える時、代表的な産業が3つあります。1つは、珠洲焼と呼ばれる焼き物の産業です。これは当時10世紀から始まって14世紀まで非常にたくさんの焼き物が作られて、能登以外の全国に輸出されていました。発掘された珠洲焼の釉薬を分析することで、当時広葉樹の薪を使って焼き物を焼いていたということが分かっていて、里山もそのために使われていたと想像しています。珠洲焼は他産地との競合など、外的な要因によって急速に途絶えて15世紀後半に作られなくなったという歴史があります。

 珠洲焼に代わる里山の利用の仕方として、揚げ浜式塩田で作られる塩を焼くための燃料として、たくさんの山の木が使われるようになりました。塩田のある沿岸部の森林だけではなく、内陸側の柳田地区とかからもたくさんの薪や柴が沿岸部に輸出、拠出されていたことが分かっています。能登の揚げ浜式塩田は8世紀にはじまり、江戸時代から藩の保護を受けて徐々に拡大し、明治20年ごろにピークを迎えます。

 しかし、塩づくりも明治時代後半になると急速に衰退し、それに代わる産業として今度は瓦産業が生まれてきました。珠洲の雲津海岸にたくさんの薪が積まれて瓦が焼かれていた写真が残っています。戦後年間500万枚以上焼かれた能登瓦も、昭和40年ぐらいになると他産地との競合など外的な要因で衰退をして、その後里山の樹木を使った主要な産業が発達することなく、現在に至っています。

 このように、産業の変化に伴って里山の在り方、使われ方は時代ごとに変わってきました。山だけではなく田んぼもそうだと思っています。こちらは輪島の千枚田の明治の頃の風景図です。注目してほしいのは、この沿岸部に塩田が広がっていたことです。かつての塩田後は日本海の荒波による浸食で一旦は海に消えてしまいましたが、今回の震災による海岸隆起で再び陸地が姿を現すことになりました。

   千枚田はいろいろな苦難の歴史をたどってきました。大きな出来事としては1684年の大規模地滑りによる棚田崩壊とその後の耕作放棄があって、そこから200年近く荒れた時代が続いていたようです。明治の頃までに少しずつ復興がされてきて、先ほど示したような壮大な景観になりました。しかし再び1970年代には減反政策や高齢化の影響で田んぼが作られなくなって耕作放棄地が増えてしまいました。そこから外部の方の支援により棚田再生運動が始まって、それに触発された地元の方の努力もあって現在では世界農業遺産にも認定されるようになりました。

   今私たちが見ている地震後の傷ついた里山里海の景観は本当に痛ましいですが、歴史をたどれば様々な苦難を乗り越えてきた経験が能登にはある、そこに私たち何かヒントを見いだすことができるのではないかと考えています。

 時代によって里山は姿を変えてきたということをまずは皆さんに知ってほしいと思います。そして、今の時代に合った里山の利用の仕方はきっとあるんじゃないかと。そこをこれから皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。

 

 

能登の未来に向けて

 今、石川県では創造的復興プランという計画を作っています。その中で「教訓を踏まえた災害に強い地域づくり」「能登の特色あるなりわいの再建」「暮らしとコミュニティの再建」「誰もが安全・安心に暮らし、学ぶことができる環境・地域づくり」が大きな方針として挙げられています。私はここで里山里海が果たす役割がたくさんあると思っています。その一つが、この能登半島特定公園のリ・デザインとして復興プランに挙げられている内容です。里山里海に囲まれた多様な生物多様性、資源を活用して、能登の里山里海の魅力を生かした新しい産業をつくっていくことが期待されています。

 そして、トキを復興のシンボルにした能登の里山里海の再生です。2026年に能登での放鳥が計画されています。

 こうした取り組みを進める中で、キーワードとして取り上げられているのが関係人口です。これは能登半島に住んでいる人だけではなくて、半島以外の地域に住んでらっしゃる方とも力を合わせて、一緒に取り組みを進めていこうということです。復興ボランティアとか移住という関わり方だけではなくて、二地域居住など多様なかかわり方を活かしていこうということです。

 この関係人口のことを考えた時、私の心にまず思い浮かんだのは、減反政策による千枚田の耕作放棄化がおきた時に、愛知県立安城東高校の高校生たちが10年以上にわたって修学旅行を通して通い続けて草刈り十字軍運動を行い、その姿に地元の人が背中を押されて千枚田の復興が進んだということです。なので長期にわたり伴走してくださることの価値を、能登の人は特によく分かっているんじゃないかと思っています。震災復興においても様々な分野での関係人口が生み出す効果に期待してるところです。

 この関係人口を活かした震災復興において、能登の里山里海を復興の土台として考えていく際に重要な視点として、私は改めて「世界農業遺産は能登の暮らしそのもの」という石川県が提唱したキャッチフレーズを取りあげたいと思います。このキャッチフレーズが提唱された当初は、何か曖昧な印象をもっていたのですが、「人あっての里山里海」を考えるならば、本質を捉えた象徴的なキャッチフレーズだなと再評価しているところです。

 人が暮らしていてこその里山里海。そして、能登に思いを持つ「里の人」(里人)がいてこその関係人口だと思っています。関係人口だけが盛んになっても、おそらくそれでは能登らしい復興が実現したとはいえないと思います。能登に暮らす人が能登に暮らし続けたいと思える理由をしっかり整えていくことが復興の基盤になると思っています。根っこを持つこと、土台を整えること。これらを出発点にしてこれから里山里海を活かした復興に取り組んでいけたらいいと期待をしています。

 その参考として震災前から取り組まれている能登での2つの事例を紹介します。1つが製炭業を営まれている大野さんが代表を務める「ノトハハソ」という株式会社の取り組みです。売られている炭のパッケージに何やら数字が書かれているのにお気付きでしょうか。大野さんが作られてる炭が大気中の二酸化炭素を年間61.7トン削減していることを見えるかたちにしたものです。写真はその炭の材料になるクヌギ林に、かつて耕作放棄地だった時には暮らしていなかったいろいろな森林生の生き物が戻ってきて、生物多様性が2.4倍に増えたことを表わしています。製炭という伝統的な能登の里山里海のなりわいに環境価値というプラスアルファを加えることで新しい価値を提案する取り組みです。ノトハハソの炭の箱に同封している手紙には6つの新たな価値が示されています。①能登で炭やきのなりわいを振興することで耕作放棄地が有効活用されてクヌギ林に再生したこと、それによって②生き物が増えたということ、③大気中の二酸化炭素の量が減りましたということ、④伝統産業の炭やきが継承されているということ、⑤伝統文化である茶道を支えているということ、そして、⑥炭やきというなりわいが能登で再興することで、能登で暮らしていける人が増えるっていうこと。大野さんたちはこの6つの新しい価値を炭やきに見いだしています。これはエリアベースで包括的な課題解決を目指す、まさにランドスケープアプローチです。里山里海を守る時に環境のことだけを見るのではなくて社会とか経済のことを一緒に考えて解決策を考えていく。このアプローチを大野さんたちは実践されていると理解をしています。

 2023年、ここのクヌギ林を環境省は自然共生サイトとして認定しました。自然共生サイトとは、農地や林地など生物多様性を守る目的で管理しているところではなくても、結果的に生物多様性を守られてる場所になっているところを認定する制度です。昨年から正式に制度が動き出しています。ノトハハソのクヌギの森は石川県第1号の自然共生サイトとして認定を受けています。この自然共生サイトという取り組みでは、企業の森とかワイン用のブドウ畑、保育園や幼稚園の園庭だとか、規模の大小問わずいろいろな場所が認定を受けています。この自然共生サイトを能登半島のたくさんの場所で増やして、「里山里海システム」の1つとしてたくさん増やしていけたらいいと考えています。

 もう一つの事例が輪島市三井町に住む萩野さんご夫妻らが取り組む「まるやま組」です。これは自分たちが住んでいる地域の里山の自然の中にどんな生き物が暮らしているのか、自分たちで調べて記録することを通じて、古くて新しい能登の価値を市民の手で創造する活動です。そこに私は植物の生態学者として調査のお手伝いに入っています。水生動物の専門家の方も一緒に参加して、この地域にいろいろな生き物がいることが分かってきました。この活動は単に生き物を調べるだけではありません。そこから得られる里山の恵みとか地元の人の技術や知恵などを、萩野さんがデザイナーとしての感性を通じて見た人が楽しく、ワクワクするように表現します。里山を通してさまざまな技術や知識を共有する「学びの場」をつくることによって、みんながそれぞれに学ぶものを得れるのです。そして里山で採れた山菜や野菜とかを料理して一緒に味わって共有する。里山の価値をいろいろな方面から引き出して共有する場をつくったことが、このまるやま組の活動の価値だと思っています。輪島市だけではなく、能登の各地域でこういった活動が広がれば高齢者の知恵を若い人が受け取って、それを新しい価値として表現する機会にもつながっていくと思っています。

 

里山里海のつながり

 最後に今日のお話をまとめたいと思います。里山里海と人とのつながりを増やすこと、これが里山里海の復興の手段と考えています。先ほど紹介した農林業システムという大きなシステムの中に自分も1人の参加者として、あるいは主人公としてつながりをつくっていくことが、里山里海の保全につながっていくのかと思っています。能登の人が生産したものを買って消費することももちろん関係性の一つですし、観光とか体験交流を通して能登の人とつながりをつくるのもつながりの仕方だし、「まるやま組」のような学びを通してつながるということもあるでしょう。そして、復興ボランティアとかお祭りのボランティアとか、いろいろなかたちで直接的に地域の方の力になるということもつながりでしょう。それ以外のつながり方についても、みなさんの中からいろいろなアイデアが生まれてくると思うので、ぜひ、一緒に考えていけたらと思っています。

 復興の土台としての里山里海の価値について、今日はみなさんと共有できたかと思っています。ただ、この土台となる里山里海は今大きく変化して、地震で傷ついたものであったりとか人が管理しなくなって劣化したりとか、そういった現状にあるのも現実です。外部の力とか公的支援が必要なところは、もちろんそういった力で修復をしつつ、私たち一人一人ができることも同時に探しながら、この両方がうまく連動することによって、里山里海を復興の土台にしていけることができるのではと思います。その方法をぜひ、これからみなさんと一緒に考えていけたらと思っています。

 

 

【対話】

 

Aさん:石川県に住んでいながら能登の価値を改めて知りました。能登半島の企業や人のつながりを本当に守らなきゃいけないと考えが変わりました。一方、すごく大きな動きが必要だなと思いました。国を動かして強烈なリーダーシップで動きをつくってくれる仕組みがあったらとも思います。このままじゃちょっと寂しすぎます。地震と水害、何てことをしてくれたんだっていってもしょうがないですが、今すごく暗い気持ちなんです。何か大きな力を呼び寄せるような方策がないでしょうか。

 

伊藤さん:国が大きな予算を付けて、何か大きなものをつくることもあるのかもしれませんが、能登の人たちが、能登が見捨てられた土地ではなくて希望のある土地として、みんなが考えてくれている、希望が見えることが大きな意味を持っていると思います。それに付随して、いろいろなプロジェクトが能登で実際に起っていくと思うんです。まずは希望をどのように見せるのかを考えたらいいのかなと。能登の人が意味があるものと感じるものをつくっていく、予算を使っていく必要があると思います。希望の見せ方をぜひ考えたいと思ってはいます。

 

Bさん:ランドスケープっていう見方で能登の里山里海をまとめてくださいました。例えば、復興支援として国から大きな予算が能登に来ると。モデルとして示された炭焼きとか揚げ浜塩田とか、予算が来るから一気に規模を10倍にしましょう。それが能登の復興になるのかなと。モデルとしてサステイナビリティーがあるのかな。多分、違うと思います。今日示していただいたモデルは、大きな動きが必要だと漠然と考えられたのは鋭いと思います。

   ただちょっと違うんです。例えば、製塩の塩の行き先は地元ではなくて、明確な消費地があったわけです。どこに送られてたか。そういったことは今日のランドスケープのモデルの中には入ってない。そこをもう少し明確にビジョン化しないと、次のステップを行くためのモデルとしてまだ弱いと思います。

 例えば、能登の海藻豊かな資源。かつて、たくさん輸出されてました。しかし、どこに運ばれてたか知らない人ばっかりです。今はもう運ばれてないからなんです。閉じた一つのまとまりのあるランドスケープだけではなくて、「なりわい」がどのように他の地域とつながっていって、他の地域の文化とつながっていたのかというところまで示す必要があると思います。奥能登は金沢よりもはるかに時代の変化に合わせてたくさんチャレンジして、どんどん中身が変わってきた地域なんです。金沢の人は奥能登を見る時に、何となく昔からの生活をしてる場所と見たがりますが実は全然違います。まず見方を変える必要があると思います。もう一つは、クローズドなランドスケープではなくてじゃなく他の地域とどれぐらいつながっていたのかという視点をもっと入れる必要があると思います。

 

伊藤さん:塩の話だと岐阜とつながってたんです。塩ブリです。飛騨の人たちがお正月を迎える時のものです。能登半島で作られた塩で保存食として作られたブリがブリ街道を通してやってきていました。瓦もそうですし、珠洲焼もそう。全国に能登の里山由来の物産が輸出されていたことが、まず新鮮な驚きです、それを今の時代にどんなかたちで産業として里山を活かしていけるのかについては、あまり具体的なアイデアがあるわけではないですが、大きな仕事、大きな産業の流れをつくれれば素晴らしいです。ただそれをできるローカルの循環もまた同じように大事なことだと思っています。今、考えているのは能登半島に広がった水田の耕作放棄地に生えているヨシとかを、ただ景観を維持するためだけに刈るのではなく、昔は田んぼで当たり前のようにやられていた刈敷と言われるやり方を改良して、現代の能登の水田で活かしていく方法がないか。研究を進めています。

 例えば、CO2の固定という新しい分脈で農業の新しいデザインがされています。農地に有機物として炭素を固定することで、農業が地球温暖化防止に貢献していくやり方が国の計画の中でも組み込まれています。先進地として能登を、新しい水田農業をデザインしていくことができたらいいと思って研究をしています。

 

Cさん:能登を全体的な枠組みの中で考える必要があるということについて、私も非常に同感なんです。能登は炭の産地として全国的にも有名な場所です。その炭は割炭と言いまして、普通のお茶に使うような炭じゃないんです。

 1950年代、せっせとコナラを植えてました。能登の山、コナラの山は歴史的にちゃんと植えてきて作ったものなんです。能登の炭は全部割炭といって大きな木にして、そして、それを割って焼いて工業的に使っていたんです。ともかく能登を考える場合には全国的な、あるいは世界的な枠組みの中で考える必要があると思います。1つの問題は里山と里海の結合です。指摘されたとおり、非常に重要な点だと思います。能登の里山は単なる里山じゃないんです。海と結び付いてるんです。だから、私が金沢大学の臨海実験所にいた時、小木に魚屋さんがなかったんです。夕方に懐中電灯を持っていって、エビの目が光って見えるんです。それを捕まえて餌にすると、魚がどれだけでも捕まえられるんです。それを使って魚の研究をした記憶があります。こういうことができるのが能登の一つの特徴で、全国的にも非常に面白いことです。

能登は軽井沢みたいな方向なら、そこを目指して来る人に対してサービスを提供することもあり得ると思います。

 

Dさん:里山と里海が近いことが大変印象に残りました。つながりの大事さをどのように説明すると能登の強み、魅力をうまく発信できるかと考えています。つながりを説明できる単位にはどういうものがあるだろうか。関係人口ならば何人っていう説明もできると思います。塩だとキログラム、トンかもしれません。能登にはこれだけの単位でその豊かさを説明できるんですよといった、子どものワークみたいですが、そういうことから説明できたら面白いかなと思います。里山と里海が近いんならその距離をメーターで説明するとか面積で説明するとか。伊藤先生、何種類あるんでしょうか。

 

伊藤さん:数字を見た時に人々がどういうイメージを持つのか、感性に訴えかける部分がとても大事だと思っています。おそらく、数字にするとその部分が失われてしまう部分もあると思います。私は人に共感してもらうための表現の仕方としては、藻場の面積の表現であったようなアートで表現することが大きいと思っています。幸い能登には芸術祭もあって、たくさんの素晴らしいアーティストの方が来てくださっています、そういった方々にこの能登の里山里海の魅力をアートとして表現してもらうことが、一つ大事と思っています。

 あと、重要指数だと思っているのは能登の高校生とか中学生たちが、将来また能登に戻って暮らしたいと思っている率です。能登の復興の指数としてモニタリングしていくことが大事だと思います。子どもたちが能登を大事にしたいと思う気持ちにつながらなかったら、いろいろな努力がおそらく水の泡になると思います。

 

Eさん:金沢大学の学生です。単位と聞いて私が真っ先に思ったのは、菊地先生の講義を受講してるのですが、サンゴ礁を保護した場合の経済効果を話されていました。お金という数値になった時に自分の中でリアルに感じられたので、単位として円っていうのも大きいものではないかと思います。

 

Fさん:里山里海が大事だとか生物多様性とか、それから炭、塩とか地味なものがすごく大事だということでした。ここに集まってる人はそれに共感する人だと思うんです。しかし、震災復興の話にしても、大きな政策の話にしても、今日の話に共感しないようなかたちで政策が作られたりすることがあると思います。里山里海が大事だよねというようなことを無視したり、乱暴に扱ったり、そういう考え方もたくさんあると思います。アンチテーゼなり反論をしたい人がいると思いました。例えば、里山撤退論という議論がありますよね。それについても、一方で整理して、どこが心配かとかそういうことも同時にやらないと、いいねいいねっていうだけでは駄目ではないかなと思います。かみ合う議論ですね。ひょっとしたらかみ合わないかもしれませんが。

 

菊地:人口減少時代を迎え、国の予算も限られている中、コストがかかる場所からは撤退して、機能を集約させようという議論ですね。

 外部者と能登の人が一緒になって能登の未来を考えて、何か具体的な行動を1つでも起こせないか、そういうことも話し合えたらと思っています。能登の地域特性を理解した上で、外とのつながりがあることが、実は能登の非常に大きな特徴でもある。どのような伝え方がいいのか、どのような単位で考えればいいかという話も出ました。里山里海が大事ですよといってもほとんど理解されない場面もたくさんあります。では、理解しない人たちはどんなことを考えてるんだろうか。そういう人たちの話を聞くことも必要ですね。

 

伊藤さん:復興に関係する撤退論もそうだし、新しい何か仕組みを大きく導入してかなりドラスティックに変えていこうっていう話とかも、里山里海を完全に無視して何かやろうっていう話ではないと思います。その人たちの視点の中に、里山里海の利用といったローカルというのかミクロの話があまり伝わってないため、入れ違いが起きてしまっているのかもしれません。地元の人が大事にしてたものが見逃されてしまったり、知らないうちに大きな取り組みの中で消されてしまうことが不安なことだと思います。ミクロの話とかローカルな話の見える化といっていのでしょうか、共有していく機会をもっともっと増やしていく必要があると思っています。もっとたくさんの人にローカルな価値を知ってもらえる発信の仕方も合わせて必要と思っています。

 

Gさん:地震があって水害があって、今日本で能登のことを考えてない人あんまりいないと思います。能登の出身ですが、「七尾市」っていっても「それはどこ?」、石川県といっても東北の石川県とか中国地方とか言われるぐらいだったのです。でも、今は奥能登はどこかみんな知ってると思うんです。だから、逆にチャンスだと思うんです。何かこのチャンスを活かせいないかなと。安全な位置からなので恥ずかしいのですが、このことをすごく思っています。一つネックだなと思うのは能登の年配の人の閉鎖性ですよね。すごく排他的なんです。それを何とかできないかなと思っています。

 

Aさん:被災された能登のみなさんがどうしたいのか、その考えを知りたいとずっと思ってました。排他的な人たちが多いとおっしゃいましたけど、その人たちがどういう人生設計をされているのか、どうしていきたいのか。

 

Hさん:能登町に住んでいます。私の周りでも地震があって仕方なく違う地域に行かれた方が結構いますが、おそらく今までで一番能登にたくさん人が来ていると思います。最初は自衛隊を含めた支援の方が来て、ボランティアの方も来て、今は建築業の方もたくさん来ていています。能登のためを思って来てこられる方がたくさんいるので、そういう方とつながりをつくって、長く能登を支援してもらうとか、能登に定住、移住してくるような方とのつながりのつくり方ができないのかなと。こんなに能登に人が来てくれることはないと思いますので、今がチャンスというのはあると思ってます。

 能登の外浦でかなり隆起をして地面が新しくできました。自然海岸が新しくできたので、そういうものを今度は開発してしまうのではなく、残していくっていう方向。例えば、ジオパークとか世界遺産といったかたちで、新しくできた自然海岸残せたらいいなと思います。

 

Bさん:解体業者の人とかすごく来られています。能登に来て海岸でお弁当とか食べたりとか新しい経験すごくされてると思うんです。私たちが海岸で調査をしていたら、若い解体業者の人が興味持たれて「ここ泳いでもいいんですか」っていわれたので、「泳いでいいですよ」といったらすごく楽しんでおられたんです。彼らは彼らで決められた仕事をして、決められた場所で泊まっているのでしょう。もしこういった場、先生方とか住民だけだったら、なかなか解体業者と何かしましょうなんて話は出てこないです。でも、今ここに集まられてない人の中には、何かそういう仕組みとか、きっかけとかつくれる人がおられたらそれはすごいことだと思います。関係人口という話が出ましたが、本気をやるのなら、こういうことが大事ではないかと感じています。

 

菊地: ボランティアが注目されていますが、確かに解体業者というように仕事として入っている人たちと、能登の里山里海を一緒に話していくことは、非常に重要な点だと思いました。なかなか私たちの情報届かないし、なかなか来てくれないかもしれませんが、復旧・復興の現場の担い手なわけですよね。つながる場面もつくっていきたいです。

 日本は少子高齢化という課題を抱えていますが、能登はその課題先進地域ともいわれてきました。課題として先進的であると同時に、これまでの歴史を踏まえると、能登ならではの先進的な取り組みもありましたし、新しいものを取り入れる文化的基盤があることも理解できました。もちろん、外部の人だけで考えることはできませんし、するべきでもありません。能登のみなさんが何を望んでいて、業者の人やボランティアの人も含めて一緒に考えることが大事だと思います。力はありませんが、そういう場をつくっていきたいと思っています。

 

石川県立図書館さんから、能登里山里海、世界農業遺産関係の本を集めていただきました。

ありがとうございます。

 

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