いしかわ生物多様性カフェ

いしかわ生物多様性カフェ

第13回いしかわ生物多様性カフェ/第5回のと里山里海カフェ アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:26名(全参加者数32名)

回答者数:21名

回答率:80.8%

 

 

①年齢(回答数21)

 

10代:0.0%(0名)、20代:9.5%(2名)、30代:4.8%(1名)、40代:14.3%(3名)、50代:38.1%(8名)、60代:19.0%(4名)、70代以上:13.3%(3名)

50代の参加が多い回でした。

 

 

 

 

②性別(回答数21)

 

 

男性:47.6%(10名)、女性:52.4%(11名)

 

 

 

 

 

③職業(回答数21)

 

 

会社員:9.5%(2名)、公務員:19.0%(4名)、教員:14.3%(3名)、自営業:0.0%(0名)、主婦/主夫:4.8%(1名)、パート/アルバイト:19.0%(4名)、学生:14.3%(3名)、無職:19.0%(4名)、その他:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが4.8%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが38.1%(8名)、県立図書館が4.8%(1名)、いしかわ自然学校が4.8%(1名)、クチコミ4.8%(1名)、金沢大学のアカンサスポータルが14.3%(3名)、ダイレクトメールが38.1%(8名)、その他が14.3%(3名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数21)

 

 

初めてが9.5%(2名)、2〜5回目が42.9%(9名)、6〜10回目が28.6%(6名)、11回以上が19.0%(4名)でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数21

 

大変満足:66.7%(14名)、満足:28.6%(16名)、どちらともいえない4.8%(1名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

 

・能登の海の自然の付加価値を広く知らしめて復興から世界に良い面の注目をどんどん増やすと良いですね。

・新しい知見を得た。

・能登の魅力を発見する視点が大切なんですね。

・復興教育のコーディネーター育成について、いろいろ勉強になりました。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数20)

 

 

大きく変わった:20.0%(4名)、変わった:50.0%(10名)、どちらともいえない:20.0%(4名)、あまり変わらない:5.0%(1名)、変わらない:5.0%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

 

・復興についての考え方が大きく変わったと思う。創造的復興にぜひ繋げてください!

・とにかく何かを成そうと思えば、多様性の重要性をとても考えさせられる。良い意味で。

・自然は人間社会から独立されている存在ではないです。人間もそうなんです。人間は自然に依存して繋がります。記憶や誇り、文化もそれらから生み出します。

・知らないことが多いことを知った。

 

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数21)

 

参加したいと思う100.0%(21名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

 

・山→里山にする方法。海の多様性を守る方法。

・若い人たちに自然科学への興味を持ってもらうためのアプローチの仕方。

・国内外来種問題。

・里山教育など。

・地域の記憶と記録をどう生物多様性、里山里海に繋げるか。

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

 

・参加させてもらって、ホントに良かった!浦田先生、熱い人です!熱意は人を動かす!日本はまだまだいける!

・浦田氏の話は実にリアルで参考になりました。能登に必要な人だと思います。

・最後の方にも出ましたが、自分の学識について、より興味のあることを深めていく事で多様性が生かされるお話は、どんな場面でもこれからは特に重要だと思いました。未来につながるとても良い内容でした。ありがとうございます。

・目から鱗がボロボロ落ちた気持ちです。自分も自然観察会のスタッフをしているので大変ためになりました。また、能登育ちの立場から、浦田先生には感謝の気持ちでいっぱいです。ベントスって良いですね。

・人材育成とコーディネーターの役割について考える良い機会になった。

・観光によらない復興。本物を学ぶために来てもらう。浦田先生の復興教育。里山の魅力。能登を知って守る大切にする。人が増えるつながり。めっちゃ良いです。負の報道ばかりで、やはり洗脳させていたんだなと目からウロコです。明るい希望で生物多様性を考えました。

・今日お話しいただいたような活動の持続性について、もっとお話を聞いてみたいと思いました。大変感銘を受けました。

・探究型の学習は結構面白いです。

・気持ちは後からついてくるものだと気付かされました。自分磨きをがんばります。

・大変面白くお話を聞かせていただきました。小学校に勤務しているので、復興教育にも大変興味がありました。

・いつも感想を書いているが、今日はひたすら話に聞き惚れてしまい、書く時間なかった!

・まず子どもたちに。ここからですね。

 

開催案内:第13回いしかわ生物多様カフェ・第5回のと里山里海カフェ

 
これまで開催してきたカフェでの中で、人材育成の重要性は何度も話題となりましたが、十分に対話が深まっていたとは言えないかもしれません。
今回は、能登里海教育研究所の浦田慎さんから復興教育に活かされる能登の里海について話題提供していただき、里海を舞台とした復興や人材育成などについて対話をしたいと思います。
 
【話題提供者】浦田 慎さん(能登里海教育研究所 主幹研究員)
【テーマ】復興教育に活かされる能登の里海
【日時】2025年10月17日(金)18:30〜20:30
【場所】石川県立図書館 研修室 ※対面のみです
【対象】どなたでも参加できます(参加費無料)
【定員】40名程度
【主催】金沢大学先端観光科学研究所 菊地直樹研究室
【共催】石川県立図書館・いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
【後援】世界農業遺産活用実行委員会
【協力】石川県立図書館 上野裕介研究室
 

 

 
 
 

第10回 いしかわ生物多様性カフェ(3/27)開催報告

開催日時:2025年3月27日(木)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:野村 進也さん(いしかわ自然学校インストラクター・金沢大学連携研究員)

テーマ:身近な里山の生物多様性−生きもの調査体験から

参加者数:29名(一般参加者22名+スタッフ・関係者7名)

 

 

【話題提供】

 

自己紹介

 私は関西生まれの横浜育ちで、2008年から石川県に来ました。ゲンゴロウの研究をしたいといったら能登を紹介されて、それから石川県に住み続けています。ゲンゴロウという名前は知っていても実物を見たことない人がほとんどだと思います。ゲンゴロウは国内に130種類以上、石川県では40種類以上記録されています。シャープゲンゴロウモドキとマルコガタノゲンゴロウ、この2種は全国的にも種の保存法という法律によって無許可での採取、譲渡、飼育が禁止されています。そういうゲンゴロウが実は石川県にいるんです。もともとは、ゲンゴロウのことをやるために石川県に来たのですが、身近な田んぼとか池とかで何か生きものを見せられないかという相談をよく受けるようになりました。そういうことを引き受けているうちに、観察会が自分の重要な活動になっていました。学校であったり、地域の団体であったり、この地域の生きものを見せたりしています。私はゲンゴロウだけしか知らなかったのですが、なし崩し的に、トンボ、カエル、淡水魚、川虫といった水の生きものを何でもやるようになっていきました。こうした生きものは里山の生きものなので、里山の生きものも含めて活動をしています。里山の生きものを通じて生物多様性とはどんなものなのか、人の活動とどうつながりがあるのか、そんなことをお伝えする活動をさせていただいています。

 金沢市でやっているサイガワリバーサイドアクトという毎年犀川でやっている活動です。生きもの観察とかいうより、河川敷を使っていろいろな催しですが、その一環で生きもの観察をしたら、けっこう親子が来てすごく盛り上がってくれました。あとは調査業務もしています。生きもの調査を手伝ってほしいとか、生きものの標本の同定をしてほしいという依頼もくるようになりました。

 里山の生物多様性ですが、里山はもともと人が適度に手を加えることで生物が維持される環境です。希少種が分布する地域の5割以上が里山と言われていたりします。里山って大事なんだよね、という話はありますが、ではどうやって伝えたらいいのか。学校の先生も、生きものや自然のこと、里山のことをテーマにした授業でしたいといっても、よく分からなかったりします。そういう時はご相談いただいて、子ども相手にお話をすることもありますが、自分が一番得意なのは、現場に一緒に出て生きものを集めてみましょう、どんな生きものか観察してみましょうという活動です。外に出る格好してもらって、長靴履いてきてもらい、網を持ってもらって生きものを集めてもらいます。見つかった生きものについて後でまとめて、こんな生きものがいた、ここはどんな環境なのかについて学んでもらいます。

 珠洲市の小学校で、田んぼを使って観察をした時、珠洲でも町中の子どもだと田んぼに入ったことないって子が意外といたんです。せっかくの機会なので田んぼに入って生きものを見てみようかとやると、カエル、たとえばトノサマガエルは割と普通にいる感じですが、実は環境省の基準では準絶滅危惧種です。ほ場整備に弱いって言われています。またドジョウのような魚が出てきます。これも身近な生きものとされていますが、今の田んぼは、こういった生きものにはちょっと厳しい環境が増えています。そうであっても、観察した時に初めてドジョウとかカエルとかいるんだと、みなさん驚くぐらいの生きものが見つかったりします。または、田んぼといえばの生きものの一つのアキアカネ含めた赤とんぼが見つかったりします。「今でも赤とんぼいるんだ」という声も聞かれたりします。

 

生きものがいる環境

 こうした生きものがいっぱいいて「いいね」という話だけではなくて、こういった生きものがいる環境はどんな環境なのかと考えていただきます。赤トンボで一番メジャーなアキアカネは田んぼの生きものとされていますが、具体的に田んぼをどのように使っているのでしょうか。アキアカネの話をすると、秋をイメージする方が多いです。夏とか春終わりごろとかにトンボを見せると、「え、トンボいたの?」とか「これ秋の生きものじゃないの」とか言われたりします。しかもアキアカネという名前ですが、田んぼで夏ごろに成虫になっています。

 アキアカネが田んぼに来るイメージの秋には産卵していますが、卵は田んぼで越冬して、春ごろに田んぼに水が入った時に幼虫がそこで育ちます。その後、初夏にもう成虫になっています。つまり、全然秋とは限らないのです。ただ、その後アキアカネは、暑いのが苦手なので、標高の高いところに移動して夏を過ごした後、秋になって田んぼに下りてきます。これが風物詩的な、アキアカネのイメージを形成していると思います。こんな生活史を持っています。

 このように、田んぼのスケジュールに合わせた生き方をしている生きものが結構います。田んぼはある時期水が入って、ある時期水がなくなる環境です。こうした環境に適応する生きものも多いのです。水の生きものの話をしていると、ずっと水があるといいように思われることがありますが、必ずしもそうではありません。こうした田んぼに来る生きものは、ある時期水が入った時に集中してそこに集まってきて、繁殖終わった後に別のところに移動するサイクルを持っている生きものが結構多かったりします。幼虫が育つ6~7月ぐらいまで水があれば何とかなるという生きものなんですね。アキアカネに限らず、似たサイクルをしている生きものをこの後紹介します。ただ、最近の田んぼは、石川県では6月ごろから中干をして、結構カラカラになっています。水が抜かれると、トンボはそこでなかなか育ち切れなくなることがあります。トンボから田んぼがどういう環境かということが見えたりします。

 さきほど、トノサマガエルは準絶滅危惧という扱いになっているとお話ししました。アマガエル、シュレーゲルアオガエルなどは、指先に吸盤を持っています。窓とかにカエルがぺたぺた張り付いていたり、夜の自販機に登っているのを見たことがあるんじゃないでしょうか。こうしたことができるアマガエルと違って、トノサマガエルは吸盤を持ってないので、コンクリートが打ち込んであると上がれなくなってしまいます。したがって、ほ場整備によってコンクリート化されてしまった田んぼでは減ってしまうんですね。近代化は、田んぼをする方にはどうしても必要だと思いますが、生きものにとってはいろいろな影響があるということが見えてきます。

 モリアオガエルについては、木から卵をぶら下げてオタマジャクシが下にぼとぼと落ちてくるイメージがあると思いますが、意外と田んぼの中で直接卵産んでいることがあります。モリアオガエルの産卵は5月から6月くらい、他のカエルに比べると少し遅いので、その時期に田んぼに水がないことが多かったりします。そういう影響がない場所だとモリアオガエルがに来てくれる可能性があります。

 3月ごろからニホンアマガエル、ヤマアカガエル、今の時期に田んぼへ行くと、つぶつぶ状の卵があると思います。4月から5月ごろの田植えが近い頃には、アマガエル、シュレーゲルアオガエル、トノサマガエルなど、別のカエルがやってきます。6月ごろ大きな田んぼでは中干しで水が落ちるので、その時期までに他のカエルはオタマジャクシの時期を何とかクリアするか、もしくは何とか残った水のところに集まってやり過ごします。ただ、その時期にも実は水が残っていて、モリアオガエル、比較的繁殖時期が遅いツチガエルも田んぼに来ることがあります。カエルから見たら、田んぼだけでもこんなことが言えたりします。

 次に水生昆虫です。オオコオイムシ、ヒメゲンゴロウ、マダラコガシラミズムシ、コウベツブゲンゴロウ、なかなか聞いたことない名前が多いと思いますが、こうした生きものがいっぱい来ます。しかも、こうした水生昆虫にも繁殖のために田んぼに来るものがいます。小さい時に来るんですよね。もちろん成虫もいます。水生昆虫にとって、カエルにとって田んぼはとても重要な場所なわけです。生きものにとって、田んぼと周りの水がちゃんとつながっているかどうか。たとえばメダカだったり、もっと大型のコイですら地域によっては田んぼに入ってきます。水伝いに移動できれば、いろいろな魚が田んぼにやってくる。雨になると水たまりにアメンボが来ているのを見たことある人もいると思いますが、ゲンゴロウは自分で行き来するし、カエルは当然陸地伝いに移動する。トンボの成虫は周りの森とかに来たりします。

 つまり、田んぼの生きものは田んぼだけではなく、他の水場とかなり関係があるということなんですね。田んぼを田んぼだけではなく、一つの水系として周りの環境をワンセットで考えたほうが、いろいろな生きもののつながりが見えてくると思います。

 田んぼをやる方には歓迎されないと思いますが、イナゴの仲間がいます。イナゴは2種類石川県に生息しています。コバネイナゴとハネナガイナゴです。ハネナガイナゴは石川県ではレッドデータに入っています。害虫と思われますが、ハネナガイナゴは少なかったりします。田んぼで捕って食べた方もいるんじゃないでしょうか。私も試してみました。

 東京のレストランから、イナゴを捕って送ってほしいという依頼がありました。最初は石川県で捕っていました。能登はたくさん生息していそうなイメージでしたが、「田んぼ、イナゴなんかそんないっぱいないよ」「あんまりいないよ」って言われて。効率が悪かったんですね。ところが別の仕事で富山に行った時に田んぼ見たら、イナゴがすごい揺れるぐらい、跳び出していました。当時は能登に住んでいたのですが、富山まで行ってでも集めたほうが効率がいいという結論になりました。

 イナゴの集め方は、夜中に耕作放棄地とかでヘッドランプ付けて、手でがーってすくって集めます。最初は網振って捕っていたのですが、どうも体力は使うわ、網はすぐ破損するので効率がよくないって気付きました。むしろ手づかみでやるっていう。しかも夜中ですから、ちょっと怪しいですよね。しかも手がイナゴ臭くなるっていう、めったにない経験しました。ちなみに依頼してきた東京のレストランに、帰省ついでに行ってみようと思って調べたら、ランチで万超えていました。

 さらに、ハネナガイナゴがいますが、石川県で少ないと言われていましたが、意外といたりするのかな。農業試験場の調査で、どうもJAごとの農薬が影響しているということが報告されていましたね。イナゴを捕ってみると、いろいろな田んぼと農薬の関係も見えてくるかもしれないですね。

 ほ場の周辺に水路があれば、やっぱり魚であったり、貝とかがいたりします。ヤリタナゴがいたりホクリクジュズカケハゼという石川県のレッドデータ入っているハゼが意外な水路で簡単に見つかったりすることがあります。さらに、二枚貝の仲間が住んでいることがあります。それぞれつながりがあるんです。タナゴの仲間は二枚貝を産卵場所に利用する。さらに二枚貝の子どもは、ヨシノボリのエラに寄生して生活しているんですね。共生ではなく一方的な利用なんですけど。ヨシノボリがいなかったら、この二枚貝はそこで生息できない、二枚貝がいなかったらそこにタナゴは生息できない、そんなことも言えてきます。水生動物同士でも利用し合っているとか、一方的に利用している。

 したがって、ほ場を含めたこうした水系は、それぞれ独立はしていますが、同時に一つのまとまった環境としても見ることができるのではないでしょうか。田んぼは一時的に水が入る浅い場所、ため池はずっと水が残るけど、池干しという管理でたまに水が抜かれることもあります。川はずっと水が流れている。その周辺のそれぞれの環境に適応した生きものだったりするんですよね。アキアカネみたいなトンボは、幼虫の期間が結構短くて、1~2カ月とかそのぐらいかなと思ったら、逆に川にいるトンボなんかも幼虫の期間何年間もかけてじっくり成長するものもいたりします。そこに合った生きものがいたりするんですよね。

 当然、水が増えたり減ったりします。たとえば「池の水ぜんぶ抜く」という番組があります。池の水を抜いて外来種を捕っています。あれをやると外来種だけではなく、プラスマイナスで長い目で見ると生物多様性にもプラスになるんです。なぜなら、泥を流したりとか、水の濁りがリセットされるからです。むしろ里山って人が適度に木を切ったり田んぼに水を入れたり抜いたりとかする、そうした適度な人為的なかく乱があって、環境の変化がリセットされる。ほっとくとただ単に一方的に遷移が進んで、独り立ちできるような生きものだけが残っていくことになるので、むしろ生物多様性が下がってしまうんですよね。こうした適度な人によるかく乱がむしろあったほうがいいことが見えたりします。こうした水環境も適度に水が抜かれたりしないと、生きものがなかなか住み続けられないと思います。

 次はため池です。ため池は田んぼがあるところなら大抵あります。全国的には香川だったり兵庫の西のほうが多いでしょうか。雨が少なかったり、奥能登での珠洲みたいに里山は発展しているけど、あんまり川に恵まれてない地域だとため池が発達し、田んぼにとって重要であると同時に、生きものにとって重要な環境になったりしています。

 そこでは、私の専門であるゲンゴロウが出てきたりします。ちなみに、ゲンゴロウを見たことある人はあまりいないんですよ。そうすると、現物を知らないので、地元の人から「ゲンゴロウおったぞ」と言われて見せてもらうと全然別物だった。よくそういうことがあります。大きいカエルは全てトノサマガエルとか、赤いトンボは全部赤とんぼとか、大きいトンボは全部オニヤンマとかなるかもしれないですね。

 ただ、ゲンゴロウの他にもいろいろな水生昆虫がいるし、ゲンゴロウの中にもマルガタゲンゴロウとかいろいろな種類がいます。これも絶滅危惧に入っています。トンボでも全然違うものが出てくる。ため池とか湿地とかに抽水植物が茂っていると出てくる。アオヤンマとか割と希少種とされているものが出てきたり。またはオオルリボシヤンマ、やや寒冷なところにトンボが出てきたり、またため池といった水の中に、周りが山とか森との関係がありますが、クロサンショウウオが産卵していったり。クロサンショウウオは、割と止水、池とかにいて、石川からある程度の範囲ではそこそこ普通にいるかな。しかし、冬に産卵していることは知られていないと思います。そこで、能登で観察会やりました。2月の夜中にため池に行ってクロサンショウウオ見ようと。そんな時期に生き物いるの?とみなさんに驚かれました。行ったら実は結構活動して見られた。しかも、クロサンショウウオとい名前なのに白いといわれたりとか。

 実は冬の間も水温は陸上よりは安定するので、意外と水の中の生きものを冬でも観察できたりするんですよね。また、ビオトープ水田では、湿地化した環境があれば世界最小クラスのトンボと言われているハッチョウトンボが見られたりします。1円玉に収まるサイズと言われています。そこまで希少種ではないですが、サラサヤンマという湿地性のヤンマが来たり、エゾトンボっていうマイナーなトンボが来てくれるかもしれない。

 ある小学校の観察会を川で開催する予定だったのですが、川が少し増水して危ないということで、では水たまりでしましょうと言いました。最初がっかりされました。ところが、そこでやると途端に結構いろいろな生きものが見えました。さっきの田んぼの話と同じで、小規模な水域だったり一時的な水域にも、そういった場所に特化した生きものが来たりすることがあるんですね。オオヒメゲンゴロウというマイナーなゲンゴロウが出たりとか、うまくいくとホクリクサンショウウオが見つかったりすることもある。最初はがっかりしていた子どもたちも、あっという間に夢中になってくれました。もくろみどおりでした。ただ単に水がしたたっているだけの環境にも来る生きものがいるんですよね。  

 川でも観察会やってほしいという依頼が結構来ます。川でやるときれいなヘビトンボがいたり、またカゲロウの仲間、ナミヒラタカゲロウの幼虫がいたり、ヒトホシクラカケカワゲラの幼虫がいます。なかなかみなさん名前聞かないですよね。カゲロウははかないものだって言われます。成虫が1日ぐらいしか寿命がない。半日とか数時間のものもいるらしいです。ただ、その分幼虫の期間に時間をかけているタイプなんです。こうしたカゲロウがいっぱい見つかる。こうした水の生きものは魚にとっては重要な餌になったりするんですよね。魚とか水産資源を支えていたりします。

 国交省とか環境省でやっている川の生き物調べという資料があります。見つかった生き物によって水環境はこんな環境ですねと言える指標になっている。観察会をして、サワガニだったりトンボはたくさん水があるところ、ここは澄んだ水なんだなとこういうことが分かったり、逆にザリガニとかエラミミズ、こうした生きものしか見つからなかったら汚れている水なのかなとか、そういったことが分かるかもしれない。

 実際には単純に水がきれい、汚いという人の感覚とは違ったりします。必ずしもきれいな生きものがいればいいかどうか別の話です。たとえば川の上流だったらこうしたきれいな生きものにいてほしいのですが、逆に川の中流、下流なのにこんなきれいな水の生きものがいても、それはそれで不自然。むしろそうでなく、適度に栄養が入っている、決して澄んでいる水ではないけど、そうしたところに来てくれる生きものがいてくれるほうがむしろ健全だと思います。

 環境に変なことが起きているのではないか、ある程度は見ることができるかなと思います。こういうのも見やすい生きものは知る手掛かりにもなったりしますね。さすがに上流なのにザリガニとか汚い水の生きものしかいないなら、ちょっとやっぱりおかしいことになっているんじゃないかなと考えられます。

 そして、水の生きものは魚の餌として水産資源を支えたりしています。アユはコケを食べることが有名ですけど、実は水生昆虫も食べています。石川県ではゴリ料理が有名ですよね。カジカ、当然水生昆虫とか餌になる生きものがいないと住めないです。食文化とかそういったものにもちゃんと影響しているんですよね。

 川でも上流の澄んだところと違って、中流の流れはあるが人里に身近なところでは、コシボソヤンマという流水性のトンボが出たり、コオニヤンマというトンボがいたり。鳴き声がきれいなことで有名なカジカガエルが出たりする。オタマジャクシ、流れのあるところに適応するせいか、口が吸盤になっています。さっきの川虫は平べったくなって爪が鋭くなって石の下に張り付くことができたりとか、適応しているんですよね。

 そういった生きものがいたと思ったら、実は川にもゲンゴロウがいたりします。川に出るゲンゴロウは、池とか田んぼのゲンゴロウとある程度共通していたりはする部分はありますが、流水になった途端にがらっと種類が変わったりします。川でも下流であったり河口付近になると海と行き来しているものがいろいろ。中流、上流ですら、ちゃんと海とつながりがあって行き来している生きものがいたりしますが、海とのつながりも見えてくる。

 能登町の九十九湾、のと海洋ふれあいセンターのところがアカテガニの産卵で有名ですし、観察もできる場所になっています。海沿いの田んぼだったらそういったものが来ることもありますし、イシガレイというカレイの仲間も見つかったことあるんです。海の魚じゃないの?と思ったら、やっぱり行き来していたりするんですよね。ボラだったり、調査でアジ捕れたこともあったかな。やっぱり海と行き来している。

 今の時期、穴水ではアサザ漁が知られています。躍り食いで有名なシロウオがいたり。先日穴水の保育園の生き物観察に行く時に、川に行ってこれ捕ってきました。みんなのおじいちゃん、おばあちゃんはこういうのを捕ったりしているかもしれないんだよみたいなお話をしてきましたし、子どもはなかなかアサザ、シロウオのことは知っているわけではなかったとしても、大人はやっぱりよく知っています。

 視点を陸上に変えてみると、樹液に来る生きものがいます。雑木林は田んぼとか、ほ場、里山の一部ですから、人が木を切るから光が差して、若い木がまた生えてくる、そうした環境がちゃんと適度に保たれる必要がある。人が何もしなくなると、よく昔の燃料に使っていたという落ち葉をかき集めるのをやめてしまうとキノコも生えなくなるし、新しい草も生えなくなってきますし、木を切らなくなると老木ばかりになってなかなか若返らなくなってします。そんなことも生きものからも見えたりします。カブトムシもやっぱり来ますし、鳥も結構います。シジュウカラだったり、ホオジロの子どもなどです。

 ちなみに、私は津幡にある石川県森林公園を職場にしています。そこの建物のトイレ掃除に行っている女性職員が「きゃー」って声を上げたので見にいったら、クロサンショウウオがトイレに入ったとかありました。

 当然里山とかの環境って、当然草原だったり花に来る昆虫もいます。ちなみにこれ長寿草って結構石川では希少種にされている植物ですけど、そういった場所にはハナムグリの仲間がこうやって花の蜜を吸いに来ることもあります。アブといっても別に人を刺さないですし、受粉媒介してくれているかなと思います。樹液にも来るし花にも来るようなチョウもいたりします。

 こうした観察会をやってみた結果、最初は田舎の子どもでも田んぼに入ってなかったりしたのですが、積極的に自分から「田んぼを横断する」と言って、田んぼの中を歩いてくれる子どもが現れたりします。観察会に一緒に参加してくれた大人も夢中になったり、田んぼとか場所提供してくれている農家の方が「すごい励みになる」と言って、生きものに少し意識してみようかとか、いろんな影響が出たりします。いろいろな生きものがいて面白かったねって言ってもらえるには、しっかりした環境が、いろいろな環境が残って、そこにいろいろな生きものが残ってくれていることが重要だということが見えてくると思います。

 当然、同じ水環境でも赤とんぼこれだけ種類が変わってくる。いろんな田んぼだけじゃ駄目なんですよとか、ため池だったり湿地だったりちょっと高層湿原っていわれている環境だったり、川で流水だったり、そうした環境が変わることで赤とんぼと一言で言っても、いろんな種類が見つかったりする。

 

生物多様性と環境の多様性

 そうしたことから生物多様性、3つのレベルの生物多様性の中でも生態系の多様性、要はそれぞれ独立した環境だけどそれぞれ実は影響し合っていたりする。こうした生態系の多様性も見えてきますし、豊かな生態系とか環境が残ることで種の多様性、いろんな種類が出てくれる。種の多様性も見えてきますし、また遺伝子の多様性。実は地域ごとに微妙に違うんじゃないかっていうこともいつか分かるかもしれない。

 見ていると、同じ種類でも能登と金沢って微妙に住んでいる場所違うような気がするなとか、地域によってどうも利用する環境を微妙に変えているんじゃないかなということが見えてくる時もあります。

 そして、地形的なことも見えてくるかもしれない。石川県の6~7割は里山と言われていますが、能登になると陸地狭いですよね。震災の時、車による移動は大変だったと言われていますが、実は山は意外と低いし海に近い。前知り合いで山梨からよく出張で来られていた方からは、こっちのは山じゃなくて丘だと言われていました。川の源流域が海から数百メートルとか1キロしか離れてない。そんな環境でさえ川の源流域が発達しているのは珍しかったりします。石川県のそういう地形が見えてくると思います。

 たとえば、富山を車で走ったことある方は、知らず知らず意識していると思いますが、石川県に比べて川が広いですよね。石川県は川は大体そんな長くないです。それ他の県の川に行くと途端に広くなったりとか、全然環境が変わってくる。生きものを見ていると全然違うんですね。なかなかデータ化したりとかできてないですが、魚とかゲンゴロウとか、富山にいたほうがむしろ見つけやすかったりする印象はありますし、流水性のトンボ見つけようと思ったら福井とかに行ったほうが石川県より見つかりやすい印象があったりします。いろいろな環境の違いが見えてくるんですよね。

 こうした生きもの観察会を長く続けていくと、嫌な影響も見えてきたりします。定量的なデータではありませんが、とある小学校の同じ場所で観察を続けていたら、どうも生きものの種数が減ってきているということがありました。だんだん里山の管理が大変になって、続けたいけど田んぼは年取ったからやめるわってなって、ため池もどんどんヘドロ化してきちゃったんですよね。どうも生きものの種数もどんどん下がっていっていた、数も減っていた、そんなことがありました。

 

生物多様性の危機

 冒頭の菊地先生のお話でも、生物多様性4つの危機という指摘がありました。そこから里山の生きものが見えることって結構あると思います。たとえば、開発、外来種、地球温暖化であったり里山の縮小だったり。分かりやすいのは人の影響ですよね、開発。ちなみに私の地元の横浜には意外と田んぼやため池があったりしますが、大体汚いです。開発によって環境は失われますし、川もやっぱり。石川県でも川は管理され過ぎています。

 私の住んでいた横浜の地元は北部で自然が多いところでした。公園がセットになって池があります。ウシガエル、ブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、ミシシッピアカミミガメと外来種勢ぞろい。なんかすごいアメリカナイズドされた池でした。そうした外来種によって影響を受けてしまう。外来種についても国内外来種という問題もあったりして、北海道のトノサマガエルが入っちゃったとかいろんなことが起きているわけです。

 植物も外来種がすごく入っていて、身近なものでも既に交雑してる、もしくは外来種が広がっていまする。実は外来種は双方向の問題なので、日本からもジャパニーズ・ビートルとか呼ばれちゃって、マメコガネとか、あと身近なクズがアメリカでは確かグリーンモンスターとかそんな呼ばれ方しているのとか、すごく大変なことになっています。

 オオスズメバチがアメリカに最近侵入したことが話題になったとか、いろいろな話があるんですよね。温暖化したら、そこに適応していた生きものが減ると思いますし、雪解け水が減ると、どうも春の時期に水がたまる場所に水が減ったなっていうことも実感したことはあります。田んぼの害虫なんか、冬が雪が減るとむしろ生き残って、害虫として翌年に起こりやすくなったりする可能性あるんですよね。農業とか環境がほとんど変わってしまう影響が大きいと思います。

 今回の里山に関しては、人の働き掛けがむしろ縮小することのほうが危険じゃないかと言われています。私が以前能登で見たことのある田んぼ、現役だった頃の田んぼですが、放棄されてあっという間にただの陸地化してしまう。これでもうカエルの住み場所は一つなくなったわけですよね。

 私はゲンゴロウのことやっていて、みなさんからよく「手つかずの自然に行ったほうが生きものがいっぱいいるんじゃないか」って言われるんです。むしろ逆で、そういったところに行くと、せっかくため池があっても陸地化して跡形もないとか、そういうことが多いんです。むしろ適度に人の手が加わってほしい。ただし、加わるにしても農薬まいた直後に生きものが死んでたりとか、田んぼやる方にとっては仕方ない話かなと思うんですが、やっぱり近代化され過ぎると生きものにとって大変な環境になってしまっています。中干しとかの影響もそうですね。

 ただ石川県、特に能登で起きている問題は過疎高齢化ですよね。農業の担い手がどんどん減って田んぼが荒れてしまう。しかも今回の震災によって、もっととんでもない影響が出ていると思います。地震の後、能登に行く機会ありましたが、比較的町中に近いところの田んぼは残ってくれていましたが、ちょっと奥地でやや離れたところは途端に耕作放棄地がぐんと増えたなんていうのがありました。これで生きものはどんどん減っていく。

 ため池もほっとくとこうやって泥がたまって、最終的に陸地化しちゃうんですよね。こうしたことがどんどん起きています。地図を見ると、ため池のマークあっても、ずっと人が入ってないとこんな状態になっちゃったりする。放置された森とかこういった場所はただただ伸び放題になって若返らなくなっちゃう。こういったことがどんどん起きていくんですよね。私が保全にかかわっているマルコガタノゲンゴロウという希少種の生息地もまだ残ってはいるものの、管理されてないから、水がすごい濁ってきて、だんだん減ってきていることは見えてきています。

 だから、本来は適当に水を抜いて流して、また違う水が入ってきてというサイクルがあってほしい環境だと思います。シャープゲンゴロウモドキの生息地になっている沼も、実はこれ沼地といっても元はため池だった。むしろ放置されて沼地化した時にシャープゲンゴロウモドキが結構来てくれたものの、さらに放置されたことで埋まりかけて、こうなると希少種の住む場所もまたなくなっていくわけですよね。こうしたことがどんどん起きています。

 では、どうしたらいいか。また里山を活用してみましょうとか、そうした場所どんどん水を入れて変えてみましょう。たとえば、マルコガタノゲンゴロウとかそういったゲンゴロウが結構いる池でしたが、水が汚れてしまった時、うちの先輩がアドバイスしたのは、重機で泥かき出しましょう、と。なんか自然破壊しているようにしか見えないですけど、ちゃんとその後再生しました。ゲンゴロウ増えました。

 みなさんにこれやってくださいとか言っても大変、そんな簡単にできるわけではありません。せめてこういう現状を知って、自分たちにできることを少しでもやれたらなとか、私でもできること、こういうことを伝えるだけでも違うと思っています。

 

生きもののことを伝えよう

 こうした里山の生物多様性を知って、少しでもちゃんと周りに伝えてみようと意識してみよう。では、何をしたらいいかといえば、難しいことをしなければいけないわけではなく、身近な観察会が結構あったりします。こういったところに参加してみて、こんな環境が、里山が残ると、こうした生きものがちゃんといるんだって分かったり、学生にビオトープ体験してもらったこともありました。田んぼだった場所を掘り返して水がたまるようにすると、あっという間に生きものも集まるようになってくれたんです。ただそういった場所は変異も早くて、すぐにまた泥が入ってきて埋もれちゃうんですよね。学生をとかも、ここぞとばかりに働いてもらったらやっぱり即再生してくれた。

 観察会をセットにすると、自分たちの活動でこんな生きものが増えるんだ、戻ってくるんだ、と分かると思います。観察会に地元の人にも入ってもらう、子どもらにも来てもらったり、いろんな周りの大人にもいろいろ巻き込んで参加してもらったり、そうしたところを里山歩きの場所にして、みんないろんな生きもののことを知ってもらう。

 その例として、たとえば金沢市の浅野川は女川、犀川は男川と呼んだりしますが、清掃活動している団体があったものの、清掃活動の成果はなかなか見えづらい。たまたま知り合った方から、生きもののことを教えてほしいって言われて観察会やったら、川でこんな生きものがいるんだと実感してもらうことができました。東山でお茶とか踊りとか着物とかの活動やっている方たちが、こういった活動ができる。いろんな例があるんじゃないかなと思います。

 難しいことじゃなく、とにかく生きもののこと知って見て触れる機会を持っていただけたらいいなというのが私から伝えたいことです。ありがとうございました(拍手)。

 

菊地:話もいいですが写真もいいですよね。すごいと思いました。私は大ざっぱで、カエルはカエルとかトンボはトンボという人間なので、野村さんのお話を聞き、きちんと自然を見なきゃいけないなとあらためて思ったところです。

 

 

 

【対話】

 

Aさん:最近よく外来種のことを考えるんです。特に今、大きな黄色いヒメリュウキンカがたくさん咲いていて、ヨモギとかを駆逐しています。私はできることとして庭にあるヒメリュウキンカをあるところは残して、あるところはむしっているんです。ヒメリュウキンカはキンポウゲ科で、一応毒性もあるので素手でやっちゃいけないって書いてあるんです。私は漆の仕事をしているので素手で取っています。私たちの庭とか周りの雑草にちょっと目を向けていただいて、外来種と在来種を考えていただければ。

 ヨモギなんかは昔から日本にあって何十種類もありますが、ヒメリュウキンカとかいろんな在来種じゃないものが、在来種を覆ってしまう。葉っぱがぱーっと丸く大きくなるので、他の種が入れないし、とにかく根茎が付いていて強いんですよね。繁殖力も強くて、ほっとくと絶対増えるんです。そういうものに気を付けて庭の草むしりをしていただければいいかなと思います。

 

野村さん:外来植物、外来種のお話でしたけど、そもそもどれが外来種なのか、みなさん知らないで過ごしている方も多いと思います。身近な植物だと思っていたけど実は外来種だったりします。たとえば珠洲とか奥能登は外来動物少ないのですが、植物は田んぼ周りで平気でがんがん生えていたりするんですよ。そのことを全然知られていないです。名前知らなくても、現物を見たらこれヒメリュウキンカだとすぐ覚えていただけるかもしれないです。

 

Aさん:キンポウゲ科ですが、毒がすごくあります。子どもたちが摘んできたり、それから口にしたりしたらちょっと危ない植物なんですよね。オオイヌノフグリとかヒメオドリコソウはそんな毒性もないんでほっといても大丈夫なんですけど。

 

野村さん:私も植物そんな詳しいわけじゃないのですが、外来種はそもそも問題なのに、みなさんなかなか知る機会がないです。外来種に限らず、そもそも生きものを野外に放つことはしてはいけない。ヒメリュウキンカはおそらく観葉植物か何かによって広がったのかと思います。

 

Aさん:ヨーロッパ、特にイギリスにあるものがこちらに入ってきたんですよね。

 

野村さん:そもそも、野外に生きものを放してあげることがいいことだと思われているケースがすごく多いんです。私の職場でも、おじいちゃんが笑顔で孫の捕ったカブトムシを放しに来たという人もいます。別のとこで捕ってきたものだったりします。ニシキゴイを放したいんだけど、放す場所あるかという問い合わせの電話がかかってくることもあります。このくらい世間とのギャップが大きいんですよね。今は、一度捕ったものは最後まで飼わなきゃ駄目だといわれていますし、放流とかも全然意味もないし、むしろ悪影響だからやめたほうがいいという方向になっていますが、全然知られてないのはすごく残念です。伝えたいのですが、生きもののことに関心持ってない人にいっても、「あ、そうなの」でおしまいだったります。

 

Bさん:初めて参加しました。新潟県新潟市の日本自然環境専門学校から来ました。金沢生まれで今実家に帰ってきています。2年間、生物多様性とか農業について学ぶために新潟で1人暮らしして学んでいます。この会に参加してすごいいいなと思ったのが、農家さんと生物の専門家との間にすごい認識の差がある、生きものに対して認識の差があることをおっしゃっていたことです。

 私も新潟県内で生きもの調査のイベントだったり、アルバイトで環境調査をしたりしています。その業務で石川県の放棄水田の調査もさせていただきました。とても貴重な生きものがいるのにグリホサート使ったり、ネオニコという強い農薬を使ったりする人もいます。用水路もとても大事で、コンクリートのU字溝を使うとトノサマガエルがいなくなるし、実はそこにアカハライモリもいたりします。そういうところも気にせずに整備したり、農薬を使う人が多いなと感じています。最近になってジャンボタニシ入れたとかも聞きます。まだ石川県も新潟県もないと思いますが、ジャンボタニシ入れて取り返しの付かないことになったと話もよく聞きます。

 新潟県の佐渡はとても自然豊かでトキが生息しています。トキを保護するために農家さんも協力して「ふゆみずたんぼ」をしたり、田んぼの横にわざと水たまりを作るんですよ。それは特に稲を栽培するためではありませんが、ふゆみずたんぼを作ることによってトキが冬にもそこで餌を捕れる。農家さんも専門家と協力して生きものを守ってこうといういい取り組みをしているところも見てきました。

 野村さんに質問したいことが一つあります。農家さんと専門家の認識をどうつなげていくか、どうすれば農家さんが生物多様性についてもっと高い意識を持ってくれるのでしょうか。野村さんとして、こういうことしたら良かったなとか、こういうイベントをやったら農家さんの反応もすごく良かったということがあれば、教えてください。

 

Cさん:金沢市内に在住しています。佐渡の農家さんが、農業にはあまり意味のない水たまりを作っていることはすごいことだと思いました。外来種の話も、ヒメリュウキンカもヒメオドリコソウも外来種と知っていましたが、きれいだなと思って写真を撮ったりしています。野村さんの飛んでるトンボの写真すごかったですね。外来種とは知っていますが、外来種も何とかなるんでしょうか。もうどうしようもない、受け入れるしかないのかななんて思ったりもしています。どういう態度を取るべきか、教えていただければと思います。

 

野村さん:とてもハードルの高い質問ですね。現場でやっていてもなかなか答えが出ない、私に限らずみんな苦戦していることだと思います。うまくいくとしたら農家の人たちに一緒に観察会とかに参加してもらって反応を見てもらうことでしょうか。子どもの反応はやっぱりダイレクトに伝わったりしますよね。

 ただ、そこに来てくれるかどうかは別問題です。珠洲の小学校の観察会でも、必ず地元の農家に田んぼを提供していただいています。とても温度差があって、一緒に参加してくれて一緒に喜んでくれるところもあれば、「じゃあ分かった、使って」とか「そういう話があるなら」みたいな、「まあ」みたいな感じでそれ以上関わってくれないところとかもあります、そういうところで来てもらうのは難しいですよね。

 やはり関心のない人に伝えるのはなかなか難しい。「虫、嫌」とかいわれて、もうそれで話がおしまいとか。この先が大事なのにできないとか。地道にやっていくしかないのですが、ただそれには限界があります。対症療法ではなく、根本からやってほしい、そもそも外来種持ち込んじゃいけないという考え方自体がスタンダードになって欲しいということがあります。

 田んぼの周りに水を入れる場所は、佐渡で江と呼んでいるやつですよね。そういう田んぼがたまに残っていたりします。これがあるとトキも残ってくれたりしますので、すごくいいですよね。

 

菊地:江は能登にもありますね。私は生きものの専門家ではありませんが、農家の人たちと生きもの観察をやったことはあります。子どもが田んぼに来るのは、農家の人からすると非常にいいことのように思えます。高齢化が進むなか、生きもの観察すると子どもが来て、その親も来る。そういう人の流れができることについては、喜んでいる人が多いと感じたりします。

 ただ一方で、農家の人のいろんな苦労とか大変さも理解して、お互いが理解しないとこういう問題は難しいかなと思います。農家の人にもいろいろな事情があるし、生きものを考える人の事情も当然ある。お互いがどうやって学んでいくか。

 

Dさん:外来種と文化、金沢の文化を考えたりもします。その典型的な例が、お茶をやっている人たちがお花茶時に、ヒメリュウキンカをよく使っていることです。夏になるとタカサゴユリとか。生けている人たちに「これ外来種じゃないですか」といったとしても「え、何ですか、それは。これは昔から使っているんですよ」といわれます。われわれが外来種といているものは全然受け付けられないです。ヒメリュウキンカ、すてきな名前じゃないですか。タカサゴユリもすてきな名前じゃないですか。何で使って悪いんですかって。ものすごく私も違和感をおぼえますが、やめなさいとはなかなかいえないです。おそらく、お茶花の歴史の中でずっと使われてきたものなので、難しいと私は思います。どういうふうにしてこのハードルを越えたらいいのかなと感じます。

 

野村さん:難しい質問ばっかりで試されているような気がします。一般の方たちにいってもなかなか難しいかなっていうのは正直なところです。これは飛び道具的なやり方と思いますが、もう生け花のトップの人たちに訴えるとか、そういうのじゃないと難しいのかな。そういう人たちが変わったら多分すごく変わってくれると思うんです。あとは、普段からもっと外来生物に関する教育がちゃんと広がってくれないと思います。

 

Aさん:たとえばチューリップも外来種ですよね。ラナンキュラスとか、ほんとに美しい外来種の植物を栽培してまで作ってますが、あれはあれでいいと思うんですよ。

 逆に外来種を全部駆逐してしまったらいけないと思うんです。だからここはヨモギの里、ここはヒメリュウキンカの里みたいに、ちょっとヨモギも残るような配慮が必要だと思うんですね。ヒメリュウキンカはヒメリュウキンカで残すとこがあっていいと思うし、ヨモギはヨモギでヒメリュウキンカが生えちゃったらヨモギは全滅するから、そこだけはヒメリュウキンカ生えさせないとか、そういう頭で在来種を残す場所を作ってほしいと思います。

 

菊地:鹿児島の奄美大島にアマミノクロウサギという固有種、絶滅危惧種が生息しています。沖縄とか奄美地方には、ハブ対策として人為的にマングースが放たれた歴史があります。そのマングースによって、クロウサギが絶滅の危機に追いやられ、生態系が大きく変わりました。環境省は大変な資金と人員を投入して、つい最近、奄美のマングースを全滅させたと宣言しました。一方、人から聞いた話なので不確かなことではありますが、逆にクロウサギが増え過ぎて違う影響が出て来るという懸念もあります。生態系はいろいろなバランスで成り立っているので、何か退治したら何かいいという話でも単純ではないんじゃないか。もちろん、既存の生態系に大きく影響を与えるものは排除しなきゃいけないのですが、いなくなった場合また違ういろんな影響が出てくると思いますが、どうでしょうか。

 

野村さん:一つ問題解決したら次の問題が起きる。たとえとして大き過ぎる話かもしれませんが、歴史でいえば冷戦が終わって世界平和になるかと思ったら、今度は民族紛争やら宗教対立が起きちゃったとか。結局それを抑えたら違う問題が噴出しちゃうことがあると思います。とにかく問題解決はこれでおしまいではなく、次はこれだっていうのは常に対応し続けるしかないかなと思います。絶対に問題は起こり続けるということは考えておいた方がいいと思います。

 

Aさん:種の保存は大事ですよね。その種がなくなる、地球からなくなるっていうのは悲しいです。

 

菊地:そうですね。ここは越えてはいけないというラインはあるのでしょうが、この問題はそこ以外はかなりグレーゾーンみたいなところがあることでしょうか。だから一つの解決策をやれば全部が解決できるという話では決してないと思うんですよね。

 

野村さん:種の保存という話が出ました。一回いなくなると戻らないことが大問題です。いなくなってもいいということが続いていると、おそらくどこかで取り返しの付かないことが起きるんですよね。

 ゲンゴロウでいけば、東京、神奈川は絶滅扱いになっていますし、地域レベルでは相当絶滅になっています。それはもう戻らない。こっちにもいるからいいというけど、それもいなくなるかもしれない。そもそもそっちにいるゲンゴロウと、かつて東京とかにいたゲンゴロウは別ものかもしれない。今、能登は地震で大変なんで、能登の生活とか文化がなくなるかもしれない時に、生きものの話かなんてとなるかもしれませんが、とにかく時間は戻らないことは少しでも知ってもらう必要があるかなと思います。

 

Eさん:金沢大学生命理工学類の学生です。奄美大島の話をしようと思っていたんですけど。そこで関連して。奄美大島の件は外来生物の根絶までは成功だったので、成功した理由を自分なりに考えています。やはりアマミノクロウサギみたいな象徴種がいたおかげで、行政だけでなくて市民も協力して取り組めた問題だったと思います。石川だと何が象徴種として使えるか分からないですけど、そういった象徴種が生まれると農家さんと専門家の意見の食い違いも減って、みんなで協力して環境関連の問題に取り組めるんじゃないかなと思いました。石川県でもし象徴種を作るとしたらどういった種なのかなと気になりました。

 

野村さん:ハードルの高い質問ばっかりですね。取りあえずいえば、これから放鳥されることになっているトキとかでしょうか。私の立場的にはゲンゴロウといった生きもの大事にしてほしいと言いたいのですが、やはり華のある生きもののほうが影響力強いんですよね。したがって、トキと表向きにはいっておきます。本音では違うものを推したいんですけど。

 トキ以外で、生きもの保全に向けて何か華のある生きものを見つけようと思ってもなかなか都合いいのは思い当たりません。私のほうが聞きたいというのが本音であります。

 トキのように田んぼの多様性と絡みやすいとか、ストーリーをつくりやすい生きものがいいと思います。魚だったら、こんなおいしいんだぞとか、そういう資源としてすごい大事なんだぞといえる。写真きれいに映えるものがよかったり、いろいろインスタ映えですかね。

 ゲンゴロウはそうかっていうと、困ったなって。ゲンゴロウ見せて「ゴキブリみたい」っていわれることよくあります。よく見るとかわいいと推してもらえるとうれしいのですが、逆に変な盛り上がり方してもらっても、それはそれで取り返し付かない気もするので、なかなか推し方は難しいと思います。華のあるストーリーのあるもの、ただし裏でちゃんと違う、本当はこれも大事なんだということを進めていくことが大事かと思います。

 

Aさん:ギフチョウとか。

 

野村さん:ギフチョウも推しつつ、ギフチョウのためには、カタクリのためにはとかちゃんとそういう前座的なストーリーを作るのが大事かなと。私自身もこれがいい、どうしたらいいのかなっていうのは難しいですよね。

 

Fさん:野村さんほんとにご苦労様です。ゲンゴロウの研究をしている野村さんの姿は知っていますが、だんだんゲンゴロウが少なくなってきている。地域、社会、何が原因で少なくなっているのか、率直な感想を聞かせてください。もう一点は、今トキの話が出ていますが、トキの餌は何でしょうか。

 

野村さん:ゲンゴロウに限らないですけど、要は里山の管理が追い着かない、そういった人がいなくなっていることでしょうか。人の手が入って里山が保たれないと生きものが残らないこと自体が知られていないです。では里山をもり立てるにはどうしたらいいか。そもそも人がいないので、絶望的な気分になりますけど。

 少なくとも、それを伝えていかないといけない。それに興味を持ってない人たちにもそれなりには伝わらないといけないという時、そこでちょっとつまずきかねないことはあります。トキ自体は田んぼであんまり餌を選んでないのではないでしょうか。トキにそんなに詳しくないんで。ただ田んぼに来る生きもの、餌としてのポテンシャルある生きものといえば、カエル、魚、多分餌になると思いますよ。イナゴも餌になるかもしれない。

 先ほどの話と同じですが、アユとか水産資源も含めて餌生物が必要だっていう時、何が必要かなと、そもそもどこにどんな影響を与えるか、そういう情報すらなかなかなかったりするんですよね。

 生きもの調査で紛らわしい種類が出た時、これ石川県の分布種でいいのかなとか結構迷うことがあります。そういった情報もやっぱり必要です。ベースの部分を上げていかないといけないと思います。

 

Aさん:クマとかイノシシとか、ニホンカモシカとかが、サルとかも害をもたらすようになりましたよね。里山が駄目になったことと繋がっていると思います。白山にスーパー林道が通ったりとかいろいろなことがあって、害獣がいっぱい出てきました。生態系が崩れたからだと思います。私たちの学生時代まではそんなことなくって、山行かないとクマに会えないという感覚でした。今は里まで出てきますし、夜は歩けないんですよ。そういう観点からも生態系の大切さをもっといってもいいと思います。

 

菊地:害をもたらす生きものが人間に近づいてきている話で、山を利用しなくなったという里山の危機と非常に密接に関係していると思います。

 

野村さん:クマやイノシシとか、さきほどのトキみたいなストーリー作る。華を持たせやすいとかと逆で、これはこれで結構伝えやすいかなと思います。ちょっと危機をあおるような感じになるかもしれませんが。去年は大問題になり、相当報道されて、里山と里の境界がなくなっちゃったとか、防げなくなったというか。そういう意味では伝えやすいのかなと思います。もちろんそれだけでは伝え切れないと思いますが、一つの方法と思います。

 

菊地:クマは人間を襲う可能性もある生きものなので、里山をどうするかという問題について、人びとが真剣に考えるためのきっかけとなる生きものと思います。金沢大学はよくクマが出ますから、怖いです。里山に対して、もう少し人間が入って、ここは人間の領域ですよという形の利用の仕方をしないとなかなか難しいと思います。

 今日は、たくさんの生きものが登場しましたが、その大切さをどのように表現できるのでしょうか。全部が大事ですよといっても、なかなか難しいですよね。私がかかわっているコウノトリの場合、コウノトリは大事なのですが、一方野村さんみたいな方もいて、コウノトリだけではなく、こういう地味な生きものが大事なんですよと考えている人たちもいます。そうはいいつつも、コウノトリは生態系のトップであり、コウノトリが生息できることは、いろいろな生きものが生息できることという理屈は成り立ち、ストーリーを作っています。

 

野村さん:やはり日の当たるところだけではなく、それ以外のところも見てみましょうとか、そういったところは考えていきたいなとか、知ってほしい、伝えられたらなということは考えています。ただ、とても難しい。私だけではなく他の専門家も多分難しいと苦慮すること多いと思います。

 

菊地:もちろん専門家だからといって、必ずしも解決策持っているわけではありません。今回のように、現場の悩みをいろいろとお話ししていただけたら、一緒に考えることはできると思います。

 

Gさん:今回の震災があり、能登の里山、特に奥能登の現状はかなり厳しいものがあると思います。人がどんどん減っていくに当たって、里山もどんどん壊れていくことになっていくと、野村先生がライフワークでやっている生きものは、どんどんいなくなっていくだろうなと思いますが、現状はどんな感じでしょうか。

 

野村さん:まだまだ分からないことも多いです。海は報道されているので、みなさん知っているようにとても隆起しています。既に壊滅的な影響とかは出ているとは言われています。

 里山とか水の生きものに関しては、長く見ないと分からないことではありますが、やはり里山が放棄されて住める場所がどんどん減っていく。ただでさえ先細りし続けていた生きものが、奥能登の過疎高齢化が何十年分ぐらい一気に進むのと同じで、生物多様性のほうも一気にダメージがくるとは思っています。たとえば、ため池とかでも地震と水害の影響でやはり堰堤(えんてい)が壊れていたとか見ましたし、水ためられなくなっているところとか。比較的町に近いところだったらそうでもないけど、ちょっと山里に行く途端、あれ、ここも放棄地になったのっていうぐらいにいきなり耕作放棄地とても増えているんですよね。

 年を重ねるごとに一気にダメージが目に見えるようになってくるのかなと危惧はしています。ただ、まだまだ分からないことも多いので、ひょっとすると蘇生する場所、一部は湿地化して一時的に増える場所もあったりするかもしれません。それよりも減るほうが多いかな。長い目で見ていかないと分からないことだと思いますが、いいことはないと思います。

 

Gさん:情報提供ですけど、私も実家が能登で、週末は向こうに行って農作業とかの手伝いはしています。3月中ごろ、もうそろそろ田植えが始まりますので、農業用水の用水路の掃除を集落総出で行いました。周りを見ると活動しているのが、70代、80代で、最年少が私の53歳。結局若い人が誰もいない。森林とか山のほうも高齢化が進んでいるので誰も入っていかない。なので、野生動物がいっぱい出てくる。現状はそんな感じです。

 70代、80代で動いている人たちは、一人一人いなくなっていく。そうすると田んぼとか結局なくなっていく。今、お米がないとかいわれているじゃないですか。きっとそういうことが続くと思うんです。作っている人たちがどんどんいなくなっていって、近い将来にひどいことになってくと思うんです。

 

Hさん:今、何をすればいいのかという話が多かったと思いますが、それのヒントを得るために歴史をさかのぼって、人びとは一体どういうことをしてきたのかを知りたいと思いました。里山の生物多様性がずっと下がっているというお話がありましたけど、歴史のどこかの段階にピークがあったわけですよね。その時の人びとの活動は生物多様性を上げるために効果的、生物多様性という観点から捉えてプラスの方向が持てたのかが気になっています。その当時の人たちの生態系に対する人為的なかく乱が、たまたま生物多様性の観点から見てすごく良かったという話なのか、生物多様性を上げることが人びとの暮らしを豊かにすることに直結していたからなのか。もしくは人びとが強い生物多様性への意識を持っていたのかとか。そういう背景をもしご存じだったら、知れるとありがたいなと思った次第です。

 

野村さん:少なくとも当時の人たちが生物多様性を意識していたことはないと思います。むしろ生活のために必要だからしていたことが、たまたま生物多様性に直結していった。または必要なものを守るためにはそういう作業が必要だった。たとえばマツタケは、適度に管理をしないと出ないです。したがって、必要だからやっていたのと、生物多様性に必要なものを守るためにやっていたことが結果としてっていうふうな、そこじゃないかなと思います。

 昔も時代によっては木を切り過ぎて山がはげ山になっていた時代もありますので、昔が良かったかどうかもなかなか難しい。そして昔のデータがないのでわからないことが多いです。ただ生物多様性のためにというより、ちゃんと生活していたら生物多様性が保たれるというのが本来の理想なのかなとは思います。なかなか難しいことも多いと思います。

 

菊地:生物多様性という言葉自体が最近の言葉なので、そういう捉え方は基本的にしてなかったはずなんですよね。いろいろな生きものがいるという話はあったかもしれませんが。

 今日は、里山の生きものについてたくさんお話ししていただきましたが、人間の暮らしとどのように関係しているのか、これから関係を作っていくのかという話だと思いました。ストーリーをどう作るかとか、そこに何か必要なのか、山に関わるとか田んぼに関わるとか、そのための理由みたいなものがないと、生きものが大事ですよ、生物多様性が大事ですよといっても、どうしようもない状況があると思います。

 だから、里山の生物多様性は社会の問題だと思います。生きものの問題ですけど社会の問題なのです。どういうふうに私たちが、特に若い人たちが関わっていくかについて、考えなければいけないのかなと思いました。そんな感じで理解してよろしいでしょうか。

 

野村さん:大丈夫だと思います。

 

菊地:ありがとうございました(拍手)

 

 

今回も石川県立図書館の担当者の方に関連図書を集めていただきました。

いつもありがとうございます

第12回 いしかわ生物多様性カフェ(8/6)アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:32名

回答者数:26名

回答率:81.3%

 

今回は初めて参加した人が多い回でした。

 

①年齢(回答数26)

 

10代:7.7%(2名)、20代:7.7%(2名)、30代:7.7%(2名)、40代:19.2%(5名)、50代:30.8%(8名)、60代:19.2%(5名)、70代以上:3.8%(1名)

40代以上人の参加が多い回でした。

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数25)

 

 

男性:48.0%(12名)、女性:52.0%(13名)

 

 

 

 

③職業(回答数25)

 

 

会社員:12.0%(3名)、公務員:16.0%(4名)、教員:8.0%(2名)、自営業:8.0%(2名)、主婦/主夫:12.0%(3名)、パート/アルバイト:8.0%(2名)、学生:16.0%(4名)、無職:16.0%(4名)、その他:4.0%(1名)

 

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが7.7%(2名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが15.4%(4名)、県立図書館が7.7%(2名)、いしかわ自然学校が15.4%(4名)、クチコミ7.7%(2名)、金沢大学のアカンサスポータルが15.4%(4名)、ダイレクトメールが23.1%(6名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数26)

 

 

初めてが46.2%(12名)、2〜5回目が15.4%(4名)、6〜10回目が23.1%(6名)、11回以上が15.4%(4名)でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数26

 

大変満足:61.5%(16名)、満足:34.6%(9名)、どちらともいえない3.8%(1名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

 

・身近な野生動物の問題について要点が詳しくまとめられており、講義と同じぐらいに学びを得られるような時間だった。

・身近な問題(クマ)なので、話を聞いてみたいと思っていました。

・美しい森林は人が管理している面が多いことに気がつきました。人口減少が一番獣害増につながっている気もします。

・大型動物の個体数の100年の推移の全体像が納得できた。

・野生動物が人里に現れることについて、話されていた色々な原因頭について、色々なデータを基に再整理されて、現状についてとても理解が進んだ。

・大変興味深いテーマだと思います。

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数26)

 

 

大きく変わった:11.5%(3名)、変わった:57.7%(15名)、どちらともいえない:11.5%(3名)、あまり変わらない:19.2%(5名)、変わらない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

 

・生物主体のお話が多く、人間生活に関わる内容は既知のものが多かったため。

・クマの性格的な個性。人を恐れるクマと恐れないクマ。そして学習能力の高さ(クマハギの血縁伝承とか)。

・深くなった。

・基本的に元々考えていることとそれほど変わらないと感じています。ただ毎回とても勉強になっています。

・元々、里山地区で田んぼをしており、意識しているが、より深まった。

・問題意識の範囲は広がった気がします。

・ニュースや本、人と生きものの生活環境について目を向けるようになり、より考えるようになりました。もっと多くの人にニュースの過剰な報道に左右されない正しい知識を知らしめたいですね。

・今、自分の生活に直接関係はないが、これから考えていく必要があると感じた。直接関わっている方達の大変さを知りました。

・金沢南部四十万地区で竹林整備をしているNPO法人みんなの畑の会に属しています。竹の伐採、竹の資源活用に取り組んでいますが、”緩衝帯づくり””地域の活性化”に大いに役立つ意義があることを、お話を聞いて改めて継続していこうと思いました。結局は、「誰がやる!」という点が重要で、地域でみんなでやれるシステム作りも重要なのだと思う。

・特に人の暮らしの影響について視野が広がった。

・人里に出てくる野生動物が増えたのは「森林破壊」ではなく、放棄地の増加、捕獲減少など都市部への人口集中が主な原因の一つとしてあげられることを学びました。

 

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数26)

 

参加したいと思う88.5%(23名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:11.5%(3名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

 

・チェルノブイリ原発など海外での生物・環境に関する話題

・気候などの話題

・鳥獣対策についてもう少し学びたいです。あと引き続き国内外来種問題です。

・海洋生物と海洋問題

・妖怪から生物多様性を守る

・様々な分類群の生き物から見た生物多様性

・生物多様性の維持に向けて大学生(若者)ができること/金沢の用水/(地方)の動物園

・里山ビジネス

・ジビエとそのファンクラブみたいな活動があれば紹介してほしいです。供給サイドはご紹介があったが。

・ガバメントハンター。世界各地の獣害対策(クマ、イノシシ、サル、シカ)

・ジビエと環境保全

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

 

・ナラ枯れの原因やクマに対する影響については興味深く学びになった。役所の仕事と猟友会についてガバメントハンターの話題は面白かった。

・獣害対策の難しさ・・・。痛感しました。方法を思いつきません・・・。

・今回もとても学びの多い時間でした。知らないことも多く、とても参考になりました。五箇山での自然調査地によくクマが出没するので、この内容を仲間にも伝えたいと思います。

・様々なデータや他の方のお話をもとに、人間と野生動物の共生について深く知ることができてよかった。

・色々な方のお話がとても勉強になりました。

・とても勉強になりました。

・詳細なデータで裏付けされていて、説得力のある話でした。

・普段はなかなか意見交換できない方々と直接お話ができて、大変有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

・知らなかったことをたくさん知ることができました。

・クマ=駆除だけでなく、種子散布、森をつくるのに必要数いてもらわないととも思います。頭数はどのように決めているのでしょうか?クマが人を恐れなくなったのを、クマの個体数管理だけでなく、人里が危ない所だけ学ばせる教育する(母グマが子グマに学ばせる)方法をみんなで教えられないか?年間400頭捨てられる ジビエ食べる広報や販売店増も考えられないか?

・クマや野生動物が町に進出する原因のニュースと今回、森林面積がほとんど変わらないなど、知らなかった事実。単なるブナの競作のみだけでなく、薪炭林蜂起のナラ枯れやシカの食害でカモシカが減少。人が食べるために捕獲しなかった原因など、興味あるお話がたくさんありました。明治の輸出と大乱獲も知りませんでした。

・実感を伴うことの大切さ。様々な経験・立場の考え、思いを聞かせていただけたことなど、学ばせていただきました。ありがとうございました。

・体系的に説明していただき納得

・大変有意義な時間をありがとうございました。

・白山に行ったときにイノシシ肉を食べたことがあり、最初は野生動物を食べることに少し罪悪感がありましたが、生態系に良いと知って楽になり、良い体験だったと感じました。

 

第11回 いしかわ生物多様性カフェ(5/16)開催報告

第11回 いしかわ生物多様性カフェ記録

 

開催日時:2025年5月16日(金)18:30〜20:30

 

開催場所:石川県立図書館研修室

 

テーマ:みんなで話そう!つくろう! いしかわの自然共生社会

 

参加者数:42名(一般参加者38名+スタッフ・関係者4名)

 

■第11回 いしかわ生物多様性カフェはフリートークの回。

19人の方が、ご自身の活動や考えなどについてお話しされました。

その記録です。

 

菊地:今回のテーマは「みんなで話そう!つくろう!いしかわの自然共生社会」です。特定の話題提供者はいません。一人一人が話題提供者です。もちろん、聞くだけでも結構です。ご自身の話を聞いてもらいたい人は、ぜひ積極的に発言してください。一人3分程度という時間のなかで、自分の考え方、活動をお話ししていただければと思います。

申し込みフォームに事前に話したい内容がある方には書いていただいています。18の内容が書かれています。

事前には書いていないけど、私こんなことやっていますよとか、こんなこと話したいですよとか、人の話を聞いて自分も話してみたいと思えば、遠慮をせずに手を挙げていただければと思います。今日はフリートークなので、よろしくお願いします。

 

 

 

Aさん:金沢市内に在住しております。1年ほど前に定年退職し林業の事業体にいて、時々、昔の仲間と林業の仕事を手伝っています。広葉樹の山を、大きい木は全部切って、人間社会の役に立つパルプ、あるいはバイオマス熱源として搬出し、また広葉樹を植えて、山を更新しよう、若返らせようということに取り組んでおります。民間主導でできるといいのですが難しい。100%公共事業なんです。お役所の方がいたら申し訳ないのですが、新たに植える苗が100%、ナラの木、どんぐりの木なんですね。ここ十何年、そういう状況が続いています。新たな観点で、新たな事業が起こり始めるといいかなと思いました。コナラを使うことによる林産計画とかも当然あるんでしょうけど、将来見越すのは大変難しいと思います。今こそアイデアの出しどころかなと思っています。言いたいことは10%もしゃべれませんが、以上です。ありがとうございます。

 

菊地:ありがとうございます。Aさんは、いつも最近参加されていて、いろんな発言していただいていますが、初めて林業しているとお聞きしました。

 

Bさん:趣味で移動動物園をやっています。標本と生体を含めて、大体30種類ぐらいの動物を車に積んで、展示することを、主に土日にやっています。イベントでやる時は展示型っていうふうに。依頼を頂いて講演会をすることもあります。

 今日は厳選した生き物を持ってきたのですが、レギュレーションオーバーということで車に戻すことになりました。特に今日お見せしたかったのは、今日、朝、タケノコを掘りながら見つけたババヤスデです。ブラックライトでとても光ります。それをほんとのムカデと比較するっていうのをワークショップでやりたかったです。ちょっと残念ですができませんでした。

 普段はクサガメの臭い臭いを嗅いでみようとか、ヘビの捕食シーン、どうやって食べるのかとかをクイズ形式なんかで親しみやすいようにやっています。生物多様性がテーマなので、富山の人間ですが、石川のイベントに参加させていただきました。

 

菊地:ありがとうございます。せっかく用意していただきましたが、ルールがありまして。

 

Bさん:標本ならOKです。次回、標本でお願いします。

 

Cさん:能登の世界農業遺産ですが、その意味をほんとに皆深く考えられているんだろうかと。私も含めて。普通だと思っていまして。一つは里山ですね。能登で生まれ育ちましたが、もう50年前に離れています。里山の更生って何だったのかという問題ですね。

 コナラの山を、継続林を破壊したものがあるんですね。それは何かというと、杉の植林ですよね。コナラとそれからパイロット事業という政策ですね。そのパイロット事業で奥能登の山の頂上付近をブルドーザーでガーッと削ったんですね。表土の流出が起こったんです。私が能登で育った頃に、はっきりと海に変化が表れていました。磯焼けです。大量に土砂が流れ込んだら、まず磯が荒れます。ちょっと潜るとすぐ分かるんですね。重要な連続性のある広葉樹の山が破壊されてしまった。

 このことのメカニズムを考えながら、なぜ農業遺産に指定されているかということを正確にみんなで理解していく。Aさんのお話のとおりなんですが、それをほんとに再現する。そういうモデルケースをやって、そのことをほんとに深く理解する機会を増やさないと。いしかわ生物多様性カフェに何回か出させていただいますが、理解している方、ほとんどいないと感じました。

 一つのモデルサンクチュアリ、一地域だけでもいいので、里山を復活させる。そういう議論できればと思っていますが、私には行動力も力もありませんので、勉強するのが精いっぱいです。ありがとうございます。

 

菊地:ありがとうございます。里山と世界農業遺産の話が出ましたが、みなさん、どうでしょうか。

 

Dさん:県庁の自然環境課のDです。石川県は里山がほんとに大きく広がっています。加賀から能登に、長い変化のある海岸線がある。海岸から白山のてっぺんまでいろんな生態圏があります。非常に生物多様性に富んだ地域だと思います。

 自然環境課はそういった自然を守ることをしています。国立公園とか国定公園といった自然公園の管理をやっています。優れた自然環境や自然景観を守るために、さまざまな行為を規制してもいます。

 生物多様性、生物を守ることもしています。石川県には大体1万5,000種類ぐらいの動植物いるといわれています。その中で絶滅の恐れのある生き物のリスト、「いしかわレッドデータブック」を3回作っております。ただ指定というだけで、何か規制されているわけではないんですね。さらに保護の必要性が高いものは、県の指定野生動植物として指定し、捕獲とか採集とかを禁止しております。

 来年度、トキが能登に帰ってきます。とても力を入れております。ただ、トキを放すことが目的ではなくて、トキをシンボルとして、里山を再生していくことです。トキが住める環境にしていければと考えております。

 貴重な種の保存としてはライチョウ、白山では絶滅してしまったライチョウですが、少し前に確認されたこともあります。また戻ってくる可能性もあるので、いしかわ動物園でライチョウの保護増殖事業をしております。

 最近問題になっているのが外来種です。アライグマ、ミシシッピアカミミ、ミドリガメ、ザリガニの対策も行っております。「外来種を入れない、捨てない、拡げない」というスローガンの元、対策を進めています。

 もう一つ大事なのは、県民に広く、石川県の自然を知ってもらうことが大事だと考えています。自然体験型の環境教育です。平成13年から日本では珍しいネットワーク型ということで、民間から行政がタッグを組みまして「いしかわ自然学校」を行っています。800以上のプログラム、年間3万人以上の方が参加しています。

 個人的にはずっと白山自然保護センターで、高山植物の研究をしていました。自然学校では、希少動物の展示会とかでガイダンス、ボランティアもやっています。

 

Eさん:合同会社山立会のEといいます。自然環境課のDさんには普段大変お世話になっています。みなさんにご紹介したいシンポジウムがあって、参加させていただきました。

 山立会は、白山麓で、菌床なめこ、木滑なめこの生産や野生動物の調査、耕作放棄地で羊を放牧したり、里山食堂、山立会食堂っていうのをさせていただいたりしていますが、今日はシカの話です。

 みなさん、石川県でシカが増えていることをご存じですか。シカが増えてくると農林業被害であるとか、自然環境の被害があるとか、土砂災害も起こりやすくなります。石川県ではシカは、ずっと低い密度だったのですが、最近急激に上がり始めています。もうシカが増えて、被害がこれから出てくるのを止められないなって諦めていました。

 東京農工大学の動物の研究室にいまして、そこの梶先生は日本のシカ研究の第一人者なんです。梶先生に「E君、何をやってるんだ。もっとシカ対策しっかりやりなさい」と言われました。石川県の生物多様性にとって一番大事な動物を一つ挙げるとしたら、シカだと思うんですよ。もちろんクマもやらないといけないし、イノシシもやらないといけない。サルもやらないといけない。それは分かるのですが、一番影響が大きいのはシカだと思います。春、山菜をいろいろ食べてらっしゃると思います。実家が京都なのですが、もうフキが取れないというんですね。それもシカの影響かなと思っていますが、諦めちゃいかんと。菊地先生は生物多様性のネットワークを作っていますが、私はこれからシカのネットワークを石川県につくりたいと思っています。今年の9月27日、石川県立大学で「どうする?どうなる?シカ時代 森と暮らしを守るために」というシンポジウムを開催させていただきます。私はジビエの話をさせていただきます。その後、シカ肉の試食コーナーを設けます。ぜひ諦めないって方に集まっていただきたいと思っています。みなさんお越しいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

菊地:Eさんには11月のカフェで里山での多角的経営というお話をしていただきました。元々はクマの研究者でしたが、石川県に来て会社を経営して、社長として悪戦苦闘しながら楽しくやっていくお話をしていただきました。みなさん、9月27日、行ければ行きましょう。

 

Fさん:初めまして。今回初めて参加です。専門は生物の中で、一番変な生物である人間を扱っている内科医です。みなさんのイメージでは、和食はおそらく健康的だと思っていると思います。ところがこれ、違うんです。最近、自分の血糖値がリアルタイムに分かります。私、先ほど普通の和食食べました。糖尿病ではありませんが、血糖値はいつの間にか206まで上がっています。つまり、皆さんが普通に食べることで206上がっているんです。ただ、すぐ下がりますね。

 昔は和食が良かったんです。なぜか。農耕民族だったので、朝から起きて働いている。でも現代の日本人は汗かいてないので、運動しない限り、和食の概念を変えなきゃいけない。昔の人は、ご飯はほんのちょっとだったんです。ご飯を一日3回食べると、糖尿病なんです。どうすればいいかといえば、一日1杯ご飯にする。一日3杯食べても大丈夫な人は、現代では農家の人とかスポーツジムなんか行っている人、若い人も大丈夫なんですよ。でも、働き始めると駄目。

 ちょっと和食の概念を変える。和食は農業とか関係します。それなら何をすればいいか。実はタンパク質の量を増やせばいいんですね。ただ牛とかを育てると、CO2やメタンガスが出るので環境破壊につながると一般的にいわれています、もしシカがわれわれの食べ物になれば、うまくいくんじゃないかなと思い、発言させていただきました。ありがとうございます。

 

菊地:ジビエはシカ対策でもありますが、健康という意味付けもあるというお話でした。なかなか今まであんまりないような切り口のお話だったと思います。

 

Gさん:石川県立大学の大学院生です。トキ放鳥の話が出ていましたが、田んぼの生き物がいないとトキが生息できないので、珠洲市で田んぼの生き物の調査を去年卒業研究で行いました。今年、修士に進学して、能登各地でしようと考えています。調査できる水田を探しています。知り合いの方がいる方いましたら、ぜひご協力のほう、よろしくお願いします。

 自分たち石川県立大学の緑地環境学研究室では「さとやま応援隊」という名前で活動しています。いろいろなイベントに今後参加していこうと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございます。

 

菊地:トキ放鳥は石川県の大きな政策の一つだと思います。大学院生が地道に調査しながら、能登でのトキの生息可能性を探っています。能登で人脈ある方、ぜひ協力していただければと思います。よろしくお願いします。さとやま応援隊は具体的にどんなことやっているんですか。

 

Gさん:さとやま応援隊では4月27日にCity Nature Challengeという環境教育のイベントを行いました。これは市民の方を対象に、スマホアプリで生きものの勉強をしようというものです。放置竹林の管理を兼ねてタケノコ掘りだったりとか、竹を切って工作して、それを使っていくこととか。石川環境フェアに出典して自分たちの活動を広げていったりしています。

 

菊地: City Nature Challengeとは、アメリカのロサンゼルス自然史博物館が事務局として、世界中で行っているイベントですね。専用のアプリで一斉に生きもの調査をします。スマホで撮影した写真をアップするとAIが判別して、データとして蓄積されていきます。金沢でも石川県立大学の上野さんを中心に4月の後半に行われました。

 

Hさん:金沢大地のHと申します。私たちは石川県内で有機農業、環境保全型農業をしています。農場は金沢郊外の河北潟干拓地と能登には輪島市門前町、能登町当目、穴水、珠洲市にもあります。先ほどのGさんと同じ机に席を置いたのは運命じゃないかなと思います。能登町当目は豪雨水害の影響が大きいところですが、何とか、今年は作付目処が立たないかなと思っていましたが、何とか半分弱ぐらいは作付けができるようになりました。

 去年9月に代表の井村がここで、生物多様性と農業のお話をさせていただきました。河北潟干拓地に人工巣塔を建てまして、国の特別天然記念物のコウノトリが、今年も3年連続でヒナを生みました。3年前は2羽、去年は4羽、今年も2羽、誕生しました。とてもうれしいニュースです。

 今日、2つ資料を用意してきました。一つが自然共生サイトについてです。環境省が進めている30by30という取り組みがあります。陸地と海の30%を健全な生態系として保全しようという目標です。先ほどのコウノトリの巣塔がある地区を中心に河北潟干拓地のほうで、自然共生サイトに申請していますが、おかげさまで今年の9月に認定される見通しが立ちましたので、そのお知らせを今日はみなさんにお伝えしたいなと思って来ました。

 認定されますと、10月に河北潟干拓地の田んぼで、いよいよ生き物モニタリングを始めたいと思います。いろんな方と一緒にやりたいと思っていますので、ぜひご参加いただけたらなと思います。

 ちなみに今日ここに来ている金沢大学名誉教授の中村先生、前回話題提供者でした野村進也さんもゲンゴロウ先生で、モニタリングの一緒にご指導いただけたらと思っています。ぜひご参加ください。ありがとうございます。

 

菊地:私ごとですが、能登町当目にボランティアへ行って、集落の人と話をして、いろいろお付き合いができるようになり、7月20日に「のと里山里海カフェ」を当目で実施することになりました。

 

Iさん:普段は金沢大地で農産加工品などの営業をしております。子どもの頃から生きものに関心があって、学生時代は動物学動物生態学科を専攻していました。人の生活が環境に及ぼすインパクトが大きいからこそ、目の前の生活を少しでも変えていくことでいかようにもできる。生物多様性で持続可能な世界になるんじゃないか、まだまだ変わっていけるのではないのかなと、すごくわくわくしたのを憶えています。

 人の衣食住に密接してかかわっているのが農業の在り方で、それ次第で環境はいかようにも変わっていける。その中で、金沢大地代表の井村辰二郎の取り組みを知り、2011年に金沢に移住してきました。金沢大地の農場があるのは、主に河北潟干拓地です。サギとかシギの数はラムサール条約の登録基準を満たすほどです。生物が多様で豊かな場所ですが、残念なことに1965年ぐらいから化学合成農薬が普及して、生態系が大きく変わりました。その頃、トキが姿を消しました。来年のトキの放鳥、本当にうれしいニュースと思います。井村が1997年から有機農業を5代目の農家としてスタートしていますが、化学合成農薬とか化学肥料を使わない農場に変えています。ドジョウ、ゲンゴロウとかハチ、鳥でしたらコハクチョウとかサギ、あとシギとか希少な鳥類が飛来し、2019年頃からコウノトリの飛来が農場などで確認ができるようになりました。井村が就農して26年目の春で、2023年の春にコウノトリがヒナがかえって、3年連続生まれています。コウノトリは食物連鎖、地域の生態系の頂点なので、生態系が整っていないとヒナは生まれてこないので、私も一社員として携われてほんとにうれしいです。

 コウノトリ1羽は1日に500グラム、ヒナは1キロの餌を食べます。たくさんの生きものが1日で必要です。ヒナが自分で餌を取れるまでの期間は約5カ月間ですが、それを換算すると450キロほどの餌生物が要ります。それを蓄えているのが河北潟干拓地です。すごいいい餌場になっていると実感できて、本当に感動しています。

 こうやって私たちの食べ物を食べてくださったおかげで、26年の時間を経て、こういうふうに変わってきたんだなと思いますし、日々、食生活、衣食住全部ですけども、手に取るものがそれぞれどうやってできたのかなと考えて、環境のことってそんなに遠くはなくって、身近なものをちょっと見つめるだけで変わっていける可能性があるっていうのを、またみんなと一緒に考えていきたいと思います。良かったら、また10月に皆さんと一緒に観察できたらなと思います。

 

菊地:昨年9月、金沢大地社長の井村さんに来ていただき、生物多様性と農業というテーマでお話していただきました。そのとき、おにぎりを提供していただきました。ありがとうございました。いろいろな反対がありながら有機農業を進めてきた中、コウノトリが営巣してくれたことによって、自分の取り組みが評価されたとお話しされていました。

 

Jさん:植物分類とか地理を研究しています。私が一番心配していることは、人材の育成です。植物の分類を仕事としてやれる人は、今県内では10人いないと思いますね。

 石川県にある、現在分布している維管束植物、つまりシダ植物とそれから被子植物合わせて2,562種か2,563種前後あります。2024年度末ぐらいの数値です。1種類ずつ全部調べて、石川県でこれだけの種類があるということなんですね。そのうち大体700種類ぐらいが絶滅危惧種です。だけどそれを判別する人が現場にはいないんですよね。

 生物多様性ということを言っていれば、それで生物の多様性が実際保全できるかっていうと、そうじゃないわけです。具体的に個々の種類について対策が実際にできる能力がある人材をどうしても育成する必要があるんです。ところが、ともかく若い人が全然いないんですよね。金沢大学には昔、動物も植物も分類の研究室がありましたが、今の大学にそういうことできる人が全然いないのです。

 これは由々しき問題です。生物多様性条約があります。国際的な生物多様性をいかにして確保していくかということを決めた条約で、日本も参加しています。条約の目的として何が書いてあるかというと、まず自然を観察し、危ない種類を特定することです。それが一つ。二つ目はそれを監視する。指定された種類を監視するということね。特定したらそれでおしまいではなく、どんどん変わっていくわけです。これは大きな社会的な問題なんですね。しかし、ほとんど行政でも政治でも問題になっていません。私は、非常に気に病んでいます。今後の話題の中に取り込んでほしいと思います。

 

菊地:先ほどの自然共生サイトの話でも、モニタリングをして、その結果を評価していくことの重要性が指摘されました。基礎的な調査が必要ですが人がいない。しかも、そういう基礎的な調査は論文の生産性が低く、研究機関で生き残れない現状があります。若い人がぜひ頑張って、そういうことをやる人になっていただければと思ったりはしますけど。人材育成も考えたほうがいいという問題提起でした。

 

Kさん:生物学科で学んだ時には全然勉強しなくて、何も分からなくて卒業したのですが、今、少し漆の仕事をしています。漆、コーティーングをしています。主婦しながら、食事作りながら、野山の植物を食べれるか食べれないかですぐ見ちゃうんですよね。たとえばスイセンの葉っぱとニラの葉っぱは似てるけれども、スイセンの葉っぱ食べて死んだ人がいるとかね。

 薬草学の先生が、たとえば、この草はこういう薬効があるので、すごくいい薬になるとか。そういうことをちょっと頭に入れたり、そういうことをちょこちょこっと頭に入れて、生活に取り入れると、すごく頭に入るんですよね。だからそういうことで、楽しく子どもたちと生活できるか。そういうことから育成っていうことも考えていけばいいんじゃないかなと思っています。

 それから危険な植物が何かっていうことも大事だと思う。お花屋さんで売っている植物で、結構危険な植物あるんですよね。お花屋さんがそういうことを知ってたり。アサガオっていうか、ラッパ型のおっきな花ですが、麻薬の作用があるんですって。東南アジアではそれを麻薬代わりに使っている人がいることもお聞きしました。ああ、そういう危ない植物も平気で日本人は、きれいだからって、栽培してしまっているんだなっていうことを知りました。周りの植物とかがもっとみんなが身近になれば、そこから自分たちの子どもたちに教えていくっていうこともできるんじゃないか、そして、子どもたちに教えることによって、そういうことに興味を持ってくれた子が、将来そういう方面に関心を持ってきてくれるんじゃないかと私は思います。

 

Lさん:先ほどのJさんが出してくれたように、人材がほんとうに足りないんです。植物に限らず、いろんな生きもののこと、自然のこと、生物多様性を理解しようと思ったら、生物の種類を知っていないと多様性も理解できない。

 問題に対応する時に、やっぱり自分の知っているものでしか対応できない。Aさんが、植えるものがコナラばっかりという話をしましたが、コナラは里山に普通のものだし、無難なのです。何か変わったものとかを植えたら問題になるとか、遺伝子の撹乱になってしまうとか。他の変なとこから、遠いところから持ってきてしまったら問題になるとか、そんなようなこととかいろんなこと考えなきゃいけない。

 今の話で、チョウセンアサガオは結構植えていたりします。「植えたら駄目なんですか」とかいう質問を受けますが、植えたら駄目ってことはないんです。そういう法律があるわけじゃないですから。ただ、要は知識ですよね。これは毒があるとか、あとはとてもきれいだけど、すごく増え過ぎてしまって非常に問題を起こすとか。とにかくやっぱりいろんなことの知識がないと、それを適切に扱うってことができないんですね。

 個々人が知識をすごく吸収することが大事ですし、あと、それを適切に伝えられる、そういった知識を持っている人がちゃんと育つ。どのようにシステムができるのかは、難しいなと思います。自分たちが知らないことがたくさんあるんだ、自分が知っていることだけで対応してしまうことは避けなきゃいけないと思っています。

 

菊地:生きものや生物多様性が大事であっても、知識として継承されない、伝わらないことが起こっているという問題提起でした。

 

Mさん:前回のカフェでお話しさせてもらった者です。元々、水の生きもののゲンゴロウを専門にしていたのですが、気が付いたら水の生きもの、淡水の生きもの、何でも観察会や調査、標本の贈呈をどんどん引き受けるようになりました。

 私は里山の生物多様性という視点から、田んぼとか水場とかで生きもの観察会をしたり、生物を紹介する活動をしています。やっていると、あれもこれも見分けなければいけないことが課題として出てきます。自分で苦労して何とか覚えても、それを伝えるのが難しかったり、そもそも自分一人だけ見分けることができても、できる人育ってくれないと、これまずいのかなと実感しています。

 いざ調べようと思うと、資料が全然そろってなかったりします。図鑑に、全部の生きものが載っているわけでもないですし、地域の特性が全然反映されていないことが多かったりします。結構そういうことで嫌になるかと思います。ほんとうはそういう資料が必要なんです。あってもそれを使うスキルが必要だったりします。自分で調べるのも、覚えるのも大変なのに、さらに伝えるとなると、さらにハードルが上がるなと実感しています。たとえば石川県の生きもの図鑑があると理想的ですが、地域だけ限定した図鑑を作るのは大変です。今の自分の活動で少しでも伝えられたらなとは思っているものの、出口をまだ手探りで探しているところです。

 自分での資料づくりのためとか、生きものを見分けるためにと思って、生きものの写真を撮りためています。個人的には結構な図鑑をつくれそうなレベルまでためてきたかなと実感しています。どこかで活用できないかなと考えてはいます。ホームページを作って出してみるのも面白いのかなとか。YouTubeとかですよね。そういうアドバイス頂けるとすごく助かるなと思っています。

 

菊地:Mさんには前回のカフェでお話ししていただきましたが、写真がとても素晴らしかったです。Mさんの中には、いろいろな知識があるので、それをどのように共有できるのか。地域の財産なんだということも考えていかなきゃいけないのかなと思います。生きものをモニタリングできる人材が不足しているという問題提起があって、色々な視点からお話が広がってきました。

 

Nさん:日本野鳥の会石川のNです。いかに効率的に分かりやすく生物多様性に注目を集めるかということを問題意識として持っています。今回、石川県立大学の上野先生と共著で、石川県の生物多様性の課題を整理した論文を書きました。県のレッドデータブック動物編の全体を簡単に分析し、どういう生態系を保全すべきか、どういう脅威に対処すべきなのかということを簡単にまとめた内容となっております。

 一個人として趣味で野鳥観察をしています。フィールドで感じることはたくさんありますが、これからはいかに一般の方々に分かりやすく伝えていくか、可視化、見える化がとても大事なんじゃないかと思います。今、経済界でも金融界でもネイチャーポジティブというのは重要な経営課題であるとして注目していることは、生物多様性にとって非常に大きな点だと思います。社会経済の中で生物多様性を保全していくためには、可視化が第一ステップと考えているところです。

 

菊地:ネイチャーポジティブというとなかなか分かりにくいかもしれません。自然再興という訳が付いていますが、自然をもっと良くする状態にしていくことが経済を良くしていく、そういう循環を作っていくという考えですね。

 

Oさん:石川県立大のOといいます。幾つかテーマ出てきましたが一つは人材育成の話でしたよね。二つの取り組みを紹介させてください。

一つ目はいしかわ生物多様性ネットワークというNPOをつくったことです。石川県内でいろんな生きものを見ている方がいますが、なかなか繋がっていない現状があります。それを横つなぎにして、ネットワークをつくって、みんなで課題共有して、一緒に考えて解決していこう。そのためのプラットフォームとしてNPOをつくりました。情報を集めて分析をして、何が今足りないのか、何を守るべきなのか、どうしていけばいいのかということを、専門家も入りながら一緒に考えていく。それを次世代につなげていって、石川県の自然環境をもっともっと良くしていこうと。こういう願いを込めてNPOをつくりました。まだ立ち上がったばかりなので、ぜひここにいらっしゃる生物多様性に関心のある方々にも入っていただいて、ご協力いただければと思っています。

 もう一つは、能登についてです。能登半島地震、そして豪雨災害があり、能登半島、今大変なことになっています。インフラ復旧、暮らしをどう取り戻すかということがずっと言われていますが、一方で能登の魅力って何かなって考えた時、やっぱり里山里海であったり、おいしい食であったり、生物多様性、希少な生きものがいっぱいいる環境かなと。ただ、今は表ではなかなか言いにくい。知らないうちに失われていくという危惧を持っています。これをどうやって守っていけばいいのか。声高に生物を守るべきだっていっても、今の時代、受け入れられないと思うんですね。では、どうするか。一つは、自然をうまく使うというグリーンインフラっていう考え方かなと思っています。

 たとえば、土砂災害を防ぐために植林をする。そういう昔ながらの知恵とか工夫を、もう一回発掘して、能登に合うような形で提供していく。それを研究者がやるだけ、アイデア出して、言いっ放しだけじゃなくて、東京のゼネコン、技術者さん、そして地元のいろんな方々、研究者だけじゃない地域の方にも入っていただきながら、企画をつくっています。地域の人たちと一緒に、何が今求められるのかを議論して、しかもそれを実際に現場に入れていく。5年、10年計画ぐらいでやろうとしているところです。

 参加メンバー募集しています。どんな議論が行われるのかを見ていただくだけでも、とても私たち励みになります。やる気のある農家さんを紹介していただく、漁業者さんを紹介していただく、あるいは地域で頑張っている人たちを応援してほしい、そういう思いでも構いません。ぜひ能登の復興、自然環境を守ることに、みなさんと一緒に取り組めたらいいなと思います。

 

菊地:私とOさんは、以前『グリーンインフラによる都市景観の創造−金沢からの「問い」』という本を出版しました。

 グリーンインフラとは、自然をただ守る対象と見るのではなく、社会の基盤として位置づけ、適切に活用していきましょうという考え方です。これからの自然共生社会を目指す基本的な考えであり、特に能登復旧復興において、自然をうまく活用することは重要ではないか。そのような問題提起と呼びかけでした。

 

Pさん:金沢大学の国際学類教員のPです。私のやっている活動は、生物多様性からちょっと離れますが、能登との関係ということで話をさせていただきたいと思います。少し前に、金沢大学で能登の朗読ワークショップをしました。能登で被災された方々からの声を基に台本を作り、その台本を読むことを通じて能登のことを考える、感じることを試みるものです。

 能登で被災された方の話を、語り部的な形ではなくて、被災されていない人たち、学生さん中心ですね、読んで、感じ、考える。災害は起こった時だけではなく、その後の生活でさまざまな不安とか、あるいは希望を持っていらっしゃる方がいます。日本語と英語と両方でやりました。被災された外国人の方々がいます。そうした声を取ってきて、その方々ならではの思いがあります。そういう視点から能登のことを考える、またそこに住んでいる人々のいろんな葛藤とかを知る機会になったと思っています。今後もそういう活動を続けていくことで、朗読を通して能登のことを考える機会にできればいいかなと思っています。ありがとうございます。

 

菊地:私も朗読ワークショップに参加しました。黙読して音読するんですね。音読すると何かが違うと実感しました。文字面を目で追っかけて頭の中に入るのと、自分で声を出して話すのだと、全然違うんだなと。自分の身体が話す、自分事としてなりやすい、ということがよく分かりましたし、英語と日本語だと、同じ内容でも全然違うと感じました。

 一律に被災者といいますが、いろいろゆらぎながら、日々色々と考えていることがよく分かりました。一人一人に寄り添いながら、一緒に考えていく手法だと思います。

 

Qさん:私は過去10年間、ブラジルに住んでおりました。父親は珠洲市民です。こちらに帰ってきて、ブラジルでやってきたことと能登の復旧や復興に何か力になれないかということで、活動を始めています。

 ブラジルで私は何をしていたか。アクロポリス、植林をしながら耕作放棄地で果物を作っていく農法なんです。熱帯雨林の気候なので、カカオ、コーヒー、バナナとかそういったものを、共生しながら育てていく年月のかかる農法なんです。私が師匠と呼んでいる人が、20年、30年前に始めて、耕作放棄地だったところが今もう森に返っています。そこから実際に収穫を得ています。大規模じゃないのですが、環境教育の場として使っている感じなんですね。地域の人だけじゃなくて、人材育成の話とか、若い人が興味を持ってくれたらっていうお話をしています。イベントをすると、若い人しか集まらないんですよ。それがとても意外です。みんなで話し合ったりだとか、音楽だとかダンスだとかそういうのを入れ込んだりだとか、先住民の長老を呼んで、いろんな人たちに話をしていただいたりしています。要するに年上のリーダーの方々と若い人たちのつながりをすごく大切にしています。若い人たちが集まってワーワーしているのではなく、リーダーたちの知恵などをちゃんと伝えていけるようなイベントです。

 あとは能登で実際見て、災害にも役に立つと思ってやっていることは、なるべく自給自足できるように、水も雨水を集めて、水道を使わない方法です。雨水と井戸。あとトイレはドライトイレ。水なくても使えるトイレ、肥やしにするんですけどね。若い人たちが集まるイベントを定期的にできていったら、もっと認知も広まっていくと思っています。まだまだ人脈も経験もないので、ゆっくりできていったらなと思っています。みなさんのご協力とご指導をお願いします。

 

 

 

 

 

 

休憩

 

Rさん:石川県のイノシシですが、能登半島の先端にはイノシシいなかったと言われていますが、今はもう珠洲までイノシシがいます。約20数年でもう広がってしまったということですね。金沢大学名誉教授の先生は、能登半島ではイノシシ、シカは大正末期に滅亡したと言っています。能登半島でのイノシシ狩りの歴史があります。中能登地域は鉄砲でバンバン打っていました。落とし穴とか追い回すような形で、小規模にやっていたんです。これが多分、能登半島からイノシシ追い出した、一つの原因だと思っています。

 能登半島先端の海岸では塩を作っていました。中では炭を焼いていました。鉄材が必要なので、鉄も作っていました。当然、薪は山から持ってきます。牛を使って、海岸と山奥の交流、ネットワークがあったわけです。人の交流もあったし、経済活動もする。塩を作っている、鉄を作っている、炭、まき、漆、焼き物まである。もしかしたら金沢よりも情報通だったかもしれません。これが能登半島先端の産業構造だった。この時代、いっぱいトキが舞っていたわけですね。

 先ほど述べたように、炭焼いていました。加賀藩の政策で、なかなか山の木を切れない。特に松は切るなといわれていました。でも今は、ほんとに松がないんですよ。だからマツタケがありません。マツタケの大先生が残した本があります。その論文の一つからデータマイニングして、グラフを拾ってきました。金閣寺に住んでいたお坊さんが集めてくるマツタケの数を記録していたものを掘り起こして、グラフ化したものです。この時期にマツタケが取れるということが、昔の先生方の歴史を掘り起こして、こういったデータでまとめている。こういう形の遊び方もあるんじゃないかなと思っています。

 話は戻りますが、タタラ、山で炭焼きをしてくるとか、山と海岸の交流があるということは、ある意味多様性を生んでいますよね。能登半島は農業と林業だけじゃなくて、いろんなことをしていたというのが、私の意見です。

 

菊地:みなさんの意見をうまくまとめられているかどうか分かりませんけど、まとめてみます。

 一つは里山の食の話。二つ目は知識とか人材育成でしょうか。三つ目は能登でしょうか。

 みなさん、18人のお話を聞いて、改めて質問したいとか、人の話を聞いて、自分が考えた意見とか、何か思うことがあれば、ぜひお話ししていただきたいと思います。

 

Aさん:判別できる人材の絶望的欠乏という悲しい事実についてです。最近山で仕事をしてて、大きいサギが飛んでいるなと思って、よく見たら、おそらくコウノトリなんですね。金沢市内です。知り合いのFacebook、女性の方なんですが、野鳥がかわいくてしょうがない、最近カメラで撮りまくっている人が「大きな鳥」とかいって、コウノトリの写真をアップしているんですね。僕はスマートフォンで写真を撮るのですが、位置情報付きなので、どこで撮影したかが一目瞭然なんですね。そんな機能を活かせないかな。以前のカフェで話した市民科学ですよね。何という種類の生きもので、どこで撮ったかっていうのをデータとして蓄積してくれるアプリがありまして。画像認識の能力はGoogleフォトよりも低いかなとは思うのですが、そういったものを活用できたらいいと思います。トキの放鳥も始まりますので、アプリ、作られたらどうかなと。

 

菊地:日本コウノトリの会が行っているコウノトリの市民科学という活動があります。全国各地にコウノトリが生息していて、いろいろな人が見ています。ほぼ全てのコウノトリに足輪が付いているので、写真をとれば、どの個体か判別することができます。その情報が毎日サーバーにアップされ膨大なデータが集まっています。そのデータを分析すると、コウノトリの行動のパターンがわかってきたりします。普通の市民、たとえば通勤の途中とか、あるいはコウノトリ好きな人で追っかけている人、そういう人たちがデータを集めていく。

 もちろん、一定の決まり切ったやり方でデータを収集しているわけではないので、ばらつきがなどはありますが、たくさん集まれば一定の傾向は見えるんですね。今後、石川県でも人材不足をどう補うかっていう時に、一般の市民が少しそこに関わってみる、そういうことができる仕組みを作る必要があると思います。Oさん、いかがですか。

 

Oさん:菊地さんが、少し関わってほしいと言っていますが、少しではなくて主体だと思っています。先週、環境省のトキ担当に行って話をいろいろ聞いてきました。放した後にちゃんとトキが生きているかどうかとか、定着して、エサを食べているかとか。順調に増えていっているかどうか、モニタリングしないと駄目なんですね。研究者だけあるいは石川県だけでは全然目が足りないです。

 今のように写真を撮って、ここにいたよっていう記録が残れば、そこを僕らが分析する。主となるのは多分市民だと思います。生きもの調査のアプリのツールもありますし、地図化することもできます。Gさんのドジョウの話がありましたが、誰でも作って、田んぼに沈めるだけでドジョウ増えますので、能登の環境が良くなっているかどうかを、農家のみなさん自身が調べられるようなツールに育ったんじゃないかなと。まさにこういう場で、どんどん協力の輪を広げていければ、もっともっと良くなるんじゃないかなと。すごい意見、ありがとうございました。

 

菊地:科学の市民化。科学側の視点からすると、人がいなくてできない。一方で市民が科学を使いこなしている社会を作ることの重要性をお話されたと思います。

 

Sさん:今能登でコウノトリが繁殖をしている中で、来年の6月にトキが放鳥されます。トキとコウノトリは同じ食性、たとえばドジョウとかカエルとかいうものを食します。果たしてトキとコウノトリが仲良く、相まって生活していけるのかどうかに、一番関心を持っています。

 私が小さい頃に聞いた話です。元々、奥能登出身です。奥能登でトキのことを「ドウ」と言っていました。田んぼの稲を荒らすので、苗の稲を荒らすので「あっち行け」「どうどうどうどう」と言って嫌われとった鳥なんですね。ドウには兄貴がおると聞きました。その時はどんな意味か全然分かんなかったんです。今考えてみると、コウノトリのことじゃないかな。兄貴が、コンコンコンコンコンと進むと、弟分のトキがコチョコチョコチョコチョと進んだというんです。今こうやって思い出して、面白い話を聞いたなと。もし相性が良ければ、能登半島でトキとコウノトリがうまく何とかやっていけるんだろうなと、お互いに分かち合いながら。ドジョウとかカエルがうまくいれば、共生できるんかなというふうには思います。来年の6月以降、楽しみにして。ありがとうございました。

 

Iさん:河北潟に日本コウノトリの会が立ててくださった巣塔に、コウノトリの親子がいます。あまり他の鳥類とバッティングしていることは見当たらない雰囲気ですね、水辺の鳥でも一番上のものがコウノトリなのですが、対コウノトリは見たことありますが、他の鳥への攻撃は、見当たらなかった気がします。

 

Sさん:志賀町の山の中にコウノトリが今生息していて、4年連続でヒナが誕生しています。今年は4羽。コウノトリの営巣地と志賀町がトキの定例地と指定している場所が非常に近いんですよ。あそこに放鳥されたら、トキとコウノトリの関係は一体どうなるんだろう。

 

Oさん:私は佐渡でトキの調査をしていたことがあります。その時に、佐渡にもコウノトリ飛来したんですよ。ロシア産のコウノトリだったんですけど。やはり餌の食べる場所の使い分けがあるんですよね。コウノトリの方がドジョウがたまっているところで一生懸命食べると。トキも来るのですが、体が大きいので、気にしないっていうか無視しているという感じ。もう一つは、コウノトリ同士の攻撃性がすごく強いんです。コウノトリは低密度で群れない。低密度でいるので、トキがその周りにいても、そんなに支障ないかなと。すごく数が増えれば問題が出るかもしれませんが、それは別のうれしい悲鳴ですね。

 

菊地:トキが来年放鳥され、どういうふうに共存したらいいのか。能登の人をはじめ、加賀の人も含めてなかなかよく分からないことがたくさんあると思います。

 

Tさん:石川県立大学1年のTと申します。このカフェ2回目です。僕は大学で環境教育を学んでいて、将来的にも環境教育をやりたいなと思っています。みんな、小さい時は動物とか好きなんです。僕はめっちゃカエル好きなんですけど、カエルが好きだって言ったら、カエルは気持ち悪いっていうふうに教えられたり、泥んこになって帰ってきたら、泥んこ、汚いとか。川で遊ぼうとしたら川は危ないって言って、そうやって遠ざけられて育てられています。最終的にそういうところに行かなくなってしまって、生態系への関心とかも失われていくのかなと思って生きてきました。将来的にはそういうことをやりたいなと思っているので、よろしくお願いします。

 

Uさん:所属している野鳥の会石川としては、自然観察会を年2回開催しています。毎月行っている探鳥会という鳥を見る会とは別で、自然全体を観察する会です。初心者と老若男女どなたでも参加できます。小さいお子さんと親御さん中心で参加していただける会です。鳥だけじゃなくて、花を見たり、植物見たり、動物を捕まえたり、虫捕まえたり、木の実を食べたり、いろんな実験してみたりとか、そういうことをやっています。

 みなさんみたいに専門的なお話じゃなくて恐縮なんですけど、その入り口になるところ、興味を持ってもらうために、何かできないかと思って活動しています。結構人気なので、もし良ければ、ホームページをご覧になってください。よろしかったら今月終わりにありますので、ご参加ください。

 

Bさん:子どもたちに教育したいっていう話だったんですね。失礼ながら何歳でいらっしゃるんですか。

 

Tさん:18です。

 

Bさん:18歳。私は47歳なんですよ。ファミリーコンピューターが出てきた世代なんですね。ニンテンドー3DSとかSwitchとかWiiとかそういう世代じゃないですか。今の子どもって、やっぱり外で遊ばないですよね。少子高齢化なので、子どもがすごい少ないじゃないですか。僕らの頃って、いわゆる団塊ジュニアって言われる世代なので、子どもがいっぱいいたんですよ。遊び方も、ガキ大将まではいかないけども、それに類するような人がいたりとか。だから今、とっても遠ざけられてるっていうのも仕方ないことなんだろうなっていうのが一つあるんですよ。

 僕、生き物を子どもに触らせたりとかします。子どもらね、最速で手洗いに行って、手洗ってくるんですよ。僕らの頃よりも衛生観念もすごく高まっているんですね。だから、もう18歳の君と47歳の僕はもう全然異質なものだと思うんですよね。でも、ファミリーコンピューターが出てきた世代の僕は、多分、それより上の人よりも君ら寄りではある。何が言いたいかというと、自然と遊べたんですけども、こういう付き合い方があるんだよっていうのを、伝えていかないといけないんだろうなと思います。狙い目は、子どもに体験させてあげたい感じの親御さんの子どもなんかは、すごくいい感じにマッチするんですよね。だからターゲットを絞って、そういうものを提供するっていうことが大事になるんじゃないかなと思ってやっております。

 

菊地:無菌社会、菌をなるべくなくそうみたいな社会ですね。そういう中で、いろんな遊び方を伝えるということを意図的にやらないとなかなか難しくなっているというような状況なのかなと思ったりします。

 

Vさん:石川県立大学の1年のVです。石川県でシカが増えていることについてです。愛知出身で、滋賀と岐阜の間の伊吹山によく行っていました。シカが増えていてシカの食害で木の根っことかがなくなってしまって、土砂災害が起きてしまいました。対策は、土砂災害があってから山を閉じて、猟師さんとか市の方で協力して、シカを捕まえて減らすってことだったんですね。私自身も、狩猟免許自体は持っていますが、周りに持っている人がほとんどいなくて。若い人たちがもう狩猟をやらなくなっているので、それを増やすのが一つ手なのかと。

 それと避妊ワクチンが他の大学で開発されているとこもあって、それがもっと普及するように後押しすれば、少し良くなるんじゃないかなと思います。ありがとうございました。

 

Eさん:おそらく専門家の先生などは、こういうふうにやらないといけないという答えは持ってらっしゃるんですけど、お金がかかるんですよね。お金、県に出してほしいし、国も出してほしい。その対策が必要なんだっていう市民の声、県民の声がないと、いろいろな課題がある中で、すぐにお金は回してもらえないかなと思います。そういう問題意識を持っている人、一緒に取り組んでいる人、若い子たちだったら狩猟免許を実際持ってくれるみたいなものを増やしていく取り組み。もちろん1人ではできないので、そのネットワークづくりっていうのをやっていく。いよいよやっぱり捕獲は一番大事な対策だと思っているので、捕獲にかける予算っていうのを、項目を付けていただけるように、頑張ろうと思っています。ぜひ、やっていきましょう。ありがとうございます。

 

菊地:特に結論はありませんが、何となく傾向はあったように思います。里山とか食、知識とか人材育成の話は大きな話題になりましたし、能登のこともさまざまな観点から話題になりました。

 こうしたことへの対応のような話が最後のほう30分ぐらいでした。市民科学という方法もあるんじゃないかとか、もう少し意図的に若い人と大人と交流とか、遊び方を伝えるようなものとか、あるいは市民の声をもっと大きくしていくことが大事ではないかといったことが話し合われたと思います。それぞれの人が今日の話を聞いて、何かを感じて、何か自分で取り組むきっかけになればと思いますし、これを機に人と人のつながりができたら、私としては非常にうれしいです。

 それではどうも、今日、皆さん、ありがとうございました(拍手)。

 

今回も石川県立図書館の担当者の方に関連図書を集めていただきました。

いつもありがとうございます。

 

 

第11回いしかわ生物多様性カフェ(5/16)アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:36名

回答者数:22名

回答率:61.1%

 

今回は初めて参加した若い学生の参加が多い回でした。

 

①年齢(回答数22)

 

10代:31.8%(7名)、20代:9.1%(2名)、30代:4.5%(1名)、40代:22.7%(5名)、50代:13.6%(3名)、60代:13.6%(3名)、70代以上:4.5%(1名)

若い人の参加が多い回でした。

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数22)

 

 

男性:50.0%(11名)、女性:50.0%(11名)

 

 

 

 

③職業(回答数22)

 

 

会社員:9.1%(2名)、公務員:18.2%(4名)、教員:4.5%(1名)、自営業:4.5%(1名)、主婦/主夫:9.1%(2名)、パート/アルバイト:0.0%(2名)、学生:40.9%(9名)、無職:9.1%(3名)、その他:4.5%(1名)

学生の参加が多いカフェとなりました。

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが13.6%(3名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが18.2%(4名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が0.0%(0名)、クチコミ27.3%(6名)、金沢大学のアカンサスポータルが18.2%(4名)、ダイレクトメールが18.2%(4名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数22)

 

 

初めてが27.3%(6名)、2〜5回目が45.5%(10名)、6〜10回目が22.7%(5名)、11回目が4.5%(1名)でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数20

 

大変満足:45.0%(9名)、満足:55.0%(11名)、どちらともいえない0.0%(0名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・様々な人のテーマ、考えをテンポよくまなぶことができた。面白い取り組みだと思った。

・「生物多様性」についてより多くの人の意見も参考にしつつ、自分なりに行動していきたい。

・様々な専門家や経営者、地域プレイヤーの方々から生物多様性に関する話を聞けたから。

・様々な意見を聞き、これからの参考になることばかりだったから。

・毎回ですが、知らなかった知識が得られるので。

・いろいろな話を聞けたから。

・多様性のある意見が聞けて有意義な会でした。

・いろんな人の色んな考えに触れることができました。楽しかった〜!

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数22)

 

 

大きく変わった:0.0%(0名)、変わった:77.3%(17名)、どちらともいえない:0.0%(0名)、あまり変わらない:22.7%(5名)、変わらない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・自分にはない視点での意見があって、興味深かった。

・生き物を増やすべきだと思っていたが、鹿は増えすぎているとのことで、減らす対策が必要だということを知って驚いた。

・いろいろな立場から、色々な場所での問題や活動など、これまで知らなかったことが生の声で伝わる。

・河北潟の生活排水の話など、生活が自然に与える影響の大きさを改めて痛感した。

・鹿対策など、政府や市民がやっていくべきことなど、考えさせられました。

・和食が現代人の生活様式にはそぐわないという考え方が新鮮でした。トキとサギの共生のお話も興味深かったです。

・様々な分野からの提言があった。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数22)

 

参加したいと思う95.5%(21名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:4.5%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・ネイチャーポジティブ、生態系の健全化

・環境教育、加賀地方の里山について

・海の資源の利用について関連するテーマ

・生物多様性

・動く動物園、和食の話

・国内外来種問題(いつも同じですいません)

・自然体験

・食物連鎖について

・野生動物、石川のシカ害

・日本でのアグロエコロジー運動と実践。

・人材育成、特に専門家

・気象なども。

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・色んな世代の人達の話が聞けて楽しかった。

・大人の方が多くて緊張していたが、面白い話がたくさん聞けてきてよかったです。

・短時間に大勢の方々の活動についてのお話を聞けて、このカフェに集う人物多様性を感じた。カフェで専門家一人の話をじっくり聴くという、これまでのスタイルと違って、今回のような形式だと短時間に多くの情報を入手できる上、疑問や相談事に応じて対応してもらえる多様な人材がたくさんいるんだなあと頼もしく感じた。話をうまく要約し上手に話を引き出してゆく菊地先生がものすごく良い働きをされている。深刻な問題を暗く沈めないで、軽やかなフットワークと語り口でサラサラと色んな人に振り分けていく先生の手腕はさすが!このカフェがなかったら出会うことのなかった人びとを結びつけ、点から線→面へとつなげ、若者(年寄りをも)励まし、大勢の人前で意見を述べる経験を持たせ、考えを深めさせ。人材不足との意見もあったが、まさに菊地先生が人材育成に大きな貢献をされている。ここから巣立って活動する方々の今後を楽しみに、またカフェにお邪魔したいと思う。

・立場によって、同じ事象でも違う結果になると思った。

・一人3分間のスピーチ形式だったのでメリハリがあり、集中して話すことができた。

・様々な方々と対話交流できて楽しかったです。ありがとうございました。

・前回は何も話せなかったけれど、今回は自分の考えを話せてよかった。毎回新たなことを知れるので、今後も参加したい。

・参考になることがたくさんありました。県立図書館だけでなく、野々市のカレード(図書館)でも開催したら盛り上がりそうです。

・コウノトリとトキの共生についての話が面白かったです。素敵な人々と活動を聞いて、嬉しくなりました。

・植林材としてコナラが多用されるのは、シカによるナラ枯れとの関連があるのかなと思いました。

・田んぼがコウノトリやトキの食物を支え、もっと増やしていく必要があるのだなと思いました。

・自分が興味のある分野が偏っていたので今回参加しましたが、シカ害の人とつながりを持てたのが思わぬ収穫だった。

・いつものカフェと違った形式が楽しめました。ありがとうございました。

・色々な話が聞けてよかった。

・フリートークの回と聞いていて、どうかなと思っていましたが、本当に楽しかったです!

・とても濃い内容のカフェでした。貴重な場をいつもありがとうございます!里山の森整備や自然栽培、自然に関わることの大切さ。民間人ではありますが少しずつ関わらせていただいています。

 

第11回 いしかわ生物多様性カフェ(5/16)を開催します

【開催案内】第11回 いしかわ生物多様性カフェ
 
今回は参加者一人一人が話題提供者です。
 
自然の保全や活用に取り組んでいる人びとが集って、情報交換、対話を進めます。
一人3分程度で、!自身の活動や考えを話したい人のご参加をお待ちしています。
もちろん、みなさんのお話を聞きたい(だけの)人も大歓迎です!
 
【テーマ】みんなで話そう!つくろう! いしかわの自然共生社会
【日時】2025年5月16日(金)18:30〜20:30
【場所】石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F) ※対面のみです
【対象】どなたでも参加できます(参加費無料)
【定員】40名程度
【主催】金沢大学先端観光科学研究所 菊地直樹研究室
【共催】石川県立図書館、いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
【協力】石川県立大学 上野裕介研究室
 
 
 

第9回 いしかわ生物多様カフェ(1/31)報告

第9回 いしかわ生物多様性カフェ記録

 

開催日時:2025年1月31日(金)18:30〜20:30

 

開催場所:石川県立図書館研修室

 

話題提供者:坂本 貴啓さん(金沢大学講師)

 

テーマ: 人口減少時代における中山間地域と関係人口

 

参加者数:28名(一般参加者23名+スタッフ・関係者5名)

 

 

 

 

【話題提供】

 

自己紹介

 私は川が専門ですが、石川に来てから地域の課題に触れることが多くなりました。今日はみなさんとお話ししながら、これからの中山間地域、人口が減っていくことをどのようにとらえたらいいのかを一緒に考えることができたらと思っています。

 

 川といってもいろいろな切り口があります。たとえば川づくりを考える時、川の計画があって、工事をどうするかとか、利活用、利用を人がどうするか、維持管理をどうするかということがあります。ハード面、計画、新技術は重要ですが、私の場合、どちらかというと人がかかわるところ、たとえば計画を立てる時の合意形成、人の利用の分析、河川空間の使われ方など、人と川の関係がテーマになっていました。災害が起きると外力の分析も重要ですが、その時に人がどんな避難行動を取ったかということも併せて考える。地域の自治力を何かの形で計測をして、それを国土の管理に活かすことをしていました。

 私は福岡の出身です。八幡製鐵所に石炭を運んだ遠賀川の川沿いを寄り道しながら高校時代を楽しく過ごしていました。大学は筑波大学に進学しました。全国に国が管理している1級河川が109あります。2年半ぐらいかけて、全国の109の水系を巡り、「川でどんな活動していますか」とずっと聞いて回りました。博士論文のテーマ、川で活動する市民団体がどのような公益的な価値を持っているかについて調べるために、川と人をずっと訪ねて回ることをしていました。非常にいい財産になりました。

 最初の就職先は岐阜でした。木曽川の河川環境楽園の中に置かれている国土交通省の土木研究所自然共生センターです。職場の先輩からは「河川環境楽園だから、職場は?って聞かれたら楽園ですと答えるんだよ」と言われていました。土木研究所で川と人の関係性、市民との川づくりについて河川環境の面から一緒に考えることが1つのテーマでした。

 若手の研究者には任期があります。次を探している時に、東京大学から地域づくりをする特任助教の募集がありました。東京大学の北陸サテライトでした。備考欄に現地の地理情報にご注意くださいと書いてありました。白山市の白峰ってどこだ?場所を調べると、ダムよりさらに上流で標高500メートルぐらいあるところでした。今まで知らない地域に行くのは勇気がいることでしたが、面白さのほうが勝って、特任助教として2年間住んでいました。古民家が2年間職場だったんです。面白いことがたくさんあったので、今日はご紹介をしたいと思います。大学生たちが各地からでやって来ました。新しいサークルが立ち上がったりして、大学生が「関係人口」として紡ぐ新しい中山間の地域社会も期待ができると思っています。石川でいろいろなご縁もできて、金沢大学に移ることができまして、今研究室を持ちながら研究活動を行っています。

 

 先ほどお話ししたように、川にばっかり通う高校生でした。この川は、私が高校時代まで、河川敷に護岸が張られていましたが、工事によって水際まで近づける空間に変わりました。このように変えられることがとても衝撃的でした。市民の考えている夢が地域の中で形になっていく瞬間を私は高校時代に感じることができたことが原点になっています。地域づくりとか川づくりは、人づくり、まちづくり。これらが私の原点と思っています。

 大学に移ってから、河川流域まちづくり研究室と名付けました。『川と人』ゼミと言っていて、川に行ったりとか、川の中を走るマラソン大会に出たりとか、楽しく川と人を学ぶことをやっています。1つの研究テーマとして、関係人口が地域の機能の維持にどのような効果があるかを考えています。

 

 

人口減少社会

 私たちが直面している人口減少は、日本の中で大きな社会問題と思っています。さまざまな推計がありますが、30年後には1億人を割り込む。50年後に現在の人口の3分の2になる。3分の1がいない中で地域を維持していく、国を維持していく。どうやって維持していくのか。私たちがいろいろな観点から考えないといけないことだと思っています。

 白山市の人口は全体としてみると健全な状態ですが、山麓地域の人口の増減率と高齢化率をみると、人口も減っている、高齢化も非常に進んでいます。合併する前の地域で見ると、みなし過疎状態ともいっていい方向にだんだんシフトしてきています。

 人口減少によりでどのようなことが起こり始めるのでしょうか。1つは国土の荒廃です。人が住まなくなってくると、草が生えてきます。年に数回は草刈りをしないと道が荒れてきます。そうすると、野生動物の境界と人との境界が不鮮明になり、獣害が発生しやすくなります。その他にも農地で病害虫が発生するとか、ローカルな管理がされていため池の決壊の危険性が出てくるとか、安全面であるとか、環境の機能として少しずつ減少していくことが起きます。雪国だと、空き家になった瞬間、雪下ろしの問題が発生します。いろいろな形で複合的な問題が出てくるのです。これらが国土の荒廃につながっていくと思います。

 国土の荒廃する中、地域の中でどんなことが起きてくるのでしょうか。コミュニティーはさまざまな機能を持っています。住宅の荒廃、耕作放棄地ができると、働き口が減っていく、スーパーがだんだんなくなっていく、医療体制が弱体化していく。今まで地域の中で完結できていた、地域が持っていた機能が徐々に失われていく。実際に起き始めていると思います。

 

 

地域機能を維持する3つの処方箋

 こういう現実の中で、私たちは指をくわえて見ているだけしかできないのでしょうか。みなさんと議論したいと思っています。私自身は大きく3つぐらい方向性があると考えています。

 1つは、人口が減ったことを前提として、日常生活に必要な機能・サービスを集約・確保し、持っている資源を融通し効果を最大化する効率化策。サービスとかを集約したりとか、合わせて行ったりとか、少し機能を小さくしつつも維持する効率化を図れるところがまだあるのではないかと思います。

 2つ目は、いろいろな機能を維持することが難しいのであれば、人がいる所から呼んでくる補充策です。単独での機能維持にこだわらず、地域に愛着・関心のある地域外の人材が定住人口を補う策です。今日の話題の関係人口があたります。年間1人、2人の移住する人を取り合うような状況の中で、地域が好きな関係人口によって地域の機能を補充できるところがあるのではないかと思っています。

 3つ目は縮充策です。むらおさめとか戦略的撤退を研究されている先生もいます。地域をどうしても維持できないところまで来たところは、最終的には村を納めていく。どういう記録の残し方をするかとか、考えていく方向性があると思っています。

 1つ目の効率化策の具体的な例として、小さな拠点と地域運営組織があります。小さな拠点とは、たとえば市役所の支所に薬局が入っている、病院が入っているとか、ちょっとしたお店が入っているとか、少ない人口の中で1つの拠点に集約をすることです。大きなものはいらないのですが、小さな中で必要な機能を維持するという小さな拠点。道の駅も小さな拠点の1つ機能を持つのかもしれません。

 もう一つが地域運営組織です。地域自身が自分たちの地域を運営する、経営するという概念に変わっていく必要があるということです。地域自身が第2の行政のような形になる。今まで公民館のような生涯学習の機能しかなかったところが、防災のことも考える、買い物支援のことも考えるとか、いろんな地域に必要な機能を持つ。そういう衣替えをして、地域の運営組織、地域のコミュニティー組織化という形でいろんな地域で今進んでいるところがあります。

 白山麓地域ではお店がなくて、お年寄りの方とか車がない人はもう買い物になかなか出られない。食料品は近くでまだ買える所があっても、衣料品を買うことが難しくなってきています。コミュニティーセンターという地域運営組織が調整役になって買い物支援プロジェクトを立ち上げて、衣料品を販売する。食品と違って月1回、年に数回あると衣料品の買い物はすみます。時々来てもらう仕組みをつくるのです。

 みんなでなかなか交流する機会もないので、集まった時に交流の機会があるとか、スマホ相談コーナーがあるとか、小さな拠点の中に多機能性を持たせることが、今進んできていると思います。

 今までだったら、それぞれの地域で機能を持っていましたが、最低限の機能は地域で持つとして、それぞれの地域が持ってない機能を近隣でシェアしていく。お金も人もなくなっていく中で効率化を図っていくっていうことも1つかなと思います。

 新たな国土形成計画という国が出している方針をみると、ネットワークとコンパクト化ということで、小さいながらもいろいろ補完をしながらネットワークを持っていくことがうたわれています。こういう方向性の中で小さな地域間の連携を深めていくことがこれからの1つの方向性かなと思っています。

 人が減少した地域に対する補充策として、関係人口がキーワードになってくると思っています。たとえば観光客としてある地域に行き遊んできた人たちは交流人口といわれています。初めて来て、良かったなって帰っていく。もちろん地域にお金を落としてくれます。今までの村おこしは、観光客にいかに来てもらうかが目指しているところだったと思います。交流人口、観光客が来てくれて、お金は落としてくれるのですが、地域自身の機能は失われていく。やはり何か足りないものがある。交流人口からもう少し関係性を持った、たまたま観光に来た人が地元の人と何かの機会に仲良くなるような、交流するような機会があると、また来ますっていうような形で、その地域に愛着を持つ人が出てくるかもしれません。住んではいませんが時々やって来る人が少しずつ増えてきています。定住人口が住民としたら、交流人口よりは一歩進んだ中間の人たちを地域で獲得していくことが、地域を維持していく時に重要な部分と考えています。

 関係人口とは、どんな人たちでしょうか。いろいろな地域を行き来する人もいますし、今は住んでないけど元々ルーツがある人もある意味関係人口として数えられると思います。何らかのかかわりがある人、過去勤務していましたとか、住んでいましたとかですね。私自身も白山に対しては住んでいたので関係人口かなと思います。何だかよく分からない中間の領域なんだけれども、こういう人たちが地域の機能を何か維持できるところがあると最近考えています。

 関係人口の1つの切り口として、大学生がよくやって来ることが、1つの大きなキーワードに思っています。白峰地域は、私がサテライトにいた時、フィールドワークとか、観光できましたとか、授業のフィールドワークの一環で来ましたっていうような形で大学生が全国各地から来ていました。地域の人と交流したりとか、その地域に愛着とかが出てきた時に「また来ます」と。夏じゃなくて冬に来たりとか、少しずつ大学生が増えてきました。中には365日のうち60日来るような大学生がいました。60日というと6分の1ということで、6分の1人/人口、こういう人が6人集まると移住者1人分に相当する、そういう働きであるとか可能性を持っているかもしれないなと思うようになりました。

 大学生が来て、どんな地域の機能の維持をしているのか、実践の中で見ていく機会がありました。いろいろな地域から大学生が来て、自分たちで「しらみね大学村」という大学生のサークルをつくりました。何をしているのでしょうか。地域のお手伝いとして行う「クエスト」というものがあります。地域の人が、例えば温泉のお風呂掃除手伝ってほしいという依頼を書いてもらいます。その報酬はお金ではなくて、温泉自由に入っていいですよとか、一緒にご飯食べましょうとか、それ自体交流になったりとか、経験になるようなものを報酬として地域の人に考えてもらうのです。新たなクエストが発生しましたとLINEグループに投げると、いつ私行きますっていうような形で、大学生たちが週末だとか、長期休暇とかになるとやって来るっていうような形でなんです。

 今、青年団は10人ちょっとしかいなくなっています。10人でみこし担ぐと非常に重たいんです。大学生が手伝うとか、飲食店が1時間忙しい時間帯にちょっと手を貸せるとか、ずっとは雇用できるような体力はないけれど、瞬間的に人手が必要になる時に大学生が活躍をしていることは、何かしらの地域の機能の維持に貢献していると感じるようになりました。

 全国の各地からやって来ています。北は北海道、南は宮崎とかから、なぜか、1日に2本ぐらいしか公共交通機関がない白峰にやって来る現象が起きています。大学生が、あそこ良かったよとか、そういう口コミで広がっていくのもありますし、たまたま来た人が地域に思い入れができるとかかもしれません。年間700人ぐらいが来ているのですが、とても価値を持っている数字と思っています。地域のお祭りに大学生が入っていったりとか、新たに大学生がイベントを企画したりとか、そういう中で活動が始まりました。これが地域の人と混ざり合っていくと、数年後どのようになるのか、気になっています。こういう大学生の関係人口っていうのも、1つ非常に大きな可能性を持っていると思っています。

 もう一つ、1年間ぐらい地域に入っていく「緑のふるさと協力隊」があります。緑のふるさと協力隊は、30年ぐらい前からある制度です。1年間限定の派遣です。その後定住で自立していくミッションがあります。たとえば大学生が1年間休学をして地域に入っていく、お試し移住があります。生活費として5万5000円、家と車も支給をされます。少ない様にも感じますが、ご飯によばれたりとか、協力隊にいた人たちが地域に溶け込んでいくことがありました。

 国内留学みたいですね。コロナ禍の時は海外に留学できない人たちが、国内留学的な感じで大学生が地域に入っていくことも増えました。これも1つの関係人口。1年間お試しで1人で入っていく。これも地域に変化をもたらしていると思います。1年後に、4割ぐらいは農山村で就職をし、残っています。こういう関係性があって初めてその地域に身を置きたいと人は思うのではないでしょうか。

 効率化であるとか、人を呼んでくることがまず前提としてある中で、もうほんとに立ち行かなくなった時に、むらおさめであるとか撤退の農村計画という研究がされています。その場合、どうやって地域の記録を残すか、いざ地域が再興する時のためにどんなことを今しておかないといけないのか、まずはやっぱり自分の地域がどういう状況にあるかを、私たち自身がしっかり見つめることが大事だと思っています。

 

 

古民家サテライト(東京大学北陸サテライト)での日々

 こういうことを実際に考えながら、人口減少のど真ん中の地域で過ごしていました。古民家をサテライトとして1軒与えられていました。古民家1つあるといろんなことができることをお話ししたいなと思います。大学が地域にどんな貢献ができるかという軸で考えた時に、研究・教育・地域連携という大学の役割として3つぐらい柱があります。これを地域の中に置かれたサテライトの中で実際どんなことができるのかなっていうのが、私自身2年間白峰に住んでいた時に考えていることでした。

 北陸サテライトの辞令をもらって、鍵を渡されて、あとは自由にやってくださいといわれました。何か決まったミッションがあるわけではなく、古民家1軒与えられて、あとは自分で考えるようにということでした。最初、夜着いた時に、古民家、ガラガラと開けたら、しーんとした所で。もう誰も知らないとこからのスタートで、異世界転生したような感じでした。子犬1匹とその飼い主が私の最初の友達でした。誰もいないとこからほんとに始まったなという感じでした。

 いろいろな人がサテライトで過ごして、いろいろな人とちょっとずつつながっていく瞬間があって、私自身毎日面白く過ごせたなと思います。1年後ぐらいたつと、大学生がたくさん集まってくるような場所になってきました。「山奥の最高学府に学生集う」とか、新聞社の人がそんなタイトルを付けてくれました。拠点が1つあると、やっぱりいろんな人が集うと、何かが生まれる。今日のカフェもそうなのかもしれませんが、人が集まると、いろんな議論がされて、何か面白いことが始まる瞬間があるよねっていうことが体現できたのかなと思っています。

 私は川屋なので、川と地域というとやはり水源地域ととらえるのが重要なのかなと思います。ただ川以外の課題も、買い物が大変だとか、いろんな課題をサテライトで、いろいな人がさまざまな相談に来られました。そういうのも含めて水源地域の振興をキーワードにして活動を行ってきました。

 いろいな人とちょっとずつつながっていくと、いろいろな声が出てきました。地域の教育のことが心配です。小学生の子どもを抱えているお父さん、お母さんが心配なのは、塾がないとか、体験する講座が金沢に比べて非常に少ないということでした。教育環境として乏しいんじゃないか。人数がとても少ないので、どうしてもなれ合いになり、いざ高校に進学し人数がいるところに行った時、プレゼン力とか、コミュニケーション力とか、そういうのがちゃんとできるんだろうか。そういうことも心配されていたんですね。こういうことを聞くと、確かに課題もあるなと感じたところでした。

 山麓地域だから教育にハンディキャップがあるではなくて、逆に山麓を豊かな学びの場に変えていく、そういう未来を私たちは目指す必要があるんじゃないかな。逆に町ではできないようなことを教育のコンテンツに転用していくことを何かできないかなということが最初に考えたことでした。

 意外と自然がある地域の小学生のほうが体験したことがないことが結構あります。当たり前にあるので、虫の名前知らないとか、です。やっとここで川屋さんとしての役割が果たせたのですが、川の体験を子どもたちにさせてあげたいなということで、「しらみねリバーチャレンジスクール」を行いました。川の危険な所とか、こんな生き物がいるよっていうようなことを、水源地域の1つの特徴のある教育のコンテンツとすることを試みました。子どもたち自身も、たくさん楽しんでくれて、また次いつあるの?といわれました。印象に残ってくれたのかなと思っています。

 こういう特別な教育のコンテンツは、もちろん重要ですが、日頃の勉強ですよね。塾がないので、私ではない別の人が「山の勉強会」を行っていました。図書館の2階で子どもたちが自習をするのです、金沢大学とかの大学生が週に1回、山麓地域に通って、そこで分からないことを教えたりする活動も行っています。教員を目指す大学生は実践の場として活用しています。中山間地域の教育、そこで子どもたちに伸び伸び過ごしてもらうことと、教育の質を確保することでも大事な役割を担っていると感じました。

 大学生はいろいろなフィールドワークに結構やって来ることが多いことが分かってきました。大学生は何見にきているのかというと、白山麓なのでやはり国立公園であったりとか、国有林とか、砂防があったり、重要伝統建造物保存地区とか、ユネスコエコパークという世界認定のそういう地域、世界ジオパークもありますし、山岳信仰としての白山信仰っていうような、自然面でも文化面でも非常に特徴的なところに魅了されて、フィールドワークとしてやって来るっていうような感じです。筑波大学が世界遺産演習とか、金沢大学のSDGsプログラム、東京大学の地域未来社会フィールドワークとか、いろいろな形でいろいろな人が来ています。地域の1つ残していく特徴として、どういうフィールドワークを提供できるかっていうことも大事であると感じています。

 大学生が来ると、「こういう研究してみたいんです」と山暮らしのヒアリングする人が現れたりとか、工学部の学生が雪発電をやってみたいっていうことで、雪の温度差で電圧で発電をすることをしたりとか、来たことをきっかけに研究でも活動でもいろんなことが生まれています。やはり集うことはいろいろな価値を生むということを身をもって実感をしました。

 

 

地域に開かれたサテライト

 あと住民の方ですね。おじいちゃん、おばあちゃんとか、現役世代の人で働いている若者とか、いろんな人が誰でも学びたい時に学び直せる地域は大事と思っています。何ができるかなといろいろ考えました。おじいちゃん、おばあちゃんからすると、大学のサテライトって難しそうなとこで、私たち行ってもいいの?みたいな感じにやっぱりなってしまいます。月に数回お茶会するからお茶のみに来てくださいと。そしたら、じゃあ行こうかなっていう感じで、最初はお茶を飲むとこから始めました。時々「今日はジオパークの話をしましょう」といって。ジオパークの話しをすると、新聞にこの間ジオパークのことが載っていたとか、最初はライトな感じです。今日もお茶を飲みながらですが、そういうことはすごく大事なことだなと思います。こういう最初はライトな形で少しずつ関心が深まっていく1つの学び直しの、地域の中で茶話会が結構重要だなと思います。今は大学生たちがこれを継続してやっています。

 地元の働いている若者世代が、資格の勉強とかしたいとか、本読みたいんだけどなかなか家だとやれないっていうのは「あるある」です。私自身もよく分かるので、1時間みんなで集まって集中して自分のやりたいことやろう。自習室という形で、夜の時間サテライトでそういうことをやったりしました。こういうのも住民の人が学び直しの1つかなと思っています。

 サテライトが、教育だったりとか、研究の議論の場になったりとか活用してきました。私1人サテライトにいると、古民家管理人が1人そこでいる、マンパワー1しかないですが、いろんな人に使ってもらうってことができると、何か新しいものが生まれていく。こういう拠点1つ、空き家を確保することは、結構いろいろな価値を生むのかなと思いました。

 最初は、やっぱ川かなと思って、川の空間で川を活かしたまちづくりをやりましょうとワークショップをしました。みなさん集まってくれて「うちの川がこうだ」とかっていう話もできたのですが。でも川以外にいろいろな課題があることがだんだん分かってきました。先ほどの茶話会は今も定着していて、「次の茶話会はいつや?」と八十何歳のおばあちゃんたちがいつも楽しみにしてくれています。地域の中で拠点があるとできることのメニューの1つかなと思います。

 行政の縦割はいろいろなところであると思います。山麓のこの地域にも行政がたくさんあって、環境省、林野庁、国土交通省の出先機関が小さい地域に3つもあります。何か今までつながりってあったんですか?それぞれのとこで皆さん、つかさ、つかさでやっているっていうことがありました。

 サテライトが呼びかける必要があると考え、「みなさんお忙しいと思いますので、月に1回1時間だけ集まって共有の会議をしましょう」と声をかけました。一応それっぽく「白山麓直轄事業連絡会議」という行政の人が来やすい名前を付けました。こうやって1時間集まるだけでも、顔の見える関係ができます。登山道が壊れたっていう時にも、住民の人がそう言うと、これうちの事業の中で直しますよとか、スムーズにつながることもありました。各行政が集う場を、そういう大学の機関はある意味中間的な立場だったからこそ、各行政が集う場を設定できたかなと思いました。

 先ほどもありましたが、だんだん衣料品が買えなくなってきたことが非常に問題になっています。お寺の本堂で民生委員の人たちが100円ショップで買ってきたもの並べて、買い物をしてもらう取り組みもやっていると聞きました。お手伝いというか、何かできないかなということで、企業の人とつなぎました。企業の人に、年間に1回か2回でいいんで移動販売来てくれませんかと。買い物に行けない人たちにとってはいい機会を、みんなでつくることができたなと思っています。

 サテライトという拠点があったから大学生が集まりやすかったっていうのが1つあるかなと思っています。

 

 

ダムカレー開発

 やっと川の、私のこだわりが発揮できたことです。手取川ダムのダムカレーってみなさん食べたことありますか。ダムに見立ててカレーを作るんです。全国に100ぐらいあるんです。冬に観光需要が落ち込むことを地元の飲食店の人から聞きました。冬にダムマニア呼びましょうっていうことで。ダムマニアは、冬でも関係なくダムを回りに、ダムカード欲しいから来てくれるので、ダムカレーを飲食店で作って、ダムカレーカードも作って、これを出していこうと。

 地元の人とワークショップをしました。地元の食材はこれがいいってお母さんたちに聞いたり、建設会社のおじさんたちに構造がこういうのがいいとか、みんなでワークショップをして、住民参加型で作ったんです。お披露目は、ダムなので竣工式かなということで、日本一小さな竣工式をしようと。このテープカット、白い手袋までして、衆議院議員さんとかまで来られて、「このたびはおめでとうございます」と。カレー1杯食べる話だったんですけど、みなさん結構楽しんでくれました。こうやって真剣にふざけることも大事だなっていうことですね。

 Twitterとかいろいろ載ると、横浜から来ましたとか、名古屋から来ましたと、いろいろな人が冬でも来てくれるようになりました。お金を特別にかけたわけではないのですが、こういうのも人を呼び込む1つのきっかけになると思います。メニューとして定着したんで良かったなっていうことでした。

 水リレーとか、流域でつながることをやったりとか2年間の中でいろいろなことができました。やっぱり拠点があったことが非常に良かったなと思います。

 

 

金沢大学白山サテライト

 私が東京大学から金沢大学に変わる瞬間が一番危機だったんです。大学が変わる瞬間、大学生の行き場がなくなるっていうことで「僕たちどうしたらいいんですか」っていうようなこといわれました。個人的には大学生の拠点を、空き家を、家賃は要らないよっていうことで、光熱費だけ払ってくれればいいよっていうことでお借りすることができて、大学村も続けることができたんです。

 最近いいニュースがあります。金沢大学の白山サテライトが2月7日に開所式を迎えます。ぜひみなさんにもダムカレーとセットで、サテライトにも遊びにきてもらいたいなと思います。新しく金沢大学のサテライトができることになったので、少しずつ社会実験的につくっていければいいなと思っています。

とりとめのない話になりましたけれども、地域の機能を維持していくっていう関係人口としての話題の提供ということで終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

 

 

【対話】

 

Aさん:大変面白いお話でした。ありがとうございました。ダムカレーが食べたくて。面白いですよね。今度食べにいきます。地域の方々、おそらく年齢層高いと思いますが、その方々は、先生の取り組みとか、サテライトの活動について、正直にはどういう感想をお持ちなのかということが気になりました。

 どうしても1年に1つずつ平均年齢が、定住者に関しては上がいきますが、どう考えてらっしゃるのでしょうか。とても面白い活動で活気は取り戻せるといいなと思いますが、持続が可能なのかどうなのでしょうか。

 

坂本さん:サテライト来られる人がどんな感想持っているか、私自身も聞きたいところです。たぶん、先生のところに何かしに、勉強しにきているみたいな感じはないように思います。あだ名的に「先生」という人もいれば「さかもっちゃん」っていう人もいたり、お茶を飲みに来る人も、みなさん動機はいろいろあるという感じです。

 逆にそれぐらいのほうが、もしかすると「ちょっと寄るか」っていうような形になるのかもしれません。みなさん、電気ついていたから寄ったとかっていう感じです。ガラガラっと開いて「先生おるか?」とかっていって来てくれたのはすごいよかったです。地元の偉い人たちとかではなくて、おじいちゃん、おばあちゃんとか、身近な人が普通に訪ねてきてくれるようになったっていうのは、私が2年間いた中で一番よかったと思いました。

 だんだん平均年齢が上がっていくことですが、できることの幅が少しずつなくなっていくっていうことはあります。ひとまず10年ぐらい、できることをまずやってみようということです。10年、20年先はまた違うとらえ方があるので。年齢が上がっていくのですが、労力的なところは大学生が一緒に、料理の作り方とかは教えてもらいながらやるとか、そういう中で、まだこれからの10年はできることがあるんじゃないかと思います。ちょっと気休め的かもしれませんが。ダムカレーもぜひ食べにきてください。

 

菊地:東京大学という看板は、ちょっと敷居が高いように思います。近寄っていいのかなとか。不思議なところで、坂本さんの人柄としかいいようがないような部分があるような気もします。最初はやはり壁は非常に厚かったのですか?

 

坂本さん:最初「今度引っ越してきた坂本っていいます」「東京大学のサテライトにいます」っていうと誰にも通じないんです。「サテライトってどこ?」とかっていうふうに。ただ地元の屋号が白峰あって、エンキョという屋号だったので「エンキョにいます」というと「エンキョか」と、エンキョにいる兄ちゃんだという感じです。時にサテライトというのを最初のほうは封印しながら「エンキョにいます」とかいっていたら、いつの間にかおばあちゃんたちが「今日はサテライトでお茶会や」とかいうようになりました。

 徐々に敷居を下げていくことは大事かもしれないです。お茶やお酒を飲むことももちろん大事だなと思います。昼間の時間帯の人たちと何か一緒にできたことはよかったなと思いました。

 

Bさん:金沢大学3年のBといいます。白峰での活動は、先生が1人で考え付いたものなのか、地域の人と一緒に考えて行ったものなのか、それはどっちなんでしょうか。

 

坂本さん: 1人だとものすごく限界があります。私が最初1人で考えたのは、川のワークショップぐらいです。川だから、私の専門を生かして何かやらないと。来てくれましたけど、そんなにうまくいったものではないと思います。

 日頃のお茶飲んでいる時とか、いろんな時に、こんなことに困っているとか、ふとした雑談の中でいってくれたこととか、それをやりましょうっていう感じです。それを形としてつくっていたのかなと思います。冬の期間は結構さみしいサテライトで、おばあちゃんが毎日見回りに来てくれるぐらいだったんですが、雪解けとともにちょっとずつ人が来てくれるようになると、いやもっとこんなことやったほうがいいとか、そういうのがきっかけでいろんな形になったことがよかったなと思いました。

 

菊地:地域の人たちは坂本さんのことが心配だったんじゃないでしょうか。若い人が1人で来て、何か気になるんじゃないですかね、そういう中でいろいろと付き合いが出てきたというような感じだと思いました。Bさんと同じようなことを聞きたかったのですが、地域の人から学んだなかで、特に印象に残っていることはなんでしょうか。

 

坂本さん:私たちは、人口減少とか、結構強い言葉を意識しますけど、そういわれている地域に入っていくと全然解像度が違うんです。ほんとに困っていることは何なんだろう?というと、子どもがコミュニケーション不足にならないかとか、そういうはっとするような発見があります。普通に人口減少という枠組みでは気が付かないような。それは、やはり住んだからこそ雑談の中で出てきたってとこ露です。子どものことと、お年寄りの買い物が実際難しいんだなということが一番印象に残りました。

 

菊地:ありがとうございます。移動スーパーはよくありますが、衣類は抜けていますよね。なかなか住んでみないと分かんないことだと思いました。

 

Cさん:私も先生と似たようなことをしています。仕事の鳥獣害対策の関係で能登半島の宝達志水町とご縁ができまして。「住めますか」っていったんです。空き家があるよと用意してくれ、1年半ぐらい住んでいます。周りの人も良くしてくれています。

 石川県は農村ボランティアを募集しています。そこの集落に誘致しようという取り組みやりましたが、集落の道路の掃除とか、空き家も出てくる。農業ボランティアでなくて農村ボランティアなんです。農村ボランティアの人に道路の草刈りやってもらう、あるいは空き家の庭の草刈りをしてもらう取り組みをしてみたら、その集落を出て行った人が空き家が気になって様子を見にくるとか、家をつぶした空き地を掃除しようということだったりします。出て行った人との関係が出てくることも発生しています。高齢化が進んでいるので、将来的には道の掃除もできんくなるよねっていうことも、いろいろ心配な部分がありましたが、少し光が見えたのかなということが起こっています。

 

坂本さん:ありがとうございます。急激に人が減っている地域で、空き家をどうしていくのか。今お話の中であった一緒に汗を流す機会が出てくると、もう少し関係性が深い人が出てくると思いました。いろいろな関係人口は、気が付いたら関係人口になっていく中で重要な役割を果たされる方が時々出てくることが大事なプロセスだと思いました。

 

Dさん:地域の機能維持する3つの方策をお話しされました。その中で2つ目の補充策が、政策論の中でも研究者の中でも抜け落ちていて、そのお話をされたとの印象を持ちました。この施策が目指していくべき方向は地域によっていろいろ違ってくるので難しいという考え方で合っているのでしょうか。

 それから行政の縦割りについてもお話しされていましたが、どのようにいろいろな人を連れてきて話をする場をつくったのか、教えてください。

 

坂本さん:ありがとうございます。私も人口減少の研究、実践にかかわるのは、ここ数年のことなので勉強中です。ずっと疑問に思ってことは、いろいろな行政が移住対策を行っていますが、東京から移住したい一人の人をA市とB市で取り合って、やっとA市が獲得しても、結局日本全国でみたら人口が減っているわけです。ゼロサムゲームの状態が続いているところで、移住対策強めていきます、定住強めていきますというところに、何かできることないかと考えた時、効率化とか補充策があると思います。一人二役みたいな社会を目指すとかいうのが最初の発想でした。

 行政の人たちの連携ですね。行政の人が集まるには、大義名分が非常に必要です。白山麓の直轄事業の連絡会議ですと最初はお堅くしました。国交省が出るならうちも出ないといけないかなという感じで。行政の人も何かやりたいことがある中で、そこの業務にどういう接点があるかということは、大事にしないといけないと思いました。

 

菊地:東大のサテライトが主催なのでしょうか。

 

坂本さん:そうです。国立公園を管轄している環境省、手取川ダムを管理してる国土交通省、砂防を管理している林野庁。椅子をロの字に並べて、狭い所にみんな集まって、1時間、うちは今度このイベントをやりますとか、今度工事でいつから通行止めになります、そんな感じです。終わったあと、ついでに職場同士の打ち合わせを話していたりしていました。

 河川環境楽園の中で関係機関が集まる会議に、私が出ることが多かったので、そこに発想を得たところがあります。大学が呼びかけることは意外と大事かもしれないです。国土交通省が呼びかけたら、国交省の会議になぜ環境省が行くんだとかということもあったりします。大学が持つ中間な感じは結構大事かもしれないです。

 

菊地:大学だからやりやすいっていうことはあるかもしれませんね。中立的な立ち位置を取れるので、声かけたらみんな来やすいかもしれません。おそらく、行くきっかけが欲しいわけですね。

 

Eさん:この堅苦しい名前の連絡会議は、その後何らかの反応を呼んだんでしょうか。地域の方とつながりとか、何らかの行政的な動きとかはどうなんでしょうか。

 

坂本さん:たとえばダムカレーを作るので、ダムの仕組みのワークショップに来てくれませんかとか。そうしたら、ダムの所長さんが「手取川ダムはこれぐらいのダムで」と言ってくれました。「みなさん、これを基にダムの形考えましょう」ということがありました。あと環境省と国交省は、規制行政と建設行政というお互いけっこう緊張感があるのですが、「今度この工事するんですけどいいですかね」といった行政間の関係性構築もよかったなと思います。

 それから、地元の区長さんとかNPOの人にもメンバーに入ってもらい、地元側の要望も出してもらう機会にしました。「ちょっとこんなところが困っています」というと、「これはうちの予算でやります」というように解決することが、途中から機能した感じです。周りにどのようなステークホルダーがいるのかと見ることは大事だなと思いました。

 

Eさん:ありがとうございます。ちょっと感動します。地元の方にとっても、とてもうれしくてありがたい連絡会議ですよね。

 

坂本さん:そうですね、今までだったらスーツ着て金沢まで陳情にいく。「ここが壊れているので直してください」と。それが、ある程度はこの場でできるようになる。本局と対応協議しますとか。出先の人たちとつながれたのはよかったなと思います。

 

菊地:ありがとうございます。獣害対策でもこういう取り組みしている話を聞いたことがあります。獣害に関係する行政機関集まって意見交換をする会議です。関係する人びとが集まって、何か話してということが、いろいろなことを生むというお話でした。一つお聞きしたいのは、集まる場がけっこう大事ではないかということです。場の設定について、どういうことに気を付けていますか。

 

坂本さん:たとえば、細かいところでは会議の空間の配置とかあります。真っすぐに机並べた感じがいいかなとか。最終的にロの字に、ちょうど柱があったので落ち着きまし。議論しやすい空間の構成というのはあると思います。

こういう人たちがどういう大義名分、何を至上命題として持っているかについて、ある程度は自分もちゃんと把握をしておく必要があるなと思います。相手とつながれそうなところを探すことはあります。

 

Fさん:白山麓は、私の地元です。地元からの感想をみなさんと共有できればいいかなと。人口減少は本当にもう大変な状態です。全国のいろいろな協力隊、大学生も来て、山麓の体験学習をしていく時に、マイナスにはなっていないと思いますが、われわれの時間止まらないし、高齢者の方々は日に日に人生去っていく。

 それを補うような、大学と行政と連携して、白峰山麓の自然の環境の宝を、今の社会の経済の中に落とし込んでいく。そういったアドバイスはないでしょうか。地元と行政と連携した中で、ここに住みたいと思ってもらえるような戦略というか、プログラムがあれば教えてほしいと思います。

 

坂本さん:なかなか難しいですよね。いろいろな大学が最近、地域づくり関係の学部をつくっています。金沢大学には地域創造学類があります。大学の1つの変化として地域とつながるきっかけを模索しているところと思います。菊地先生どうですか。

 

菊地:そうですね、模索はしていますよね。今の時代、大学が地域と連携することは求められています。そういうことをしたい教員もたくさんいます。ただ、さきほどの大義名分というか、かかわるきっかけがなかなかないということも正直あると思っています。私はやや消極的な人間なので、自分から売り込むことは、ほとんどしないんですね。声かけてもらったら、いろいろできるんですけど。そこが自分の弱みでもあるとは思います。

 だから、今日のカフェもそうですが、接点をいろいろつくっていくことが大事かなと思います。Fさんの地域でそういうことがあれば、坂本さんでもいいし、私でもいい。つながりができて、一緒に考えていく。ということぐらいしか、今は思い浮かびませんが。

 

Fさん:過去、3名の方が緑の協力隊として、私のところで1年間応援していただきました。その方たちは山里の地域の方たちの生活スタイルについて、人生勉強の中で体験したいと。将来、どこの地域で住もうと、山里はこういった文化があるんだということを1つのお土産はそこに必ずくっついていく。

 白山の5カ村の中では、人口減少で能登と同じレベルなのですが、どうにか未来に残していきたいという思いは強いのですが、今の社会は経済優先の社会、自然と環境もとても大事なことだとは気付いていますが、もう一度社会が掘り起こしてほしいなという思いがすごく強いです。ホタルで今の緑の戦略を落とし込んでいければと、そんな思いでシンポジウム開いています。

 

菊地:ありがとうございます。今日のテーマは関係人口でした。従来の地域の担い手だけでは非常に難しい状況の中、全く違う補充策というお話しでした。特に大学生中心の内容でした。地域だけではなく、企業も人手不足で、なかなか定着する人がいない。隙間バイトがありますよね。同じ会社にずっと務めるのではなく、いろいろなところを回りながらお金を稼ぐという生活スタイルも出てきています。もちろんお金の安定性は低いのですが。社会の過渡期だと思います。

 人が減っていく中で、人の流動性、人の動きが激しくなっていく中で、社会の仕組みとしてどのように再構成していくのか。日本全体の大きな課題になっているのではないでしょうか。

 

坂本さん:一人二役みたいな、対流していくような、ぐるぐるあっち行ったりこっち行ったりとか、そういう感じの中で、自分の好きな地域に身を置くことも1つ。人が少ないことはもう前提としてあるとしたら、1人が2役をするような、そういう社会のいい面としてとらえていくのも1つの可能性があると思います。

 

菊地:Fさんはホタルのシンポジウムをされていますよね。たくさんの人がホタル見にくるし、一緒に話し合ったりします。関係人口の一つだと思います。

 

坂本さん:もうすぐ白峰にサテライトができます。大学生が来るようになったら、ホタルの時期には鳥越に行くとか、できるようになるといいなと思っています。

 

Fさん:石川県全体を見た時、私は能登に興味があります。石川県がトキを放鳥するという中で、政府が緑の戦略、環境問題がクローズアップされています。トキを放鳥することは、ホタルも一緒なんです。トキがすめる所にはホタルもすめるというのが、私の考えなんです。政府は農薬を減らしてほしいと、2030年、50年には4分の1を有機に持っていきたいという戦略があります。大賛成ですが、今の社会の中で果たして、オーガニックな生産現場は何%?なのでしょうか?まだまだほど遠い。地域が存続できて国民が健康で人生全うできるには、われわれの環境と食生活、これが一番大事だと思っています。国の政策をわれわれ国民がどれだけ理解して寄り添っていけるかということが大事と思います。

 

菊地:ありがとうございます。外から見ると人口減少地域に見えてしまいますが、住んでみると違う解像度があるという話がとても印象的でした。地域の目線で見ると地域の見え方が変わるということでしょうか。また拠点があり、人がいて、つながりができて、つながりができるといろいろなものが生まれる可能性があるというお話も印象的でした。ありがとうございました。

 

 

石川県立図書館さんに関連する本を集めていただきました。

いつもありがとうございます。

 

第10回 いしかわ生物多様性カフェ(3/27)アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:22名

回答者数:16名

回答率:72.7%

 

①年齢(回答数16)

 

10代:6.3%(1名)、20代:18.8%(3名)、30代:0.0%(0名)、40代:12.5%(2名)、50代:18.8%(3名)、60代:31.3%(5名)、70代以上:12.5%(2名)

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数16)

 

 

男性:50.0%(8名)、女性:50.5%(8名)

 

 

 

 

③職業(回答数16)

 

 

会社員:6.3%(1名)、公務員:6.3%(1名)、教員:6.3%(1名)、自営業:6.3%(1名)、主婦/主夫:12.5%(2名)、パート/アルバイト:12.5%(2名)、学生:25.0%(4名)、無職:18.8%(3名)、その他:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが18.8%(3名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが37.6%(6名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が12.5%(2名)、クチコミ6.3%(1名)、金沢大学のアカンサスポータルが12.5%(2名)、ダイレクトメールが43.8%(7名)、その他が6.3%(1名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数15)

 

 

初めてが13.3%(2名)、二回目が13.3%(2名)、三回目が6.7%(1名)、四回目が6.7%(1名)、五回目が0.0%(0名)、六回目が13.3%(2名)、七回目が20.0%(3名)、八回目が13.3%(2名)、九回目が0.0%(1名)、十回目が13.3%(2名)でした。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数16

 

大変満足:56.3%(9名)、満足:31.3%(5名)、どちらともいえない12.5%(2名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・里山の自然観察会からわかること。親たちや子どもたちの環境の意識づけられて、身近な田圃や水辺に興味が湧いてくるのはとても良いです。野村先生の写真とお話がわかりやすくて、虫は苦手ですが、種類の多さに興味を持ちました。水たまりが必要なことも知りました。

・ゲストの方のお話も、参加者の方の質問も、どちらも大変興味深かったです。

・ため池の生き物について、いろいろ勉強になりました。トキに優しい「冬みず田んぼ」の話も面白かったです。

・里山や里海での自然に対する働きかけが生物の多様性に大きく寄与していたという話を具体的な事例で知ることができ、理解が進んだ。

・内容はよかったです。「現状はちょっと暗い」と改めて感じた。

・生物調査の写真を見て、石川の生物多様性の高さを改めて感じた。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数16)

 

 

大きく変わった:12.5%(2名)、変わった:56.3%(9名)、どちらともいえない:12.5%(2名)、あまり変わらない:12.5%(2名)、変わらない:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・人の手が継続的にかかわることで、生き物たちもそのサイクルに合わせて生きている。みな共生できる。減少していることは悲しいことです。カフェに参加して、鳥の飛ぶ姿、虫、花、毎日のニュースに出てくる生き物など、よく目にとまるようになりました。

・手遅れ感がひしひしと・・・

・生き物調査を通して、水の中の生き物から水質がきれいか汚れているかを判断することが勉強になりました。

・以前から思っていたことと野村さんのお話が重なることが多いと感じたため。

・染まりました

・生態系と調和した人の暮らしとは、ということが非常に考えさせられた。

・①環境が多様だと生物も多様になる・・・②4つの危機の話③自然に対する働きかけ④もっと自然に目を向けよう⑤人間活動や開発による危機

・ゆっくり考える時間となっています。

・市民と専門家との意見の食い違いに対する新たな視点が得られた。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数16)

 

参加したいと思う93.8%(15名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・人も生き物たちも運命共同体。山火事などで森林消失が心配です。山の仕事や林業関係の方のお話も聞いてみたい。人工的な公園よりビオトープや観察会が出来るような場所を増やす活動はもっと増やせる?田んぼの復活が先?

・気候変動と生態系の関係など。

・生物多様性と環境教育。

・里山里海の未来。何か希望の持てる形で。

・里山で生活している野生生物

・国内外来種関連

・里山

・狩猟

・トキ

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・外来種の問題は、もう少し掘り下げたほうが望ましい。

・アカトンボやカエルの水田利用サイクル。水溜りにそんなにたくさんの生き物やレッドデータのものまでいるのは感動ですね。お写真が美しくて虫も大丈夫でした。観察会で虫の名前に花の名前1つでも覚えて、身近な自然とそこに生きる生物たちのことを考え、大切に思う気持ちが養われるなと思いました。(データ化、見える化、伝える方法。皆で考えたいですね)+たのしさ。

・生物らしいお話を聞けて楽しかったです。活用法・・・ゲンゴロウネイル

・いわゆる「一般」の人々の生物多様性への意識をどう高めていけば良いのか、ゲストの方とフロアでやりとりがありましたが、自分自身、研究の中で「一般市民の科学への興味関心向上」についての論考を読むことが多く、比較しながらとても興味深く拝聴しました。今回もありがとうございました。

・変化の速さ。速すぎだと思いました。人間はダメですね。なんか行動しないと。ありがとうございました。

・一般市民と生物多様性の保全とのつながりを深めるためには、ストーリー性がある発信や地域のシンボルとなる存在を創り出すことが大切だと思います。

・外来種の立ち位置をどう考えるか。

・非常にためになるお話で、参加してよかったと心から思いました。行政や学校関係のアプローチの必要性をとても感じています。自分も自然調査の時に今回の内容を行かせたらと思います。

・里山と生物多様性、里山のあり方に最も興味がありましたので、とても良い時間になりました。ありがとうございます。

・質疑応答は楽しかったです。上記①〜⑤など、考えさせられました。赤とんぼがいなくなったのはなぜだろう?農薬?

・まさに「豊かな里山」で育ちました。次世代に向けて、どう出来るのだろうか!

・生物調査によって環境への関心を高めることができそうだと思い、生物調査イベントに参加したいと思った。

・田んぼの大切さについて再認しました。

 

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