いしかわ生物多様性カフェ

いしかわ生物多様性カフェ

第9回 いしかわ生物多様カフェ(1/31)報告

第9回 いしかわ生物多様性カフェ記録

 

開催日時:2025年1月31日(金)18:30〜20:30

 

開催場所:石川県立図書館研修室

 

話題提供者:坂本 貴啓さん(金沢大学講師)

 

テーマ: 人口減少時代における中山間地域と関係人口

 

参加者数:28名(一般参加者23名+スタッフ・関係者5名)

 

 

 

 

【話題提供】

 

自己紹介

 私は川が専門ですが、石川に来てから地域の課題に触れることが多くなりました。今日はみなさんとお話ししながら、これからの中山間地域、人口が減っていくことをどのようにとらえたらいいのかを一緒に考えることができたらと思っています。

 

 川といってもいろいろな切り口があります。たとえば川づくりを考える時、川の計画があって、工事をどうするかとか、利活用、利用を人がどうするか、維持管理をどうするかということがあります。ハード面、計画、新技術は重要ですが、私の場合、どちらかというと人がかかわるところ、たとえば計画を立てる時の合意形成、人の利用の分析、河川空間の使われ方など、人と川の関係がテーマになっていました。災害が起きると外力の分析も重要ですが、その時に人がどんな避難行動を取ったかということも併せて考える。地域の自治力を何かの形で計測をして、それを国土の管理に活かすことをしていました。

 私は福岡の出身です。八幡製鐵所に石炭を運んだ遠賀川の川沿いを寄り道しながら高校時代を楽しく過ごしていました。大学は筑波大学に進学しました。全国に国が管理している1級河川が109あります。2年半ぐらいかけて、全国の109の水系を巡り、「川でどんな活動していますか」とずっと聞いて回りました。博士論文のテーマ、川で活動する市民団体がどのような公益的な価値を持っているかについて調べるために、川と人をずっと訪ねて回ることをしていました。非常にいい財産になりました。

 最初の就職先は岐阜でした。木曽川の河川環境楽園の中に置かれている国土交通省の土木研究所自然共生センターです。職場の先輩からは「河川環境楽園だから、職場は?って聞かれたら楽園ですと答えるんだよ」と言われていました。土木研究所で川と人の関係性、市民との川づくりについて河川環境の面から一緒に考えることが1つのテーマでした。

 若手の研究者には任期があります。次を探している時に、東京大学から地域づくりをする特任助教の募集がありました。東京大学の北陸サテライトでした。備考欄に現地の地理情報にご注意くださいと書いてありました。白山市の白峰ってどこだ?場所を調べると、ダムよりさらに上流で標高500メートルぐらいあるところでした。今まで知らない地域に行くのは勇気がいることでしたが、面白さのほうが勝って、特任助教として2年間住んでいました。古民家が2年間職場だったんです。面白いことがたくさんあったので、今日はご紹介をしたいと思います。大学生たちが各地からでやって来ました。新しいサークルが立ち上がったりして、大学生が「関係人口」として紡ぐ新しい中山間の地域社会も期待ができると思っています。石川でいろいろなご縁もできて、金沢大学に移ることができまして、今研究室を持ちながら研究活動を行っています。

 

 先ほどお話ししたように、川にばっかり通う高校生でした。この川は、私が高校時代まで、河川敷に護岸が張られていましたが、工事によって水際まで近づける空間に変わりました。このように変えられることがとても衝撃的でした。市民の考えている夢が地域の中で形になっていく瞬間を私は高校時代に感じることができたことが原点になっています。地域づくりとか川づくりは、人づくり、まちづくり。これらが私の原点と思っています。

 大学に移ってから、河川流域まちづくり研究室と名付けました。『川と人』ゼミと言っていて、川に行ったりとか、川の中を走るマラソン大会に出たりとか、楽しく川と人を学ぶことをやっています。1つの研究テーマとして、関係人口が地域の機能の維持にどのような効果があるかを考えています。

 

 

人口減少社会

 私たちが直面している人口減少は、日本の中で大きな社会問題と思っています。さまざまな推計がありますが、30年後には1億人を割り込む。50年後に現在の人口の3分の2になる。3分の1がいない中で地域を維持していく、国を維持していく。どうやって維持していくのか。私たちがいろいろな観点から考えないといけないことだと思っています。

 白山市の人口は全体としてみると健全な状態ですが、山麓地域の人口の増減率と高齢化率をみると、人口も減っている、高齢化も非常に進んでいます。合併する前の地域で見ると、みなし過疎状態ともいっていい方向にだんだんシフトしてきています。

 人口減少によりでどのようなことが起こり始めるのでしょうか。1つは国土の荒廃です。人が住まなくなってくると、草が生えてきます。年に数回は草刈りをしないと道が荒れてきます。そうすると、野生動物の境界と人との境界が不鮮明になり、獣害が発生しやすくなります。その他にも農地で病害虫が発生するとか、ローカルな管理がされていため池の決壊の危険性が出てくるとか、安全面であるとか、環境の機能として少しずつ減少していくことが起きます。雪国だと、空き家になった瞬間、雪下ろしの問題が発生します。いろいろな形で複合的な問題が出てくるのです。これらが国土の荒廃につながっていくと思います。

 国土の荒廃する中、地域の中でどんなことが起きてくるのでしょうか。コミュニティーはさまざまな機能を持っています。住宅の荒廃、耕作放棄地ができると、働き口が減っていく、スーパーがだんだんなくなっていく、医療体制が弱体化していく。今まで地域の中で完結できていた、地域が持っていた機能が徐々に失われていく。実際に起き始めていると思います。

 

 

地域機能を維持する3つの処方箋

 こういう現実の中で、私たちは指をくわえて見ているだけしかできないのでしょうか。みなさんと議論したいと思っています。私自身は大きく3つぐらい方向性があると考えています。

 1つは、人口が減ったことを前提として、日常生活に必要な機能・サービスを集約・確保し、持っている資源を融通し効果を最大化する効率化策。サービスとかを集約したりとか、合わせて行ったりとか、少し機能を小さくしつつも維持する効率化を図れるところがまだあるのではないかと思います。

 2つ目は、いろいろな機能を維持することが難しいのであれば、人がいる所から呼んでくる補充策です。単独での機能維持にこだわらず、地域に愛着・関心のある地域外の人材が定住人口を補う策です。今日の話題の関係人口があたります。年間1人、2人の移住する人を取り合うような状況の中で、地域が好きな関係人口によって地域の機能を補充できるところがあるのではないかと思っています。

 3つ目は縮充策です。むらおさめとか戦略的撤退を研究されている先生もいます。地域をどうしても維持できないところまで来たところは、最終的には村を納めていく。どういう記録の残し方をするかとか、考えていく方向性があると思っています。

 1つ目の効率化策の具体的な例として、小さな拠点と地域運営組織があります。小さな拠点とは、たとえば市役所の支所に薬局が入っている、病院が入っているとか、ちょっとしたお店が入っているとか、少ない人口の中で1つの拠点に集約をすることです。大きなものはいらないのですが、小さな中で必要な機能を維持するという小さな拠点。道の駅も小さな拠点の1つ機能を持つのかもしれません。

 もう一つが地域運営組織です。地域自身が自分たちの地域を運営する、経営するという概念に変わっていく必要があるということです。地域自身が第2の行政のような形になる。今まで公民館のような生涯学習の機能しかなかったところが、防災のことも考える、買い物支援のことも考えるとか、いろんな地域に必要な機能を持つ。そういう衣替えをして、地域の運営組織、地域のコミュニティー組織化という形でいろんな地域で今進んでいるところがあります。

 白山麓地域ではお店がなくて、お年寄りの方とか車がない人はもう買い物になかなか出られない。食料品は近くでまだ買える所があっても、衣料品を買うことが難しくなってきています。コミュニティーセンターという地域運営組織が調整役になって買い物支援プロジェクトを立ち上げて、衣料品を販売する。食品と違って月1回、年に数回あると衣料品の買い物はすみます。時々来てもらう仕組みをつくるのです。

 みんなでなかなか交流する機会もないので、集まった時に交流の機会があるとか、スマホ相談コーナーがあるとか、小さな拠点の中に多機能性を持たせることが、今進んできていると思います。

 今までだったら、それぞれの地域で機能を持っていましたが、最低限の機能は地域で持つとして、それぞれの地域が持ってない機能を近隣でシェアしていく。お金も人もなくなっていく中で効率化を図っていくっていうことも1つかなと思います。

 新たな国土形成計画という国が出している方針をみると、ネットワークとコンパクト化ということで、小さいながらもいろいろ補完をしながらネットワークを持っていくことがうたわれています。こういう方向性の中で小さな地域間の連携を深めていくことがこれからの1つの方向性かなと思っています。

 人が減少した地域に対する補充策として、関係人口がキーワードになってくると思っています。たとえば観光客としてある地域に行き遊んできた人たちは交流人口といわれています。初めて来て、良かったなって帰っていく。もちろん地域にお金を落としてくれます。今までの村おこしは、観光客にいかに来てもらうかが目指しているところだったと思います。交流人口、観光客が来てくれて、お金は落としてくれるのですが、地域自身の機能は失われていく。やはり何か足りないものがある。交流人口からもう少し関係性を持った、たまたま観光に来た人が地元の人と何かの機会に仲良くなるような、交流するような機会があると、また来ますっていうような形で、その地域に愛着を持つ人が出てくるかもしれません。住んではいませんが時々やって来る人が少しずつ増えてきています。定住人口が住民としたら、交流人口よりは一歩進んだ中間の人たちを地域で獲得していくことが、地域を維持していく時に重要な部分と考えています。

 関係人口とは、どんな人たちでしょうか。いろいろな地域を行き来する人もいますし、今は住んでないけど元々ルーツがある人もある意味関係人口として数えられると思います。何らかのかかわりがある人、過去勤務していましたとか、住んでいましたとかですね。私自身も白山に対しては住んでいたので関係人口かなと思います。何だかよく分からない中間の領域なんだけれども、こういう人たちが地域の機能を何か維持できるところがあると最近考えています。

 関係人口の1つの切り口として、大学生がよくやって来ることが、1つの大きなキーワードに思っています。白峰地域は、私がサテライトにいた時、フィールドワークとか、観光できましたとか、授業のフィールドワークの一環で来ましたっていうような形で大学生が全国各地から来ていました。地域の人と交流したりとか、その地域に愛着とかが出てきた時に「また来ます」と。夏じゃなくて冬に来たりとか、少しずつ大学生が増えてきました。中には365日のうち60日来るような大学生がいました。60日というと6分の1ということで、6分の1人/人口、こういう人が6人集まると移住者1人分に相当する、そういう働きであるとか可能性を持っているかもしれないなと思うようになりました。

 大学生が来て、どんな地域の機能の維持をしているのか、実践の中で見ていく機会がありました。いろいろな地域から大学生が来て、自分たちで「しらみね大学村」という大学生のサークルをつくりました。何をしているのでしょうか。地域のお手伝いとして行う「クエスト」というものがあります。地域の人が、例えば温泉のお風呂掃除手伝ってほしいという依頼を書いてもらいます。その報酬はお金ではなくて、温泉自由に入っていいですよとか、一緒にご飯食べましょうとか、それ自体交流になったりとか、経験になるようなものを報酬として地域の人に考えてもらうのです。新たなクエストが発生しましたとLINEグループに投げると、いつ私行きますっていうような形で、大学生たちが週末だとか、長期休暇とかになるとやって来るっていうような形でなんです。

 今、青年団は10人ちょっとしかいなくなっています。10人でみこし担ぐと非常に重たいんです。大学生が手伝うとか、飲食店が1時間忙しい時間帯にちょっと手を貸せるとか、ずっとは雇用できるような体力はないけれど、瞬間的に人手が必要になる時に大学生が活躍をしていることは、何かしらの地域の機能の維持に貢献していると感じるようになりました。

 全国の各地からやって来ています。北は北海道、南は宮崎とかから、なぜか、1日に2本ぐらいしか公共交通機関がない白峰にやって来る現象が起きています。大学生が、あそこ良かったよとか、そういう口コミで広がっていくのもありますし、たまたま来た人が地域に思い入れができるとかかもしれません。年間700人ぐらいが来ているのですが、とても価値を持っている数字と思っています。地域のお祭りに大学生が入っていったりとか、新たに大学生がイベントを企画したりとか、そういう中で活動が始まりました。これが地域の人と混ざり合っていくと、数年後どのようになるのか、気になっています。こういう大学生の関係人口っていうのも、1つ非常に大きな可能性を持っていると思っています。

 もう一つ、1年間ぐらい地域に入っていく「緑のふるさと協力隊」があります。緑のふるさと協力隊は、30年ぐらい前からある制度です。1年間限定の派遣です。その後定住で自立していくミッションがあります。たとえば大学生が1年間休学をして地域に入っていく、お試し移住があります。生活費として5万5000円、家と車も支給をされます。少ない様にも感じますが、ご飯によばれたりとか、協力隊にいた人たちが地域に溶け込んでいくことがありました。

 国内留学みたいですね。コロナ禍の時は海外に留学できない人たちが、国内留学的な感じで大学生が地域に入っていくことも増えました。これも1つの関係人口。1年間お試しで1人で入っていく。これも地域に変化をもたらしていると思います。1年後に、4割ぐらいは農山村で就職をし、残っています。こういう関係性があって初めてその地域に身を置きたいと人は思うのではないでしょうか。

 効率化であるとか、人を呼んでくることがまず前提としてある中で、もうほんとに立ち行かなくなった時に、むらおさめであるとか撤退の農村計画という研究がされています。その場合、どうやって地域の記録を残すか、いざ地域が再興する時のためにどんなことを今しておかないといけないのか、まずはやっぱり自分の地域がどういう状況にあるかを、私たち自身がしっかり見つめることが大事だと思っています。

 

 

古民家サテライト(東京大学北陸サテライト)での日々

 こういうことを実際に考えながら、人口減少のど真ん中の地域で過ごしていました。古民家をサテライトとして1軒与えられていました。古民家1つあるといろんなことができることをお話ししたいなと思います。大学が地域にどんな貢献ができるかという軸で考えた時に、研究・教育・地域連携という大学の役割として3つぐらい柱があります。これを地域の中に置かれたサテライトの中で実際どんなことができるのかなっていうのが、私自身2年間白峰に住んでいた時に考えていることでした。

 北陸サテライトの辞令をもらって、鍵を渡されて、あとは自由にやってくださいといわれました。何か決まったミッションがあるわけではなく、古民家1軒与えられて、あとは自分で考えるようにということでした。最初、夜着いた時に、古民家、ガラガラと開けたら、しーんとした所で。もう誰も知らないとこからのスタートで、異世界転生したような感じでした。子犬1匹とその飼い主が私の最初の友達でした。誰もいないとこからほんとに始まったなという感じでした。

 いろいろな人がサテライトで過ごして、いろいろな人とちょっとずつつながっていく瞬間があって、私自身毎日面白く過ごせたなと思います。1年後ぐらいたつと、大学生がたくさん集まってくるような場所になってきました。「山奥の最高学府に学生集う」とか、新聞社の人がそんなタイトルを付けてくれました。拠点が1つあると、やっぱりいろんな人が集うと、何かが生まれる。今日のカフェもそうなのかもしれませんが、人が集まると、いろんな議論がされて、何か面白いことが始まる瞬間があるよねっていうことが体現できたのかなと思っています。

 私は川屋なので、川と地域というとやはり水源地域ととらえるのが重要なのかなと思います。ただ川以外の課題も、買い物が大変だとか、いろんな課題をサテライトで、いろいな人がさまざまな相談に来られました。そういうのも含めて水源地域の振興をキーワードにして活動を行ってきました。

 いろいな人とちょっとずつつながっていくと、いろいろな声が出てきました。地域の教育のことが心配です。小学生の子どもを抱えているお父さん、お母さんが心配なのは、塾がないとか、体験する講座が金沢に比べて非常に少ないということでした。教育環境として乏しいんじゃないか。人数がとても少ないので、どうしてもなれ合いになり、いざ高校に進学し人数がいるところに行った時、プレゼン力とか、コミュニケーション力とか、そういうのがちゃんとできるんだろうか。そういうことも心配されていたんですね。こういうことを聞くと、確かに課題もあるなと感じたところでした。

 山麓地域だから教育にハンディキャップがあるではなくて、逆に山麓を豊かな学びの場に変えていく、そういう未来を私たちは目指す必要があるんじゃないかな。逆に町ではできないようなことを教育のコンテンツに転用していくことを何かできないかなということが最初に考えたことでした。

 意外と自然がある地域の小学生のほうが体験したことがないことが結構あります。当たり前にあるので、虫の名前知らないとか、です。やっとここで川屋さんとしての役割が果たせたのですが、川の体験を子どもたちにさせてあげたいなということで、「しらみねリバーチャレンジスクール」を行いました。川の危険な所とか、こんな生き物がいるよっていうようなことを、水源地域の1つの特徴のある教育のコンテンツとすることを試みました。子どもたち自身も、たくさん楽しんでくれて、また次いつあるの?といわれました。印象に残ってくれたのかなと思っています。

 こういう特別な教育のコンテンツは、もちろん重要ですが、日頃の勉強ですよね。塾がないので、私ではない別の人が「山の勉強会」を行っていました。図書館の2階で子どもたちが自習をするのです、金沢大学とかの大学生が週に1回、山麓地域に通って、そこで分からないことを教えたりする活動も行っています。教員を目指す大学生は実践の場として活用しています。中山間地域の教育、そこで子どもたちに伸び伸び過ごしてもらうことと、教育の質を確保することでも大事な役割を担っていると感じました。

 大学生はいろいろなフィールドワークに結構やって来ることが多いことが分かってきました。大学生は何見にきているのかというと、白山麓なのでやはり国立公園であったりとか、国有林とか、砂防があったり、重要伝統建造物保存地区とか、ユネスコエコパークという世界認定のそういう地域、世界ジオパークもありますし、山岳信仰としての白山信仰っていうような、自然面でも文化面でも非常に特徴的なところに魅了されて、フィールドワークとしてやって来るっていうような感じです。筑波大学が世界遺産演習とか、金沢大学のSDGsプログラム、東京大学の地域未来社会フィールドワークとか、いろいろな形でいろいろな人が来ています。地域の1つ残していく特徴として、どういうフィールドワークを提供できるかっていうことも大事であると感じています。

 大学生が来ると、「こういう研究してみたいんです」と山暮らしのヒアリングする人が現れたりとか、工学部の学生が雪発電をやってみたいっていうことで、雪の温度差で電圧で発電をすることをしたりとか、来たことをきっかけに研究でも活動でもいろんなことが生まれています。やはり集うことはいろいろな価値を生むということを身をもって実感をしました。

 

 

地域に開かれたサテライト

 あと住民の方ですね。おじいちゃん、おばあちゃんとか、現役世代の人で働いている若者とか、いろんな人が誰でも学びたい時に学び直せる地域は大事と思っています。何ができるかなといろいろ考えました。おじいちゃん、おばあちゃんからすると、大学のサテライトって難しそうなとこで、私たち行ってもいいの?みたいな感じにやっぱりなってしまいます。月に数回お茶会するからお茶のみに来てくださいと。そしたら、じゃあ行こうかなっていう感じで、最初はお茶を飲むとこから始めました。時々「今日はジオパークの話をしましょう」といって。ジオパークの話しをすると、新聞にこの間ジオパークのことが載っていたとか、最初はライトな感じです。今日もお茶を飲みながらですが、そういうことはすごく大事なことだなと思います。こういう最初はライトな形で少しずつ関心が深まっていく1つの学び直しの、地域の中で茶話会が結構重要だなと思います。今は大学生たちがこれを継続してやっています。

 地元の働いている若者世代が、資格の勉強とかしたいとか、本読みたいんだけどなかなか家だとやれないっていうのは「あるある」です。私自身もよく分かるので、1時間みんなで集まって集中して自分のやりたいことやろう。自習室という形で、夜の時間サテライトでそういうことをやったりしました。こういうのも住民の人が学び直しの1つかなと思っています。

 サテライトが、教育だったりとか、研究の議論の場になったりとか活用してきました。私1人サテライトにいると、古民家管理人が1人そこでいる、マンパワー1しかないですが、いろんな人に使ってもらうってことができると、何か新しいものが生まれていく。こういう拠点1つ、空き家を確保することは、結構いろいろな価値を生むのかなと思いました。

 最初は、やっぱ川かなと思って、川の空間で川を活かしたまちづくりをやりましょうとワークショップをしました。みなさん集まってくれて「うちの川がこうだ」とかっていう話もできたのですが。でも川以外にいろいろな課題があることがだんだん分かってきました。先ほどの茶話会は今も定着していて、「次の茶話会はいつや?」と八十何歳のおばあちゃんたちがいつも楽しみにしてくれています。地域の中で拠点があるとできることのメニューの1つかなと思います。

 行政の縦割はいろいろなところであると思います。山麓のこの地域にも行政がたくさんあって、環境省、林野庁、国土交通省の出先機関が小さい地域に3つもあります。何か今までつながりってあったんですか?それぞれのとこで皆さん、つかさ、つかさでやっているっていうことがありました。

 サテライトが呼びかける必要があると考え、「みなさんお忙しいと思いますので、月に1回1時間だけ集まって共有の会議をしましょう」と声をかけました。一応それっぽく「白山麓直轄事業連絡会議」という行政の人が来やすい名前を付けました。こうやって1時間集まるだけでも、顔の見える関係ができます。登山道が壊れたっていう時にも、住民の人がそう言うと、これうちの事業の中で直しますよとか、スムーズにつながることもありました。各行政が集う場を、そういう大学の機関はある意味中間的な立場だったからこそ、各行政が集う場を設定できたかなと思いました。

 先ほどもありましたが、だんだん衣料品が買えなくなってきたことが非常に問題になっています。お寺の本堂で民生委員の人たちが100円ショップで買ってきたもの並べて、買い物をしてもらう取り組みもやっていると聞きました。お手伝いというか、何かできないかなということで、企業の人とつなぎました。企業の人に、年間に1回か2回でいいんで移動販売来てくれませんかと。買い物に行けない人たちにとってはいい機会を、みんなでつくることができたなと思っています。

 サテライトという拠点があったから大学生が集まりやすかったっていうのが1つあるかなと思っています。

 

 

ダムカレー開発

 やっと川の、私のこだわりが発揮できたことです。手取川ダムのダムカレーってみなさん食べたことありますか。ダムに見立ててカレーを作るんです。全国に100ぐらいあるんです。冬に観光需要が落ち込むことを地元の飲食店の人から聞きました。冬にダムマニア呼びましょうっていうことで。ダムマニアは、冬でも関係なくダムを回りに、ダムカード欲しいから来てくれるので、ダムカレーを飲食店で作って、ダムカレーカードも作って、これを出していこうと。

 地元の人とワークショップをしました。地元の食材はこれがいいってお母さんたちに聞いたり、建設会社のおじさんたちに構造がこういうのがいいとか、みんなでワークショップをして、住民参加型で作ったんです。お披露目は、ダムなので竣工式かなということで、日本一小さな竣工式をしようと。このテープカット、白い手袋までして、衆議院議員さんとかまで来られて、「このたびはおめでとうございます」と。カレー1杯食べる話だったんですけど、みなさん結構楽しんでくれました。こうやって真剣にふざけることも大事だなっていうことですね。

 Twitterとかいろいろ載ると、横浜から来ましたとか、名古屋から来ましたと、いろいろな人が冬でも来てくれるようになりました。お金を特別にかけたわけではないのですが、こういうのも人を呼び込む1つのきっかけになると思います。メニューとして定着したんで良かったなっていうことでした。

 水リレーとか、流域でつながることをやったりとか2年間の中でいろいろなことができました。やっぱり拠点があったことが非常に良かったなと思います。

 

 

金沢大学白山サテライト

 私が東京大学から金沢大学に変わる瞬間が一番危機だったんです。大学が変わる瞬間、大学生の行き場がなくなるっていうことで「僕たちどうしたらいいんですか」っていうようなこといわれました。個人的には大学生の拠点を、空き家を、家賃は要らないよっていうことで、光熱費だけ払ってくれればいいよっていうことでお借りすることができて、大学村も続けることができたんです。

 最近いいニュースがあります。金沢大学の白山サテライトが2月7日に開所式を迎えます。ぜひみなさんにもダムカレーとセットで、サテライトにも遊びにきてもらいたいなと思います。新しく金沢大学のサテライトができることになったので、少しずつ社会実験的につくっていければいいなと思っています。

とりとめのない話になりましたけれども、地域の機能を維持していくっていう関係人口としての話題の提供ということで終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

 

 

 

【対話】

 

Aさん:大変面白いお話でした。ありがとうございました。ダムカレーが食べたくて。面白いですよね。今度食べにいきます。地域の方々、おそらく年齢層高いと思いますが、その方々は、先生の取り組みとか、サテライトの活動について、正直にはどういう感想をお持ちなのかということが気になりました。

 どうしても1年に1つずつ平均年齢が、定住者に関しては上がいきますが、どう考えてらっしゃるのでしょうか。とても面白い活動で活気は取り戻せるといいなと思いますが、持続が可能なのかどうなのでしょうか。

 

坂本さん:サテライト来られる人がどんな感想持っているか、私自身も聞きたいところです。たぶん、先生のところに何かしに、勉強しにきているみたいな感じはないように思います。あだ名的に「先生」という人もいれば「さかもっちゃん」っていう人もいたり、お茶を飲みに来る人も、みなさん動機はいろいろあるという感じです。

 逆にそれぐらいのほうが、もしかすると「ちょっと寄るか」っていうような形になるのかもしれません。みなさん、電気ついていたから寄ったとかっていう感じです。ガラガラっと開いて「先生おるか?」とかっていって来てくれたのはすごいよかったです。地元の偉い人たちとかではなくて、おじいちゃん、おばあちゃんとか、身近な人が普通に訪ねてきてくれるようになったっていうのは、私が2年間いた中で一番よかったと思いました。

 だんだん平均年齢が上がっていくことですが、できることの幅が少しずつなくなっていくっていうことはあります。ひとまず10年ぐらい、できることをまずやってみようということです。10年、20年先はまた違うとらえ方があるので。年齢が上がっていくのですが、労力的なところは大学生が一緒に、料理の作り方とかは教えてもらいながらやるとか、そういう中で、まだこれからの10年はできることがあるんじゃないかと思います。ちょっと気休め的かもしれませんが。ダムカレーもぜひ食べにきてください。

 

菊地:東京大学という看板は、ちょっと敷居が高いように思います。近寄っていいのかなとか。不思議なところで、坂本さんの人柄としかいいようがないような部分があるような気もします。最初はやはり壁は非常に厚かったのですか?

 

坂本さん:最初「今度引っ越してきた坂本っていいます」「東京大学のサテライトにいます」っていうと誰にも通じないんです。「サテライトってどこ?」とかっていうふうに。ただ地元の屋号が白峰あって、エンキョという屋号だったので「エンキョにいます」というと「エンキョか」と、エンキョにいる兄ちゃんだという感じです。時にサテライトというのを最初のほうは封印しながら「エンキョにいます」とかいっていたら、いつの間にかおばあちゃんたちが「今日はサテライトでお茶会や」とかいうようになりました。

 徐々に敷居を下げていくことは大事かもしれないです。お茶やお酒を飲むことももちろん大事だなと思います。昼間の時間帯の人たちと何か一緒にできたことはよかったなと思いました。

 

Bさん:金沢大学3年のBといいます。白峰での活動は、先生が1人で考え付いたものなのか、地域の人と一緒に考えて行ったものなのか、それはどっちなんでしょうか。

 

坂本さん: 1人だとものすごく限界があります。私が最初1人で考えたのは、川のワークショップぐらいです。川だから、私の専門を生かして何かやらないと。来てくれましたけど、そんなにうまくいったものではないと思います。

 日頃のお茶飲んでいる時とか、いろんな時に、こんなことに困っているとか、ふとした雑談の中でいってくれたこととか、それをやりましょうっていう感じです。それを形としてつくっていたのかなと思います。冬の期間は結構さみしいサテライトで、おばあちゃんが毎日見回りに来てくれるぐらいだったんですが、雪解けとともにちょっとずつ人が来てくれるようになると、いやもっとこんなことやったほうがいいとか、そういうのがきっかけでいろんな形になったことがよかったなと思いました。

 

菊地:地域の人たちは坂本さんのことが心配だったんじゃないでしょうか。若い人が1人で来て、何か気になるんじゃないですかね、そういう中でいろいろと付き合いが出てきたというような感じだと思いました。Bさんと同じようなことを聞きたかったのですが、地域の人から学んだなかで、特に印象に残っていることはなんでしょうか。

 

坂本さん:私たちは、人口減少とか、結構強い言葉を意識しますけど、そういわれている地域に入っていくと全然解像度が違うんです。ほんとに困っていることは何なんだろう?というと、子どもがコミュニケーション不足にならないかとか、そういうはっとするような発見があります。普通に人口減少という枠組みでは気が付かないような。それは、やはり住んだからこそ雑談の中で出てきたってとこ露です。子どものことと、お年寄りの買い物が実際難しいんだなということが一番印象に残りました。

 

菊地:ありがとうございます。移動スーパーはよくありますが、衣類は抜けていますよね。なかなか住んでみないと分かんないことだと思いました。

 

Cさん:私も先生と似たようなことをしています。仕事の鳥獣害対策の関係で能登半島の宝達志水町とご縁ができまして。「住めますか」っていったんです。空き家があるよと用意してくれ、1年半ぐらい住んでいます。周りの人も良くしてくれています。

 石川県は農村ボランティアを募集しています。そこの集落に誘致しようという取り組みやりましたが、集落の道路の掃除とか、空き家も出てくる。農業ボランティアでなくて農村ボランティアなんです。農村ボランティアの人に道路の草刈りやってもらう、あるいは空き家の庭の草刈りをしてもらう取り組みをしてみたら、その集落を出て行った人が空き家が気になって様子を見にくるとか、家をつぶした空き地を掃除しようということだったりします。出て行った人との関係が出てくることも発生しています。高齢化が進んでいるので、将来的には道の掃除もできんくなるよねっていうことも、いろいろ心配な部分がありましたが、少し光が見えたのかなということが起こっています。

 

坂本さん:ありがとうございます。急激に人が減っている地域で、空き家をどうしていくのか。今お話の中であった一緒に汗を流す機会が出てくると、もう少し関係性が深い人が出てくると思いました。いろいろな関係人口は、気が付いたら関係人口になっていく中で重要な役割を果たされる方が時々出てくることが大事なプロセスだと思いました。

 

Dさん:地域の機能維持する3つの方策をお話しされました。その中で2つ目の補充策が、政策論の中でも研究者の中でも抜け落ちていて、そのお話をされたとの印象を持ちました。この施策が目指していくべき方向は地域によっていろいろ違ってくるので難しいという考え方で合っているのでしょうか。

 それから行政の縦割りについてもお話しされていましたが、どのようにいろいろな人を連れてきて話をする場をつくったのか、教えてください。

 

坂本さん:ありがとうございます。私も人口減少の研究、実践にかかわるのは、ここ数年のことなので勉強中です。ずっと疑問に思ってことは、いろいろな行政が移住対策を行っていますが、東京から移住したい一人の人をA市とB市で取り合って、やっとA市が獲得しても、結局日本全国でみたら人口が減っているわけです。ゼロサムゲームの状態が続いているところで、移住対策強めていきます、定住強めていきますというところに、何かできることないかと考えた時、効率化とか補充策があると思います。一人二役みたいな社会を目指すとかいうのが最初の発想でした。

 行政の人たちの連携ですね。行政の人が集まるには、大義名分が非常に必要です。白山麓の直轄事業の連絡会議ですと最初はお堅くしました。国交省が出るならうちも出ないといけないかなという感じで。行政の人も何かやりたいことがある中で、そこの業務にどういう接点があるかということは、大事にしないといけないと思いました。

 

菊地:東大のサテライトが主催なのでしょうか。

 

坂本さん:そうです。国立公園を管轄している環境省、手取川ダムを管理してる国土交通省、砂防を管理している林野庁。椅子をロの字に並べて、狭い所にみんな集まって、1時間、うちは今度このイベントをやりますとか、今度工事でいつから通行止めになります、そんな感じです。終わったあと、ついでに職場同士の打ち合わせを話していたりしていました。

 河川環境楽園の中で関係機関が集まる会議に、私が出ることが多かったので、そこに発想を得たところがあります。大学が呼びかけることは意外と大事かもしれないです。国土交通省が呼びかけたら、国交省の会議になぜ環境省が行くんだとかということもあったりします。大学が持つ中間な感じは結構大事かもしれないです。

 

菊地:大学だからやりやすいっていうことはあるかもしれませんね。中立的な立ち位置を取れるので、声かけたらみんな来やすいかもしれません。おそらく、行くきっかけが欲しいわけですね。

 

Eさん:この堅苦しい名前の連絡会議は、その後何らかの反応を呼んだんでしょうか。地域の方とつながりとか、何らかの行政的な動きとかはどうなんでしょうか。

 

坂本さん:たとえばダムカレーを作るので、ダムの仕組みのワークショップに来てくれませんかとか。そうしたら、ダムの所長さんが「手取川ダムはこれぐらいのダムで」と言ってくれました。「みなさん、これを基にダムの形考えましょう」ということがありました。あと環境省と国交省は、規制行政と建設行政というお互いけっこう緊張感があるのですが、「今度この工事するんですけどいいですかね」といった行政間の関係性構築もよかったなと思います。

 それから、地元の区長さんとかNPOの人にもメンバーに入ってもらい、地元側の要望も出してもらう機会にしました。「ちょっとこんなところが困っています」というと、「これはうちの予算でやります」というように解決することが、途中から機能した感じです。周りにどのようなステークホルダーがいるのかと見ることは大事だなと思いました。

 

Eさん:ありがとうございます。ちょっと感動します。地元の方にとっても、とてもうれしくてありがたい連絡会議ですよね。

 

坂本さん:そうですね、今までだったらスーツ着て金沢まで陳情にいく。「ここが壊れているので直してください」と。それが、ある程度はこの場でできるようになる。本局と対応協議しますとか。出先の人たちとつながれたのはよかったなと思います。

 

菊地:ありがとうございます。獣害対策でもこういう取り組みしている話を聞いたことがあります。獣害に関係する行政機関集まって意見交換をする会議です。関係する人びとが集まって、何か話してということが、いろいろなことを生むというお話でした。一つお聞きしたいのは、集まる場がけっこう大事ではないかということです。場の設定について、どういうことに気を付けていますか。

 

坂本さん:たとえば、細かいところでは会議の空間の配置とかあります。真っすぐに机並べた感じがいいかなとか。最終的にロの字に、ちょうど柱があったので落ち着きまし。議論しやすい空間の構成というのはあると思います。

こういう人たちがどういう大義名分、何を至上命題として持っているかについて、ある程度は自分もちゃんと把握をしておく必要があるなと思います。相手とつながれそうなところを探すことはあります。

 

Fさん:白山麓は、私の地元です。地元からの感想をみなさんと共有できればいいかなと。人口減少は本当にもう大変な状態です。全国のいろいろな協力隊、大学生も来て、山麓の体験学習をしていく時に、マイナスにはなっていないと思いますが、われわれの時間止まらないし、高齢者の方々は日に日に人生去っていく。

 それを補うような、大学と行政と連携して、白峰山麓の自然の環境の宝を、今の社会の経済の中に落とし込んでいく。そういったアドバイスはないでしょうか。地元と行政と連携した中で、ここに住みたいと思ってもらえるような戦略というか、プログラムがあれば教えてほしいと思います。

 

坂本さん:なかなか難しいですよね。いろいろな大学が最近、地域づくり関係の学部をつくっています。金沢大学には地域創造学類があります。大学の1つの変化として地域とつながるきっかけを模索しているところと思います。菊地先生どうですか。

 

菊地:そうですね、模索はしていますよね。今の時代、大学が地域と連携することは求められています。そういうことをしたい教員もたくさんいます。ただ、さきほどの大義名分というか、かかわるきっかけがなかなかないということも正直あると思っています。私はやや消極的な人間なので、自分から売り込むことは、ほとんどしないんですね。声かけてもらったら、いろいろできるんですけど。そこが自分の弱みでもあるとは思います。

 だから、今日のカフェもそうですが、接点をいろいろつくっていくことが大事かなと思います。Fさんの地域でそういうことがあれば、坂本さんでもいいし、私でもいい。つながりができて、一緒に考えていく。ということぐらいしか、今は思い浮かびませんが。

 

Fさん:過去、3名の方が緑の協力隊として、私のところで1年間応援していただきました。その方たちは山里の地域の方たちの生活スタイルについて、人生勉強の中で体験したいと。将来、どこの地域で住もうと、山里はこういった文化があるんだということを1つのお土産はそこに必ずくっついていく。

 白山の5カ村の中では、人口減少で能登と同じレベルなのですが、どうにか未来に残していきたいという思いは強いのですが、今の社会は経済優先の社会、自然と環境もとても大事なことだとは気付いていますが、もう一度社会が掘り起こしてほしいなという思いがすごく強いです。ホタルで今の緑の戦略を落とし込んでいければと、そんな思いでシンポジウム開いています。

 

菊地:ありがとうございます。今日のテーマは関係人口でした。従来の地域の担い手だけでは非常に難しい状況の中、全く違う補充策というお話しでした。特に大学生中心の内容でした。地域だけではなく、企業も人手不足で、なかなか定着する人がいない。隙間バイトがありますよね。同じ会社にずっと務めるのではなく、いろいろなところを回りながらお金を稼ぐという生活スタイルも出てきています。もちろんお金の安定性は低いのですが。社会の過渡期だと思います。

 人が減っていく中で、人の流動性、人の動きが激しくなっていく中で、社会の仕組みとしてどのように再構成していくのか。日本全体の大きな課題になっているのではないでしょうか。

 

坂本さん:一人二役みたいな、対流していくような、ぐるぐるあっち行ったりこっち行ったりとか、そういう感じの中で、自分の好きな地域に身を置くことも1つ。人が少ないことはもう前提としてあるとしたら、1人が2役をするような、そういう社会のいい面としてとらえていくのも1つの可能性があると思います。

 

菊地:Fさんはホタルのシンポジウムをされていますよね。たくさんの人がホタル見にくるし、一緒に話し合ったりします。関係人口の一つだと思います。

 

坂本さん:もうすぐ白峰にサテライトができます。大学生が来るようになったら、ホタルの時期には鳥越に行くとか、できるようになるといいなと思っています。

 

Fさん:石川県全体を見た時、私は能登に興味があります。石川県がトキを放鳥するという中で、政府が緑の戦略、環境問題がクローズアップされています。トキを放鳥することは、ホタルも一緒なんです。トキがすめる所にはホタルもすめるというのが、私の考えなんです。政府は農薬を減らしてほしいと、2030年、50年には4分の1を有機に持っていきたいという戦略があります。大賛成ですが、今の社会の中で果たして、オーガニックな生産現場は何%?なのでしょうか?まだまだほど遠い。地域が存続できて国民が健康で人生全うできるには、われわれの環境と食生活、これが一番大事だと思っています。国の政策をわれわれ国民がどれだけ理解して寄り添っていけるかということが大事と思います。

 

菊地:ありがとうございます。外から見ると人口減少地域に見えてしまいますが、住んでみると違う解像度があるという話がとても印象的でした。地域の目線で見ると地域の見え方が変わるということでしょうか。また拠点があり、人がいて、つながりができて、つながりができるといろいろなものが生まれる可能性があるというお話も印象的でした。ありがとうございました。

 

 

石川県立図書館さんに関連する本を集めていただきました。

いつもありがとうございます。

 

第10回 いしかわ生物多様性カフェ(3/27)アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:22名

回答者数:16名

回答率:72.7%

 

①年齢(回答数16)

 

10代:6.3%(1名)、20代:18.8%(3名)、30代:0.0%(0名)、40代:12.5%(2名)、50代:18.8%(3名)、60代:31.3%(5名)、70代以上:12.5%(2名)

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数16)

 

 

男性:50.0%(8名)、女性:50.5%(8名)

 

 

 

 

③職業(回答数16)

 

 

会社員:6.3%(1名)、公務員:6.3%(1名)、教員:6.3%(1名)、自営業:6.3%(1名)、主婦/主夫:12.5%(2名)、パート/アルバイト:12.5%(2名)、学生:25.0%(4名)、無職:18.8%(3名)、その他:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが18.8%(3名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが37.6%(6名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が12.5%(2名)、クチコミ6.3%(1名)、金沢大学のアカンサスポータルが12.5%(2名)、ダイレクトメールが43.8%(7名)、その他が6.3%(1名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数15)

 

 

初めてが13.3%(2名)、二回目が13.3%(2名)、三回目が6.7%(1名)、四回目が6.7%(1名)、五回目が0.0%(0名)、六回目が13.3%(2名)、七回目が20.0%(3名)、八回目が13.3%(2名)、九回目が0.0%(1名)、十回目が13.3%(2名)でした。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数16

 

大変満足:56.3%(9名)、満足:31.3%(5名)、どちらともいえない12.5%(2名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・里山の自然観察会からわかること。親たちや子どもたちの環境の意識づけられて、身近な田圃や水辺に興味が湧いてくるのはとても良いです。野村先生の写真とお話がわかりやすくて、虫は苦手ですが、種類の多さに興味を持ちました。水たまりが必要なことも知りました。

・ゲストの方のお話も、参加者の方の質問も、どちらも大変興味深かったです。

・ため池の生き物について、いろいろ勉強になりました。トキに優しい「冬みず田んぼ」の話も面白かったです。

・里山や里海での自然に対する働きかけが生物の多様性に大きく寄与していたという話を具体的な事例で知ることができ、理解が進んだ。

・内容はよかったです。「現状はちょっと暗い」と改めて感じた。

・生物調査の写真を見て、石川の生物多様性の高さを改めて感じた。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数16)

 

 

大きく変わった:12.5%(2名)、変わった:56.3%(9名)、どちらともいえない:12.5%(2名)、あまり変わらない:12.5%(2名)、変わらない:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・人の手が継続的にかかわることで、生き物たちもそのサイクルに合わせて生きている。みな共生できる。減少していることは悲しいことです。カフェに参加して、鳥の飛ぶ姿、虫、花、毎日のニュースに出てくる生き物など、よく目にとまるようになりました。

・手遅れ感がひしひしと・・・

・生き物調査を通して、水の中の生き物から水質がきれいか汚れているかを判断することが勉強になりました。

・以前から思っていたことと野村さんのお話が重なることが多いと感じたため。

・染まりました

・生態系と調和した人の暮らしとは、ということが非常に考えさせられた。

・①環境が多様だと生物も多様になる・・・②4つの危機の話③自然に対する働きかけ④もっと自然に目を向けよう⑤人間活動や開発による危機

・ゆっくり考える時間となっています。

・市民と専門家との意見の食い違いに対する新たな視点が得られた。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数16)

 

参加したいと思う93.8%(15名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:6.3%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・人も生き物たちも運命共同体。山火事などで森林消失が心配です。山の仕事や林業関係の方のお話も聞いてみたい。人工的な公園よりビオトープや観察会が出来るような場所を増やす活動はもっと増やせる?田んぼの復活が先?

・気候変動と生態系の関係など。

・生物多様性と環境教育。

・里山里海の未来。何か希望の持てる形で。

・里山で生活している野生生物

・国内外来種関連

・里山

・狩猟

・トキ

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・外来種の問題は、もう少し掘り下げたほうが望ましい。

・アカトンボやカエルの水田利用サイクル。水溜りにそんなにたくさんの生き物やレッドデータのものまでいるのは感動ですね。お写真が美しくて虫も大丈夫でした。観察会で虫の名前に花の名前1つでも覚えて、身近な自然とそこに生きる生物たちのことを考え、大切に思う気持ちが養われるなと思いました。(データ化、見える化、伝える方法。皆で考えたいですね)+たのしさ。

・生物らしいお話を聞けて楽しかったです。活用法・・・ゲンゴロウネイル

・いわゆる「一般」の人々の生物多様性への意識をどう高めていけば良いのか、ゲストの方とフロアでやりとりがありましたが、自分自身、研究の中で「一般市民の科学への興味関心向上」についての論考を読むことが多く、比較しながらとても興味深く拝聴しました。今回もありがとうございました。

・変化の速さ。速すぎだと思いました。人間はダメですね。なんか行動しないと。ありがとうございました。

・一般市民と生物多様性の保全とのつながりを深めるためには、ストーリー性がある発信や地域のシンボルとなる存在を創り出すことが大切だと思います。

・外来種の立ち位置をどう考えるか。

・非常にためになるお話で、参加してよかったと心から思いました。行政や学校関係のアプローチの必要性をとても感じています。自分も自然調査の時に今回の内容を行かせたらと思います。

・里山と生物多様性、里山のあり方に最も興味がありましたので、とても良い時間になりました。ありがとうございます。

・質疑応答は楽しかったです。上記①〜⑤など、考えさせられました。赤とんぼがいなくなったのはなぜだろう?農薬?

・まさに「豊かな里山」で育ちました。次世代に向けて、どう出来るのだろうか!

・生物調査によって環境への関心を高めることができそうだと思い、生物調査イベントに参加したいと思った。

・田んぼの大切さについて再認しました。

 

第九回 いしかわ生物多様性カフェ(1/31)参加者アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:23名

回答者数:18名

回答率:78.2%

 

①年齢(回答数18)

 

10代:0.0%(0名)、20代:38.9%(7名)、30代:0.0%(0名)、40代:11.1%(2名)、50代:16.7%(3名)、60代:11.1%(2名)、70代以上:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数18)

 

 

男性:66.7%(12名)、女性:33.3%(6名)

 

 

 

 

③職業(回答数18)

 

 

会社員:5.6%(1名)、公務員:16.7%(3名)、教員:5.6%(1名)、自営業:5.6%(1名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:11.1%(2名)、学生:44.4%(8名)、無職:0.0%(0名)、その他:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが5.6%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが44.4%(8名)、県立図書館が5.6%(1名)、いしかわ自然学校が16.7%(3名)、クチコミ5.6%(1名)、金沢大学のアカンサスポータルが50.0%(9名)、ダイレクトメールが33.3%(6名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数18)

 

 

初めてが27.8%(5名)、二回目が5.6%(1名)、三回目が5.6%(1名)、四回目が11.1%(3名)、五回目が11.1%(3名)、六回目が22.2%(4名)、七回目が11.1%(3名)、八回目が5.6%(1名)、九回目が5.6%(1名)した。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数16

 

大変満足:56.3%(9名)、満足:43.8%(7名)、どちらともいえない0.0%(0名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・「関係人口」という言葉をはじめて知った。そこから色々なことに思考を巡らせることができた。白峰の活動は楽しそうで良い!

・学生として中山間地域に貢献している方々の存在を知れた。

・The presentation has so many new interesting insight, I need more time to process it. I learned a lot about practical way to do rural community development today, which I’m looking for attending this seminar.

・以前に坂本先生の授業で聞いた話のより深い部分の話を聞くことができた。集落の維持や地域活性化という興味のある分野の具体的な活動を知れたのが勉強になった。

・関係人口の重要性と集落の維持について深く知ることができた。今後の自身の学びや研究に活かしていきたいと思う。

・場所(拠点)より人

・「水源地域での教育活動」とサテライトの役割について、いろいろ勉強になりました。

・サテライト、地域の人とのコミュニケーション構築、行政でなく大学生のパワーで成り立つ楽しみながら皆相互に学びを得て良い関係を知りました。とても分かりやすかったです。

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数18)

 

 

大きく変わった:11.1%(2名)、変わった:50.0%(9名)、どちらともいえない:22.2%(4名)、あまり変わらない:11.1%(2名)、変わらない:5.6%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・人口減少地域の維持についてはどちらかというと否定的であったが、中間的な考え方、とらえ方があることを知り、なるほどと思った。

・中山間地域のイベントに積極的に参加したいと思った。

・白峰の事例を知れて、とても参考になった。

・My frequency in this topic didn’t change much, due to I have same concern. However, Student volunteering program inspire my own project which also planned to gather scholar in community development project, my home country(Indonesia) may not have same cohensive stakeholder spirit like Japan, which become my own challenge to start project in Indonesia.

・地域を活性化させたいとき、どうしても観光に目がいきがちだが、それ以上に「関係人口」を増やすことを目的として活動をされていることに意外性を感じた。

・将来は都市圏で働くが、都市の大学に通っていれば深く考えることのなかったテーマだと思う。年ならではの多様性と人の暮らしについて考えていきたい。

・もともと生物の多様性と人の暮らしは重要と思っていましたので。

・あまり変わりませんが、関係人口という考え方について知識を少しですが深めることができました。つながりをつくることの重要性についての考え方は、これまでと変わらず本当に重要だと考えてます。

・良い意味で大体予想通りでした。白峰の人々がもっと排他的だと思っていたので、そこは意外でした。それもきっと坂本先生のお人柄とネゴシエーターとしての手腕がお見事だったとお見受けしました。大変勉強になりました。

・大学生が過疎地域でボランティアをして卒論を完成させ、その地域の関係人口になることは興味深いです。

・毎回いろんな違った方面から、いろんな活動をされている方の生の実際のお話が新鮮です。ルーティンワークばかりしているものとしては目からウロコで、私も何か役に立つ活動に参加できればと学ばせてもらっています。

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数18)

 

参加したいと思う:88.9%(16名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:11.1%(2名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・気候変動(第4の危機)

・狩猟

・農村の戦略的撤退。むらおさめ。

・I’m interesting about the approach and method that develop to engage the community especially among students.

・自然とのつながり

・外来種問題

・人と人のつながり

・地震、災害後の過疎地域の課題のようなこと。

・生物多様性と地域文化(南方熊楠さん、神社合祀反対運動をきっかけに自然保護)

・自然体験活動とフィールド保全、手入れしすぎず安全なフィールドを子どもたちとつくる

・生き物や自然に関する踏み込んだ話題。

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・人びとがその土地に住み続ける、定着していくために、何らかの価値観の転換が必要になってくると思いました。一方で現在の教育課程ではそれと逆の価値観をインプットしているように思いました。

・おにぎりせんべいがなつかしく、おいしかった!ありがとうございました。

・大学生として自分にも貢献できることがありそうだと思った。

・中山間地域の未来を考える上で、合理的解決、関係人口、むらおさめなどあるが、地域として何が最善策なのか検討していくことの難しさを感じた。

・現場で生活したからこそ分かることがあり、研究における「現場」の重要性を感じられた。自分一人で活動を考えるのではなく、地域の人々と一体となって、地域をより良くするための活動を地域全体で作りあげるというのは難しいが、それを成立させていることに感心した。ありがとうございました。

・地域の人と関わるには、まず相手と打ち解ける努力が重要で、さらに相手のために行動することが大事だと思った。

・テーマとしては面白かったです。私の年齢的には、終了時間が遅いと感じたためです。20:00までの方がありがたい。私は能登出身で実家もそこです。参加者の方で当事者の方の発言がありました。本当に同感です。

・経済中心の社会といっても、人と人のつながりは段々と重視されるようになったかなと思う。しかし、どの程度のバランスがよいかはよくわからないと思う。

・人口減少は小学校の廃校と村の衰退のイメージなので、学校が残っているうちは、まだ大丈夫な印象。

・様々な大学が地域づくりについて考え、行動している姿をよく見ますが、今回のお話では、その面について詳しく伺うことができて、とても参考になりました。

・とても興味深くお聞きすることができました。坂本先生の河川に関するお話もお伺いしたいと思いました。

・関係人口が定住人口に移行しない問題をどう解決すればいいですか?

・坂本先生のお話、とても分かりやすく拝聴しました。大学生のパワーすごいですね。オープンな地域の人とそうでない地域があるのでは?と思いました。一過性にならない様、ずっと交流が続くことが望ましいですね。

・現地で活動した研究者の話が聞けてよかったです。

 

第八回 いしかわ生物多様性カフェ(11/22開催)参加者アンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:27名

回答者数:20名

回答率:74.1%

 

①年齢(回答数20)

 

10代:5.0%(1名)、20代:15.0%(3名)、30代:10.0%(2名)、40代:30.0%(6名)、50代:30.0%(6名)、60代:10.0%(2名)、70代以上:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数20)

 

 

男性:30.0%(6名)、女性:70.0%(14名)

 

 

 

 

③職業(回答数19)

 

 

会社員:10.5%(2名)、公務員:5.3%(1名)、教員:10.5%(2名)、自営業:5.3%(1名)、主婦/主夫:5.3%(1名)、パート/アルバイト:15.8%(3名)、学生:26.3%(5名)、無職:10.5%(2名)、その他:10.5%(2名)

 

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが5.3%(1名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが21.1%(4名)、県立図書館が0.0%(0名)、いしかわ自然学校が21.1%(4名)、クチコミ15.8%(3名)、金沢大学のアカンサスポータルが36.8%(7名)、ダイレクトメールが21.1%(4名)、その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数20)

 

 

初めてが28.6%(6名)、二回目が4.8%(1名)、三回目が23.8%(5名)、四回目が4.8%(1名)、五回目が14.3%(3名)、六回目が9.5%(2名)、七回目が4.8%(1名)八回目が4.8%(1名)でした。

でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数19

 

大変満足:52.6%(10名)、満足:42.1%(8名)、どちらともいえない:5.3%(1名)、あまり満足ではない:0.0%(0名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・地域おこし的「リアル」を知る機会

・日本の里山に関する活性化の取り組みが分かるようになりました。

・山立会の食堂に一度入りたいと思っていたので、メニューなどを知ることができてよかったです。今度行きます。羊の子の動画をSNSにアップするとかはどうでしょうか。あと、なめこの廃菌床を農地や牧草地などの堆肥作りなどに利用できないでしょうか。

・興味深い取り組みでした。

・山立会さんの取り組みを知りました。応援したいと思います。

・里山を舞台とする経営の話は興味深いもので大変面白かった。色々わかったことがある。

・木滑なめこ、白山麓ヒツジについていろいろ勉強になりました。お菓子も美味しかったです。

・山立会のさまざまな事業、有本さんのお考えを知れて参考になりました。

・研究者、行政、地域の視点を持った有本さんの話が興味深かった。

・有本さんのお話が前向きでわかりやすく楽しかったです。今後が楽しみです。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数19)

 

 

大きく変わった:5.3%(1名)、変わった:47.4%(9名)、どちらともいえない:26.3%(5名)、あまり変わらない:21.1%(4名)、変わらない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・山立会の理念、結局経済視点が上位になっている?現実的でしっかりしているとも言えますが。

・生物多様性と人の暮らしについては、あまり変わりませんでした。獣害の話は普通な話であるような気がしますので。

・獣害問題だけでなく、人がクラス里山の活性化が大切と改めて感じた。

・自分が元々考えていいたことと基本理念は近いと感じたので。

・獣害を地域活性化するものとして利用する例を知ることができたから。獣害は地域によって異なるので、特産物として売り出せることに気づいた。

・やりがい、楽しさをもって取り組むことの大切さ。

・専門の方のお話を聞いて、里山の現状や関わり方、ニュースの見方、自分の中の意見、足元ばかりの生活から一歩広がった。視界が広がりました。

・win-win関係は最高。良い循環できれば。

・耕作放棄地での放牧を通じて地域資源が持続可能に活用されることで、白山の新たな魅力を生み出しました。

・生物多様性⇄経営 その好事例を見せてもらいました。

・里山の維持管理をすることで、生物多様性、人の暮らしのどちらにも貢献できると思った。

参加者が多くて、質問も含め楽しくおもしろかったです。

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数20)

 

参加したいと思う:100.0%(20名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:0.0%(0名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・野生動物

・能登里山の今後について

・50年〜100年前の里山のリアルを整理発信してはどうか。例、里の田のビオトープ

・地域における行政のあり方

・今日の話を受けて、白山の「里山」が歴史的にどのような形で存在してきたのかが気になりました。

・地域活性化は地元の人が安全に暮らすこと、ということが印象的でした。地域活性化とはどういうことなのか考えたいです。

・クマと里山

・今回に似ているテーマ。実際に行っている取り組みに関心がある。

・生物多様性とエコツーリズム

・狩猟

・食をテーマにしたもの

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・いろいろ一緒に考えることができました。

・今回の発表内容から見れば、行政の役割は補助金の提供と仕事の提供だけのようです。それは、日本の地域にとって普通のあり方でしょうか。

・里山を生業として経営という観点から、たくさんの取り組みを紹介していただき、大変勉強になりました。自分がイメージした「里山暮らし」とは大きく異なる、里山を拠点?とした生活のあり方の可能性についての理解が拡がったように思います。

・なめこ食べてみたいと思いました。

・興味深いお話でした。ぜひ食堂か現地にも行ってみたいと思いました。たくさんの人が体験する・共感を広げる(協力者?)+一時的な人手不足を解消する→タイミーに求人を出してくだされば、ぜひ働いてみたいです。

・以前から興味のあった山立会さんのお話を、里山のなりわいという目線でうかがえたのが、とても参考になりました。高い専門性やバリエーション、周囲とのバランス(関係性)改めて関心が高まりました。

・かねてから山立会のことを知りたいと思っていたので、今回はとても興味深くお話をお聞きしました。濃い時間をありがとうございました。

・企業の視点から里山をどう生かすかというお話を聞くことができ、大変面白かったです。山立会食堂に伺ったことがないため、いつかうかがいたいです。

・とても楽しそうになりわいを仕事にされていることに刺激を受けました。

・なりわいが成り立つ保全。山立会のたくさんのビジョン。楽しんで働いておられる。大変だろうけど人間らしい仕事でうらやましいと思いました。

・いろいろわかりまして面白かった。

・羊ふれあい体験、とても興味深いです。

・経営者でありアカデミックバックグラウンドを持つ有本さん自身がとてもすばらしいと思いました。私個人として、山立会の暮らしそのものを体験できるような「観光」プログラムがあるとよいと思います。泊まって、その生活から学んでみたいです。チーズも期待しています!

・里山を管理していく必要性を感じた。

・有本さんのお話は何度かお聞きしていましたが、今回のいしかわ生物多様性カフェでより深くうかがえてよかったです。参加できて光栄でした。また参加したいです。

 

第八回 いしかわ生物多様性カフェ(11/22開催)報告

開催日時:2024年11月22日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:有本 勲さん(山立会代表)

テーマ:里山を舞台とした多角経営−山立会の取り組み

参加者数:37名(一般参加者29名+スタッフ・関係者8名)

※今回は石川テレビによる取材がありました。

 

 

 

【話題提供】

 

 

 

「里山をわいわいとなりわいに」という考えから、白山市で活動している里山総合会社の山立会。

 

経営理念は、

・里山の魅力を磨き、世界へ届け、仲間とつながる

・活気があり、安心して生活できる里山を皆でつくる

・「助け合い、ともに育つチーム」と「最高の里山ライフ」

というものです。

 

代表の有本 勲さんから、山立会の多角的な経営について話題提供していただきました。

 

ツキノワグマの生態研究で博士号をもつ有本さんは、2012年に石川県白山自然保護センターに赴任しました。その後、白山ふもと会に仕事の場を移し、猪の食肉処理を担当していました。そこで感じたことは、獣害対策だけをやっていてもダメだということでした。担い手である里山地域の活性化が必要と考え、2017年、里山総合会社の山立会を起業しました。

 

山立会の主な事業は以下です。

 

1.ジビエ。石川県でもシカやイノシシ、クマの個体数が増加し獣害も増加しています。ジビエ利用によって有害捕獲と狩猟の促進を目指しています。主に白山麓の旅館、飲食店に販売してきましたが、現在では他の業者に任せているとのことでした。

 

2.野生生物管理。獣害対策として、サルなどの生息調査や狩猟者育成セミナーを行なっています。

 

3.木滑なめこ。「大事なものは守る」。白山麓の特産品でもある木滑なめこは、「でっけえなめこ」という名称でも知られています。先代が高齢となり廃業の危機を迎えました。無くしてはならない地域の特産品ということで、山立会が事業承継しました。工場の改修などで費用がかかりましたが、現在では山立会の重要な収入源になっているといいます。

 

4.羊肉生産。「無いものは創る」。地域食材が地域の魅力の一つと考え、羊肉を白山麓の新たな特産品にしようとする取り組みです。背景として耕作放棄地の増加があります。耕作放棄地の増加によって獣害も増加し、災害などのリスクも高まります。狭小な土地でも放牧できる羊は、耕作放棄地対策として適していると考えて取り組み始めました。課題は、野草地放牧で羊飼養は可能なのか、放牧で生産されるラム肉の品質はどうなのか、そもそもラム肉の需要はあるのか、といったことでした。石川県立大学との共同研究で、野草地放牧の可能性などを調べたり、いしかわ里山振興ファンドの補助金をもらったり、クラウドファンディングによって資金調達を試みたりしています。

 

5.山立会食堂。 交流拠点づくりです。食堂と食肉製造の両輪で進めています。ジビエのネット販売や農業体験も実施しています。

 

6.新規の事業として、バーベキュー場とテニスコートの指定管理があります。バーベキューイベントではラム肉や木滑なめこを提供していたります。

 

このように、山立会は里山を舞台に多角的な経営をしている、まさに里山の総合会社という特徴を持っていることがわかりました。

 

運営体制は15名、内訳は正社員7名(代表社員含む)とパート8名です。それぞれの事業に担当がいますが繁忙期は事業間で助け合いながら進めているとのこと。なめこの売り上げが非常に大きいといいます。

 

山立会の事業は「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2019」のファイナリストになったり、「ディスカバー農山漁村の宝アワード」の優良事例として選定(全国600応募から37地区)されるなど、社会的評価を得ています。

 

今後の課題として、有本さんは産学連携を進めたいとおっしゃいました。大学や企業との連携をすすめ、山立会が地域に入って事業連携をすすめて地域全体を盛り上げていくモデルをつくっていきたいとのことでした。

また経営体制の構築も進めたいとおっしゃっていました。中小企業家同友会の支援を得て、経営の勉強をしているところだといいます。社内外に経営理念を示し会社の魅力をアップすることで、社員のモティベーションの向上と採用力の強化につながると考えています。

 

有本さんの報告から、里山を舞台に多角経営する里山総合会社のあり方を学ことができました。

学問をベースにしながら、起業し、里山の課題解決と価値創出を目指した取り組みでした。

有本さんがこのモデルを白山麓だけではなく、全国に広げていきたいとおっしゃっていたことも印象的でした。

 

 

 

 

【対話】

対話の様子をお伝えします(金沢大学大学院人間社会環境研究科地域創造学専攻修士課程2年の白 佳寧さんが作成したメモをもとにまとめました。白さん、ありがとうございます)。

 

 

 

Aさん:羊についてですが、どのような草地の利用となっているのでしょうか。意識的に、草の造成をしていますか。そして樹木は、どのような位置付けになってるのでしょうか。

 

有本さん:石川県立大学動物栄養学研究室が研究してくれています。学生が1日中羊の行動を観察しているんですよ。それを山立会が現場で実践させていただくことができる関係性があるので、すごく心強いです。雑草で羊が育って、おいしくになるかについて調べてくれました。ただ、羊を毎年同じ場所で放牧していると、羊が嫌いな植物ばかり残ってくるんです。刈り払いをしても、すぐ出てきます。一部は除草剤を撒いて、栄養が高い牧草をまいています。効率のいい生産をするのではなくて、白山に自生する野草とかを食べさせながら育ったブランドを作りたいと思って取り組んでいます。

耕作放棄地を利用して、毎年羊を増やしていくの予定なので、樹木は伐採していきますが、一部は羊の日陰用に残す必要があります。キウイとかブドウなど景観的にも面白いと思っています。

 

Bさん:山立会のイラストには、おじいさんとかおばあさんが畑を耕したりしています。そういうものも含めて、生産構造とか、経済的にどのようにとらえていますか?

 

有本さん:今はなめこが経営基盤になっていますが、食品製造業をもう少しできないかと考えています。今はイノシシのソーセージとか、なめこの瓶詰とか、手作りでやっていますが、もう少し機械化したいです。里山の食材を使った、効率のいい食品製造業を目指したいと思い、売れる商品開発に挑戦しようとしているところですね。山立会のなめこや羊を旅館や飲食店で使っていただいたりとか、白山で外国人観光客をガイドする方がゲストハウスを始めていますので、外国人の方を羊ふれあい体験、収穫体験に参加してもらうところで山立会と連携する。

周りの農家との関係は、山立会は弱いですね。なめこ生産組合で同業者がいますが、石川県に2社しかないので、自分たちで生産して、自分たちで金額を決めて、あとはお客さんに販売させていただいています。連携、繋がりはそんなにありません。羊に関しても情報交換はあります。

 

Bさん:それぞれの事業の完成度。一人の職員が専門的、プロとしてけっこう完成度が高いのでしょうか?

 

有本さん:山立会立ち上げた時、白山商工会から経営支援をしていただきました。中小企業診断士という経営の専門家に相談させていただく機会です。なめこだけ専門的にやっていれればといえば、いいところもあり、悪いところあると思います。例えば、なめこだけに専念した場合は社員さんが集まらないと思います。山立会はいろいろなことをしているので、面白そうだなと思って入ってきてくれる社員さんがいたりします。リスク分散になるところはあります。里山は小さい課題が多くて、その小さい課題を総合的にやっていかないと、地域がわからなくなるところはあります。なめこにしても羊にしても、勉強しないといけないので大変ですが、里山の課題を総合的に回していくことができるかなと思います。絶対無理だというものはやらないですが、可能性があると思うもの、必要なものは挑戦していきたいなと思います。

 

菊地:社員さんのみなさんは、どのようなモチベーション、どういうような思いで里山で仕事しているのでしょう。

 

Cさん(山立会社員):僕は野生動物の調査の仕事をやりたくて、今、山立会を手伝ってます。

 

有本さん:はい、そういうきっかけで山立会入ってくれています。ただ、山立会に入ると、食堂のことをさせられていたり、なめこが忙しい時は、なめこの収穫を手伝ってもらったりします。例えばNくんは、地元の白山出身で、地元が好きで地元に貢献したいということで、なめこ頑張ってくれてますね。毎日朝5時に出勤して、なめこを収穫して、、冬の間はみんなが来る前に除雪をしてくれたりとか。震災があった時、なめこが倒れたのですが、Nくんが対応してくれました。なめこが好きとか、山で働きたいという人が来てくれたり、動物が好きだからという人もいます。農業に関心があるとか。将来を起業したいので、入ってきてくれてる人がいたりします。

 

菊地:いろいろな関心がある人がかかわる会社という理解でいいでしょうか。

 

有本さん:そうですね。でも僕は何が得意なのかよくわかりません。補助金の申請書書きが得意なのかな。それぞれ得意分野を持っている人がきてくれて助かりますね。チラシを作るのが上手な人がいたりとか。同じような仕事をコツコツ嫌にならずにやってくれる人は絶対に必要です。

 

Dさん:リクエスト込めても質問ですが、羊のミルクを使ったカフェメニューは予定ありますか。チーズとかチーズケーキとか。

 

有本さん:ないんですよ。石川県立大学在学の食品科学の先生が、チーズを試作してくれました。本当に美味しいのができるんですよ。山立会で生産して高級品として販売しませんかという話をいただいたことはあります。ただ今は余力がないので、ミルク、チーズ、カフェはまだできないです。

 

Eさん(学生):北海道で、狩猟者と行政の間で問題が発生していると思いますが、石川県では行政とか、一般の方々と里山管理する方々の間での意見の食い違いはありますか。

 

有本さん:私はあんまり把握していません。僕が知ってるのは「くくり罠」のことです。地面に罠をしかけて、シカがピンポイントで踏むと足が縛られるものです。今、石川県は箱罠でイノシシを捕まえるのがメインですが、なかなか捕まらないです。石川県でもシカが増えてきて喫緊の課題なので、くくり罠を積極的に導入してほしいという意見があります。これから話し合いでどうするか決めていく必要があると思います。安全のくくり罠の使い方、みんなで勉強しましょう。

 

菊地:Eさんは、先ほど狩猟免許を持っているといってましたね。なぜ狩猟免許取ったのですか。

 

Eさん:地域で獣害とかが問題になっているので、自分で少しでも貢献できることがあったらと思い取得しました。

 

菊地:若い学生が興味を持って、勉強して免許を取るんですね。担い手が生まれてきていると思います。

 

Fさん:サルの生息域が広がってるから獣害が出る、それとも人の住むエリアがどんどん広がっているから獣害が発生しているのでしょうか。それから、チーズの話がありましたが、私が子どもの頃、羊の毛を刈った思い出があります。アクティビティはどんどん変わっていった方がいいと思いますが、そういう取り組みは何かありますか。

 

有本さん:基本的にはその動物の生息域が広がっていろと考えます。ただ政策の影響が大きいとも思います。1950年、サルは狩猟対象だったのですが、狩猟してはいけない動物に変わったのをきっかけに、どんどん分布が広がったと思います。クマに関しても、2002年ぐらいまでに、白山国立公園内でも銃は使用できなくなったと思います。白山国立公園入ったところにある野生動物の観察施設での目撃はどんどん増えています。政策の影響は結構大きいと思います。クマの保護政策でクマが少し増えすぎたのかな。違う方向で政策をためしていかなければいけないのかなと思います。

2点目についてですが、観光客の受け入れをやりたいと思っています。感染症のリスクがあるので、観光客全く受け入れない牧場もあります。山立会の場合、感染症といったリスクを取っても、観光客を入れています。もう1つは、里山の学習機会、教育の場が欲しいです。羊のふれあい体験は、今も予約制でやっていますが、シンプルな体験をしてもらうことしかやっていないので、もう少しレベルが高いものを提供できないかと考えています。学習とか見学とかができる畜舎ができないとか考えているところです。

 

Gさん:有本さんを突き動かしてるものってなんでしょうか。あんまりやりたくないとか、もう手を引きたい事業を引き受けられている。それを経営という形でされていますね。最初に山立会を立ち上げられた時はどういう思いだったのでしょうか。今は多分変わってきていると思います。そういうところも含めてお話お伺いできればと思います。

 

有本さん:起業した動機は、自分がやりたいようにやりたいなという思いがありました。石川県は大きい組織なので、自分がやりたいこと、言いたいことをもちろんすぐにはできないです。自由に動けるかなと思い、小さな団体に入ったのですが、そこでもなかなか自分のやりたいようにはできない。自分の責任で自分がやりたいようにやりたいということで、起業させていただいていますね。社員もいるので、人間関係中心に大変なところはありますが、勉強になってるし、やりがいはあると思っています。基本的に自分がやりたいことをやってるだけですね。ただ、まだまだ覚悟が足りないなと感じています。周りの経営者の方は、とてもモチベーションが高くて、自分より頑張ってる人がたくさんいますので、僕はまだまだです。やりたくないことも含めてやらないと、やりたいことは実現できないと思っていますが、楽しいです。

 

菊地:有本さんは元々はクマの研究されていて、獣害問題に関心があったのだと思います。今日のお話聞いてみると、獣害問題に限定せず、なめこが非常に大きな経営基盤になっていて、それを元に里山にさまざまな「なりわい」をつくって、いろんな人がそこにかかわるようになっていると理解をしました。里山での「なりわいづくり」ですね。

今日はありがとうございました。

 

 

石川県立図書館による関連書籍の紹介。特に狩猟についての本がたくさんです!!

いつもありがとうございます!!

 

 

 

 

第八回 いしかわ生物多様性カフェを開催します(11/22)

【開催案内】第八回 いしかわ生物多様性カフェ
 
里山を舞台とした生業について考えてみます。
※石川テレビの取材があります。ご承知おきください。
 
日時:2024年11月22日(金)18:30から20:30
場所:石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F)
話題提供者:有本 勲さん(山立会代表)
テーマ:里山を舞台とした多角経営−山立会の取り組み
定員:40名程度
対象:どなたでも参加できます(参加費無料)
共催:石川県立図書館・いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)
協力:石川県立大学 上野裕介研究室
申込(当日参加もできますが、なるべく申し込んでください)
 
 

第七回 いしかわ生物多様性カフェアンケート結果

データを示すだけで特に分析はしていません。

一般参加者数:26名

回答者数:24名

回答率:87.5%

 

①年齢(回答数21)

 

10代:14.3%(3名)、20代:14.3%(3名)、30代:0.0%(0名)、40代:33.3%(7名)、50代:28.6%(6名)、60代:4.8%(1名)、70代以上:4.8%(1名)

10代と20代の参加者が半数でした。

 

 

 

 

 

 

②性別(回答数21)

 

 

男性:47.6%(10名)、女性:52.4%(11名)

 

 

 

 

③職業(回答数22)

 

 

会社員:22.7%(5名)、公務員:22.7%(5名)、教員:4.5%(1名)、自営業:9.1%(2名)、主婦/主夫:0.0%(0名)、パート/アルバイト:4.5%(1名)、学生:22.7%(5名)、無職:13.6%(3名)、その他:0.0%(0名)

学生が半数でした。

 

 

 

 

④カフェのことを知った情報源(複数回答)

 

チラシが22.7%(5名)、菊地直樹のサイト/フェイスブックが22.7%(5名)、県立図書館が4.5%(1名)、いしかわ自然学校が18.2%(4名)、クチコミ22.7%(5名)、金沢大学のアカンサスポータルが22.7%(5名)、ダイレクトメールが9.1%(2名)、金沢大地が4.5%(1名)その他が0.0%(0名)でした。

 

 

 

 

 

⑤参加回数(回答数20)

 

 

初めてが28.6%(6名)、二回目が19.0%(4名)、三回目が23.8%(5名)、四回目が9.5%(2名)、五回目が4.8%(1名)、六回目が4.8%(1名)、七回目が4.8%(1名)でした。

 

 

 

 

 

 

⑥満足度(回答数22)

 

大変満足:54.5%(12名)、満足:40.9%(9名)、どちらともいえない:0.0%(0名)、あまり満足ではない:4.5%(1名)、満足ではない:0.0%(0人)

 

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

 

・貴重な機会をどうもありがとうございます!

・政府の政策や井村さんが農業をする上で意識していることを知れ、知識が広がったため。

石川県にコウノトリ!知らなかったのでスゴク驚き嬉しかった。井村さんの話も幅広く興味深かったが、質問・意見を出す人達の話も色々で、それぞれ異なった視点からの話がたくさんきけてよかった。

・井村氏の熱意に触れられた。感動しました。

・話題提供の内容はとても面白かったが、途中から話の軸がわからなくなったり、情報が多く疑問が残る点が気になった。

・金沢大地さんの取り組み素晴らしいと思います。コウノトリそしてトキ、生き物と生産者がうるおう!30by30保護地域をつくる。もっと多くの方に注目されることを願います。

・井村さんのお話がとても貴重なものでした。窒素過多になっているという事を初めて知りました。コウノトリのライブ配信は、仕事中、PCの隅に映してよく見ていました。かわいいですね。

・農業の視点で能登の今後を考える機会になった。

・農業と生物多様性について、気づきや学びが多かったです。

・有機農業を楽しく、コウノトリと絡ませながら営んでいることに農業の未来を感じた。

・SDGs起業の話、そして企業の社会貢献活動を聞いてとても興味深く感じました。

 

 

 

⑦参加して生物多様性と人の暮らしについて、考え方は変わりましたか(回答数19)

 

 

大きく変わった:31.6%(6名)、変わった:47.4%(9名)、どちらともいえない:15.8%(3名)、あまり変わらない:0.0%(0名)、変わらない:5.3%(1名)

 

 

 

 

 

由回答には以下のような言葉が寄せられました。

・生産性も重要であることがわかったため。

・生物多様性を評価する基準。従来は単なる指標的なものととられていた。

現実と理想のギャップへの考えが大きく変わった。生産者の立場から見た時に消費者へその価値を認めてもらうかもギャップを埋める一つの手法となり得ると感じた。

・生き物=農業=有機による自然環境保全=私たちの健康→循環していってほしい。

・いろんな話を聞けたので、多様性の幅が広がりました。ちょっと目線が変わったので、これから考え方も変わりそうな気がしています。

・農地に関わる色々な方のご意見が聞けてよかったです。

・これまでも生物多様性について重要と思っており、ボランティア活動もしてきたので、今後も継続していこうと思う。

・幼い頃の生物との触れ合い経験は、有機農業の理念と通じるものがあります。有機農業は、人と自然の密接なつながりを大切にし、生物多様性にも大変重要だと思います。

 

 

 

⑧今後も参加したいと思いますか(回答数21)

 

参加したいと思う:95.2%(20名)、思わない:0.0%(0名)、わからない:4.8%(1名)

 

 

 

 

 

 

⑨興味があるテーマ

 

・能登の里山再生

・生物が生きやすい街づくり(石垣とか風通しとか)

・絶滅する生物との共存

・里山の現状

・気候変動のこれから。と私たちにできること。

・獣害と生活・暮らしへの関わり。再野生化(再自然化)。消費者への共感。

・人を含めた自然の生き物の未来。人が手を加えた土地の自然生物生態系と人が耕作放棄してされてしまった後の生物の生態系の変異、再野性化はありえる?

・生物多様性と畜産

・獣害、ジビエ

・里山といきもの、クマ。

・地球温暖化対策、環境問題など。

・法律、農業、生物、歴史、心理学

・生物多様性と観光、生物多様性と地域知(ローカルナレッジ)。

・外来生物問題

 

 

⑩全体としての感想として、以下の声が寄せられました。

 

・色々な意見が聞けて有意義でした。

・多分野の考え方を知る機会になりました。ありがとうございました。

・金曜夜のこの時間帯に参加されている方々がとても熱心で、農業を自分ゴトとして考えていらっしゃることがわかって感激しました。

・初めての参加でしたが、色々考えさせていただけるテーマでした。

・地元の耕作放棄地をどのように継承していくかを考えるきっかけとなりました。自分の関心が農業の生産だけに向いていることが分かって、消費者や流通、生態系も考えていかなければいけないと分かりました。そのように考えると農業が難しい職業であるのだなと思いました。

・大規模農家(農業体?)の有機農業。27年前によくぞ!コウノトリの飛来、営巣、ヒナ誕生とスゴイインパクトで全世界に知ってもらいたいです!

・生きものが身近な環境で育った方のお話は、とても興味深かった。

・参加してよかった!

・消費者の手元に商品が届くまでの背景を理解すること、伝えることが今後農業を生業として維持するために重要だと感じた。

・有機農法、農薬を使わない生産という安易な事しか知りませんでした。自然のつながり、長い時間の努力、1000年産業。

・ローカルで考えるだけでなく、日本全体でどのような社会(自然も含めた)を築いていくのか、考えるべきなのだと思いました。その話ができてよかったです。

・おにぎり最高でした!ごちそうさまでした。駅で買います!

・参加できてよかったです。ありがとうございました。

・ためになるお話を聞けてよかったです。

・放送されることのない会で参加したかったです。何も知らなかったので。大学生や一般(働いている人/いない人)が参加して、皆で向上できるボランティア活動兼地域貢献を生物多様性のグループでしてみたいです。

・欧米では有機農業は「富裕層向け」というイメージがあります。貧困層には手が届きにくいという現実があり、こういう問題を解決することは必要だと思います。

 

第七回 いしかわ生物多様性カフェ報告

第七回 いしかわ生物多様性カフェ記録

開催日時:2024年9月20日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

話題提供者:井村 辰二郎さん(金沢大地・金沢農業代表)

テーマ:生物多様性と農業

参加者数:36名(一般参加者26名+スタッフ・関係者10名)

※今回は石川テレビによる取材がありました。

 

【話題提供】

 

 

「千年産業を目指して」という理念のもと、金沢近郊と奥能登地域で環境保全型農業を営み、地域の創成を目指している金沢大地・金沢農業。代表の井村 辰二郎さんから、生物多様性を守って活かす農業についてご報告いただきました。

井村さんは1997年に家族や周囲の反対を押し切って有機農業に転換(有機JAS施法前)しました。河北潟の周囲や能登の耕作放棄地を開墾し、10年間で40haから200ha規模を拡大したといいます。これは、日本の耕作放棄地の0.03%にあたります(現在は180ha)。豆腐・味噌の農産加工を開始し、六次産業化や一人農商工連携を実践されています。

 

井村さんたちは5つのミッションを掲げています。

1.日本の耕作放棄地を積極的に耕します
2.有機農業を通じて、日本の食料自給率の向上に貢献します
3.新規就農者等の研修、受け入れ及び育成を行います
4.農産業を通して、地域の雇用を創造します
5.農業を通して、東アジアの食料安全保障に貢献します
 

井村さんは、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)という考えを紹介し、高リスクと評価される種の絶滅の速度と窒素・リンの循環に対して、有機農業によって対応する必要性を指摘されました。有機農業は「地球規模で考え、足元から行動する」「地域で理解して、世界に向けて行動する」取り組みだと考えられます。

 

ところで、井村さんは、現在の金沢農業の農地が広がる河北潟周辺で少年時代を過ごしました。湿地帯が広がり、生きものが大変豊かな場所だったといいます。「生きものが友達」だった体験があったから、有機農業に取り組んだそうです。その河北潟は大きく姿を変えました。1963年に着工し1986年に完成した干拓事業が進められたからです。その結果、1390haに及ぶ大地が誕生しました。当初は米を作る目的で計画されましたが、減反政策が進められ、完成後は畑作を中心とした農業が進められています。その河北潟には、近年、絶滅危惧種で人間の手によって野生復帰されたコウノトリが飛来するようになりました。井村さんたちは、人工巣塔を立て、コウノトリの営巣を手助けするとともに、コウノトリのライブ配信を行っています。2023年には2羽、2024年には4羽が繁殖するなど、コウノトリの繁殖地として安定しつつあります。井村さんは、コウノトリの繁殖は「有機農家冥利」に尽きるとおっしゃいました。

 

その一方、イノシシの大群が出没するなど生態系は大きく変化しています。それに対して、有機農業者として何ができるか?

「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、2030年のミッションとして「生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとる」ことが掲げられています。現在、2030年までに陸と海の30%以上を保全することを目標とする「30by30」という取り組みが進んでいます。ただ法令によって守られている保護地域は限られていますし、大きく拡大することは難しいです。ではどうすればいいのでしょうか?保護地域だけではなくそれ以外の場所を守っていくこと、多くの人たちが力わ合わせることで達成を目指していくことが求められています。その方法としてOECMがあります。2010年に日本で生まれたもので、人びとの生業や民間の自発的な取り組みによって自然が守られている地域のことを指します。環境省は生物多様性の保全に貢献する場所を「自然共生サイト」と認定する仕組みを始めました。金沢大地さんは、自らの農地を自然共生サイトとしての認定を目指し、活動を始めています。市民のみなさんにもモニタリングに参加していただきたいとおっしゃっていました。

 

井村さんの報告から、まさに「地球規模で考え、足元から行動する」「地域で理解して、世界に向けて行動する」ことによって、生物多様性を守って活かす取り組みを学ぶことができました。

 

当日は、金沢大地さんのご好意により、有機栽培米によるおにぎりを提供していただきました。とても美味しかったです。ありがとうございました。

 

 

 

【対話】

対話の様子をお伝えします(金沢大学生命理工学類2年の上原 拓翔さんが作成したメモをもとにまとめました。上原さん、ありがとうございます)。

 

Aさん:有機農業、取り組んでいることの動機は、主に経済的なブランド力やビジネスだと思っていましたが、井村さんご自身の幼少期の経験が動機であるということにびっくりしました。プラネタリー・バウンダリーのお話がありましたが、窒素とリンが限界値を超え、地球の限界値を超えているということに関連して、遺伝子を改変した作物についてどうお考えですか。また、一般的な除草剤などはどう評価されているのか教えて頂きたいです。

 

井村さん:有機農業では、遺伝子組み換えの技術、種はもちろん、資材についても、使えません。しかし、それらが、人類にとって有益か有害かについての知見はまだ十分ではありません。その上で、自分は遺伝子組み換えをとらないです。表示されてないものがあることが問題です。消費者が選択するため、買わなければ、続かないため、表示されていないものがあるのが残念です。

某除草剤などは、植物が全部死ぬため、強力であり、障がいの原因になるなどの可能性などがあります。そのため、海外では禁止されていますが、日本では禁止されていません。街中などでは一部使われているが、日本ではそれを使うなと農家にいうのも難しいことです。実際、どうやって畔の管理をするのだということになってしまいます。そのぐらい便利なものではありますが、人にとってどうかという意見があるのは、承知しており、私も同じ立場であります。

 

Bさん(学生):お話の中で農業人口がだいぶ少なくなっていくということで、企業支援の観点から見たときに、何が一番必要なのかをお聞きしたいです。例えば、人なのかお金なのか情報なのか、企業同士のマッチングなのかお聞きしたいです。

 

井村さん:私は、日本農業法人協会という全国で会員が2100社ある公益社団法人の副会長理事と政策提言委員長をやっています。まさに今おっしゃったようなことを仲間と議論し、農林水産省などに政策提言するということを行っています。今おっしゃったことはすべてウェルカムです。資金も人も技術も必要です。しかし、今1番やろうとしていることは、自分たちがどうやって持続可能な経済活動を行うかを考えると、消費者に価値を認めてもらい、合理的な価格で買ってもらう努力をすることです。

経営として見たときに入っていくお金と出ていくお金だけなので、とにかく、消費者に価値を認めてもらうことと、いかに生産性を上げるかということと、経費を抑えるということをやっています。その手法として企業のノウハウや効率よくできるか資金キャピタルなどは必要となってくるため、その上でのネットワークの仕組みが出来ると良いと思います。

 

Cさん:生物多様性のある圃場はたいがい不便な場所です。圃場に行くと、山奥で、生産性が低く、山が迫っているような場所で、生き物が多いです。高齢化も進み、耕作放棄地も増えていて残念に思います。土地改良の政策で大きな田を作り、コンクリートで固めるものも増えています。生産性と生物多様性は相反するものではと思うのですが、そのバランスについてどのようにお考えですか。

 

井村さん:農業は経済活動でありますが、生物多様性との両立というものがあるが、それをやってきたのが、江戸時代までの里山里海だと思います。農業としての活動をしながら、保全をしてきましたが、ある時から、基盤整備などで急激に変わっていきました。今後、基盤整備で魚が登れる魚道を作る、藻がつきやすいものにする、等の整備はもっとすすんでいくのだろうと思われます。日本の里山里海という循環型の生業を確立してきたことに自負しており、きっと両立していけると思われます。そのためには、皆さんの声や科学者、知識者の声が集結することが必要です。

 

菊地:コウノトリ育む農法でもCさんが指摘する同じような問題がありました。圃場整備されていて条件のいい場所では有機農業が広がっていく一方、生物層が豊かですが条件が不利な場所は放棄されていく。この矛盾をどう考えていけばいいのでしょうか。

先日、日本鳥学会に参加して、耕作放棄地が生物多様性を向上させる可能性がある報告を聞きました。もちろん、色々と条件があります。農地開発の歴史が古いところは、農地が放棄されても生物多様性はあまり向上しなくて、開発の歴史が浅いところでは農地が放棄されると多様性増すといった話です。

ただ耕作放棄地の話は、生物多様性だけで考える話ではないと思います。一つの視点として紹介しました。

 

Aさん:1月に能登で大変な災害があった。多くの土地を失いました。たいへん不謹慎ですが、機会ととらえれば、能登半島を大きな農業ゾーンにしていくというのはどうでしょうか?偶然とはいえ、あえて言いますが、実際に大きな被害はありましたが、改造できないのでしょうか。

 

井村さん:石川県全体が被害を受けていて皆さん、大変だと思うのですが、能登全体で、6割の田植え、8割がそばなどなんらかの耕作ができるようになり、あとは2割というところまで来ました。今回の災害が半島、そして全部過疎地で起こったということが大きいです。日本には半島振興法という法律があります。

今、農林水産省などに私が言っているのは、20年ほど前倒しで農家の離農が進む可能性があるということです。日本中の過疎地で20年後に起こることが前倒しで行われることになり、みんなで解決策を見出せたなら、日本中に横展開できる第一例となるのではないかと思います。

ポジティブにとらえると、どのように能登を振興していくのかを考えると、能登には人がいないから外部から人を呼ぶか、ロボットにやらせるか、といったアイデアが出ると思います。今回のことでいろいろな知恵が全国から集まるようになったので、ぜひ、みなさんの力も貸してほしいと思います。

 

菊地:人によって、経験や知識は違いますが、それぞれに出せる意見はあります。消費行動として貢献することもできる。みんなで能登をどう再生していくか。

 

Dさん(大学教員):自然再生に関連して、再野生化、再自然化という言葉があります。能登の里山里海を守っていこうとしても人が足りないということになります。ヨーロッパでは自然再生ではなくて、自然の力に委ねて野生に戻していくという再野生化といわれる考えが広がっています。

能登の里山里海を今の規模で維持することは難しいため、人の手を入れる里山と、人が完全に手を入れていない自然を作る場所というようにメリハリをつけてやっていかないと全部粗悪なものとなってしまいかねないです。やはり、みんなで話し合いながら解決することが大切です。

 

Eさん:批判ではなく、自分の思いなのですが、再野生化は辛いと感じました。私は、山の方に農地を借りて有機農業を家族で細々とやっています。近年、人手が足りない、高齢化、イノシシとかサルの被害で、農作物を守り切れない状況になり、作る気力もなくなっています。何とかして、祖先が開拓した土地を守りたいです。人もお金もない状態だから、人が住めないような状態にすると人の心が壊れるから、再野生化には反対です。新しいスタイルで能登に外部の協力も含めて、何とかできないでしょうか。

 

菊地:戦前から戦後にかけて、日本全国を歩き回った民俗学者の宮本常一は「自然はさみしい、しかし人の手が加わると暖かい」 という言葉を残しています。少子高齢化が進むなか、これまで通り農地を維持管理することは難しくなると思いますが、やはり人の手が加わった自然というものに、私たちは親しみや安心感を持っているのかも知れません。

 

井村さん:野生に戻すということと人が介在することには違いがあると思っています。1億3000万から8000万の人口になるため、実際、再野生化も必要なのかと思います。日本のデザインをどうするのかという話で、国立公園は別として、昔からある地域を残していくか、住み分けをし、メリハリをつけるかというように、国全体の話です。これが能登で議論されているということです。そこら辺の議論はまだされてない感じがします。海外の例だと、チェルノブイリは野生になっています。

日本にどれぐらい管理されていない環境があるといいのかという議論がなされないと、地方が切り離されていくのではと思います。この国のデザインをどうしていくか。この議論において、農業などの一次産業が大事になるのではないでしょうか。

 

菊地:有機農業は思想として進められてきた経緯があります。井村さんお取り組みはビジネスとしても成り立つものですね。一般的に、有機農業は大規模化しにくいと思いますが、どのようにすすめているのでしょうか?

 

井村さん:全国有機農業推進協議会の最年少理事になりました。有機農業だから小規模とか大規模ということではなくなってきています。小規模の農地は、関東などに多いです。小さい業でもできるのは関東で、地方では、オーガニックものが食べたいという人は少なく、東京などに持っていかなければならなくなってしまいます。そのため、大小ではなく、消費者が求めるものを生産し、持続可能性があることが大切です。継承するためには、ある程度の規模が必要な時もあるのだろうと思われます。

 

Fさん:「ファーマーズビレッジ能登 石川県の小さな八百屋の挑戦、能登半島に地球が喜ぶ農業の一大拠点を作りませんか」 というクラファンの話。

 

Gさん:江戸時代の町村史、能登半島の話。塩作った板、鉄、まき、大都市、墨、漆、など生物多様性だけでなく、産業構造においても多様性がありました。産業を増やすことで成り立っていたということから考えると、小さい産業の組み合わせによる手もあるのではないでしょうか。

 

菊地:復興のモデルとして、色々な小さな産業の組み合わせていくことはあると思います。

 

Hさん:生物の調査、農業、山間地で人が入らなくなったところは、資産管理業的側面があるのではと思います。そこに金沢大地のような企業が入ればいいとは思いますが、企業では山間部は効率が悪く、稼げないと思います。手放したい人がいる中で、自然共生サイトなどのようなもので付加価値を付ければ農業の維持、生物多様性の維持ができるのではないでしょうか。

 

菊地:自然共生サイトが消費者の購買意欲につながるストーリーができればいいと思います。兵庫県豊岡市でコウノトリ育む農業をしていた同世代の農家さんは、「数値を示しても消費者に共感してもらえない。しかし、自分の田にはこんな生き物がいるよと伝えていけば、有機農業はいいと思ってもらえた」とのことでした。消費者に共感してもらえるストーリーをつけることが大切なのではないでしょうか。

 

井村さん:昔はみんな同じものを買っていましたが、今は消費者が考えて購入しており、多様性があります。今は、生物多様性に興味ある方に実際に来てもらう、生き物調査をしてもらうということなどの地道なことを通すことで30by30実現できるのではないでしょうか。

 

Iさん:井村さんのお話での「いきものは友達で日常だ」という言葉がいいなと思いました。

 

菊地:個人的には子どものころは生きものに関心なく、原体験がある人が羨ましいです。やはり原体験があることは大きいですね。しかし、そうでない人にもできることはあると思います。だからこそ、今、いしかわ生物多様性カフェという対話の場をつくっています。

 

今日は、色々な意見が出ました。少し意見が違うこともあったが、それも含めて、みなさんと対話をすすめ、一緒に考えていただければと思います。

 

 

石川県立図書館の生物多様生と農業に関連する本の紹介。いつもありがとうございます!

 

第七回 いしかわ生物多様性カフェを開催します(9/20)

第七回 いしかわ生物多様性カフェ

【話題提供者】井村 辰二郎さん(金沢大地・金沢農業代表)

【テーマ】生物多様性と農業

【日時】2024年9月20日(金)18:30〜20:30

【場所】石川県立図書館 研修室(文化交流エリア2F) ※対面のみです

【対象】どなたでも参加できます(参加費無料)

【定員】40名程度

【主催】金沢大学先端観光科学研究所 菊地直樹研究室

【共催】石川県立図書館、いしかわ環境パートナーシップ県民会議(いしかわ自然学校)

【協力】石川県立大学 上野裕介研究室

 

【申込方法】

参加をご希望の方は、以下の申込フォームから必要事項をご記入の上、お申し込みください。いしかわ生物多様性カフェは当日の受付も可能ですが、なるべく事前に申し込んでください。

https://docs.google.com/forms/d/1OxEuiBO-p8su2C0TmjfKHG1Qb9tx-xzA1BQa2K1Xmi0/edit

 

 

いしかわ生物多様性カフェとは

人の暮らしと生物多様性について、コーヒーなどを飲みながら、市民と専門家が対話する場です。対話を通して、生物多様性を活かした石川の未来を考える機会、生物多様性がテーマのネットワークをつくりたいと考えています。

当面は、2ヶ月に一度程度の間隔で開催します。

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