第六回 いしかわ生物多様性カフェ報告

第六回 いしかわ生物多様性カフェ報告

 

開催日時:2024年7月26日(金)18:30〜20:30

開催場所:石川県立図書館研修室

テーマ:みんなでつくろう!市民科学(グループワーク)

参加者数:33名(一般参加者21名+スタッフ・関係者12名)

 

 

タイムスケジュール

 

①市民科学と市民調査(おさらいとおかわり)(18:30-18:55)

 

②緩やかなアイデアだし(18:55-19:20)

 

 休憩(19:20-19:30)

 

③グループワーク(具体的な企画を考えます)(19:30-20:10)

 

④全体共有(20:10-20:30)

 

 

【①市民科学と市民調査】

 

 

前回に引き続き市民科学がテーマです。

グループワークによって、具体的な市民科学の企画を考えました。

 

まず菊地から、前回の話題提供者の一方井さん上野さんの報告を振り返り、市民科学と市民調査について簡単に説明しました。

 

市民科学について

 市民科学とは、「専門家や科学機関と共同で、またはその指示の下に一般市民によって行われる科学的な活動」のことをいいます(Oxford English Dictionary,2014)。

 ただ、定義はこれに限らず、さまざまなものがあります。

 前回、一方井さんから具体的な事例として、「雷雲プロジェクト(石川)」を紹介していただきました。石川県は全国でもとても雷が多い地域です。特に秋から冬にかけて多く雷が発生するという特徴があります。雷研究者が研究にきても、ちょどそのタイミングで雷が発生するわけではありません。そこで観測装置コガモ(CoGaMo)という観測装置を設置していただくという市民科学を実施しています。その結果、2021年12月30日に金沢市の5地点で雷雲からのガンマ線の検出に成功しました。英語の論文になっていますが、謝辞に市民科学に参加した市民の方のお名前も入っています。

 前回、上野裕介さんからは、スマートフォンのAIアプリを使った市民参加型の生物多様性調査について話題を提供していただきました。スマホアプリである生き物の写真を撮る→AIが自動で種を判定する→送信する→WEB上の地図に反映される→反映された情報は誰でも見ることができる、というものです。

 そうした調査として、City Nature Challengeという世界の都市で一斉に、生きもの情報をスマホで集める市民科学プロジェクトがあります。今年は4月26日~29日の4日間で、世界600都市以上を舞台に、iNaturalistというスマホの無料アプリを使って野生の生物観察を行い、種数や観察数を楽しく競う市民科学プロジェクトが行われました。その目的は自分の住む都市の自然を観察し、生き物の多様性をよりよく知るとともに、世界の都市と比較することです。iNaturalistは、世界で740万人が登録しています。主催団体は、ロサンゼルス自然史博物館とCalifornia Academy of Scienceです。

 金沢では4月27日(土)、「金沢城で生きものみっけ!」というイベントとして行いました。50人以上の市民が参加しました。

 

市民調査について

 一方井さんと上野さんが紹介した事例は装置やアプリを使ったものでしたが、私からは市民調査、特に質的な調査について補足説明しました。

 市民調査とは「何らかの当事者性をもった専門家ではない人びとが行う問題解決志向の調査活動」(宮内泰介, 2016)のことをいいます。市民調査は、市民を軸にしたさまざまな人びとの持ち味を活かした協働によって進めます。具体的な取り組みとして、たとえば人の話を聞いて、それを文章としてまとめる「聞き書き」があります。聞く人にとっても、語る人にとっても学びの場となりますし、人びとの歴史や暮らしを「物語」として共有できるようにする取り組みでもあります。

 また五感ワークショップという取り組みもあります。日本自然保護協会が進めている「ふれあい調査」を紹介しました。

1)目に浮かぶ風景

2)耳に残る音

3)鼻に思い出す匂い

4)肌によみがえる感触

5)舌に懐かしい味

 

 五感から「地域住民と専門家が協働で調査を行ない、地域の価値、生活知、思いなどを掘り起こ」す方法です。結果をレポートや地図の形でとりまとめ、データとしては扱いにくかった地域固有の価値を、定性的、定量的なデータとして活用、共有できるようにします。(NACS-Jふれあい調査研究会(2005)『地域の豊かさ発見*ふれあい調査のススメ【お試し版】』)

 

市民科学と市民調査については、以下の図を参照してください。

 

 

 

【②緩やかなアイデアだし】

 

市民科学と市民調査について、改めて情報を共有した上で、参加者に市民科学のアイデアを書いていただきました。

たくさん出たアイデアを4つグループにまとめました。

 

 

 

グループ①:人と野生動物のあつれき

 

グループ②:環境問題

 

グループ③:自然・生きもの

 

グループ④:文化やデータの共有

 

 

【③グループワーク】

参加者には4つのグループに分かれていただき、グループワークを行いました。

 

【④全体共有】

その結果を示します(私の院生がまとめたメモをもとに再現しました)。

 

グループ①:人と野生動物とのあつれき

 人間社会と野生動物あるいは生物との軋轢には共通するものがあるのではないでしょうか。クマが出るとか、ロードキルで交通事故が起こるとか、農業被害、そういった人間と野生動物との軋轢が発生しています。このことについて、私たちは本当にどこまで知っているのでしょうか。考えてみると、あんまり知らないんじゃないでしょうか。たとえば、法律、制度や対策もありますが、知らないから、なかなか対策が取れないじゃないでしょうか。ロードキルについて、制度の問題もある。

 そういった動物との軋轢を考えていく前に、そういう動物がどこにいるのかとか、どんな生活をしているとか、まずは私たち自身が観察することを始めたらどうでしょうか。このことを提案したいと思ういます。たとえば、iNaturalistというアプリを使うと、いろんなところに報告することができます。自分自身でも観察することによって、一つの生物の行動が、少しでも理解できるようになります。楽しみながら動物を観察する。対策も考えていくようになるのではないでしょうか。このことを提案したいと思う。

 もう一つは外来種。これは人の持ち込みです。

 つまり、私たち自身で観察をすること。観察することで興味がわき、もっと勉強しようとなる。まずは興味を持ちましょうということでまとめたいと思います。

 

グループ②:ゴミ問題

 まず、能登の海岸に、多くのゴミが漂着します。そのゴミを見てみると、日本由来のゴミが大体3割です。たとえば、地中海では、1970年代に海にゴミを捨ててはいけないというバルセロナ条約ができたそうなんですが、能登にも、日本海にゴミを捨てないという能登条約ができたらいいなと思いました。周りの国の人を動かすことは、市民のレベルではちょっと難しいですが、地震で世界中の人が注目しているので、もしかしたら可能性はあるかもしれません。

 もう一つは、ゴミの分別。外国ではゴミがいっぱいあるし、ゴミ箱がいっぱいありますが、日本はゴミ箱が少ないから捨てるところがないとか、場所によってルールが違うから分別がうまくできていないんじゃないでしょうか。分別をもっと大事にしてもらいたいと思います。どうやったらみんなが分別をこころよくできるかな。得るものがあるとすごくやりやすいのかなと思います。たとえば、ゴミポイント。お金がもらえるとか、賞品がもらえるとか、そういうのがいいなと思います。今、ゴミポイントはちょっと低いから、もう少し高くすると、もっと人の意識が変わってくるのかなと思います。

 あと、子どもに教育すること。能登では、海、ごみ、漁業といって、地球環境を守りましょうっていう教育が、小さい時からされているようです。子どもからいわれると、大人もちょっとやらなくてはいけないなと。外国の人にもゴミのことを知ってもらいたいから、教育するのはすごく大事じゃないかなと思います。日本に来た人にゴミの認識を高めてもらうためにゴミ教育をしていく。でも、面白くないとそのツアーに参加してもらえないので、アートにするとか、そういうことをしていたらいいんじゃないかなと思います。

 

グループ③:セミの市民調査

 どこでどのような種のセミがどのように鳴いているということについて話し合いました。

 まず、いろんな地域に住んでいる方の協力を得ることによって、市民調査の形でいろんな場所のデータを作ることができるのではないでしょうか。日時、場所、鳴き声の録音と写真から、ゼミの種が確定できます。

 次に、子どもたちの協力です。義務の要素を取り入れてやっていただくのもいいかもしれません。継続してもらえる取り組みとして、ポイントをつけたり、ポイント獲得の数で順位をつけたりとか、シェア機能をつけたりとかということが考えられます。あと、ポイント設計でデータの信憑性が上がるように、同じ場所で同じ時間に何日も連続してやってくれたらポイントが上がるとか、そういったデータの信憑性が上がるような提案もありました。

 

グループ④:地域の魅力・歴史の伝え方、研究者との交流

 プラットフォームをつくるという点からいえば、石川県には自然資料館がすでに存在しています。地域の情報を知るためのプラットフォームがすでにある状況で、このプラットフォームをどうやってみんなに普及させていくのか、について話し合いました。

 たとえば、県民メール、金沢市のラインとかがあります。ただ、それがそもそも広まっていないので、それを普及させるために何か手を打つ必要があります。あと、資料館に参加しているボランティアの方々の口コミとかをもっと幅広い世代に伝えることができるのではないか、といったことも話しました。

 最後、プラットフォームという点からすると、チラシ、メールというのも大事だと思いますが、本を出すことを提案したいです。ネットとか全然ない時代だったら、本のもとにいろんな情報を収集するというのが当たり前だったと思います。土地ならではのことを本にまとめて出してみるのも一つの提案になると思います。

 

 

石川県立図書館さんに関連する図書を集めていただきました。

 

 

追伸

 

金沢は和菓子文化が根づいた街でもあります。

今回はいしかわ生物多様性カフェ1周年ということで、金沢銘菓「くるみ」を用意しました。

 

 

今回の参加者は33名でした。テスト期間が間近ということが影響したのでしょうか、学生の参加が少なかったです。

あるいはグループワークは敷居が高かったのでしょうか。

 

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